男のこだわりグッズ

ありえたかもしれない現代の携帯型ワープロ専用機

まだスマホが登場する前、パソコンを使わずにデジタルのメモが取れるツールとして登場したキングジムの「ポメラ」は、そのシンプルさで大ヒットしました。そのポメラが、今は失われてしまったワープロが正常進化していたら、こういうものだったかも知れないと思わせる文章作成ツールとして帰ってきました。書けますよ、これ。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

「メモ用マシン」として登場したポメラ

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キングジム「ポメラ DM200」48000円(税抜)


まだスマホが登場する前、パソコンを使わずにデジタルのメモが取れるツールとして登場したキングジムの「ポメラ」は、そのシンプルさで大ヒットしました。今は失われてしまったワープロが正常進化していたら、こういうものだったかも知れないと思わせる文章作成ツールとして帰ってきたのがポメラDM200です。


「ポメラ」は発売当時、折り畳み型のキーボードが特長のテキスト作成専用機として登場したため、小型であることが大きなポイントになっていました。だから「電子メモ機」として売り出されたわけです。

一度に長い文章が入力できなかったのも、画面が小さかったのも、メモ用のデジタル機器だということで、大きな問題にはならず、持ち歩きやすくて、テキストが書けるデジタル機器として大人気になりました。

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畳むと、長方形の黒いノートのような感じになる。


その後、コンパクトでデジタルのメモが取れるといった機能は、ほぼスマホで置き換えられ、ポメラの大きな特長は失われたように見えたのですが、折り畳み型のキーボードをやめてストレート型になったポメラDM100で、入力しやすく、持ち運びもできるキーボード的な位置づけの製品へと進化を遂げました。前の折り畳み式モデルが販売を継続しているのは、ストレート型と折り畳み型は全く性質が違う製品だからですね。

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外部端子は充電、パソコン接続用のUSB端子と、SDメモリーカードスロットのみ。


ストレート型のポメラは、持ち歩けるキーボード(入力機能付)です。メモ用途ならスマホでも問題ないですが、長文を入力するにはキーボードが必要。その場合、安定性に欠ける折り畳み式よりも、ストレート型の方が入力速度も速いしミスも少ない、というのがキングジムの判断だったのだと思います。だから、その意味でも、ストレート型はメモ機ではないのです。

ただ、ポメラDM100は、メモ機としてのポメラ的な部分も多く持った、良く言えば、オールマイティなテキスト入力マシンを目指した製品だったと言えます。



文章を書くための機械、ワープロとしてのポメラへ

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正面から見ると、どこか懐かしい気がするのは、とてもワープロ的なデザインだからだろう。


今回、久しぶりの新型となったポメラDM200は、ある意味、振り切ったというか、メモ機としてのポメラを完全に切り捨てて、携帯型テキスト入力機としての機能だけを充実させた製品になっています。つまり、ワープロです。

かつて、プロの文章書きの間で圧倒的な人気を誇っていた「オアシスポケット」(※富士通が発売した携帯可能なワードプロセッサ端末)の、本当に久しぶりに出た後継と言っても良いような製品なのです。

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画面周りにボタンなどが全くないのが嬉しい。


ワープロ専用機とパソコンは、その地位を入れ替えるような形で、いつの間にか文章作成はパソコンで行うものになっていきました。さらに、インターネットの普及で、パソコン上で調べものから原稿書き、発送まで行えるようになって、いつの間にかワープロ専用機は姿を消します。

しかし、文章しか書けない、その代わり入力が快適で、持ち運びに便利で狭いスペースでも利用できる、そういったワープロ専用機は、結局、「オアシスポケット」以降、登場する機会さえ奪われていたといってもいいでしょう。

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こんな風に鞄に入るワープロ専用機は、当時はオアシスポケットくらいしかなかった。DM100より重いがワープロだと思えば十分軽い。


デジタルの進歩の隙間を縫うような形で、決してITが得意でなくても使えるツールを出し続けたキングジムが最初のポメラ発売から長い年月をかけてたどり着いた先が、現代のワープロだったというのは、それほど意外なことではないと思っています。

そして、今回のDM200は、携帯型ワープロとしては、かなり良くできています。逆に言うと、ワープロ的なツールが必要ではない人には、特に持っていても意味がない製品かもしれません。そのくらい、DM200は「ワープロ専用機」です。


長文作成に充分な入力まわりの機能

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この見やすい文字表示があって初めて、ポメラは本当の意味での文章作成マシンになった。


ワープロにとって最も大切なのは、快適な入力環境です。特に、ディスプレイは、これまでのメモ機としてのポメラにとっては、それほど重要ではなかったのかも知れませんが、文章を書くなら、本当に重要です。DM200がポメラ史上最大の7インチTFT液晶ディスプレイを備え、しっかりと明るいバックライトを持ち、大きくて見やすいアウトラインフォントが表示できるようになったことは、長い文章を書くという目的に対して最も重要な部分をクリアしたということ。

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原稿用紙のフォーマットで縦書きも横書きも出来る機能も、画面が大きくなって、より活きる。


文章を書くという行為にとって、書いた文章の目からのフィードバックというのは本当に重要なのです。どういうフォントで表示されるか、パッと見て文字が判読できるか、見間違いしにくい表示になっているか、似ている漢字の違いがひと目で分かるか、といった部分は、文章の入力速度に大きく影響します。

また、好きではないフォントだったり、輪郭が汚かったりといった文字だと、書く文章の内容まで雑になってしまいます。これは、経験上、確かなことです。文章は、目から入ってきた言葉と文字の形に大きく影響されながら書き進められていくものなのです。

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行番号機能オン、文字最大、明朝体、黒字に白文字表示、が、長文を書くのに最適な設定だと思う。


今回、DM200は文字表示を最大の48ポイントに設定して、行番号表示をオンにすると、丁度1行が20文字で表示されるようになっています。この設定で書くと、行番号を見れば文章全体の文字量がひと目で分かりますし、一般的な原稿用紙と同じ20文字詰めで書くことができるので、様々な原稿に対応できます。

相変わらず、1行の文字数が指定できないのは残念ですが、原稿用紙のフォーマットで書ける機能と、この1行20文字表示が出来るので、文字数問題は一応、解決したと考えて良いと思います。



キーボードと漢字変換もプロの使用に耐える出来

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キーボードは端を打っても問題なく次が打てるのが何よりありがたい。


キーボードについては、好みもあり、一概に打ちやすいとは言えませんが、キーピッチは17mmとサイズ的には問題ないし、何より、V字ギアリング構造のおかげで、キーの端を打ってもきちんと入力できる上に、キーが引っ掛かって戻らないということもないのが、とても魅力的です。

ポメラ伝統の親指シフト入力対応も継続して搭載しています。個人的には、もう少し深いストロークが好みですが、実際に、1万文字ほど原稿を書いてみたのですが、特に問題はありませんでした。

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漢字変換もスムーズ。パソコン用のATOKよりも、カジュアルな文章に強いように思えた。


漢字変換も、パソコン版と同等機能のATOKを搭載し、学習機能を強化。語彙数も従来機の3倍と、かなり強化されています。これも、実際に打ってみて感じたのですが、私の文章の漢字の使い方は、ビジネス的ではないせいで効率優先のATOKは、あまり合わなかったのですが、このポメラ専用ATOKでは、そういう事もありませんでした。少なくとも、iOSの漢字変換に比べたら、とてもとても快適で、スムーズに文章が作れました。入力中、一度もイラッとしなかったので、かなり良かったと見るべきだと思います。

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専門用語辞書は必要最小限の選択にした方が変換が速い。8つ程度なら速度に影響はなかった。


また、専門用語辞書を17種類内蔵して、好きに組み込んで使えるのも魅力的。ガイド納富は「日本語英語辞書」「カタカナ語英語辞書」「人名辞書」「町名住所変換辞書」「トレンド辞書」「単漢字辞書」「記号辞書」「エンタメ辞書」をオンにして使っています。デフォルトでオンになっていた「フェイスマーク辞書」はオフにしました。



無線LAN対応でiOSとのファイルのやり取りが楽に

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iPhone、iPad、MacOSのメモ帳とシンクロできるポメラSync機能で、ファイルのやりとりがスムーズ。


DM200の一番の進化は、無線LANに対応したことでしょう。しかし、ガイド納富としては、この機能については、これからだと考えています。もちろん、ケーブルなどの物理的な何かを使わずに、パソコンやiPhone、iPadとテキストのやり取りが行えるのは、とても助かります。特に、パソコンで書きかけの文章をDM200に送って、外出先で続きを書き、iPhoneで内容を確認して、またDM200で修正。帰宅後、パソコンで文章を仕上げるというようなことが簡単にできるのは、とてもありがたいことです。

しかし、これらの環境はiOSやMacOSとGmailの両方を持っていなければなりませんし、設定もやや面倒で、同期にも時間がかかるなど、やや敷居が高い仕様になっています。好きなメールアドレスに向けてテキストを送信できる機能もありますが、こちらは、さらに面倒な上に、DM200だけでは編集部に送る最終的な原稿を仕上げるには力不足な部分もあり、ガイド納富としては、それほど積極的なメリットを見出していません。書いた文章をKindleのメールアドレスに送って、Kindle Paperwhiteで電書の形で読みながら、自分の文章を校正することができれば良かったのですが、アップロード機能はテキストを添付ファイルでなくメールの本文として送るので、 kindleに送れないのは残念です。



ガイド納富の「こだわりチェック」

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このように、一つの文章を二つの画面で見ながら作業が出来る。


他にも、アウトライン機能やフレーム機能といった、文章作成に便利な機能や、ショートカットキーの割当、2つのファイルを並べて表示したり、1つのファイルを2つの画面で表示したりといった、なかなか便利な機能が揃っていますが、ガイド納富が実際に使って、本気で便利だったのは、文章の前半を見ながら、後半を作成できる画面分割機能と、文字数行数を指定したフレームを作って、中に文章を書いて行くフレーム機能の2つでしょうか。特に後者は、キャプションの作成に威力を発揮しました。

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白地に黒文字は、暗めの場所でキーボードを明るくしてくれる。


また、表示機能では白黒反転機能が意外に便利です。明るい場所で書く場合、文字がくっきり見える黒地に白文字で(この表示がまたワープロ専用機みたいで懐かしいのです)、室内で手元が暗い場合は白地に黒文字にして、ディスプレイがキーボードを照らすようにしてと、使い分けると快適でした。あと、意外に明るい場所でも画面が見えるのも良かったですね。スマホなどのBluetoothキーボードとして使える機能は、iPhoneを使っているせいか、ポメラsyncで同期するので、ガイド納富には特に使い道はないようです。

あとは、これで無線LANによるプリントアウトが出来たら嬉しかったのですが、メールアカウントを設定できるプリンタでないと印刷できないのが残念。ワープロ専用機としては印刷機能の充実も、重要な要素だけに、今後に期待します。まあ、iPhoneから印刷すればいいのですが、なるべくオールインワンで使いたいと思ってしまうのが、ワープロ専用機として使っているガイド納富の希望なのでした。


<関連リンク>
キングジムの「ポメラ DM200」公式サイト
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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