声優テクノとは?

共産テクノ、お笑いテクノに続くのは、声優テクノ! まぁそんな呼び方するのは僕くらいですが……。Wikipediaによると、声優とは、映像作品や音声作品に、声の出演をする俳優のことです。声優というとアニメというイメージがありますが、声の出演のみをすれば声優となります。今回、声優テクノとして集めたのは、以下の条件を満たす楽曲です。
  • アニメの声優として活発な活動をする人が歌っている。
  • テクノポップと言える楽曲である。
  • 女性のみとする(筆者の単なる好み)。
現在放映中の『東京タラレバ娘』のレバちゃんの声優は、Perfumeのあ~ちゃんですが、アニメではなく、声優が本業ではないので除外します(笑)。『ご近所物語』や『おジャ魔女どれみ』の声優としても知られる宍戸留美は、テクノアイドルでもありましたが、ポストアイドルとしての声優業なので、これまた外しました。テクノなアニメソングとなると広すぎるので、声優が歌っていないとダメとしました。声優が全て歌手ではないですが、声優が歌手を兼業するのは珍しくありません。1990年以降、声優のアイドル化現象が進み、アイドル声優という名称もあるみたいですが、どちらにせよ主観的な定義となるアイドルか否かについては条件ではありません。

上坂すみれ

cubic futurismo

恋する図形(cubic futurismo)

2016年の邦楽テクノポップ部門で、僕の隠れベストワンは、上坂すみれの「恋する図形 (cubic futurismo)」であります! 拙著『共産テクノ ソ連編』でも上坂すみれのロシアアヴァンギャルドなジャケットは4枚掲載させていただきました。彼女の楽曲はジャンル横断していますが、本作品は、コンセプト、タイトル、サウンド、歌詞、コスチューム、全ての角度から共産テクノのエッセンスが詰め込まれています。上智大学外国語学部ロシア語学科を卒業し、ロシア・ソ連に関しても造詣が深い共産趣味者です。

本曲は彼女にとって最初のテクノポップ曲ではありませんが(後ほど、もう1曲紹介します)、アーバンギャルドのファン(アーバンギャル)であり、戸川純、YMO、平沢進などテクノ界隈も聞いているようですから、必然とも言える路線です。


楽曲提供をしたのは、10年ほど前にインタヴューさせてもらったTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND。この曲は最初「cubic futurismo」というタイトルのみでしたが、上坂が戸川純の「図形の恋」へのオマージュとして、「恋する図形」が加わったのです。このセンス好きです。どうかこの組み合わせで共産テクノの世界を極めてほしいものです。

TECHNOBOYS改めT.P.G.-FUND (All Aboutテクノポップ)

現在、彼女が主人公「吹雪」役の声優を務める映画『劇場版 艦これ』がちょうど上映中であります(劇場公開日:2016年11月26日)。「艦これ」は「艦隊これくしょん」の略で、育成シミュレーションゲームから漫画、アニメへ広がっていたメディアミックスです。次に紹介する声優も「間宮」役で出演しています。


堀江由衣

vanilla salt

バニラソルト

Perfumeが「ポリリズム」でブレイクを果たしたのは、2007年。それ以降、テクノポップ路線に舵をとる女性シンガーが一気に増えました。そんな勢いの中、アニメ「とらドラ!」のエンディングテーマ曲「バニラソルト」のPVでパッツンのかしゆか、パーマのあ~ちゃん、ショートボブののっちと、本当に一人Perfumeをやっちゃったのが、堀江由衣。彼女の愛称は「ほっちゃん」。1997年に声優デビューを果たしているので、ベテランと言えるキャリアです。

編曲は、初期CAPSULEとも近いネオ渋谷系的なQYPTHONEというグループで活動していた中塚武。サウンドもこっそりというよりも大胆にオマージュしています(「コンピューターシティ」に近いメロディー)。基本、オマージュ系が好きな僕としては、完成度の高さも含め、知らない人にもぜひプロパガンダしたい楽曲です。

バニラソルト (amazon.co.jp)



井上麻里奈

beautiful story

ビューティフル・ストーリー

Wikipediaを読んでいると、堀江由衣が「強く憧れている声優は井上麻里奈」と書いてあるのを発見。と言っても、井上麻里奈が声優デビューしたのは2004年ですから、堀江の後輩にあたります。ちなみに、堀江は「謙虚で人見知りな性格の上、年下の後輩に敬称を付けることもある」と書かれており、いい人感が漂います。

井上麻里奈名義ではこれまで3枚のシングルしかリリースしていませんが、ぜひ聴いてほしいのが、3枚目のシングル曲「ビューティフル・ストーリー」。これもPerfumeへのオマージュと勘違いしそうですが、隠れ中田ヤスタカ名曲! 2007年にリリースされた、Perfume進撃と同時進行的作品です。また、本曲は彼女のテレビアニメ初主演となった『月面兎兵器ミーナ』のエンディングテーマでもあります。カップリングの「変な恋」は、初期CAPSULE的渋谷系ラウンジサウンドとなっています。


桃井はるこ

akihabalove

アキハバラブ

桃井はるこは堀江由衣と同年代のベテランですが、声優デビューは2001年で、歌手活動が先行しています。また、作詞作曲もするシンガーソングライターでもあり、上坂すみれの2枚目シングル『げんし、女子は、たいようだった。c/w テトリアシトリ』(2014年)は、桃井が提供したものです。ソ連発祥のゲーム「テトリス」をモチーフにした「テトリアシトリ」は、第4のYMOと呼ばれたシンセサイザーのプログラマー、松武秀樹が編曲したテクノポップ曲となっています。


元祖アキバの女王の異名を持つ桃井はるこは、ぱふゅーむ X DJ momo-i名義でPerfumeとコラボ、楽曲提供をし、秋葉原賛歌『アキハバラブ』を2005年にリリースしています。テクノポップというよりもハイエナジーって感じですが、Perfumeが『リニアモーターガール』に始まる近未来三部作をリリースする手前の出来事です。今まで数えきれない数のPerfumeライヴに参戦しましたが、この曲だけは聴いたことがありません。

もちろん、桃井はるこ本人の作品からもテクノポップへの傾倒は窺えます。彼女のカヴァー曲集『桃井はるこ COVER BEST -カバー電車-』(2007年)では、The Bugglesの「VIDEO KILLED THE RADIO STAR(ラジオスターの悲劇)」を歌っています(ちなみに筆者は「ラジオスターの悲劇」のカヴァー曲を集めるのが趣味)。
cover best

桃井はるこ COVER BEST -カバー電車-

また、アルバム『Sunday early morning』(2008年)収録のタイトル曲「Sunday early morning」は、CAPSULEを意識したような曲です。

他にも、サエキけんぞう&Boogie the マッハモータースの『21世紀さん sings ハルメンズ』(2010年)に収録の「電車でGO」「隣の印度人」 、RAM RIDERの「ベッドルームディスコ」などでボーカリストとして参加しており、この界隈への接近度が高い声優の第一人者と言えるでしょう。

 

宮村優子

daisushi

大四喜

声優テクノのトリを飾るのは、宮村優子。愛称は「みやむー」。……声優は愛称を持つことが定番のようです。まあ、Perfumeだってそうですが。声優としてのデビューは1994年と、今回紹介する中では最古参となりますが、1995年~1999年の歌手活動では、テクノポップ系の人たちの楽曲を歌っています。その中でも際立つのが、平沢進が提供したミニアルバム『魂』(1998年)に収録され、シングルとしても発売された「Mother」。平沢らしい大陸的なテクノポップとなっています。

魂

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平沢自身もこの曲をソロアルバム『救済の技法』(1998年)に別のアレンジで収録しており、宮村版が女性としての「わたし」であるのに対して、平沢版はアンサーソング的に男性からの「君」と立場を変えることで、微妙に歌詞が違います。聴き比べてほしい、つがいのような曲です。

平沢は他にも、このアルバムで「MOON」(こちらも『救済の技法』で「MOON TIME」として収録)、翌年のアルバム『大四喜』(1999年)で「Ruktun or Die」を提供しています。「Ruktun(ルークトゥン)」とは、「田舎者の歌」を意味するタイの歌謡曲の呼び名(大して悪気はないが、ゆるく蔑称)です。こちらも平沢自身が「Luuktung or Daai」として後にカヴァー。平沢はタイに対しては特別な思いがあるようで、『SP-2』というタイのレディーボーイ(日本で言うところのニューハーフ)との交流を写真とともに記録した書籍を2008年に出版しています(タイが好きなんで、買いました)。

『大四喜』や『鶯嬢』(1999年) には、他にもYAPOOSのメンバー(戸川純、戸田誠司、中原信雄)が提供した楽曲もあり、宮村優子は声優テクノの先駆者であると考えます。

 

ラジオ番組『上坂すみれの乙女*ムジカ』に平沢進がゲストとして出演していたりするので、相性が良さそうな上坂すみれと平沢進のコラボなんかも実現してほしいものです。他にも声優テクノと呼べる楽曲は存在すると思われますが、以上、上坂すみれから始まり、宮村優子に終わる声優テクノの約20年の歴史を感じ取っていただければ、幸いです。
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