「カビの季節だから、お掃除ガンバらなくっちゃ!」

掃除

こまめな掃除で、カビを生やさない! なのに・・・・・・

お風呂場がカビだらけになったらヤダもんね。そう思って日々せっせと掃除している。毎日の入浴後にも、すかさず換気扇を回すし、24時間回しっぱなしにもするし、床にも水が溜まらないように拭いているし、シャンプーやボディソープを置きっ放しにしないように考えて、工夫している。

それなのに、どうして……? 確かに、あの「黒いカビ」はあまり見えない……んだけど、お風呂場の床や壁に、オレンジ色っぽい、ピンクっぽい、変な汚れのようなシミのようなものが出てきてしまう……。

これ、やっぱり「カビ」なの?

最近、そんなお悩みをよく聞きます。じっさいわが家のお風呂場にもちょくちょく出現しているんです、このピンクっぽい、オレンジっぽい、なんとなくヌメる変なやつ
お風呂場床のピンク汚れ

お風呂場床のピンク汚れ (画像提供 花王株式会社)

私は長らく、これは「カビそのものではないけれども割合カビに近い仲間の酵母」なのだと思っていました。

でも、実は……この「ピンクっぽいヌメる汚れ」のほとんどを構成しているものって、「カビ」とも「酵母」とも違う生物。

「細菌(バクテリア)」だっていうことが、近年になって分かった(※1)んです。知らなかった……。

というわけで、この「細菌」による「ピンク汚れ」に詳しい花王株式会社の方にお話を伺いつつ、記事としてまとめることにしました。お風呂場掃除に役立てていただければと思います。


カビと細菌(バクテリア)って何が違うの?

「カビ」も「細菌(バクテリア)」も大きくは「微生物」(肉眼で見ることのできない小さな生物)のくくりですが、立ち位置はだいぶん異なります。

微生物の分類

微生物の分類(藤原作成)


じつはカビと細菌、どちらが先に地球上に現れたかというと、細菌の方がカビよりも30億年ほど前に登場したといわれています。つまり、「細菌(バクテリア)」が30億年もの時間をかけて「進化」したところに「カビ」があるのです。

ということもあって、カビは多細胞生物ですが、細菌は単細胞生物というのが、まず決定的な「違い」。ただ「大きさ」としては、カビが2~10μm(マイクロメートル)(※2)、細菌が0.5~5μmとそう大差はありません(微生物だけに)。

「カビ」と「細菌(バクテリア)」の違いをふまえないでは、それらによる害や対処法を考えることはできません。カビが死ぬ環境でも生き残る細菌がいたり、細菌に効いてもカビには全く効果のない薬剤があったりするからです。


「ピンク」の正体、その名は「メチロバクテリウム」

メチロバクテリウム

メチロバクテリウム (画像提供 花王株式会社)

この「ピンクっぽいヌメる汚れ」。一部には「赤色酵母」も見られますが、その大半を占める「ピンク」の正体は「メチロバクテリウム」という細菌(バクテリア)の一種だということが実態調査の末に明らかになりました。

でもなんでこんな面妖なものが、我が家などのお風呂場に生え?(殖え?)てしまうのでしょう。

じつは「メチロバクテリウム」自体は、そう珍しい生き物ではありません。正体はよく分かっていなかったながらも、洗面所やキッチンなどの、水道の蛇口周辺、シンクの排水口、トイレの便器の喫水線(いわゆるサボったリング)、また歯磨き用のコップや、歯ブラシ立て、ペットの水入れなどにも発生していることに(※3)思い当たる節のある方は少なくないのでは。

「水アカ」や「赤カビ」のような、ざっくりした呼ばれようだったこのピンク汚れ、「メチロバクテリウム」による汚れですが、よく見かけるものだけに、その発生条件も、ごくありふれていたりします。主だったものは「水分」「栄養」「温度」ですから、カビともほとんど被っています。

ただ、「カビ」と決定的に異なるのが、「乾燥に極めて強い」という特性です。

あの「ヌメリ」(バイオフィルム)が乾燥から細胞をガードし、かつ「ピンク色」に見せる細胞内の色素「カロテノイド」が細胞自体を強化、防御していると言われます。加えて、一般的な洗剤を始め、カビすら殺す塩素系薬剤や、塩化ベンザルコニウム、紫外線や過酸化水素などにも殺菌抵抗性を示しています。薬剤に対しても大変強力なのです。
水はけのいい床にもピンク菌が

水はけのいい床にもピンク汚れが(画像提供 花王株式会社)


ですから、「カビ」を退治したお風呂場に「ピンク汚れ」だけが殖えるのもある意味、道理なのですが……やっぱり、何とかならないものなのでしょうか。


「ピンク汚れ」は、こう落とす!

この「メチロバクテリウム」に対しては、60度以上の加熱処理による殺菌効果が認められています。先の「コップ」でも、「歯磨きコップ」には見られても、コーヒーなど入れるマグカップなどには見られないのは、この点によるものだと思われます。

お風呂場も60度以上のお湯で洗えば殺菌できるかも……? でもやけどの恐れもあるので、あまり現実的ではないかもしれません。

そしてもうひとつに、「ピンク汚れ」対応の除菌剤を配合した市販の浴室用洗剤を利用するという方法があります。実験により、ある種の界面活性剤とアルコールを加えた洗剤の効果が認められたことから、日常の掃除の中でこの洗剤での清掃を行うことで、除菌され、その後のピンク汚れの発生が抑制されるようになるのです。

浴室の床や排水溝からは、「メチロバクテリウム」以外の細菌、大腸菌や黄色ブドウ球菌、緑膿菌なども検出されていますが、この除菌剤はこれらに対しての効果も発揮するそう。

「カビ対策はしているのに、なんとなく不潔っぽい」お風呂場に悩んでいる方は、こういった洗浄剤を取り入れてみるのも一手なのではないでしょうか。


取材協力・画像提供 花王株式会社

※1)『実環境におけるバイオフィルムの構造解明と制御
』http://www.jseb.jp/jeb/14-02/14-02-125.pdf

※2)1mm=1000μm
※3)『浴室に潜むピンクモンスター
』http://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9404/9404_biomedia_6.pdf




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