「ビルトインガレージ」の大きなメリットとは
3階建て住宅では、ガレージを建物に組み込んだ「ビルトインガレージ」を採用するケースが多くなっています。家の中から直接アクセスすることも可能なビルトインガレージは、雨天でも乗り降りしやすく、荷物の積み下ろしも屋根のあるところで行えるのでとても重宝します。ビルトインガレージにすると、ガレージ上部を有効利用することができ、結果的に十分な居住スペースをとれる可能性がある
限られた敷地で十分な居住スペースをとり、ガレージも確保しようとすると、必然的に3階建て住宅になることが多いのですが、屋外ガレージではガレージの上の空間を利用することはできません。しかし、ビルトインガレージにすると、上の右図のようにガレージ上の空間も居住スペースに組み込むことができ、敷地をより有効に使えます。
さらに、ビルトインガレージにすると、容積率の緩和措置があります。
ビルトインガレージは建物内部に車を置くスペースを設けるため、屋外ガレージと違い、壁や天井で囲まれた空間となります。ガレージスペースも床面積に参入され、その分居住スペースが狭くなるのでは?と心配になるかもしれませんが、実は延床面積の1/5までであればガレージを延床面積に参入しなくてよいという緩和措置があるのです。
下の右図のように居住空間に容積率を最大限に活用することができ、結果的に3階の居住スペースを広げることができるのです。
容積率緩和が受けられるため、ガレージは延床面積の1/5まで面積に参入しなくてよいことになり、その結果、最大限容積を使うことができる
また、空間利用以外の可能性として、ビルトインガレージが水害対策になる場合があります。近年のゲリラ豪雨で浸水の不安がある地域で住宅を建築する場合などでは、いざというときの被害を最小限にするという観点から、主な生活スペースを2階以上に確保することに大きな意味が出てきます。1階をガレージにして、2階や3階で生活することで、非常時に暮らしを守れるように備えておくのです。
このような点から、3階建て住宅ではビルトインガレージを採用するケースが多くなっていると考えられます。
ビルトインガレージは「ただ停める」から趣味の空間へ
ビルトインガレージを新たな趣味の空間として活用するプランも見られます。たとえば、ガレージの一部を趣味のスペースとして活用することもできるため、車を複数台所有しているお宅ではガレージを広めにとり、裏動線型のビルトインガレージにして、車やバイク整備用品を置いたり、趣味の部屋としてのしつらえをすることも珍しくありません。タイヤやヘルメットのほか、関連する小物を収納できるようにし、椅子やデスクを置いて、ガレージというより趣味のスペースと呼んだほうがふさわしい体裁にすることもあります
ガレージの壁を一部、ガラスにしました。ソファを置いて、室内から愛車を愛でることができるようにしています
「ビルドインガレージ」は乗り降りのしやすい動線がカギ
ビルトインガレージのプランニングで気をつけたいのは、動線です。人が乗り降りするだけでなく、荷物の積み下ろしなどもあるので、動線についてはきちんと考えておきたいもの。車と建物までの動線が単純で短く、段差が少ないことが理想です。まず考えられるのが、玄関ポーチとガレージを一体化させる手法。車までの動線を短くすることができ、ガレージ内から玄関を経て室内に入ることができます。この場合は、ガレージに扉などを設けずオープンな仕様にすることが多いのですが、ガレージ内に玄関ドアがあるため、雨天でも濡れることなく乗り降りできて便利です。通常の人の動線と車を乗り降りする動線の2つが重複するので省スペースになり、コンパクトな敷地でよく取り入れられています。
玄関から車に乗り降りするのも、短い動線でとても便利。荷物は、写真奥に見える掃き出し窓から直接屋内に運ぶことも可能です
高齢者がいる家庭では、ガレージに隣接して掃き出し窓のような大きな開口部を設けるのもよい方法です。高齢者の部屋のすぐ近くまで車を乗り入れることができれば、屋内から車椅子で直接乗り降りすることが可能なので、安全性が高まります。
また、ビルトインガレージ内に、玄関への動線とは別に居室へ出入りできるもうひとつの動線を設ける手法もあります。さしずめ、裏動線型とでも言ったらよいでしょうか。これは、車を停めた後、ガレージから玄関へ回る手間がなくなるため、ガレージに扉を設ける場合に採用されることの多いプランです。
玄関へのアプローチとは別にガレージ内から屋内に入ることができるようにすると、天候の悪い日や、気候の厳しいときにはとても便利
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