ストレス

不安や怖れを起こす「インナーチャイルド」の癒し方

気が付けば、いつも不安や恐れ、悲しみの感情にとらわれて、新しい物事に挑戦できない……。そんな自分に気づいたら、心に潜む「インナーチャイルド」の声に耳を傾け、自分の状態をチェックしてみましょう。インナーチャイルドの感情を癒しながら、人生のハードルを乗り越える心理学的ヒントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

ネガティブな感情は「インナーチャイルド」が引き起こす?

ハートを手にする男性

心に潜む「インナーチャイルド」は、あなたに何を呼びかけていますか?

勝負の瞬間や新しい人間関係に直面すると、一歩踏み出せずに臆病になってしまう。自分にはどうせ大したことはできないと思ってしまう、欲求や希望を抑え込んでしまう……。

心のどこかにこのような気持ちがあって、新しい物事や人間関係に躊躇し、実力を試す場面で尻込みしてしまうようなことはありませんか? もしそうなら、心の中に潜む「インナーチャイルド」が、あなたに何かを語りかけているのかもしれません。

インナーチャイルドとは、「傷ついた子どもの心」を表す心理学の言葉です。子どもの頃に感じた不安や恐れ、悲しみの気持ちが未消化のまま残存した自分の心の一部分です。

そもそも子どもはみな、楽しく自由に行動したいと思う心「ワンダーチャイルド」を持っています。しかし心の赴くままに行動していると、危険な場面に遭遇したり、大人から厳しく叱られたりして、ワンダーチャイルドがくじかれ、インナーチャイルドが育ってしまうのです。

「新たな挑戦」におびえるインナーチャイルド

インナーチャイルドは、誰の心の中にも潜んでいます。新しい出来事や人間関係、問題に遭遇するたびに、不安や恐れ、悲しみの感情が刺激され、私たちを新たな挑戦から引き離そうとします。

挑戦から距離を置けば、とりあえずの安心・安全は守れるでしょう。しかし、その判断は、「子どもの心」による判断(「前にも失敗したから」「だって怖いんだもん」など)です。「大人の心」で冷静に考えればさほど怖いことではなく、多少のリスクはあっても知恵を使ったり他者と協力をしたりして、乗り越えていけることが多いものです。

したがって、私たちが何かの行動を起こすたびに不安や恐れを感じ、ネガティブな未来を予測している場合、心の中のインナーチャイルドが過剰に反応し、行動にストップをかけているのかもしれません。

インナーチャイルドの原因追究にこだわらない!

では、インナーチャイルドはどうして大きく育ちすぎてしまったのでしょう?

ある人は、大人に叱られることがとても怖かったのかもしれません。またある人は、新しいことをやろうとするたびに、止められてきたのかもしれません。あるいは、いつも不吉な話を聞きながら、「おとなしくしているのが一番だ」と確信してしまったのかもしれません。しかし、「何が原因?」と考え続けることにあまり意味はありません。

もちろん、虐待のように子どもをわざと傷つけるのは絶対にいけないことです。しかし多くの場合、大人が叱ったり厳しくしつけたりするのは、子どもの命を守り、人間社会で困らずに生きていけるようにするためです。また、完璧な大人などいません。不意に取った行動が、思いがけず子どもに不安や恐れを与えてしまうこともあります。

それに、そもそもインナーチャイルドの原因を特定し、それを追究したところで、不安や恐れ、悲しみの感情が楽になるわけではないのです。

やってみよう! インナーチャイルドを楽にする言葉かけ

海岸で手を広げて立つ女性

インナーチャイルドの声に耳を傾け、優しく語りかけてみよう

インナーチャイルドの傷を癒すには、ヒーリング、カウンセリングなどさまざまな方法があります。ここでは、不安や恐れが高まった時に、その場でインナーチャイルドを楽にする一つのヒントをご紹介しましょう。

新しい挑戦や人間関係に直面した時、問題が生じた時に、不安や恐れ、悲しみが過剰に湧き出し、次のようにネガティブな方向にばかり考えていませんか?

・うまくいくわけない
・受け入れてもらえるわけない
・だまされるに決まっている
・失敗して傷つくに決まっている
・何もしない方がいい
・期待しない方がいい


もしそうなら、胸やお腹をなでながら、次のような言葉をインナーチャイルドに語りかけてみましょう。

・不安になってしまうんだね
・怖くてたまらないようだね
・もう苦しみたくないんだね
・傷つけられたらどうしようと心配なんだね


インナーチャイルドは、傷ついた子どもの心です。不安や恐れ、悲しみの感情でいっぱいです。傷ついた子どもに、「弱音を吐くな!」「もっと頑張れ!」という気持ちを向けたらどうなるでしょう? その子は頭が真っ白になって、その場で固まってしまうでしょう。

大切なのは、インナーチャイルドに優しい言葉をかけながら、その感情を認め、寄り添ってあげることです。そして、次のような言葉をかけて安心させてあげましょう。

・大丈夫。怖くないよ
・そこまで不安になるようなことは、現実には起こらないよ
・私がいつも一緒だから、安心していいよ
・解決できる方法はたくさんあるよ
・失敗しても、いつでもそこからやり直せるよ
・怖がることはないよ。一緒に進んでみよう

ワンダーチャイルドを育てて「人生の冒険」を楽しもう!

インナーチャイルドは、子どもなりの未熟な心で、自分の限界や世の中に対する捉え方を決めてしまいます。これを「幼児決断」と呼びます。この幼児決断は多くの場合、現実に即したものではありません。子どもっぽい感情のまま世の中におびえ、現状にしがみつこうとしているのです。

こうしたインナーチャイルドを癒し、勇気を与えていける人こそ、「成長した自分自身」です。

私たちは、成長する過程でたくさんの知恵を身につけ、他者と協力しながら困難を解決してきました。それらを一つひとつ思い起こしながら、インナーチャイルドと一緒に目の前のハードルを乗り越えていきましょう。

そして、乗り越えた後には、インナーチャイルドに次のような言葉をかけてあげましょう。

・ほら、できたね!
・次も一緒に挑戦していこうね
・君には乗り越える力がある!


こうして目の前のハードルをインナーチャイルドと一緒に一つひとつ乗り越え、そのたびに声をかけ、勇気づけていきましょう。すると、おびえるインナーチャイルドは少しずつ落ち着き、自由で楽しい子どもの心「ワンダーチャイルド」がむくむくと育ってきます。

そして、このワンダーチャイルドの心で冒険を楽しみながら、「大人の心」で現実の課題を冷静に吟味し、合理的な解決をしながら進んでいきましょう。すると、自分の人生を楽しみながら開拓し、冷静さを保ちながらも、新しい可能性に挑戦する人生を送ることができるようになるでしょう。
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