小池徹平undefined86年大阪府出身。TVドラマ『シバトラ』『ちかえもん』映画『ホームレス中学生』等俳優として活躍するほか、ウエンツ瑛士とのデュオWaTで音楽活動も展開、NHK紅白歌合戦にも出場(16年に解散)。初舞台は『シダの群れundefined純情巡礼編』。undefinedヘアメイク:水谷さやか、スタイリスト:松下洋介 (C)Marino Matsushima

小池徹平 86年大阪府出身。TVドラマ『シバトラ』『ちかえもん』映画『ホームレス中学生』等俳優として活躍するほか、ウエンツ瑛士とのデュオWaTで音楽活動も展開、NHK紅白歌合戦にも出場(16年に解散)。初舞台は『シダの群れ 純情巡礼編』。 ヘアメイク:水谷さやか、スタイリスト:松下洋介 (C)Marino Matsushima

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3頁に『キャバレー』観劇レポートを掲載しました。

小池徹平さんと言えばTVドラマや映画、そしてウエンツ瑛士さんと組んだデュオWaT(今年解散)での音楽活動を通して知られていますが、13年に宮本亜門さん演出の『メリリー・ウィー・ロール・アロング』で、遂にミュージカルに進出。以来『デスノート』『1789』『キンキーブーツ』と立て続けに話題の舞台に主演、それぞれ異なるタイプの役柄を力強く演じ分け、にわかに“ミュージカル俳優”としての存在感も高めてきています。

2017年初春にはカンダ―&エブの名作ミュージカル『キャバレー』に、長澤まさみさん、石丸幹二さんとともに主演予定。ここ数年の活躍を見る限り、小池さん自身“ミュージカルをさらに極めてみたい”という思いが溢れていそうですが、実際はいかに? 彼の“現在、過去、未来”をたっぷりとうかがいました。

シリアスなテーマを猥雑に描く名作ミュージカルでヒロインに振り回される若者を演じる

――小池さんにとって、ミュージカルとはどういう存在でしょうか?

「今は、僕にとって“無くてはならないもの”というか、本当に刺激をいただく仕事ですね。ミュージカルはとりわけ“頑張らないとできない仕事”だと思います。とどまることを許されない感じがあって、自分のやるべきことがどんどん見つかってきます」

――“とどまることを許されない”というのは?

「千秋楽を迎えれば、もちろん一つの作品が終わった達成感はあるんですけど、そこで終わりではない感じがするというか。一つの作品を通して得るものが、技術的なものを含めてたくさんあるので、そこで終わりにするのではなく、次に“つなげたい”という気持ちが残るんですよ。どのミュージカルでも、“もうちょっと行きたいな”という課題が見つかって、今後再演されることがあればその再演で、再演がなくとも似たような作品や役柄に出会ったときに、チャレンジしてみたいと思えるんです」

――今、稽古を控えているのがライザ・ミネリ主演の映画版も有名な名作ミュージカル『キャバレー』。出演を決めたポイントは?
『キャバレー』(左から)小池徹平、長澤まさみ、石丸幹二

『キャバレー』(左から)小池徹平、長澤まさみ、石丸幹二

「『キャバレー』という作品のことはもちろん知っていましたが、今回演出をされる松尾スズキさんが、直接連絡をくださったことも大きかったです。松尾さんの舞台には以前にも『キレイ 神様と待ち合わせした女』で出演したことがあって、大好きな方なのですが、突然“今から、小池くんにやってもらいたい役があるから事務所に相談するけど、断らないでね”というお電話をいただきまして。その時点では詳細不明だったけど、松尾さんに声をかけていただいたのが嬉しくて、すぐにマネジャーにスケジュール確認しました。めっちゃテンションが上がった状態で、正式なオファーを楽しみにしていましたね(笑)」

――松尾さんはどんな演出家ですか?

「初めてお会いした時の松尾さんは“役者さん”だったので、『キレイ』の時に“ここはもっとこうして”とか、いろいろ言っていただいたのが新鮮でした。役者から引き出すことも大切にされていて、その人の芝居を観ながら“それちょっとやってみて”とその場で生まれたものを取り入れることもあれば、誰かのアドリブをさんざん笑って、これに変えるのかな~と思うと、“やっぱりそれはやめといて、元に戻します”とおっしゃることもある(笑)。そういう中から、最後には松尾さんのテイストにまとまっていくんですよね。自由に役者魂が試せて、楽しかったです」

――今回の『キャバレー』は、第二次大戦前夜のベルリンが舞台。小説の題材を求めてやってきたアメリカ人作家クリフが、スター志望の英国人歌手サリーに出会い、ナチスが台頭し時代が大きくうねる中で翻弄されてゆく物語。小池さんはクリフを演じます。

「アメリカ人を演じるのは初めてではないので、その点で“どうしよう”というのは無いですね。クリフはミュージカルにしては曲数が少なくて、メインストーリーを進めて行く“お芝居担当”だと思うので、芝居の部分をすごく楽しみにしています。時代の流れとともに自分の気持ちも揺れ動くし、その中でサリーという“自分を変える人”との出会いがあります。あとは、翻訳ものではあってもちょっとしたところで松尾さん独特のせりふ回しがあると思いますし、クリフは意外に“それは違うよ”みたいな“つっこみ”が多い役なんですよ。アメリカ人がつっこみするって、どういう感じなんでしょう。まだ想像もつかないけれど、文化の融合というか、不思議な世界観が生まれるのかな、という気がしています」

――『キャバレー』のクリフというと、私自身は90年代に演じた草刈正雄さんの印象が強いのですが、今回は“ダンディな大人の男性”というより、“若者”という設定なのですね。

「設定としては20代後半で、なおかつ“詩的な感じ”となっています」

――クリフはそもそも、何を求めてアメリカからベルリンまで来たのでしょうか?

「小説を書くためというのが根本にあるのですが……。書かないんですよね、あの人、なかなか(笑)。まあ、駆け出しでもあるし、既に手をつけているものがあるのかもしれないんですが、キャバレーに行ったり、サリーに振り回される日々なんですよ。

でも彼の姿にはちょっと共感する部分があって、僕も“書く書く”といって曲をかけない時がすごくあって、“すべてが勉強だ”と言いながら遊びに行ったり(笑)。で、締め切りぎりぎりになっちゃって、追い込まれてやる、みたいなことがあるので、クリフの気持ちはちょっとわかるなぁ(笑)」

――それにしてもあの時代にベルリンへというのは、彼はよほどの好奇心を持っているのですね。

「台詞の中で政治に興味があるようなことも言っているので、僕の空想でしかないけど、そういうことをテーマに小説を書こうとしていたのかなと思いますね。けれど実際のベルリンは、彼の想像を遥かに超えた世界だったわけですが。

僕は、クリフという人は“変わり者”というより、普通の常識を持った人だと思っています。でもずっと真面目というわけでもなくて、ちょっと面白い人になっちゃうシーンもあるんですよ。サリーが妊娠したとわかって、(嬉しさのあまり)唐突に“パスタゆでようか”と言ったり、クリフにもこういう部分があるんだなと、僕も台本を読んでて面白くなっちゃいましたね」

――サリー役は長澤まさみさん、キャバレー「キット・カット・クラブ」の司会者で作品の狂言回し的な存在でもあるMC役は石丸幹二さんです。
『キャバレー』長澤まさみ

『キャバレー』長澤まさみ

「長澤さんは10年以上前にTVで共演したことはありますが、ミュージカルという場でがっつり共演するのは初めて。器用そうなイメージで何でもできちゃいそうだから、初ミュージカルとは言っても、何も心配していません。彼女は今回が“最初で最後のミュージカル”と言っているらしいんですけど、それだけ気合が入っているということだと思います。石丸さんも今回が初めての共演で、素敵な楽曲をどういうふうに歌い上げるか、お客さん目線で(笑)楽しみです。稽古が始まったら飲み会も絶対あるでしょうから(笑)、そういう場でのコミュニケーションも楽しみながら、新しい『キャバレー』を作っていきたいですね」

――どんな舞台になりそうでしょうか?

「この作品には強烈な政治的メッセージが含まれているけど、そういう作品が再演され続けるのは、どの世代、どの時代の人々も知るべきことだからでしょう。でもテーマ的には重くても、ストーリーは面白くまとまっているし、楽曲もほとんどが下品で(笑)、エンタテインメント性が高いミュージカルとして作られていると思います。そこに今回は松尾さんワールドが重なるわけで、きっと面白い舞台に仕上がるんじゃないかと思います」

*次頁では小池さんの“これまで”を伺います。“あのスター”に憧れていた徹平少年は、コンテストに優勝して上京。少しずつ自身の可能性に挑み、フィールドを広げてゆく中で出会ったのがミュージカルでした。

“偶然”ではなく“必然”だった!?
ミュージカルとの出会い

『1789』写真提供:東宝演劇部

『1789』写真提供:東宝演劇部

――ここからは小池さんの“これまで”をうかがいます。小池さんは15歳の時、ご自身で「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募、グランプリを獲得して芸能界入りしたそうですね。芸能界にどんな夢を抱いていらっしゃったのですか?

「大雑把にこういう業界の仕事がしたいなとおもっていたくらいで、明確な目標は持たずに東京に出てきました。当時はマネジャーからも“結局、何がやりたいの?将来の設計を立てなさい”とよく言われていたんですけど、そういうビジョンって、年齢を重ねてこそわかってくるものなのですよね。ひとくちに芸能界と言ってもいろんなジャンルがあるから、自分の可能性を知るためにも、できるだけいろいろなことにチャレンジしたいと思っていたし、来るものは何でも拒まずやっていました。そうした過程で、自分ができることの範囲であったり、やりたいものが見つかってきたんです。へたくそだったけど楽器も練習したし、体固いくせに(笑)ダンス教室に通ったり、ボーカルトレーニングもいろいろやっていましたね」

――憧れの人はいらっしゃいましたか?

「今も好きですが、福山雅治さんですね。歌も俳優もされていて、二足の草鞋っていいなと憧れていましたが、実際それをやってみるとめちゃめちゃ大変で(笑)。作品を生み出しながら、体調管理して継続してゆくことのなんと難しいことか。昔は何もわからなかったので、無邪気に“福山さんみたいになりたい”と思っていました」

――そんななかで、次第にご自身のなかで“俳優”の比重が大きくなってきたのですね。

「なってきました。ずっとWaTというデュオをやっていて、ストリートライブをやってインディーズからメジャーへと少しずつ成長して、俳優と二足の草鞋でやってきたのですが、役者の仕事が増える中で音楽がおろそかになってしまい、新曲も出せなくてファンの方々にも申し訳ない、という思いが自分たちの中で大きくなりすぎたので、30の節目に解散という形をとらせていただいたんです」

――そして13年、『メリリー・ウィー・ロール・アロング(舞台写真はこちら)』でミュージカル初出演。ミュージカルとの出会いは偶然だったのでしょうか、必然でしょうか?

「何なのでしょう……。実は『メリリー』まで演出の宮本亜門さんとはお会いしたこともなかったので、なぜ僕にお話をいただいたのか、思い返せば、不思議です(笑)。初ミュージカルはとにかくソンドハイムの音楽が難しくて、音が一個ずれると掛け合いとかが大変なことになる。無知だったからこそ夢中で走り抜けられたのかな、と思います。キャストが全員20代で、ミュージカルだからと身構えることなく、みんなで刺激を受け合いながら作り上げていけましたね。今、振り返るとよくできたな、と身震いするけれど、ミュージカルとの出会いとして、すごくよかったのかなと思います」

――最初が大変だっただけに、その後だんだん楽になってきましたか?

「なってないです(笑)。楽曲は、ほとんどが難しいんです。今年はロックっぽい楽曲のミュージカルが多かったからまだとっつきやすかったけれど、でも技術的な部分だとか、ハイキーだったり、ただ(声を張って)歌っているだけでは公演期間もたないぞというミュージカルも増えてきて、いい積み重ね方はしてるなと思います」

――個人的に鮮烈だったのが、『デスノート』のL役です。漫画のキャラクターのビジュアルを踏襲されているばかりでなく、その前傾姿勢のまま、相当の声量を必要とするフランク・ワイルドホーンの楽曲を歌いあげていらっしゃり、日生劇場の広い舞台空間を飲み込まんばかりでした。
『デスノート』初演より(写真提供:ホリプロ)。17年9月の再演では再びL役を演じる予定。

『デスノート』初演より(写真提供:ホリプロ)。17年の再演では再びLを演じる。(詳細はこちら)

「とても癖の強い役だし、いわゆる2.5次元というか、2次元の人気漫画のキャラクターをミュージカルで表現するので、原作のファンからすれば“歌うって……どういうこと?”という戸惑いもあるのでは、と思いました。はじめは“どう演じたらいいのかな”と迷いましたね。どうやったら“歌う”ことが当たり前のミュージカルの世界に、役を持ってこれるのか。そこで意識したのが、とにかく自分を役に“寄せる”ことでした。歌う時も、口には出さないLの内面が歌になっているんだ、彼の気持ちがワイルドホーンさんのメロディに乗って迸るんだというように歌っていました。

僕はふだん役を引きずらないタイプなのに、あの時は稽古が終わっても役に入っちゃっていましたね。人に会いたくなくなって、家でも暗い部屋で、椅子にあのポーズでずっと座っていたり。飲みに行ったりもせず、どんどん痩せて目の下にクマもできたし、ずっとLのことを考えていました。来年の再演では、またそんなふうになってしまうかもしれません(笑)」

――そして今年は『1789』の主人公ロナン役で、帝劇デビューを果たしました。

「『1789』では初めてダブルキャストを経験しました。ダブルってこういう感じなんだな、貴重な体験だなと思いながら稽古していましたね。(ダブルキャストの)加藤君の稽古の時? 僕はガン見していましたよ(笑)。お互いに稽古を見て思ったことを言い合ったりして、それでも本番ではそれぞれのロナン像が出来上がったのが、新鮮な体験でした」

――もう一本、この夏を盛り上げてくれたのが『キンキーブーツ』。工場存続のために奮闘する靴工場の跡取り息子チャーリー役として、物語を力強く牽引していました。
『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

「ブロードウェイからオリジナル演出家のジェリー・ミッチェルが来日して稽古したのですが、その無駄のない演出に驚きましたね。一人一人の芝居が細かく決まっていて、装置の移動もキャストがやるので、すごく緻密にできている。そしてとにかく、テンポが速いんです。感情の整理を一つ一つしていたら追いつかないくらい、ずっと動いていましたね。幕が開いたらほぼずっと出ずっぱりで、終わるときに初めてはける、という感覚でした」

――チャーリー役で驚いたのが、後半、口論のシーンが三つも連続していたこと。婚約者、工場員、そしてローラと異なる相手に対して、チャーリーはそれぞれものすごい勢いで感情をぶつけていました。日本のミュージカルでこういう作り方をする作品はまずないと思いますし、演じる小池さんのタフさにも驚きました。

「あれは……やばかったですね(笑)。確かに日本のミュージカルではありえない。一日二回公演の日は、マジでヤバかったです。はじめて本読みの稽古をしたとき、僕、最後まで声が持たなかったんですよ。最後、声がかすかすになっちゃって、歌も歌えなくなって“大丈夫かな?”と(笑)。それでも最終的に演じ切ることが出来たのは、全体的な声の消費バランスがとれるようになったからです。ここはみんなと一緒に歌うから抑えめにするとか、ここからはちゃんと出すとか、技術的な調整ができるようになりました」

――ウエンツ瑛士さんも最近、ミュージカルで活躍を見せています。

「面白そうなものばかり出ているな、と思いながら観に行っていますが、毎回歌い方が変わっていたりして、進化していると感じますね。ライバルという感覚はほとんどないです。確かに彼が頑張っているとこちらも刺激はされるけれど、普通に彼の成長と作品を楽しみに観に行って、終演後に“あの曲、難しくなかった?”“あれはどうやって練習したの?”と聞いたり。ほとんど身内、家族の感覚です(笑)」

――映像のお仕事の方でもご多忙かと思いますが、今後どの程度ミュージカルへの出演を考えていらっしゃいますか?

「出られるものなら、ミュージカルにはめっちゃ出たいです。もちろんストレートプレイもやりたいけれど、ミュージカルは“全部ができる”というか、お芝居も歌も出来る。生の舞台で、自分が芯のシーンでは、全員のお客様に注目していただける。いわば視聴率100パーセント状態なわけで(笑)、こんなに素敵な仕事はないです。課題も次々と見つかるし、まずは自分の辿り着きたいところまで力をつけていって、そこから次を考えたいです」

――“全部ができる”ということはすなわち、相当の訓練も要するということですよね。だからこそミュージカルに魅力を覚える、というのは以前、城田優さんもおっしゃっていましたが、“面倒なことはしたくない”という若い世代が多い中で、小池さんの言葉は心強く響きます。

「そうですか?優とは同級生ですが、二人ともザ・昭和の体育会系。茨の道は大好きですよ(笑)。だって“楽な仕事”って、面白くないじゃないですか。こうやりたい、こうなりたいというものがどんどん見つかるのが、ミュージカルの面白さ。これからもいつでもミュージカルに取り組めるように、体を鍛えておきたいし、喉も動かしておこうと思っています。

最終的に目指すもの、ですか? そうですね、どこまで自分の体が持つかはわからないけど、『ミス・サイゴン』の市村正親さんのキレッキレのお芝居を観たりすると、“いつまでも動ける人”でありたい、と思いますね。舞台って、体が動かないと立てないし、ストイックな体調管理がとても重要です。表には出てこないそういう部分を大事にして、いつまでも当たり前に、人の前に立てる自分でありたい、と思っています」

*****
“大雑把に”芸能界での活躍を夢見て上京、様々な経験を経て、ひょんなことからミュージカルに出会ったという小池さん。しかし地道な準備と“華”とを同時に要するミュージカルは、思いのほか彼にフィットしていたようです。“いつまでも舞台に立てるように”と今や長期的ビジョンでミュージカルに対峙している小池さん。まずは“名作”と呼ばれるミュージカル『キャバレー』でどんな実力と煌めきを見せてくれるか、17年の幕開けが楽しみです。

*公演情報*
ミュージカル『キャバレー』17年1月11~22日=EXシアター六本木、1月26~29日=KAAT神奈川芸術劇場 ホール、2月4~5日=フェスティバルホール、2月10~12日=仙台サンプラザホール、2月18~19日=刈谷市総合文化センター大ホール、2月24~26日=福岡サンパレスホール

『キャバレー』観劇レポート
夢、欲望そして別れ。
人生のさまざまが凝縮された「キャバレー」

『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

サイレンが鳴り響き、数人の男たちが逃げ込んでくる。片隅に隠れた一人(片岡正二郎さん)がバンジョーを見つけてつまびくと、背後のポスターから怪しげな白塗りの男、MC(石丸幹二さん)が現れ、“ヴィルコメン”を歌いだす……。

各国の舞台版に映画版と、バージョンによってさまざまな趣向で上演されてきた『キャバレー』ですが、今回の松尾スズキ演出版では、ナチスによるユダヤ人や同性愛者排斥の嵐が吹き荒れる時代(ヒトラー率いるナチ党が全権を掌握した1933年以降と思われます)に、追われる男(おそらくは同性愛者)が、キャバレー文化が花開いていたほんの数年前のベルリンを束の間、懐古するという“入れ子形式”で展開します。
『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

アメリカから小説の執筆のためにベルリンを訪れたクリフ(小池徹平さん)は、列車の中で得体のしれないドイツ人エルンスト(村杉蝉之介さん)と知りあい、キャバレー“キットカットクラブ”に案内される。やがて英国人の歌姫サリー(長澤まさみさん)と恋に落ちるが、下宿の大家ミス・シュナイダー(秋山菜津子さん)の恋が阻まれる一件でエルンストの“正体”を知り、ベルリンに恐怖の時代が迫っていることに気づかされる……。
『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

時代の変化に気付く人、気づかない人、気づいてはいてもそれを認められずにいる人々がないまぜとなって繰り広げる、自由で寛容な時代の最後の宴。確かに実在する人物のようでもあり、冒頭の男が見る“幻影”のようでもある絶妙の浮遊感を行き来する石丸幹二さんはじめ、キットカット・クラブの面々は毒々しさ全開に歌い踊り、差別を皮肉ったナンバーでも“上品な風刺”ではなく、アグレッシブな心意気を発してゆきます。
『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

“巻き込まれ型”主人公クリフ役の小池徹平さんは現地の人々の台詞に鋭い間合いで突っ込みを入れ、劇世界の人々と現代的感性を持った観客を橋渡し。ベルリンに来る前にはロンドンでゲイ・クラブにも通っていたというバイセクシャルの設定からか、決してナイーブではなく、どこか“冷めた”空気を醸し出します。“宴”とは別世界でつつましく生計をたてつつ、少しずつ距離を縮めてゆく大家役・秋山菜津子さんとユダヤ人果物商シュルツ役・小松和重さんは、1マルクも無駄にせずに生き抜いてきた堅実さと、卑猥な話題で戯れる一面、そのどちらにもリアリティがあり、その後訪れる悲劇を際立たせます。
『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

そして歌姫サリー役・長澤まさみさんは、話題となった露出度の高い衣裳で肉感的にショー場面をこなしつつ、この時代に海外で、仕事を持つ女性として生きてきた誇りを十分に理解されず、クリフとの恋をあきらめざるをえない過程を、特に後半の確かな台詞術で浮き彫りに。政治色が前面に現れがちな本作に、女性のキャリアと結婚という現代的(当時においては先進的)テーマが内包されていることもしっかりと印象付けます。
『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

クリフとサリーの物語が語られた後、MCは再び広告の中へと戻って行き、男は現実に引き戻されて呆然とする。ナチス政権前夜、そしてナチス時代と時代設定は確かに明らかな舞台ですが、“人生は一瞬の夢”という、普遍的な儚さも漂う幕切れです。
『キャバレー』撮影:引地信彦

『キャバレー』撮影:引地信彦

*次頁で17年7月のコメントを追加掲載!

17年7月インタビュー
『キャバレー』、TVドラマ『リバース』の思い出、
そして今、抱くヴィジョン

小池徹平undefined86年大阪府出身。TVドラマ『シバトラ』『ちかえもん』映画『ホームレス中学生』等俳優として活躍するほか、ウエンツ瑛士とのデュオWaTで音楽活動も展開、NHK紅白歌合戦にも出場(16年に解散)。初舞台は『シダの群れundefined純情巡礼編』。undefined (C)Marino Matsushima

  (C)Marino Matsushima

(最新作である『デスノート』についてのコメントはこちら

――昨年のインタビュー以降のお話をうかがいますが、まず年初には長澤まさみさん、石丸幹二さんとの共演が話題となった『キャバレー』がありました。

「その前に、先日はAll Aboutミュージカルの賞をいただいて有難うございました」

――勝手に選んでしまってすみません(笑)。しかも一般社会的には違和感があるだろう“新星賞”で……。

「いえ、僕はミュージカルの世界ではまだ新人なので。嬉しかったです」

――さてさて、『キャバレー』で演じられたクリフ役はバイセクシャルということもあって、とっぽいおぼっちゃまというより、クールな面が印象的でした。ご自身としてはいかがでしたか?

「確かにバイセクシャルな役で、作品自体そういうものがとりこまれてる部分がありましたね。僕は身近にバイセクシャルの友達がいなかったけど、公演をきっかけにお話しすることができて、根本的に(ヘテロセクシャルとは)考え方が違う部分もあるんだなと発見があって、変に抵抗感なく演れてたかなと思います。でもことさらにそこがフォーカスされている作品というわけではなくて、クリフは(長澤まさみさん演じる)サリーに出会ってからはどんどん彼女にのめり込んでいっていました。僕自身が作品に対して客観的だったのかもしれません」

――この春放映されたドラマ『リバース』では、その死の真相に主人公たちが迫ってゆくというキーマン、広沢を演じていらっしゃいました。初回から既に亡くなっている設定でしたが、彼の生前の何気ない言葉が10年以上経っても友人たちを勇気づけている、しかし最終回近くで“自分を空っぽに感じる”とも吐露するシーンもあって、闇の部分も抱えた人物像が興味深かったです。

「すごく難しい役でしたね。回想でしか出てこない役で、みんなの心の中にしか生きていないという儚さがあったり。みんなが広沢の一言で救われていたけど、こちらからしたらそんなつもりで言ってたわけじゃない。自分も悩んで、苦しんでたのを外には出さずに、神秘的でなんでもできて、みんなから羨ましがられて……と思われないといけない役で、変に意識するとおかしくなるし、とても難しかったです。見せたくない部分には蓋をしてたけど、あけてみれば人間ぽくて、なんでも器用にこなせるように見えるかもしれないけど、実は好きなものに熱中できる皆が羨ましい。どこかで“無理しなくてもいいんだ”と思っている自分もいて。撮影ではよく監督に“かっこよくしないでください”と言われて、別にそういうつもりはないんだけど、“今のかっこよかったから、もう一回お願いします”と。監督が一つ一つ、細かく指摘して下さったので、すごく頼って演じていました」

――今年は『デスノート』の後、『ロッキーホラーショー』という、また全然違う作品に出演されますね。何とも広い振り幅ですが、ご自身で意識されての選択でしょうか?

「『デスノート』の時もそうでしたが、“意外とこういう役やるんだ”というものをやるのが好きなんですよ。自分で言うのもなんですけど、けっこう男臭い部分があって、なんでもやりたいし、(『ロッキーホラーショー』のような)イっちゃってる役もやりたいんですよ。振り幅というか、何にでもなりたい、何にでも挑戦したいと思っています」

――前回のインタビューで、“まずは自分の力をつけて、目標とする地点に辿り着きたい”とおっしゃっていましたが、今はそのどのあたりまで来たという感覚でしょうか?

「辿りつきたいところが変わってきてるのかな。ちょっとずつ、目的地を変えちゃってるかもしれません。今はどんどん、いろんなところを歩いてみたいですね。もちろん常に歩み続けてるし、いろんな景色がミュージカルの世界とかテレビの世界を歩かせてもらっていると目に入ってくるから、ああここも行きたいなとか、目的地が、大幅には変わらないけど、距離が伸びていっているような感じというか。伸ばしたくなってくるんですよ」

――アスリートですね(笑)。

「(そのままでは)満足できないんですよ」

――余談ですが、この前ウエンツ瑛士さんに取材しましたら、ご挨拶のはじめに“この前、小池のインタビューをしてくださって有難うございました”とおっしゃられてびっくりしました。思わず“ご家族の方ですか”とお答えしてしまいましたが。

「まぁまぁまぁ(笑)、家族に近いですよ。身内みたいなものなんで。互いのことはよくわかってますね。『デスノート』の再演も、いつかはわからないけど、来てくれると思います」

――同じ世界にそういう存在がいて、素敵ですね。

「そうですね。本当に長いこと苦楽を共にしている仲間なので。今も解散はしましたけど彼の活動も逐一見るし、頑張っている姿を見ると嬉しくなるし。本当にできた人間だと思うので、彼は。不器用だし、ちょっとダメな部分もあるけれど(笑)、真面目なんです。素敵な相方というか、今は組んでないけど相方だと思ってるし。やっぱり家族ですかね」



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