食と健康

減塩レシピの必須知識!「うま味」を引き出すコツ

【管理栄養士が解説】甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の5つの基本味。この中で「うま味」という味の説明は難しいものです。しかし、うま味を上手に使えば、減塩料理も格段に美味しくなり、しっかり継続できるようになります。ダイエットや介護食にも大きなメリットのあるうま味の魅力と活用法について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

うま味とは

出汁をとる食材

出汁に多く含まれる「うま味」。うま味を上手に使うと健康的な食生活ができます。

「うま味」は5つの基本味の1つ。化学名では、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、コハク酸などが挙げられます。

「うま味」と一口に言っても色々な種類があり、グルタミン酸を含む「アミノ酸系」イノシン酸やグアニル酸などを含む「核酸系」、コハク酸などを含む「有機酸系」に分けられます。

うま味の多い食材は?

うま味はさまざまな食材に含まれています。日本人になじみの深いところでは、
  • カツオ節やサバ節、煮干しなどのほか魚や肉類:イノシン酸
  • 昆布やトマト、タマネギ等の野菜類:グルタミン酸
  • 干ししいたけなどきのこ類:グアニル酸
  • 貝類:コハク酸
といったところでしょうか。

他にも、世界を見渡してみると、ナンプラーや魚醤などの魚、テンペ、味噌などの豆を醗酵させたもの、トマトケチャップなどに加工されるトマトからも、うま味が引き出されています。

つまり、うま味はさまざまな食材に含まれており、食材の持つうま味を上手に引き出すことが、料理を美味しくするコツと言っても過言ではないのです。

減塩レシピにも活用! うま味を上手に使うコツ

うま味にはいくつかの種類があることは上記で説明した通りですが、実は複数のうま味を組み合わせると、「うま味の相乗効果」によって、さらにおいしさがアップすることも、ぜひ覚えていただきたいことです。

うま味の相乗効果の代表的なものは、野菜類に多いグルタミン酸と魚肉類に多いイノシン酸の組み合わせ。和食なら「昆布+カツオ節」、洋食なら「タマネギ、にんじん、セロリ+牛肉」といった塩梅。一番おいしいのは、グルタミン酸:イノシン酸=1:1になるときと言われています。

そして、うま味を濃くすることによって、味を濃く感じることができます。減塩食は味気ないと感じる人が多いと思いますが、食塩を減らす代わりにうま味をしっかりと活用すれば、減塩した料理もおいしくすることができます。減塩料理だからと単純に食塩の使用量だけを減らした減塩レシピでは、味気ない食事を摂ることにもなりかねず、長期にわたって続けることは難しいでしょう。「うま味」を上手く使っておいしい減塩食を継続することが大切です。

そのために利用しやすい調味料ももちろんあります。うま味を上手に使った調味料の代表例と言えば、「煎り酒」でしょう。

江戸時代に使われていた醤油の前身とも言える調味料である煎り酒は「簡単・減塩・美味!夏におすすめの調味料「煎り酒」記事でも詳しくご紹介しましたが、カツオ節と昆布の出汁に梅干を加えてうま味を上手に生かした調味料です。

ぜひ、うま味を上手に活用して減塩してみてください。
出汁をとっている鍋

出汁を上手に使って味付けすれば、薄味でもおいしく感じます


うま味活用には嬉しいダイエット効果も?

また、うま味活用のメリットは減塩食の継続がしやすくなることだけではありません。うま味を上手に使うと、ダイエット効果も期待できるのです。

うま味の効いた食事はおいしいので、つい食べすぎてしまいそうな印象がありますが、うま味は食事の満足感をアップさせるため、食べすぎを防ぐことができ、ダイエット効果が期待できるという研究結果があります(参考:“ウマい和食”でおいしく痩せるコツ「うま味」には食欲を抑える作用がある 海外で和食が注目される理由)。

この理由としては、「「甘いものは別腹」は本当!?感覚特異性満腹感とは」記事でも説明しましたが、5つの基本味で「不足している」と感じる味があると、別腹が起こるのです。そのため食事に「うま味」をしっかり含んでいないと、食事の満足感が得られないのではないかと考えられます。

まだまだある「うま味」の健康効果

高齢者は「味は分かるけど、おいしくない」と言う時があります。誰でも、おいしいと感じなければ、食欲は沸かないものです。食欲が沸かないと食事量が減り、食事量が減れば筋肉量も減り、次第に動けなくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。

高齢者の「おいしくない」は、うま味を上手く感じることができなくなっていることが原因であることも少なくありません。さらに、「おいしくない」と訴える高齢者の体をよく調べてみると、唾液の分泌が減っていることもあります。唾液の分泌が少なくなると、「うま味」を感じにくくなると言われています。

逆に唾液の分泌が増えると「うま味」を感じやすくなるともいわれています。そのため、唾液分泌が促進されると、味覚障害が軽減されることがあります。さらには、うま味を濃くすることで唾液の分泌を促進すれば、味覚障害が軽減され、食欲が沸くこともあります。

実際、私が勤務している病院でも調理師さんに食塩を控える代わりに、出汁を濃くして欲しいとお願いしています。ありがたいことに、患者様からも味付けについて高評価をいただいています。手前味噌ですが、他院から転院してきて口あたりのよい飲み物以外、口にしなかった患者様が当院の食事を食べてくださるのでご家族に喜んでいただいたことも一度や二度ではありません。

実臨床での経験からも、出汁を濃くすることの効果は大きいと思います。

身体にさまざまなメリットをもたらす「うま味」。ぜひ、食卓に上手に取り入れて健康でおいしいご飯を食べ続けていただきたいものです。
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