歯・口の病気

虫歯治療・歯周病治療で時間がかかる状態ワースト5

【歯科医が解説】多くの人がなるべく短い回数と時間で済ませたいと考える歯の治療。しかし虫歯も歯周病も、状態によってはどうしても治療時間が長くなってしまうものがあります。一般的な臨床でよく見られる、治療に時間がかかってしまうケースについて解説します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

虫歯・歯周病治療に時間がかかってしまうケースとは

歯の治療の機能回復

歯の治療は病気の治療と機能の回復の2本立てで考える必要がある

回数も時間もかかりがちな歯の治療。通常の治療でも、まずは腫れや痛みなどの不快な症状の原因となっている部分を治し、次にかぶせものや入れ歯などを使って、噛む機能や、前歯部分などの見た目の審美性を再現する、という2本立てで治療が必要となります。しかし中には、特に治療時間が長くかかってしまうものがあります。できれば避けたい、治療期間の長くなってしまうケースについて解説します。

第5位 抜歯が必要なほど悪化した虫歯・歯周病治療

歯が虫歯でひどく溶けていたり、グラグラして気になっているのに、時間がかかる治療になりそうだから今は忙しくて行けない……と、歯科へ行かずに放置している方はいませんか? 実は治療で改善が難しいような末期の虫歯や歯周病の場合、治療時間は短くて済みます。

それは「抜歯」が治療の中心となるためで、歯を修復して再利用するそのほかの治療法に比べて、早く治すことができるのです。

抜歯での治療は、1回で1本、あるいは数本まとめて抜歯するできるケースもあります。抜歯は最終手段ですが、治療して治すよりは手間と時間がかからないものなのです。ひどすぎる状態は早く解決することもできるので、他の歯に影響が出るほど放置することがないよう、まずは歯科を受診しましょう。
 

第4位 神経を取った歯の症状再発による再治療

歯の根の病気の症状で多いのが、歯と少し離れた部分の歯茎にオデキのようなものができ、膨らんだり、引っ込んだりを繰り返す状態です。臨床の経験では、このような症状を繰り返している方は、以前に一度歯の神経を取る治療などが行われていることが多いようです。

過去の治療で、きちんと治療しても取り除けないような入り組んだ内部神経の一部が残るなどしており、それが少しずつ炎症を起こしてしまっているケースです。この場合、治療後に数年から数十年かけてゆっくりと炎症が起き、オデキのようなものになることがあります。

治療は、被せものや詰めものを全て取り除き、歯の内部のごくわずかな汚れを綺麗にする必要があります。しかしすでに歯の内部の形が修正されていることが多く、再治療の難易度は最初の治療よりも高まります。そして汚れた部分を発見するのが非常に困難なことが多いのです。

一度も歯の内部を治療していない、初めて歯の神経を抜く治療を行う時の方が、治療時間も短く、術後の成功率も高い傾向があります。根の再治療は時間がかかるのが基本です。
 

第3位 歯周病と虫歯が進行した歯

初期の歯周病であれば、歯石を取り除くだけで完治するため、比較的簡単に治癒することができます。虫歯も同様で、初期であれば小さく詰めるだけで完了です。しかしあるラインを超えると急に治療回数が増える傾向があります。目安になるのは次の状態です。

■歯茎を押すと白い膿が出てくるような歯周病
歯茎を指で押した時に歯の周囲から白い膿が出てくるような状態。すでに歯石が歯の周囲のポケットと呼ばれる溝の奥の方に入り込んでいるケースが多いです。特に奥歯は、根が3本に枝分かれしていることが多く、枝分かれの分岐部分になる歯石は、取り除くのに時間がかかります。

■ズキズキ痛むような自覚症状がある虫歯
すでにズキズキ痛むなどの自覚症状がある場合には要注意。歯の神経にまで虫歯が達している可能性があります。虫歯の治療では、歯の神経を治療するかどうかで、治療回数が大きく変わります。

さらに「虫歯と歯周病」が両方ともこのボーダーラインを超えている場合、それだけ治療が長くなります。
 

第2位 虫歯や歯周病の「本数」が多い

単純なことですが、治療が必要な本数が多ければ多いほど、治療時間と回数がかかります。歯は上下で合計28本あります。単純に1本に5回の治療がかかる状態になっている場合、治療が必要な歯が10本あると、50回もの治療回数が必要となってしまうためです。週に1度、治療を受けたとしても約1年もかかる計算になります。

歯を残そうとしたり、保存していこうとすればするほど、必要な工程が増え、治療回数や治療時間が増えていきます。もし歯をできるだけ残したいと考えるのならば、悪くなってから治療を始めれば、それだけ時間と治療費がかさむということです

歯の治療で回数と時間を最小限にするために必要なのは、やはり、早期発見と早期治療です。特に年齢と共に多くなるのが、歯や歯茎にすでに問題はあるのに抜歯するほどではない状態です。かかりつけの歯科医院で、定期的な検診とチェックを行うことで、大きなトラブルになる前に治療することができます。
 

第1位 虫歯・歯周病が原因で、骨髄炎まで進行した炎症

骨髄炎とは、虫歯や歯周病の細菌が骨にまで感染してしまっている状態です。虫歯や歯周病の細菌は、歯の表面や内部で増殖すると、骨が溶けるなどして骨への感染が起こらないように防御します。そのため、歯を抜歯するだけで、それ以上の感染が起こらず治癒に向かいます。

よく見かけるのは、ブリッジなどの土台の歯。抜歯をすると入れ歯になってしまうため、強い炎症が起きているのにもかかわらず、抜歯を引き延ばしているような状態で、多く見られます。数ヶ月から数年間も我慢し続け、ついに腫れや痛みに耐えられなくなってから受診して、抜歯になるケースがあります。

通常の抜歯と違うのは、通常なら抜歯後はそのまま治癒に向かいますが、骨髄炎になってしまうと抜歯した穴から膿が出続け、いつまでたっても痛みが改善されない点です。こうなると細菌が骨まで達して感染しているため、抜歯では治らないのです。

感染した部分の骨を外科的に取り除く手術をしたり、細菌を殺す抗生物質の服用をしたりして、完治までに数ヶ月から数年かかることもしばしばです。いずれの場合も、早期発見・早期治療が第一。日常的なケアと定期的な検診を習慣づけるのが、結果的に歯科に通院する時間を短縮するコツなのです。
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