だいぶ前のことになりますが、「隅田川の花火が見えなくなった」ことに対して、マンションの購入者が損害賠償を求めていた裁判で、売主の不動産会社へ約65万円の支払いを命じる地裁判決がありました(2006年12月)。

このような判決になった主なポイントとして、次の3つが考えられます。

まず、原告の眺望を遮る別のマンションを建設したのが同じ不動産会社だったこと。もし、まったく関係のない不動産会社が建てたマンションによって眺望が遮られたのなら、賠償を得ることはかなり難しかったでしょう。

もっとも、販売する時点で他の不動産会社によるマンションが建つことを知っていながらそれを説明しなかったのであれば、売主業者には説明不足などによる責任も生じますが……。

次に、原告がマンションを購入してからその眺望を遮る別のマンションが着工されるまでに1年も経っていなかったこと。

これは何年後ならOKだというような線引きはできませんが、もし5年後や10年後に眺望を遮られたのであれば、たとえそれが同じ不動産会社によるマンションだったとしても賠償を得られるとはかぎりません。

そして大きなポイントが「花火が見えること」を重視してそのマンションを原告が購入したという事情を、売主の不動産会社も知っていたということです。もし、原告がそのような動機を明らかにしないままで購入していたなら、このような判決にはならなかったでしょう。

ただし、このマンションの場合は「隅田川の花火が見えること」をアピールして販売していたようですから、購入動機を明らかにしていなくても少しは賠償が得られたかもしれません。

一定の目的をもって住宅を購入するときには、その理由や購入動機などの「条件」を相手(売主や仲介会社)に対して明確にしておくことも重要です。

損害賠償を得られればそれで解決するというような問題ではありませんが、とくに都心部のマンションなどでは、眺望や日照が法律で保護されないケースが多いことも十分に理解しておかなければなりません。

条件を明確にすることによって、あいまいな説明や調査不足による説明漏れ、あるいは意図的な情報隠しなどを防ぐ効果も期待できるでしょう。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年3月公開の「不動産百考 vol.9」をもとに再構成したものです)


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