土地購入/土地価格・地価・路線価

2017年公示地価は二極化が進行、地域ごとの温度差も

2017年1月1日時点の「公示地価」が発表されました。大阪では40%を超える上昇、東京ではバブル期を超える公示地価史上最高額など、高騰の印象が強まっているものの、依然として下落地点は多く、大都市圏でも一部で悪化がみられます。2017年の動きを確認しておきましょう。

執筆者:平野 雅之


大阪・道頓堀

公示地価上昇率、2017年のトップは大阪・道頓堀「づぼらや」

2017年1月1日時点の公示地価が3月21日、国土交通省より発表されました。

全国(全用途)平均は前年比0.4%のプラスで、2年連続の上昇となりましたが、上昇地点の割合は37.2%にとどまり、依然として41.4%の地点が下落しています。

20%を超える上昇を示す地点も多くなったことから「バブル」を指摘する声もあるようですが、全国の大半の地点が上昇していた「バブル景気」の頃とは大きく様相が異なり、地価の二極化が進行しているといえるでしょう。

住宅地の全国平均は0.0%の横ばいでしたが、新聞報道などによれば0.022%のプラスで、9年ぶりに上昇へ転じたことが示されています。

また、商業地は旺盛な訪日需要やホテル用地不足などを背景に、全国平均で1.4%のプラスでした。2年連続の上昇で、上昇率も前年より大きくなっています。

3大都市圏では住宅地平均が0.5%のプラス(前年と同じ)、商業地平均が3.3%のプラス(前年は2.9%)で、いずれも4年連続の上昇でした。商業地はおおむね上昇傾向を強めているものの、住宅地は足踏み状態だといえるかもしれません。

2017年(平成29年)の公示地価について、全国の主な動きをみていきましょう。

2017年公示地価の変動率

公示地価とは?

公示地価とは、地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づき、国土交通省による土地鑑定委員会が毎年1回公示する、1月1日時点における標準地の価格で、公共事業用地の取得価格算定の基準とされるほか、一般の土地取引価格に対する指標となることを目的としています。

2017年の公示対象市区町村は1,376(東京23区および786市529町38村)、対象地点(標準地)の数は前年から730増えて26,000(うち235地点が選定替え)となっています。ただし、このうち原発事故による避難指示区域内の12地点については、引き続き調査が休止されています。

ちなみに、調査対象地点の数は2004年の31,866をピークに、その後は2015年まで徐々に減らされ続けていましたが、2016年、2017年は連続で増やされました。

公示地価はその土地本来の価値を評価するため、現存する建物などの形態に関わらず、対象土地の効用が最高度に発揮できる建物などを想定したうえでの評価がされます。また、2017年の評価に携わった不動産鑑定士は2,469人となっています。

なお、公示地価についての詳しい内容は、国土交通省の「土地総合情報ライブラリー」にアクセスすることで、1996年(平成8年)以降のものをみることができます。


3大都市圏の住宅地は上昇傾向が足踏み

リーマン・ショック後の2009年に下落へ転じた公示地価は、3大都市圏で2014年から再び上昇局面に入りました。しかし、商業地の上昇率が拡大傾向なのに対して、住宅地では少し伸びが止まっているようです。

公示地価の変動率推移

3大都市圏では、2016年にようやく上昇へ転じた大阪圏の住宅地が2017年は再び横ばいになりました。それ以外は住宅地、商業地とも4年連続の上昇だったものの、名古屋圏は住宅地、商業地とも前年より上昇率が小さくなっています。

その一方で、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の「地方四市」平均は、住宅地が2.8%の上昇、商業地が5.9%の上昇となり、前年に引き続き3大都市圏の平均を大きく上回る状況でした。

住宅地における公示地価の変動率推移

前年と比較可能な公示地点のうち、上昇地点の数(全国・全用途)は9,314で前年の8,100からは増えているものの、地点数増加の影響もあるため、全体に占める割合は依然として37.2%にとどまっています。

横ばい地点の数は5,357(前年は4,560)、下落地点の数は10,352(前年は10,425)でした。

東京圏の住宅地における上昇地点の割合が3年ぶりに増加した一方で、大阪圏と名古屋圏の住宅地は前年を下回っています。とくに大阪圏の住宅地は上昇が28.5%で下落の36.4%よりも少なく、東京圏や名古屋圏とは対照的です。

地方圏では、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の「地方四市」において住宅地で80.4%、商業地で90.4%の地点が上昇を示しており、3大都市圏を大きく上回る状況がまだしばらく続くかもしれません。


都道府県別平均は、住宅地で9都県、商業地で16都道府県が上昇

都道府県別平均では、住宅地で埼玉県、広島県が新たに上昇となった一方で、神奈川県が前年の上昇から横ばいへ、熊本県が上昇から下落へ転じました。商業地での上昇は前年と同じ顔ぶれになっています。

2017年の公示地価が上昇だったのは、住宅地で宮城県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、愛知県、広島県、福岡県、沖縄県の9都県、商業地で北海道、宮城県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、石川県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、沖縄県の16都道府県です。

それ以外に住宅地では京都府と大阪府、商業地では奈良県と岡山県が横ばいでした。このうち大阪府と奈良県の横ばいは2年連続であり、京都府と岡山県は前年までの下落から横ばいに転じています。

住宅地で最大の上昇率だったのは沖縄県の3.0%であり、宮城県2.4%、福島県2.1%と続いています。福島県と愛知県は前年よりも上昇率が縮小し、富山県と滋賀県、兵庫県、奈良県は下落率が拡大しているため、上昇傾向が全国に広がっているとはいえない状況でしょう。

その一方で、商業地は大阪府が5.0%、宮城県と東京都が4.7%、京都府が4.5%など、前年よりも大きな上昇となった都道府県が目立ちました。

ただし、前年は商業地で上昇率の縮小や下落率の拡大がみられなかったものの、2017年は福島県、石川県、愛知県で上昇率が縮小し、岩手県、富山県、三重県、和歌山県で下落率が拡大しています。一部では減速の兆候が表れ始めているのかもしれません。


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