公的手当/病気やけがをしたときの手当・給付金

会社員がうつ病で休職したときに受け取れる給付金

厚生労働省の集計で「精神障害の労災補償状況」の平成28年度のうつ病による労災申請は年間1586件(昨年度より71件増)にも上るということです。そのうち給付金の支給決定件数は472件です。そのうち労災として認定された支給決定件数は498件(昨年度より26件増)です。

拝野 洋子

執筆者:拝野 洋子

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 / 年金・社会保障ガイド

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仕事上のことが原因でうつ病を発症したら生活はどうする?

ノルマが達成できずストレスに

ノルマが達成できずストレスに

平成28年10月に大手広告会社の女子社員が月105時間以上の労働で「うつ病」を発症し自殺したと労災認定されました。平成29年6月にも外国人実習生がパワハラで「うつ病」を発症、同年10月にも高野山の僧侶が1カ月の連続勤務で「うつ病」を発症したと労災認定がありました。

労災とは労働者が仕事上、通勤上の災害に対して行われる労災保険(正式には労働者災害補償保険)のことです。

厚生労働省では平成23年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」を新たに定め、労災認定を行っています。うつ病等精神障害で労災認定を受けるには以下のような基準を満たしていなければなりません。

  1. 認定基準となる精神障害を発病していること。
  2. 精神障害の約6か月間に業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により精神障害が発病したとは認められないこと。

うつ病など発病前の約6か月間に業務上の特別な出来事や具体的出来事の有無、1か月間または3か月間など期間内での長時間労働の有無、私生活上の精神的ストレスの有無など詳細にわたる基準を満たしたと認められれば労働災害として認定されます。

うつ病発症が労災だと認定されれば、労災保険から給付金

例えばうつ病や急性ストレス性障害は業務関連で発病しやすい精神障害の代表とされています。うつ病などが労災と認定され、会社の管轄の労働基準監督署へ手続きすれば支給される主な給付金を挙げてみます。

1.療養補償給付

病院通いでかかった治療費や要件を満たした交通費などが支給されます。自己負担無なので、労災指定病院なら原則無料で治療を受けられます。

2.休業補償給付
労災で療養のため、賃金を受けていなければ会社を休んで4日目から、発症直前3か月間の賃金の約8割が休業補償給付として支給されます。

うつ病が私生活上のことが原因なら健康保険から給付金

私生活上のトラブルなどが原因でうつ病などの精神障害を発病することもあります。労災認定は基準が厳しく、精神障害の労災給付支給決定率は、平成28年度で36.8%と少ないので、仕事上のうつ病などと認められないこともあります。

その場合、働くことができない(労務不能)なら健康保険から傷病手当金が最長で1年6か月支給されることがあります。会社に迷惑かと思っても極力休業中は会社に在籍していた方が無難でしょう。

復職がかなわず残念ながら会社を退職する場合でも、傷病手当金の継続給付をもらえるように注意しましょう。1年以上会社員(健康保険)を継続し、労務不能で賃金をもらわない状態(会社欠勤)が4日以上続いてから欠勤期間分を健保に傷病手当金を請求し、最後に退職するようにしましょう。休みが長くなっても有休中には退職しないことです。

健康保険から最初の欠勤期間分の傷病手当金が支給され、うつ病が治ったと思い、同じ職場に復帰または退職後再就職したとします。その後うつ病などが再発して労務不能になっても傷病手当金は原則再支給されません。とうつ病が治ってから復職する方がいいでしょう。

うつ病などの治療にかかった高額療養費を健康保険へ請求できるし、限度額認定申請書を手続きし、自己負担を軽減することもできます。

うつ病で退職ならハローワークへ受給期間延長を!

もし、うつ病状態で会社を退職した場合、雇用保険では失業等手当は申請せず、お住いのハローワークへ「受給期間延長」の手続きをしましょう。退職してから最長4年間、失業手当などを受ける権利を延長できます。

派遣会社に登録をしただけで「労務不能」ではないと、健康保険から傷病手当金の継続給付を止められたケースもあるそうなので、うつ病で通院中は求職活動は行わない方が無難でしょう。

うつ病が長引く場合は、障害厚生年金の請求を。

うつ病等に関して原則最初に病院に行った(初診日)のが、会社員(厚生年金)時代だったなら、初診日から1年6か月経過日にも、退職後でもうつ病なら障害厚生年金を請求できます。もっと軽いうつ病なら初診日から5年以内で障害手当金を請求できます。

国民年金・健保の保険料はうつ病でも自動的に支払い免除されることはありません。保険料の支払が苦しい場合は市区町村役場へ免除・猶予申請をした方がいいでしょう。

仕事上?私生活上?どちらが原因かわからない場合。

「うつ病」など精神障害の場合、仕事上か私生活上の発病なのか特定しづらいことも多いのです。労災保険の基準は厳しいため申請したものの不支給だった、その後健保に傷病手当金を申請してみたところ、2年の消滅時効で不支給になったケースがあります。

休業している被保険者が療養で大変な時期に、療養費用を全額自己負担する事態を避けるためにも、健康保険の「傷病手当金」と労災保険の療養補償給付と両方に支給申請してみましょう。

厚生労働省からも何回か「保険給付の弾力的対応」について通達があります。

民間保険の生命保険・損害保険では?

これまで生命保険会社は精神疾患に対応する保険には消極的でしたが、精神疾患の患者は増加しており、対応が変化してきています。昨年11月に突発性難聴や胃潰瘍などのストレスによる疾患が診断されると給付金が出る医療保険を発売する保険会社も出てきました。

医療保険だけでなく就業不能保険でも精神疾患で働けなくなった場合に備える保険が昨年10月に発売されています。保険料が割高な引受緩和型の医療保険を検討する前に、精神疾患に対応した医療保険や就業不能保険で加入が可能かどうか確認してみた方がいいでしょう。

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