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憧れの年収1000万円、片働きだと家計の危機?

「年収1000万円あれば、専業主婦(夫)でも、家計は大丈夫!」と思われがちですが、年収1000万円超えの専業主婦(夫)世帯ほど、家計の危機が潜んでいるのです。今回は、世帯年収1000万円のフルタイム共働きと片働きの家計について、統計データから分析してみました。

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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理想の結婚相手は、年収1000万円!?

理想の結婚相手、憧れの年収1000万円、家計は安泰?

理想の結婚相手、憧れの年収1000万円、家計は安泰?

かつて、理想の結婚相手として、「3高」(高学歴、高収入、高身長)がもてはやされた時代がありましたが、もはや死語と言っても過言ではないでしょう。ガイド平野が、ある大学の講義で学生に、「3高って知っている?」と聞くと、ほとんどの人は「知らない」と答えました。「いくらぐらいが高収入だと思うか?」と尋ねると、なかなかイメージが湧かないのか、「500万円?」、「600万円?」と答えはバラバラです。けれども、「1000万円」と聞くと、「それだけあれば、凄いなあ!」と、誰もが憧れる金額のようです。

「平成27年分民間給与統計実態調査」(国税庁)によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与(年収)は、420万円(男性521万円、女性276万円)で、そのうち、年収1000万円超の人の割合は、男性6.8%、女性0.8%とのことです。年収1000万円は、憧れの金額だけれども、実現するには、相当の努力が必要と言えるでしょう。

■年収1000万円超えの片働き世帯の夫のつぶやき

「年収1000万円の高収入の人であれば、お金の悩みなどないでしょう?」と思われるかもしれませんが、実際は、年収1000万円付近の片働き世帯の方ほど、家計に関する悩みごとは尽きません。例えば、「住宅購入を考えているのだけれど、現状、それほど貯金ができず、このまま購入してしまっても大丈夫でしょうか?」というケースの相談が意外に多いのです。実際に、現在の生活状況や、お子様の教育費、現在検討している住宅購入などをライフプランに落とし込んで、生涯のお金の収支を見てみると、途中で家計破たんしたり、老後の資金が思うように貯まらなかったりというシミュレーション結果になります。今はなんとかなるけれども、先を見通して考えると大幅な家計の見直しが必要になるのです。

シミュレーション上の話なので、実際にそうなるとは限らないのですが、その結果を見て、「ウチは正直、そこそこの年収はあると思うのですが、自分たちの家計がこんなに厳しいとは思いませんでした。他の人はどうしているのでしょう?」と、ため息混じりに質問されます。

■片働き年収1000万円と共働き年収1000万円の手取り額の差は?

年収1000万円には、片働きで世帯年収1000万円の場合と、夫と妻の共働きで世帯年収1000万円の場合があります。最近は、共働き世帯の方が片働き世帯よりも多くなっていますが、夫の年収が1000万円を超えると、片働きになるケースが比較的多いと感じています。ところで、世帯年収1000万円の片働きと共働き(世帯主500万円・配偶者500万円、世帯主600万円・配偶者400万円)の手取り額に違いはあるのでしょうか?

世帯年収1000万円undefined共働き・片働き手取り年収比較

世帯年収1000万円 共働き・片働き手取り年収比較


片働きで世帯年収1000万円の場合、手取り収入は約722万円、これに対し、共働き(世帯主・配偶者500万円)の場合は約771万円、共働き(世帯主600万円、配偶者400万円)の場合は約770万円で、片働きよりも約50万円手取りが多いという結果でした。

片働き世帯の場合、配偶者控除など、税制面で優遇されているというイメージを持ちやすいのですが、手取りベースで考えると、共働き世帯よりも、年間50万円、10年間で500万円、20年間で1000万円も少なくなるのです。

共働きと片働きで、支出が多いのはどっち?

同じ世帯年収1000万円でも、片働きの家計はジリ貧?

同じ世帯年収1000万円でも、片働きの家計はジリ貧?

世帯年収1000万円の片働きは、世帯年収1000万円の共働きよりも手取りが年間50万円違うことがわかりましたが、支出はその分抑えられているのでしょうか。 「平成26年全国消費実態調査」(総務省統計局)より、共働き世帯と片働き世帯で、世帯年収が1000万円付近の1ヶ月の家計支出を比較してみました(家計の支出としてイメージしやすいように、項目等を一部変更しています)。

共働き世帯は、配偶者の年収が400-500万円の世帯(平均世帯年収1040万円)を抽出しているため、フルタイムの共働きのイメージになります。片働きは、専業主婦(夫)世帯(平均世帯年収1086万円)です。世帯主年齢は、片働きも共働きも45歳前後となっていますが、世帯人員は、共働き世帯よりも片働き世帯の方が若干、多くなっているため、その分、支出が多くなる傾向があることを、少し考慮する必要があります。

■食費が多いのは、共働きと片働きどっち?
食費は、共働きの方が片働きよりも、外食や中食が多くなる傾向があるため、同じ世帯年収であれば多くなると思われがちですが、実際には、1ヶ月の支出額(共働き81686円、片働き98554円)で見ても、1人当たりの金額(共働き23677円、片働き26072円)で見ても、片働き世帯の方が多いという結果です。

下表には、食費の内訳は記載されていませんが、統計データを詳しくみると、調理食品(惣菜類)の支出額は、共働き世帯も片働き世帯もほとんど変わりません。外食費は、共働き(21366円)に対し、片働き世帯(25896円)で、意外にも片働き世帯の方が多いという結果でした。また、片働き世帯は、肉類などの食材料費が共働き世帯よりも多くなる傾向があり、食材にこだわって料理をしている様子がうかがえます。

■住居費が多いのは、共働きと片働きどっち?
便宜上、ここで表す住居費は、統計上の住居費に土地家屋借金返済を加えたものとしています。共働き世帯の65093円に対し、片働き世帯は80189円で、月に約1.5万円の差があります。その内訳として、土地家屋借金返済が、共働き45169円に対し、片働き59136円となっており、年収が高く、片働きになっている世帯は、マイホームの購入価格が高く、ローンの返済負担が大きくなっていると言えます。

たしかに、FP相談をしている中で、世帯年収が1000万円くらいであれば、片働き世帯の方が、共働き世帯よりも購入予算が多くなる(豪華な住宅を購入する)傾向があると感じています。住宅の条件として、立地条件に加え、グレードなどのステータス的な要素が加わるのかもしれません。

■教育熱心なのは、共働きと片働きどっち?
次に、教育費を見てみましょう。共働き世帯の教育費22261円に対し、片働き世帯は47447円で、倍以上の開きがあります。教育費は世帯人員や、子どもの年齢によって大きな差が出るので、一概に比較することができません。片働きよりも共働きの方が晩婚・晩産になりやすく、世帯主の平均年齢が同じでも、子どもの年齢が違うのかもしれません。けれども、相談をしている中で、お子様の教育方針について伺っていると、共働き世帯のご夫婦は、「子供の希望はできるだけ尊重したい、けれども、あまりこだわりはない」という希望をおっしゃる方が多く、片働き世帯のご夫婦は、「子供の教育は、しっかりお金をかけたい」とおっしゃる傾向が強いように感じています。

世帯年収1000万円の共働き世帯・片働き世帯の1ヶ月の家計収支比較

世帯年収1000万円の共働き世帯・片働き世帯の1ヶ月の家計収支比較


■片働きで年収1000万円を超えると、生活が派手になる?
水道光熱費、被服費、保健・医療費など食費を除いた生活費は、共働きも片働きも支出額にあまり差はありません。共働きと片働きで支出に差が出ている項目に着目すると、交通・通信費が共働き64478円に対し、片働き88930円になっています。交通・通信費には、自動車等関連費が含まれていて、共働き世帯33720円に対して、片働き世帯52487円で約2万円の差があります。

参考までに、片働き世帯の世帯年収階級800-1000万円(平均世帯年収875万円)の家計も上表に掲載していますが、交通・通信費は、46625円で自動車等関係費は、19933円になっています。片働きで世帯年収が1000万円を超えると、自動車等関連費が突出して多くなることから、マイカー保有は、ステータスとして捉えられているのかもしれません。

また、教養娯楽費関係の支出は、共働き世帯は37374円に対し、片働き世帯は56266円で約2万円の差があり、片働き世帯ほど、レジャー等にかける支出が多い傾向があるようです。共働き世帯の場合、平日はフルタイムで働き、土日は、家事や休養にあてるので、レジャーに時間をかける余裕があまりないのかもしれません。

憧れの年収1000万円でも、片働き世帯の家計は、火の車?

片働き年収1000万円、家計危機に要注意!

片働き年収1000万円、家計危機に要注意!

世帯年収1000万円の共働きと、片働きの1ヶ月の家計収支を見ると、共働き世帯は10.5万円の黒字に対し、片働き世帯は1.8万円の赤字という結果でした。統計データの平均なので、現実の家計と異なるかもしれませんが、支出の傾向は、普段の相談の感覚に近いものがあります。一見すると、年収1000万円を超えると、「自分は、そこそこの収入があるんだ」と思い、ついつい、家計の財布の紐が緩みがちです。

けれども、現実を見ると、世帯年収が1000万円で同じでも、手取り年収が多くなる共働き世帯の方が、堅実に家計の支出を抑えていて、片働き世帯の方が、余裕があると思っていても、実は家計は火の車になってしまう危険性が高いのです。そして、年収1000万円超えの片働き世帯の夫のつぶやきにあるように、「そこそこの収入があると思っていたのに、なんだか家計が厳しい」という結果になるのです。

■あらためて、夫婦で家計を把握する
片働き世帯の家計管理の方法として、「夫が生活費を妻に渡し、水道光熱費や家賃・住宅ローンなどの口座から引き落とされるものや、教育費などの大きな支出は、夫が管理する」というケースがよく見られます。その方法だと家計全体の収支が見えなくなってしまいます。妻は、渡された生活費の範囲でやりくりしていて、家計は上手くいっているように感じるかもしれません。夫の方も、妻が渡した生活費の中から、きちんと貯金をしてくれているんだろうという期待もあって、家計の赤字に気づかないようです。

毎月の家計を黒字化するのはもちろんのこと、将来の住宅ローンの返済、教育資金、老後の生活など、希望するライフプランを描いた上で、家計が破たんしないように、日々の生活水準を決めなければなりません。憧れの年収1000万円を超えると、豪華なマイホーム、十分な教育費、日々の生活を豊かに、全て叶うような気がしてしまいますが、現実はそう甘くないかもしれません。世帯年収1000万円でも、共働きの場合、それぞれの年収がそれほど多いという訳ではないので、庶民感覚が備わっていて、身の丈に合った生活をしようという意識が働くのかもしれません。

年収1000万円超えの片働き世帯ほど、背伸びをしない、身の丈に合った家計支出を心がける必要があります。「ちょっと、背伸びをした生活をしているかも」と感じた人も、「そんなに贅沢をしているつもりはない」という人も、ぜひ、ご夫婦でライフプランを作り、チェックしてみてください。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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