ビットコイン/ビットコインの基本

ビットコインの分裂騒動とは何だったのか?

ビットコインがビットコインとビットコインキャッシュの2つに分裂しました(ハードフォーク)。今回の記事ではどうしてそのようなことが起こったのかと、その経緯についてご説明したいと思います。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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ビットコインの分裂騒動はビットコインの処理容量問題に起因する

大きなニュースとなったビットコインの分裂騒動!今回はその真相に迫ります!

大きなニュースとなったビットコインの分裂騒動!今回はその真相に迫ります!

まず、ビットコインは以前から取引容量の問題がありました。たとえば、大手クレジットカード会社は毎秒2000件以上を処理できるキャパシティーがあり、世界中の人が一斉に、その会社のクレジットカードを利用して決済しても遅延なく決済できるわけです。

ところが、ビットコインは仕組み上、毎秒6~7件しか処理できなかったのです。これでは、世界中でビットコインが利用されるようになった場合、決済が認められるまでに非常に長い時間がかかってしまう可能性(たとえば、決済するのに10分以上待たされるようになる)があるなど、クレジットカードのようには利用出来るようにはなりません。

処理容量を上げるには10分毎でまとめられる1ブロックのサイズ(1メガバイト)を引き上げるか、1取引あたりのデータ容量を小さくする必要があります。実はこれまでも1メガバイトのブロックサイズの引き上げが要求されてきたのですが、支持を得られず主流派にはならなかった経緯があり、引き上げを行うべきとしていた一派が存在していたのです。

Segwit(ビットコイン改善提案141号)とは?

その後、ビットコインのコア(主要)開発者によりSegwit(ビットコイン改善提案141号)という取引データサイズの圧縮(半分程度)のプログラムが提案されました。開発は完了し、ユーザーや事業者の多くは、より円滑な取り引きを実現するために実装(アクティベーション)を望んでいたのですが、ビットコインの取引を高速で承認し、一番先に承認に成功した企業(あるいは人)がビットコインを得る、マイナー(採掘者の意味)の一部が、Segwitを支持せずに、実装されませんでした。というのも、ビットコインの仕組み上、実装にはマイナーのハッシュレート(簡単に言うと、マイナーの承認するコンピューターのパワー)の95%が必要だったのです。

そこで、匿名の人物からBIP148(ビットコイン改善提案148号)が提案されました。これは、マイナー主導ではなく、ユーザー主導でSegwitを実装しようという提案です。具体的には、17年8月1日をもって、Segwitを全ユーザーに実装してください、という働きかけを行ったのです。

一時、どうなるか分からない危険な状態にあったビットコイン

ここで、大多数がSegwitに賛同すればまったく問題ないのですが、 Segwitへの賛同が半分を越えない場合、一時的にSegwitビットコインと従来のビットコイン(レガシービットコイン)の2つに分裂してしまう可能性があったわけです。

ちなみに、ユーザー主導でSegwitをアクティベーションしよう。ただし、それを承認しないマイナーが多い場合、ビットコインが2つに分裂する可能性がある。ということを短くまとめた言葉がUASF(USER ACTIVATE SOFT FORK)です。ユーザー主導で実装する(USER ACTIVATE)、そして分裂して2つが並列して存在する可能性ある(SOFT FORK)という意味です。ちなみに、FORKとは、分裂を意味して、SOFT FORKの対としてHARD FORK(完全に2つに分裂すること)があります。

さて、どちらのビットコインが生き残るか分からない中で、生き残らなかった方のビットコインの取り引きを取引所運営会社などが行った場合、最終的に当該期間のビットコイン取引を取り消されてしまう可能性があり、危険な状態にありました。この場合、取引所運営や取引を行ったユーザーが大きな損失を被る可能性があります。したがって、2017年8月1日はどちらになるか(どちらが生き残るか)の様子をみるために、取引を停止しますといった発表もなされ、大きなニュースになりました。

危険な状態が去り、安心感から急騰しているビットコイン

ところが結局のところ、このあやふやな分裂(SOFT FORK)は起こらず、完全な2つへの分裂(HARD FORK)が起こりました。これはまず、ビットコインを危険な状態から遠ざけようということで、7月21日にSegwit2xという、Segwitで取引データを縮小した上で1ブロックのサイズを2倍の2MBにするという内容(=BIP91(ビットコイン改善提案91号))で、8割のマイナー(正確にはマイニングプール)が合意しました。これでビットコインが分裂するリスクは無くなったのです。

そしてその一方で、マイナー(正確にはマイニングプール)最大手のビットメイン(ハッシュパワーの20%程度を握っていた)と一部がビットコインキャッシュという別通貨を8月1日誕生させると発表し、ビットコインからのスピンアウトを発表しました。ビットコインキャッシュはまさに前述の処理能力を強化したビットコインで1ブロックのサイズは8倍の8メガバイトで、さらに拡張の余地があるものです。

このハードフォークによって、ビットコインを持っていた人はビットコインキャッシュが付与される形になりました。理論上は、概ねハッシュパワー比率に応じて8:2で分裂されるため、損得はない(ビットコインキャッシュを貰える分、ハッシュパワーが下がるためにビットコイン価格が下がる)はずなのですが、2017年8月16日時点ではビットコインの価格が大きく上昇しており、保有している人は大きく利益が出ていることになります。
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