家事分担で「子育て」を親世帯がバックアップ
娘夫婦同居の二世帯住宅であるTさんのお住まいを訪問しました。1階が親世帯、2・3階が子世帯となっており、玄関は共用です。家族構成は親世帯が夫婦、子世帯は20代のTさん夫婦と保育園に通う子どもが1人となっています。子世帯は共働きなので、仕事のある日は基本的に子世帯・妻が子どもを保育園に預け、出勤。仕事帰りにお迎えに行き、帰宅というのがいつもの行動パターンです。
写真は2階の子世帯LDK。朝食は親世帯、子世帯それぞれですませるが、お誕生日やクリスマスなど特別な日は2階で揃って食卓を囲むことも
親世帯の父親はまだ現役なので毎朝出勤していきますが、母親は専業主婦。共働きの子世帯に対して、有形無形のサポートをしています。
中でも、最大のサポートは平日の夕食の準備です。子世帯・妻は仕事が終わると子どもを預けている保育園に向かいますが、夕食の買い物などをせずそのまま帰宅。母親が子世帯の分も夕食を準備しておいてくれるからです。
「夕食の心配をしないですむのはとても助かっています。この点は、他の共働きの方より恵まれているかもしれませんね」とTさんは話します。
平日の夕食は母親の用意した食事を1階で親世帯と一緒にとるので、幼児用の椅子がテーブルに取り付けられている。床暖房が敷設され、冬も快適なリビング
平日の夕食はお母様がつくる代わりに、休日は子世帯が担当します。「夕食の準備をしている間でも、父が子どもの遊び相手になってくれるので、安心ですね」とにっこり。
一方、子世帯の休日は、お母様にとっては家事から解放される日でもあります。長く続けている趣味のトールペイント教室に通ったり、お友達と遠出をしたり。存分にお休みを楽しまれているとのこと。母と娘だからこそ、家事をうまく分担して、息抜きの時間を設け、それぞれの家事負担を軽減できるようにしているようです。
家族全員が、心地よく暮らせる工夫を随所に
仕事が忙しく帰宅が遅くなり、親世帯がお休みになっている時間に帰宅することもあるというTさん。そんなときのことを想定して、共用の玄関の壁には遮音材を入れてあるといいます。「玄関の壁は親世帯の寝室との境でもあるので、できるだけ親世帯の眠りを妨げずに、2階へ上がれるようにしたいと思いました」。玄関は共用なので、深夜に帰宅したときに親世帯を起こさないように、壁に遮音材が入っています。こういった工夫や配慮が気兼ねのない暮らしにつながります
さらに、親世帯と子世帯がそれぞれ気兼ねなく暮らせるように、階段の位置にも気を配ったそうです。
1階から2階へ上がる階段の位置と、2階から3階へ上がる階段の位置を大きくずらしました。子世帯スペースの上下階を行き来する階段を親世帯の寝室から離すことで、親世帯に響く生活音を減らすとともに、3階のプラベートな雰囲気を高めました。
妻の親世帯との同居では子世帯の夫は気遣いをしてしまうという声も聴きますが、Tさんは「間取りを工夫したり遮音材を入れたりしたので、変に気遣いをすることがないですね」とのことでした。
廊下に設けたクロゼットは寝ている家族を起こさずに着替えができるのでとても便利だそう。写真手前に壁を新設して個室をつくれるように
家事をしながら子どもと触れ合えるように
現在、Tさんのお子さんは2歳です。共働きだからこそ、家にいるときには子どもとコミュニケーションを取れるようにしたいと考えています。そこで、リビングの一角に「+NEST」を設けました。もう少し成長したら、将来はお絵描きをしたり、宿題をしたりすることも可能。キッチンで家事をしながら様子を眺められる位置にあります。
もちろん、大人もパソコンで調べ物をしたり、ちょっとした書き物をしたりするのに便利なコーナーとなりました。
子どもが成長したときに目の届く場所で宿題ができるようにリビングの一角に設けたコーナー。パソコンなどが使えるようにコンセントも設置
甘えすぎないように近居のような感覚で訪問
二世帯住宅の暮らしは気兼ねもなく、非常にうまくいっているようです。親子とはいえ、一つ屋根の下に2つの世帯が暮らすにあたって、何か秘訣のようなものはあるのでしょうか。Tさんご夫妻によると、「ルールは最初に決めておくこと」と、「世帯が別であることを意識する」2点が大切だということでした。例えば、平日の夕食は親世帯にお願いし、休日は子世帯が担当するというルールは家が完成する前に話し合って決めておいたそうです。
また、玄関は共用だとしても、1階と、2階では別世帯であると意識して、親世帯のスペースに立ち入るときには、できるだけインターホンで、「今、そちらに行ってもいい?」と断ってから1階へ行くようにしているということです。
親世帯・子世帯が助け合いながら暮らす二世帯住宅は、双方に充足感をもたらすようです。2つの世帯が快適に暮らせるのは、それぞれの世帯の生活を重視しながらも、ほどよくつながる設計に鍵があるのではないでしょうか。
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