皮膚・爪・髪の病気

【症例写真】虫刺され跡が治らない…虫刺され、ニキビ跡の炎症後色素沈着の治し方

【皮膚科医が解説】【症例画像あり】ニキビ跡や虫刺され跡など、肌に残った黒っぽい色を消したいという相談がよく寄せられます。これは炎症後色素沈着と呼ばれ、皮膚の炎症が長引くことでメラニンがついて黒っぽい色が残ることです。跡を残さないための予防法、消す方法として有効な皮膚科での治療法を解説します。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

虫刺され跡・ニキビ跡が治らない……炎症後色素沈着とは

虫刺され跡が治らない…虫刺され、ニキビ跡など炎症後色素沈着の治し方

虫刺されなどを掻きこわしてしまうとなりやすい炎症後色素沈着。跡を残さない方法はあるのでしょうか?

虫に刺されると赤く腫れてかゆくなりますが、これが長引くと黒っぽい色が跡となり、皮膚に残ることがあります。医学的には「炎症後色素沈着」と呼ぶもので、皮膚が赤くなる炎症が長引くことで、メラニンが沈着してしまう現象です。一度メラニンがついてしまうと皮膚から自然に排出されるのに時間がかかり、数カ月~年単位で黒っぽい色が残ってしまうことになります。

<目次>
 

【症例画像】虫刺され跡・ニキビ跡の色素沈着

虫刺されに限らず、皮膚に炎症が起こればメラニンが沈着する可能性があります。ニキビ跡の茶色っぽいシミやヤケド跡、ケガの後に残るシミも、同じ炎症後色素沈着の病態です。

いくつか実際の症例写真を挙げてみましょう。

■虫刺症炎症後色素沈着の症例画像
虫刺症炎症後色素沈着

虫刺されが長引いたり、かきこわしたりすることで、メラニンが沈着して黒っぽい色が残った状態


■ニキビ炎症後色素沈着の症例画像
ニキビ炎症後色素沈着

ニキビ跡の茶色っぽいシミ。ニキビの炎症が長引いたことが原因でできる色素沈着


■接触皮膚炎炎症後色素沈着の症例画像
接触皮膚炎炎症後色素沈着

強いかぶれの炎症後に残った茶色のシミ


■熱傷炎症後色素沈着の症例画像
熱傷炎症後色素沈着

ヤケド跡の茶色のシミ。ヤケドやケガが深いと、このような色素沈着を起こしやすい

虫刺され跡・ニキビ跡の予防法

虫刺され、ニキビ、ヤケド、湿疹などは、いずれの場合も炎症が長引くほど色素沈着しやすくなります。適切な治療をして早めに治すことが、色を残さない秘訣です。

虫刺されや湿疹の場合はかゆみが強いですが、かきこわしてしまうと治りが遅くなりますし、かくことで傷になり、より色が強くなります。まずはかきこわさないよう注意して、炎症を抑えるステロイドの塗り薬を使って早めに治しましょう。

ニキビの場合には赤いポツポツができて治すのが遅くなると、そこに茶色のシミが残ってしまいます。ニキビの場合も皮膚科のクリニックでもらえる薬を適切に使い早めに治すことで、茶色のシミや、盛り上がったり凹んだりするニキビ跡ができるのを予防できます。

ヤケドやすり傷の場合も、細菌が入らないようにして早めに治療することで色が残るリスクを下げることができます。感染して治りが遅くなれば、その分色が残るリスクが増えてしまいます。跡をできるだけ少なくするためには早めに皮膚科を受診して適切に治療してもらうことが肝心です。
 

虫刺され跡・ニキビ跡の治し方・消す方法・治療法

色素沈着を起こさないためには原因をできるだけ早く治療し、炎症が起きる期間を短くすることが大切ですが、それでも色が残ってしまうことはあります。その場合には、まず日焼けを避けましょう。顔の場合は日焼け止めを欠かさないようにし、体の場合は衣類で覆って日光の影響を避けましょう。日が当たるとシミの部分はさらに濃くなってしまいます。

炎症後色素沈着は6カ月~1年ほどで自然に薄くなっていきますが、数年続くこともあります。ヤケドやケガ、ニキビや虫刺されの跡の色素沈着を早く治したい場合や6カ月以上経っても薄くならない場合には皮膚科のクリニックを受診してみましょう。炎症後色素沈着は医療保険で処方できる薬では治療が難しいので、自費での治療がメインになります。

完全に色を消すのは難しいですが、顔のシミ治療に使われている塗り薬が炎症後色素沈着にも効果があることが多いです。皮膚科のクリニックで保険外治療でよく処方されているハイドロキノンとトレチノインを数カ月塗ると、色が薄くなることがあります。私も実際に処方することがよくあり、根気よく何カ月か塗ると、ヤケド跡の茶色いシミに効果がみられることが多いです。ハイドロキノンはメラニンが作られるのを抑える塗り薬、トレチノインはメラニンが外に排出されるのを早める塗り薬です。短期間では効果がないので3~6カ月程度、長く塗り薬を続けてください。顔に塗ることが多いハイドロキノンとトレチノインですが、腕や脚などほかの部分に塗っても問題ありません。トレチノインは塗り始めの1~2週間は赤くなる、ガサガサするといった刺激性があることが多いので、保湿してからその上に塗るなど注意は必要ですが、塗っている間に次第にその刺激性は和らいでいきます。

その他にも、保険適応外ですがニキビに処方されることのあるアゼライン酸も炎症後色素沈着のシミに数カ月使うと効果があると報告されています。

ビタミンC、トラネキサム酸といった女性の代表的なシミである肝斑によく使われる内服薬も炎症後色素沈着にも効くという報告があり、塗り薬と一緒に使うことがあります。
 

ニキビ跡や虫刺され跡治療にピーリングやレーザーは効く?

ニキビや毛穴の治療に使うことのあるピーリングですが、グリコール酸やサリチル酸、乳酸を用いたピーリングが炎症後色素沈着にも有効なことがあります。皮膚表面の代謝をよくして色素沈着の排出を早めることで、炎症後に皮膚表面に沈着したメラニンを除去します。

炎症後色素沈着に対してレーザー治療を行うことも有効なことがあります。レーザーを強く皮膚に当てるとそれ自体で炎症が起きて悪化する場合があるので、レーザートーニングという弱くレーザーを当てる方法を使うことが通常です。弱めにレーザーを当てるので1回での効果は期待できませんが、2~4週ごとに5~10回程度治療を続けると効果が期待できます。経験上もレーザー治療で色素沈着は軽減しますが、レーザーを用いても完全に色を消すことは難しいです。
 

炎症色素沈着についてのまとめ

数カ月で徐々に薄くなっていく炎症後色素沈着ですが、一度できると場合によっては年単位で色が残ってしまうのでやっかいです。虫刺されやニキビ、湿疹の跡に黒い色を残さないようにするにはなるべく早く治すことが一番の対策になります。かきこわさない、皮膚科を早めに受診する、薬を毎日塗る、という習慣を心がけ、皮膚の炎症が長引かないようにしましょう。それでも炎症後色素沈着になってしまった場合には、塗り薬、飲み薬、ピーリング、レーザー治療といった方法が有効なことがあるので、皮膚科に相談してみてください。

【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます