田舎暮らし/田舎暮らし・スローライフ情報

生活拠点なし!ITを駆使するノマドワーカーな暮らし

オフィスを持たない、場所を選ばない、雇われない。を実践する「ノマド・ワーカー」が、脚光を浴びています。果たして、ノマドは地方暮らしでも可能なのか?今回はその実態と可能性を探ってみます。

堀江 康敬

執筆者:堀江 康敬

田舎暮らしガイド

旅人のように暮らしを楽しみ、仕事をこなすことが可能に

オフィスを持たない、場所を選ばない、雇われない、を実践する「ノマド・ワーカー」が増えてきています。ノマド(Nomad)とはもともと「遊牧民」という意味。今やたいていの場所でインターネットは繋がります。決まった住居を構えずとも、旅人のように暮らしを楽しみ、仕事をこなすことが可能になってきました。

漠然とした田舎への憧れじゃなく、暮らし全般を見据えた、新しいスタイルの移住を実践し始めた若い世代。選び取るのは慣れ親しんだ街?地方の新天地?何処にもこだわらない遊牧民?あなたらしい移住スタイルの参考にしてください。

かつての日本の文豪はノマドワーカーだった

日本の文豪はノマドだった

日本の文豪はノマドだった

「蟹工船」で知られる小林多喜二ゆかりの宿、福元館。離れの部屋で多喜二が約1ヵ月滞在して執筆に没頭しました。熱海の起雲閣で「細雪」の執筆に着手した、谷崎潤一郎。この熱海を代表する宿は、山本有三、志賀直哉、太宰治、舟橋聖一、武田泰淳など日本を代表する文豪に愛されたことでも知られています。

川端康成が「伊豆の踊子」を湯ヶ島温泉の湯本館で、志賀直哉が「城の崎にて」を城崎温泉の三木屋で、三島由紀夫が「獣の戯れ」を伊豆の宝来屋で、そして井上靖が「ある落日」を蒲郡の常盤館でと、文豪はよくお気に入りの旅館で執筆していました。

文豪たちは一度の滞在で数ヵ月も泊まり込んだり、一つの作品を仕上げるためになんども宿に通ったというエピソードも残っています。彼らが愛して止まなかった温泉宿や旅館には、きっと魅了されるだけの理由があったはずです。

暮らし慣れた街を離れることでリフレッシュされ、周囲の環境や地元の人々から得られるインスピレーションから発想も広がっていく。非日常的な体験からの刺激を、創作活動に活かしていたわけですね。まさに、ペンを持ったノマドワーカー!

仕事と暮らしのバリアを取り払ったライフスタイルの時代へ

仕事=生活のライフスタイル

仕事=生活のライフスタイル

インターネットさえ繋がれば、仕事・生活の場の自由選択ができる可能性を示唆してくれるノマド・ワーカーたち。会社に行く必要がないので自分のペースで仕事ができる。

そしてなにより、田舎の新鮮な空気と穫れたての食材を味わいながら、夏は涼しい北へ、冬は暖かな南へ。住居を定めず地方から地方へと渡り歩く……これはもう、憧れるのは当然ですね。

とまぁ、ノマドワークはメリットばかりのようですが、これらを実現するためのポイントは、まずインターネットを使いこなせる十分なスキルがあること。そして、会社を辞めることになるので、それまでの社会的なバックアップがなくなるわけですから、仕事も生活も自分自身でコントロールできる自己管理能力と、どんな些細なことでも自己責任でやるということが必須条件になってきます。

つまりノマド・ワークを、仕事の面(ワークスタイル)だけではなく、自分・家族の暮らし方(ライフスタイル)としてトータルに捉えることが重要だと言えます。自分がしたい仕事を、その都度選べるクラウドソーシングのためのインフラの提供も始まっています。どうやら時代は、働くこととと暮らすことのバリアを取り払ったライフスタイルに向かっているようです。

まずは暮らし慣れた街でノマドワークを試してみよう

三種の神器で目指すノマドワーカー

三種の神器で目指すノマドワーカー

僕の若い友人Nクンは最新のデジタル機器を軽々と使いこなし、ノマドワークを実践しています。彼の仕事のパフォーマンスを上げるためのツールは、iPhone+Mac Book+Gmailのノマドワーカーのための三種の神器。

電話・メール・ソーシャルメディア(Facebook、Blog、Twitterなど)といった連絡手段をキープして、カレンダー・アドレス表・タスク管理といった手帳(既に懐古的なヒビキですな)機能のクラウド化と、ノマド的な作業環境を実現しているわけですね。

実は本記事も、地元の図書館にiPadとスマートフォンを持ち込んで執筆しています。広い窓からは緑の木々が臨め、空調は快適。集中できる一人用のブースにはPC用のコンセントと読書灯がセット。ちょっとした気分転換には併設のカフェ…… とベストなコンディションで励んでおります。

三種の神器を持って、街中や近郊エリアでお気に入りのカフェを複数確保して、気の向くまま遊牧民(ハシゴですね)になってみましょう。行き交う人をウォッチングしながらアイディアを探し、プランを練り上げてみる。オフィスや自宅と比べて、快適だったり効率がアップしたら、あなたはノマドワーカーの素質ありといえますよ。

地方の自治体からノマドワーカー志望者にラブコール

全国の自治体が抱える一番の課題は、若者の人口流出と新しい雇用の創造です。田舎には仕事が無い、あっても選択肢が無い!それじゃぁ「若者が興味津々になるようなオモシロ仕事や職場を用意しよう」と、夢実現のためのムーブメントが、いくつかの地方都市でスタートしています。

まちの将来世代につなぐプロジェクトを推進する>>徳島県神山町

少子高齢化が進み、高齢化率は46%に上る、人口6000人余りの小さな町。四国で初めて全戸に光ファイバーを整備し、環境がガラリと変わりました。ワークライフバランスを考えるIT系のベンチャー企業がサテライトオフィスを開設したり、多種多様なクリエイター、これからの生き方を自分たちの手で作っていこうとしている人々が集まっている。

テレワークの推進で新たな働く場の創出を目指す>>宮崎県日南市

宮崎市南部にあり、1980年をピークに人口減少が続いており、2016年6月現在で人口約5万3000人。市内に雇用の場所が少ないことから、インターネットを通じて都会の仕事を受注できるクラウドソーシングに注目。テレワーカーからの各種相談に応じる支援体制を構築しつつ、2020年までにWebライターを100人養成を目指す。

地域はノマドワーカーを求めている

地域はノマドワーカーを求めている

50人以上のフリーランス移住達成を目指す>>鹿児島県奄美市

豊かな自然と独特の伝統文化に恵まれているものの、働き口が少なく若者の島外流出が続いている。デザインや記事、文書作成を個人がインターネットとパソコンを通じて請け負う、クラウドソーシングを導入。役所内に支援窓口を開設し、フリーランスが働きやすい島への変身を目指す。

ITを活用した在宅就労支援プロジェクトを推進中の>>長野県塩尻市

1996年に全国初の会員1万人規模の市営プロバイダ事業を開始。市運営のデータセンターを持つなど、IT活用に力を入れる自治体として知られる。データ入力やWeb制作、チラシ制作、写真のデジタルアーカイブなどの業務を中心した在宅就労支援を実施。現在はクラウドディレクターを育成・配置することで、安定的に仕事を受注できる体制づくりを目指している。

ノマドワーカーを地元で育成して、その若者パワーで今後の地域社会の活性化に貢献してもらおうという試み。情報受発信のためのインフラが整えば、地方で暮らし・働くというスタイルも、これから一気に拡大していくのではないでしょうか。

都会ドップリじゃ息が切れるし、田舎ザンマイじゃ物足りない。目指すのはシャッフル・ライフ!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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