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平成30年配偶者控除改正、150万円の壁はどうなる?

平成30年から配偶者控除の要件が改正されます。これまで年収103万円をターゲットに働いてきた方にとっては特に重要な改正になります。配偶者控除・配偶者特別控除がどのように改正されるのかを見ていきましょう。平成29年までは従来通りの制度のままですので、あわせて注意してください。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

企業経営のサポートガイド

配偶者控除に年収要件がプラス

配偶者控除

配偶者控除の見直しで、いままで103万円に抑えてきた年収も多少アップさせられるかもしれません。

これまで「配偶者控除」といえば「配偶者の年収が103万円以下」ということだけが要件でした。夫または妻がどれだけ稼いでいても、もう一方の配偶者の年収が103万円以下であれば、配偶者控除の適用を受けることができました。

しかし、この配偶者控除、平成30年からは大きく改正されます。労働人口が減っていく中で、女性活躍の一環として行われる施策です。

以下ではすべて、
「会社員など給料以外の所得がない方」で、「控除の対象となる配偶者が70歳未満」であることを前提に話を進めます。70歳以上の場合は、以下で説明する控除額に3~10万円のプラスがあります。

「配偶者控除」の要件に「自己の年収」が追加

配偶者控除の変更

配偶者控除の変更

まず、これまでにはなかった「自己の年収要件」がプラスされます。自己の年収が1220万円を超える場合は配偶者の所得の金額にかかわらず配偶者控除を受けられなくなりました。

主婦(夫)で無所得だった方やパートで年間103万円に抑えていた方も、配偶者が年収1220万円を超えるような高所得者であれば配偶者控除は受けられない、ということです。

また、年収1220万円以内の場合も年収に応じて、以下の通り控除額が38万円から減少していきます。これまで一律だった配偶者控除額が自己の年収に合わせて変動することになります。

  • 年収1120万円以下/38万円
  • 年収1120万円超1170円以下/26万円
  • 年収1170万円超/13万円

変動するとはいっても、年収1120万円未満の場合は、これまで通り38万円の控除のままですので、適用されるのはごく一部の高給の方のみです。

配偶者控除については、適用を受けるにあたって1220万円以下という年収要件が加わったので、納税者にとっては不利な改正といえます。

「配偶者特別控除」はやや有利に改正

配偶者控除については納税者にとって不利な改正があった一方で、配偶者特別控除の金額については、納税者にとって有利な改正が行われました。

年収を103万円以下に収めることを前提にしていた方にとってはあまりなじみがないかもしれませんが、年収103万円を超えた場合でも年収141万円までは、3万円~38万円の範囲で「配偶者特別控除」という控除を受けることができました。この配偶者特別控除について、年収150万円までは、配偶者控除と同じ年収区分に応じて13~38万円の控除が認められるようになります。

これまでは配偶者控除を受けるために103万円に収めていた年収について、所得税計算上は年収150万円まで働いても、所得税の納税額は変わらない、ということになります。これまで「103万円の壁」と言われていたものが、これからは「150万円の壁」ということになります。

それでも残る「130万円」の壁

年収150万円まで働いても所得税が変わらないということですが、健康保険上の扶養に入れるための、いわゆる「130万円の壁」は残ります。

所得税の扶養は「毎年1月1日から12月31日の所得状況に応じて決まる」のに対し、健康保険の扶養は「向こう1年間の年収の見込みに応じて決まる」という違いはありますが、150万円を稼いだ場合、所得税上は配偶者控除と同じだけの控除を受けられても、健康保険の扶養の基準からは外れてしまいます。

この場合、パートやアルバイトなら労働時間に応じて健康保険に加入するか、国民健康保険に加入するか、ということになります。最終的な手取りはどちらが得かということはさておき、おそらく健康保険の扶養に入っておきたいと考える方は多いでしょうから、103万円を超えて働く場合でも、結局は130万円の壁を超えようとする方は少ないかもしれません。

「103万円の壁」「130万円の壁」「150 万円」の壁など、壁だらけの制度ですが、改正によってそれぞれの壁がどう変わったのかをよく把握しておきましょう。


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