企業のIT活用

コロケーションとは?ハウジングとの違いと変遷

自社サーバーを外部のデータセンターに預けてしまうサービスを「ハウジング」といいますが、「コロケーション」ともいいます。本来、「コロケーション」とはNTTをはじめとする通信事業者の局内に他の通信事業者の機器を設置することを意味しましたが、その定義が変わってきました。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

サーバ管理が大変なら、ハウジングサービスを利用する

サーバ管理が大変なら、ハウジングサービスを利用する

サーバー管理を外部委託するハウジング

自社でサーバー管理をする場合、耐震・耐火といった防災対策、セキュリティ対策のための入退室管理など、「サーバーを守るコスト」がけっこうかかります。
ストレージ容量が足りなくなりなったからといって業務を止めるわけにはいきませんから、担当者が休日でも出社して増設対応し、場合によっては電源工事も必要となるでしょう。

担当者の負荷が大きくなってきたら、面倒なサーバー管理を外部委託する方法があります。これが自社サーバーを外部のデータセンターに預けるハウジングサービスです。

同じような形態にホスティングサービスがあります。こちらは事業者のサーバーを借りる形態で、レンタルサーバーとも呼ばれます。ホスティングサービスではサーバーの所有権はデータセンター側にあります。ハウジングサービスは事業者にお金を払ってデータセンターの環境を借りる形で、運用は自社で行い、サーバーの所有権も自社にあります。

  コロケーション ハウジング ホスティング(レンタルサーバー)
内容 サーバー設置スペースを確保すること 自社サーバーをデータセンターに預けること 事業者のサーバーを借りること
運用 自社 自社 データセンター
サーバーの所有権 自社 自社 データセンター

コロケーションの始まり

現在、ハウジングコロケーションは同じような意味で使われていますが、以前は違っていました。本来、コロケーションとは「NTTなど通信事業者の局内に他の通信事業者の機器を設置すること」を意味しました。

1985年、”通信の自由化”が行われ、日本電信電話公社(電電公社と呼ばれていました)が現在のNTTとなりました。独占業務は崩れ、新規参入が認められるようになったのです。庶民にとっては黒電話しかなかったのが、カラフルな電話を自由に買うことができるようになりました。

電気通信事業法が制定され、第一種電気通信事業者と第二種電気通信事業者が定められます。第一種は自前の通信回線をもつ事業者であり、「第二電電」「日本テレコム」「日本高速通信」「東京通信ネットワーク」が名乗りをあげます。

第二種電気通信事業者とは、「第一種電気通信事業者から回線を借りて通信事業サービスを行う事業者」のことです。第二種電気通信事業者はNTTなどの回線を借りますので、NTTの局内に機器を持ち込んで接続することになります。これがコロケーションです。

やがてコロケーションは「スペース貸し」の意味となる

インターネットではプロバイダが個々に接続すると大変なので、1ケ所に効率よく相互接続する仕組みとして「IX(インターネットエクスチェンジ)」が作られます。

日本最初のIXは1994年に岩波書店の地下に設置されましたが、ここに各プロバイダーがルーターを設置してハブで相互接続しました。岩波書店を使ったのは実験という位置づけで始めざるをえなかった、という大人の事情があったからです。これもコロケーションの一形態です。岩波書店は通信事業者ではありませんが、本来、コロケーションとは通信事業者同士でできた言葉です。

ADSLが流行り出した頃、ADSL提供事業者はNTTの施設内に機器を設置する必要があり、設置する場所をコロケーション・スペースと呼んでいました。Yahoo! BBが大量にこのスペース申請をしたこともあり、他の事業者とでコロケーション・スペースの争奪戦が起きるようになります。このあたりから、コロケーションは「スペースを確保すること」という意味に変わってきました

データセンターの中にはハウジングを「ラックを貸すこと」としコロケーションは「好きに使えるスペースを貸すこと」という意味合いで使っているところや、「個室貸し」をコロケーションと呼んでいるところなど、それぞれの言葉の定義は一律ではありません。

フィンテック時代のコロケーションとは証券取引所にサーバを置くこと

証券取引所内にサーバーを設置するコロケーションも

フィンテック時代に改めて注目されるコロケーション

株式市場ではシステムトレード(自動売買)が目立つようになっています。プログラムが為替レートや出来高などに応じて自動的にトレードを繰り返す取引です。東京証券取引所では株式売買システム「アローヘッド」の注文処理を500マイクロ秒未満にしています。超高速株取引が東証全体の6割を超えるようになると注文を出すサーバーと証券取引所間の伝送時間が問題になってきます。

そこで登場しているのがコロケーションサービスです。

証券取引所のデータセンタに証券会社や投資者などのサーバを設置することで、注文処理を実現するサービスです。これで取引所の売買システムとダイレクトに接続でき、注文を出すまでにかかる時間は1000分の1秒単位に縮まっています。ヘッジファンドなどが、独自のプログラムを組み込んだアルゴリズム取引用サーバーをコロケーションスペースに設置し、日々高速売買を行っています。


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