【編集部からのお知らせ】
このたび「31歳からの恋愛相談室」がスタートいたしました。
オトナ女子の恋活・婚活にまつわる悩みに、恋愛のプロが、無料でお答えします。
ご応募はこちらからどうぞ!

記事例:「なんで結婚しないの?」に答え続けるのにもう疲れました

LGBTインバウンドって?

サンパウロのゲイパレード

サンパウロのパレードは世界最大の400万人規模!経済効果もスゴいのです。

リオ五輪がいよいよ開幕しましたね! 実はブラジルって2013年に同性婚が認められていて、政府観光局もLGBTコミュテニィと協働して海外のLGBT旅行客の呼び込みに成功しています(次の章で詳しくお伝えします)

4年後は東京五輪です。世界中からたくさんの旅行客が来られるわけですが、その中には当然LGBTの方も(しかも日本に来るのが初めてという方も)いらっしゃいますが、果たして日本の宿泊施設や観光地のみなさんは、海外から来たLGBT旅行客に気持ちよく過ごしていただくための「おもてなし」ができるでしょうか? 世界に向けて「お・も・て・な・し」って宣言してる以上、LGBT旅行客もちゃんと、ですよね。

例えば、東京五輪を見に来たついでに、北海道とか青森とか(ねぶたの時期ですしね)、全国のいろんな観光地に足を運ぶこともありえますよね。そうした時に、男性2人とか女性2人とかでダブルのお部屋を申し込むと勝手にツインに変えられたり…とか、ダブルのお部屋に入ると水色とピンクの浴衣が置かれていてゲンナリ…とかいうことがないか、心配になるわけです。

このタイミングで日本も本腰を入れて、LGBT旅行客を「おもてなし」できる体制づくりをしてはいかが? ゆくゆくはLGBT旅行客の獲得に成功しているスペインやオーストラリアや南アフリカやブラジルに続こうよ、というのが今回の記事のテーマです。 

さて、海外から日本に来る旅行(訪日旅行)のことを「インバウンド」と言います(海外旅行は「アウトバウンド」です)。LGBTインバウンドとは、海外から日本に来るLGBTの旅行自体のことですが、旅行業界でLGBTインバウンドと言うと、そういう海外の(潜在的な)LGBT旅行客に向けて、受け入れ体制を整えつつ、プロモーションを行い、実際に旅行を手配したり、LGBTフレンドリーなガイドさんを付けたりという旅行関連の諸々になります。ここでは、海外のLGBT旅行客の受け入れにまつわる観光産業全般のことをLGBTインバウンドと呼びたいと思います。

次の章で詳しくお伝えしますが、例えばスペインや南アフリカなどの同性婚を認めたような国はたいがい、LGBTインバウンドにも力を入れています。政府観光局が主導し、予算を取り、効果的なプロモーションを行い、LGBTの観光客を増やすことに成功しています。 

一方、日本のLGBTインバウンドは、やっと端緒についたばかりです。これまで、シドニーのマルディグラに行こう!とか、台湾のパレードに行こう!といったツアー(アウトバウンド)が企画されてきましたが、海外から日本に呼ぼう!おもてなしのイベントをやろう!みたいな話はほとんど聞いたことがありません。二丁目だって決して今、潤ってるわけではないのですから、官民コミュニティが一体となって、海外にプロモーションをかけ、お客様を呼ぶことをそろそろ考えてもよいのではないでしょうか?

未来学者ハーマン・カーン氏は「21世紀は観光の時代だ。観光産業が世界最大の産業になる」と述べていますが、人口や社会が縮小していき、内需拡大も見込めず、これといって世界レベルの産業がない国にとって、世界からお客様を呼ぶことって本当に重要な意味を持ってきます。日本は残念ながら、この分野では海外諸国に遅れを取っているのではないでしょうか…?

 


 

LGBTインバウドの本筋 ~海外の事例から~

UNWTO(国連世界観光機関)が2012年に発表した「Global Report on LGBT Tourism」という、豊富な実例やデータを備えつつ包括的にLGBTツーリズムについて概観した資料があります。こちらをひもときつつ、海外の事例を紹介しながら、LGBTインバウドの本筋がどういうものかを見ていきたいと思います。

シッチェスの広告

世界的に有名なゲイリゾート、シッチェス。そのプライドイベントはシッチェス市が後援についています。

LGBTインバウンドで最も成功している国といえば、スペインです。世界第2位を誇る観光収入のうち10%をLGBT旅行客が占めており、観光庁の方は「スペインの現代社会のリアリティへの適合は、政府の2005年の結婚の平等達成のプロモーションでかなり成功した。同性婚法は間違いなくスペインのイメージをポジティブに変えた。今日のスペインはオープンマインドで、偏見の無い国である。寛容で、どんな旅行者も歓迎する。そこが、世界中から訪れるLGBTがベストな旅行先と確信する理由だ」「我々は誇りを持って世界中のLGBTを歓迎する」と述べています。マドリッドやバルセロナ、シッチェス(有名なゲイリゾート)などは「LGBTの求めるものに適合し、LGBTによくリーチしている」といいます。

サンパウロのパレード

サンパウロのパレード( 2010年)。見渡す限り人、人、人…

ブラジルでは2008年に政府主導でLGBTの権利についての全国会議が行われ、2011年にシビルユニオンが、2013年に同性婚が認められました。2009年からは観光局がLGBTコミュニティと協働してインバウンドに乗り出し、多くの旅行先がLGBT観光客のためのよりよいサービスの提供に努め、南半球で初のIGLTA(国際ゲイ&レズビアン旅行協会)年次総会の誘致に成功しました。旅行博でのリオ五輪やW杯のプロモーションの際も、LGBTの旅行先も合わせて情報提供していたそうです。ブラジルの調査会社は、サンパウロのパレードに400万人超が訪れ(そのうち65万人が旅行客で15万人が海外から)、プライドウィークの期間中、同市の収入は平均して20~25%増加、パレード関連での雇用の増加は30%超となったことを明らかにしました。サンパウロのパレードの経済効果は2億~2.75億レアル(80億~110億円)にも上ります。

南アフリカのゲイウエディング

南アフリカの同性結婚式ツアーのサイト。雄大な自然の中での挙式…憧れますね。

南アフリカは人種やジェンダーや性的指向に基づく差別が禁止されるという先進的な憲法を持ち、アフリカで初の(世界でも5番目の)同性婚承認を実現した国で、LGBT旅行者は大変歓迎されます。南アフリカのLGBTインバウンドは1996年に始まり、年々増加するLGBT旅行者のニーズを満たすため、たくさんのツアーオペレーターがIGLTAに加盟しています。LGBT旅行者はラグジュアリーでロマンチックな体験、動物を間近で見れるパーソナル・サファリツアーなど、息を呑むようなシーンへのニーズを増大させています。アフリカらしさを失わずに発展している都市の美しさも魅力となっているようです。「アフリカのゲイの首都」と呼ばれているケープタウンは、ナイトライフも充実していて、ゲイシーンも栄えています。ゲイのゲストハウス、バー、レストラン、そしてビーチ。同性結婚式や新婚旅行のパッケージツアーも世界的な成功を収めています。LGBT旅行客に口コミでその魅力が伝わって、南アフリカはLGBTにとって「一度は行かなくてはいけない」旅行先のリストに載ろうとしています。 

これらの国以外でも、例えば、今年のニューヨーク・プライドには史上最高の200万人が集まり、まだデータは出ていないですが、海外からもたくさんのLGBTが訪れたと言われています。ちなみに、2011年にニューヨーク州で同性婚が認められて以来の1年間で、結婚証明書の発行手数料や挙式関連の出費などが市にもたらした経済効果は2億5900万ドル(約265億円)(2012年のCNNの記事より)、2015年のアメリカ全土での同性婚承認による経済効果は81.3億ドルに上るそうです(2015年、UCLAウィリアム研究所の試算による)。

パレードといえばほかにも、サンフランシスコが約100万人、ロサンゼルス(ウェストハリウッド)が約40万人、トロントが約120万人(経済効果は2億カナダドル=約156億円 bitsLOUNGE, 2011)、シドニーのマルディグラが約50万人(経済効果は3000万豪ドル=約28億円 AFP,2013)という規模で盛り上がっていて、それぞれ数万人~10数万人の海外LGBT客を呼び込んでいると言われています。パレードは毎年ですが、4年に1回、ゲイゲームズという国際的なスポーツ大会も開催されていて、2002年にシドニーで開催されたゲイゲームズ(後に詳述)も約14万人を動員し、経済効果は1億ドル以上に上ったそうです(2002年、地球の歩き方より)

アジアにも目を向けてみましょう。世界のゲイ旅行ガイドとして有名な『スパルタカス』が2013年に発表したゲイフレンドリーな国ランキングを見ると、タイが上位(30位。ちなみに日本は60位)に来ています。寛容な仏教国で、人々もフレンドリー(「微笑みの国」ですからね)、そして魅力的なビーチリゾートに恵まれ、ソンクラン(水かけ祭り)の時期には巨大なパーティも開催され、アジアからも欧米からもたくさんのゲイが集まります。

台湾同志遊行

台湾のパレード(2012年)。日本からもたくさんの人が参加しています。

台湾もまた、多くの海外LGBT旅行者を呼び込んでいます。民主化が進む中で人権擁護の観点から同性愛者の権利が急速に拡大し、2003年にはアジアで初めて同性婚が国で議論の俎上に乗り、話題になりました。台北市政府はLGBTの予算を持っており、学校でも偏見を打破するような教育が進んでいて、パレードにも助成しています。そうして台北のパレードは内外から参加者を増やし、アジア最大規模に成長しました。2015年の参加者は約8万人(うち5000人くらいは旅行者とみてよいでしょう。日本からも相当たくさん出かけています)、経済効果を算出したデータはありませんが、1億円は超えているのではないでしょうか。

UNWTOのレポートでは、「経済的利益を超えて、結婚の平等を承認することは、寛容さ、尊敬、先進性、オープンマインドさのパワフルなブランドイメージたりうる。結果的にLGBTの旅行者を増やすだろう。アルゼンチンやスペインがいい例だ」「LGBT旅行者の多様性の理解に努め、顧客との関係を強めたいと願うならば、マーケットについて学ぶことだ。さらに言うと、LGBTをひきつけようとするすべてのビジネスと旅行先は、国が同性愛者を受容するように(同性婚などを法制化するように)働きかける義務を負う」と述べられています。同性婚や同性パートナー法が認められているか否かが非常に重要だというのです。

その上で、「確かにすべてのゲイが、ゲイ的な製品・サービスを消費するわけではないが、製品・サービスから排除されたいと思っているゲイはいない。ツーリズムの関係者はLGBT旅行者がポジティブな経験ができるように努めるべきだ」とも述べられています。異性愛カップルしか想定されていない(同性愛者が排除されている)と感じられるようなサービスはダメで、LGBT旅行者が気持ちよく過ごせるような配慮、努力が必要だということです。

まとめると、海外のLGBTが旅行先として選ぶ上での基準は、まずその国・地域がLGBTフレンドリーかどうか(同性婚などの法整備が進んでいるかどうか)、観光産業としてLGBTを受け入れる体制が整えられているか、パレードなどのLGBTイベントが盛り上がっているか、旅行地として魅力的かどうか(景色がきれいというだけでなく、ナイトライフやリゾート、ゲイシーンが充実しているかどうか)ということになりそうです。

 


 

日本の現状と先進的な事例

翻って、日本はどうでしょうか? 前章で参照したUNWTOのレポートには、タイやインドネシア、フィリピン、インド、ネパール、韓国などの名前は挙がっていますが、日本は全く出てきません。日本は今や、アジアで初めて自治体レベルで同性パートナーシップ証明を認め、台北に次ぐ大規模なパレードを成功させていますが(今年の東京レインボープライドの参加者はのべ7万人で、台北の8万人に迫る勢い)、海外からはLGBTフレンドリーな旅行地とは見られてこなかったのです。

Atlantisゲイクルーズin鹿児島

鹿児島港に寄港したゲイクルーズの「黒船」。お客さんたちはとても礼儀正しく、また教養を感じさせたと観光地の方が話していたそうです。

日本でLGBTインバウンドが端緒についたのは、おそらく2010年3月、大勢の海外のゲイの方たちが豪華客船から鹿児島の港に降り立った時(詳しくはこちら)だと思います。カリブ海やメキシコや欧州で数千人規模のゲイクルーズを成功させてきたアメリカのAtlantis社が初めてアジアンクルーズを運航し、とうとうレインボーフラッグを掲げた「黒船」が日本にもやってきたのです。日本のゲイコミュニティではそのことは知られていませんでしたが、当時マグネットという小さなゲイの旅行会社があり、そのスタッフが彼らを出迎え、Atlantisの社長と話をして、海外のゲイの中にも日本に関心を持っている方がいるということを知りました(その時お出迎えをした一人が、のちにOut Asia TravelというLGBTインバウンドの会社を立ち上げた小泉伸太郎さんです)

Shangri-La@ageHa

今年4500人の動員数記録を作った「Shangri-La」(写真は2012年)。クラブに行かない方はピンと来ないかもしれませんが、海外から1000人も呼べるってスゴいことですよ。LGBTインバウンドの見本です。

実は、2007年に開催された東京プライドパレードで、実行委員会が観光庁に交渉して「ヴィジット・ジャパン・キャンペーン(YOKOSO!Japan)」のロゴの使用の許可を取り付けるという画期がありました。実際、台湾辺りからパレードを見に来られた方が結構いらしたように見受けられました。また、それ以前から、台湾や香港、韓国、タイ、シンガポール辺りのゲイの方たちを大勢呼ぶイベントがありました。新木場のageHaで開催されるShangri-Laというゲイのクラブパーティです。今年7月のShangri-Laは(ゴトウも行きましたが)掛け値なしに1000名くらいは海外から来られていました(Shangri-Laの前夜や翌日は二丁目にアジア系の方たちがあふれていました)

2012年にはOut Asia Travelが設立され、本腰を入れて海外のお客様のアテンドを始めるとともに、国内の旅行業者に向けてセミナーを開いたり、IGLTAに加盟するホテルを増やしていったり、受け入れ態勢の整備を進めてきました(国内の宿泊をはじめとする旅行業者にLGBTのことを認知させてきたのです)

グランヴィア京都企画の同性結婚式

ホテルグランヴィア京都と春光院のコラボで生まれた海外同性カップル向け仏式ウエディングのプラン。

全く知られていませんでしたが、実は、2006年にすでにIGLTAに加盟していたホテルがありました。それがホテルグランヴィア京都です。LGBT旅行客を歓迎したいという気持ちで加盟し、初めは社内研修などをやっていたそうですが(それこそ同性カップルのダブルベッド利用などについて)、2012年にOut Asia Travelが主催したセミナーに参加して「やっとどうすればよいか、わかった」といいます。その後、パレードにブースを出展したり、積極的にコミュニティに関わりをもつようになり、2014年には、京都の春光院と協力して仏式での同性結婚式のプランを企画し、内外で話題を呼びました。担当の池内志帆さんはIGLTAアンバサダーとしても活躍し、今年のIGLTA総会で小泉さんとともに表彰されました。

ホテルパームロイヤルNAHA

ピンクドット沖縄などのイベント時に掲げられる巨大なレインボーフラッグは、多くのLGBTを感動させてきました。

もう1つご紹介したい事例が、沖縄のホテルパームロイヤルNAHAです。こちらに代表取締役総支配人・高倉直久さんへのインタビューも載っていますが、もともとゲイの方が身近にいて、ピンクドット沖縄(パレードではなく、ピンクの服を着て参加する集会としてのプライドイベント)に参加したことでLGBTについての理解を深め、ホテルに巨大なレインボーフラッグを掲げたり、地元のゲイのスポーツイベントに協賛したり、素晴らしくゲイテイストなうちわを配布したり、同性カップルもハネムーンプランを利用できるようにするなどして、コミュニティからも支持を得てきました。

2015年は様々なことが動いた年でした。9月に東京と京都で観光関連産業の方に向けた「LGBTインバウンドセミナー」が開催され、NHKの朝のニュース(首都圏版)で放送されるなど、メディアからも注目を集めました。その時にパネリストとしてIGLTAの広報ディレクターであるロアン・ハルデンさんが来日していたのですが、彼女はその足で奈良市にも出向いて市長と懇談し、奈良市が日本で初めて自治体としてIGLTA加盟することを発表しました。

OUT JAPAN

海外のLGBTに向けたポータルサイト「OUT JAPAN」が立ち上げられました。

また、海外にはほとんど知られていなかった日本のLGBT事情を伝えるべく、OUT JAPANという英語サイトが立ち上げられました。日本初の英語版LGBTポータルで、フレンドリーなバー・レストラン・ホテルなどの情報やニュース、イベント情報などが盛り込まれています。これを機に、アウト・ジャパンという会社が立ち上げられ、観光関連産業の会社に向けたセミナーなども行うようになりました。今年5月、JTAをはじめとする沖縄のJALグループ7社は(アウト・ジャパンがセミナーやコンサルティングを実施したこともあって)、同性パートナーのマイル共有を認め、LGBTを支援していく姿勢を打ち出し、ピンクドット沖縄にも協賛しました。

 


 

日本の魅力をどうプロモーションしていくか

日本が世界のLGBTに魅力的な旅行先として認知されていくためには、どうしたらよいでしょうか?

同性パートナー法や同性婚が認められていない、差別禁止法すらない現状では、残念ながらLGBT先進国とはとても言えません。たとえ海外に向けてLGBTフレンドリーですよとプロモーションしても、説得力に欠けることでしょう。今後の法整備が求められます。ということは前提としてありつつも、日本ならではのLGBTフレンドリーさや魅力、海外にアピールできる強みみたいな部分はないのでしょうか。ゴトウはいろいろあると思っています。

まず言えるのは、日本は異性装者やトランスジェンダーに優しい国だということです。三橋順子氏の『女装と日本人』にも書かれているように、古来より異性装に寛容な(というより、神格化されていた)お国柄で、歌舞伎や宝塚のような文化が尊重されてきた稀有な歴史があります。おそらく日本ほど異性装者やトランスジェンダーが安全に過ごすことができる(男性がそれとわかるような女装姿で街を歩いていたとしても、脅されたり殴られたりしない)国はないですよね、タイとかを除けば。二丁目には今年50周年を迎える「ニュー・サザエ」という老舗のディスコがありますが、週末になると女装した方がたくさん集まり、いろんな方が入り乱れてハッピーに踊っています。

日本のドラァグクイーン

日本のドラァグクイーンの素晴らしさをぜひ海外の方にも知ってほしいです(写真は2015-2016の女装紅白)

LGBに関して見ても、クラブシーンを中心に、独自のカルチャーを発展させてきて、Shangri-Laのようにアジア中から1000人ものゲイが集まるイベントもあります。二丁目で毎週末行われているイベントも、驚くほどバラエティに富んでいて、海外にはない豊かさ・楽しさがあります。二丁目はエンターテイメントの宝庫です。特にドラァグクィーンのクオリティの高さと、イベントの多彩さ(音楽だけ見ても、世界標準なHOUSEからJ-POP・アニソンまで、実に多彩です。テーマも毎週ごとに違っていて、本当に面白いです)は目を瞠るものがあります。これはぜひ、海外のLGBの方に知っていただきたい、経験していただきたいところです。二丁目だけでなく大阪のゲイナイトもそんな感じなので、京都観光と合わせてオススメしたいところです。

それから、日本だってタイとかに負けないビーチリゾートがありますよね。そうです、沖縄です。昨年、那覇市がLGBT支援宣言を行い、今年のピンクドット沖縄では同性パートナーシップ証明制度スタートを記念してゲイカップルの結婚式も行われました。JTAをはじめとする沖縄のJALグループ各社もフレンドリー宣言しています。パームロイヤルなどLGBTフレンドリーなホテルもいくつかありますし、沖縄は「レインボーアイランド」に向けて着実に足どりを進めています。沖縄は、美しいビーチの宝庫ですから(すでに大規模なビーチパーティも開催されています)、パタヤのように、LGBTフレンドリーなリゾート地としてもっと欧米の方からも人気を博するポテンシャルを持っているはずです。

今後、官民が一体となって海外へのプロモーションを展開し、日本が、少なくともタイのようにLGBTフレンドリーと認知され、海外のLGBTから支持される旅行先になっていったら素敵だなあと思います。そのためにはまず、旅行客を受け入れる観光産業(ホテルなど)のLGBTフレンドリー化を進めていかないと…ですね。(なお、観光産業の方たちに向けて、LGBT旅行客にどう対応したらよいかをまとめたハンドブックが9月に刊行される予定です。詳しくはアウト・ジャパンにお問い合わせください)



 

夢を語ろう~ 日本で開催してほしい世界のLGBTイベント

最後に、LGBTインバウンドに関連して、日本でもこういうことが実現したら素敵じゃないですか?という「夢」を語りたいと思います。誰も「夢」を語らないと物事は動きませんが、この「夢」が大勢の方に共有されれば、それが「夢」じゃなくなる、現実のことになっていく可能性を持ちうると思うからです。もちろんゴトウもできる限りのことをします!

東京五輪で「プライドハウス」を!

2010年のバンクーバー五輪の時に、LGBTの選手や旅行客が安全に過ごしたり交流を深めることを目的とした「プライドハウス」が設立されました。以後、UEFAの2012年ワルシャワ大会、2012年のロンドン五輪、2014年のグラスゴーのコモンウェルス(英国系の国のスポーツ大会)、2015年のトロントの汎アメリカ大会でも設けられ、今回のリオ五輪でも、CDGブラジルというブラジルのLGBTスポーツNGOが運営しています。

今回のリオの「プライドハウス」では、LGBTの選手やファンの方たちが集えるような安全でウェルカムなスペースの提供、大スクリーンで開会式や競技をみんなで観戦する機会の提供(ドラァグクィーンやDJもいて、雰囲気を盛り上げるそうです)、LGBT旅行客には地元のゲイバーやクラブの紹介なども行われているそうです。週末には「プライドハウス」に隣接する公園で、バドミントンなどのレジャーを楽しんだり、交流を深められるようなイベントも。また、オープニングレセプションや、LGBTスポーツのこと(スポーツにおける平等)について議論するシンポジウムなども開催されたとか。(詳しくはこちら

2020年東京五輪の際も、ぜひプライドハウスを設けるべきでしょう。今の東京のLGBTコミュニティならきっとできるはず!

日本でもゲイゲームズを!

ゲイゲームズとは、1982年にアメリカのトム・ワデル博士(自身もゲイであり、エイズで亡くなりました)がゲイコミュニティのエンパワーやスポーツ界での同性愛者の平等の達成を目指して始めたものです。本家同様、4年に1回、世界各地の都市で持ち回りで開催、という構想でした。

ゴトウは2002年のシドニーのゲイゲームズの取材に行ったのですが、五輪で使ったトラックやプールなどをそのまま使ってLGBTが思い思いにスポーツを楽しんでいて、プールではドラァグクィーンの方が飛び込んだり、シンクロとショーを組み合わせたゲイテイストなアトラクションもあり(ぜひ、日本の皆さんに見ていただきたいです)、シティホールでは男性ペア、女性ペアの社交ダンスが行われ、ゲイのボディビルコンテストやエアロビの競技などもあり(種目がそもそもゲイテイスト)、それはそれは楽しく、素晴らしい経験でした。

しかも、華やかで感動的な開会式や閉会式(カーペンターズの「Close to you」が流れる中、オランダのゲイカップルが抱き合って踊っている姿を目にして、思わず涙が…)だけでなく、期間中いくつもの巨大なクラブパーティが開催され(レザーパーティなどもありました)、本当に楽しかったです。日本から行った人たちの集まりなどもあって、そこでお友達ができたりもして、心から行ってよかったと思いました。初めてのマルディグラ、ゲイクルーズと並ぶ、人生観が変わるような3大海外体験の1つになっています。

このゲイの五輪、複雑な経緯を経て、現在2つの大会が別々に開催されているのですが(もう1つはWorld Out Games という名称)、いずれの大会も開催地は全て欧米でした(アメリカ、カナダ、オランダ、ドイツ、フランスなど。シドニーだけが例外)。これが東京で開催されることには、ものすごい意義があると思うのですが、いかがでしょう? 東京五輪の会場を使い、世界中からLGBTが集う(10万人以上の訪日が見込まれ、経済効果も億単位です)、アジア初のゲイゲームズ。素敵じゃないですか?

IGLTA総会、ILGA総会など

IGLTAの年次総会も世界の様々な都市で持ち回りで開催されています。世界中から何千というIGLTA会員が集まり、会議をしたり、表彰式をしたり、交流を深めたりします。未だにアジアには来ていないIGLTAの年次総会をぜひ日本で!と考え、動き始めている方もいらっしゃいます(開催地の自治体がIGLTAに加盟していないといけないので、まずはそこからです)

ILGA(国際LGBTI協会)も世界中から活動家が集まる国際会議を開いています。ILGAは1978年にイングランドのコヴェントリーで行われていた会議で発足し、ゲイやレズビアンの権利擁護に関する世界的な課題を解決するための活動を始めました。そこから約2年に1回ペースで国際会議が開かれています。今年は11/28~12/2にバンコクで開催(アジアでは2回目)。そのあとは決まっていないようですが、名乗りを上げれば、東京でだって十分可能性があると思います。

実は日本でもすでに開催されたLGBTに関する国際会議があります。エイズ国際会議です。1994年に横浜でエイズ国際会議が開催され、故・古橋悌二氏らが「LOVE BALL」という素晴らしくドラァグクイーンだらけなパーティを成功させました。2005年には神戸でアジア太平洋地域のエイズ国際会議が行われ、MASH大阪をはじめ多くのゲイの方たちが参加していました。すでに国際会議を成功させてきた実績はあるのです。


 

【今月のトピック】リオ五輪はLGBT的にも素晴らしかった!

前回の記事からの数ヶ月間、いろんなことがありました。

7月に開催された第25回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)、たいへん華やかで盛況で素敵なカルチャーフェスティバルになりました。7月8日(金)には公式パーティ「ル・グランバル」が開催され、9日(土)からはシネマート新宿での上映がスタート、そして12日(火)から表参道のスパイラルで初の「OUT IN JAPAN 1000人展」も行われ、15日(金)にはレスリー・キーさんのおかげで素晴らしくゴージャスなオープニングを飾り(レポートはこちら)、18日(海の日)に閉幕しました(クロージングの模様はこちら)。来年は25周年。楽しみですね。

8月5日、とてもとても悲しい、やりきれない思いがするニュースが入ってきました。一橋大法科大学院生のゲイの方が同級生に告白したものの、同級生は仲間内のLINEグループで彼がゲイであることをバラし、彼はその後、同級生に会うと吐き気や動悸を覚えるようになり、心療内科に通うようになり、大学のハラスメント相談室にも相談しましたが、昨年8月、校舎のベランダから転落という形で自死したというのです(詳しくはこちら)。まだまだ世間のホモフォビアが根強い現状で、ゲイだと「アウティング(本人の意志に反してバラすこと)」され、好きになった人に裏切られ、どれだけつらかったことか…。大学側も適切な対応を取ってくれないなか、精神的に追い込まれ、絶望してしまったのでしょう。大学側は性同一性障害専門のクリニックを勧めてきたそうで、なんたる無知…とめまいを覚えました。また、彼が自死した件も教授会などで全く報告されませんでした。その後、大学の前で追悼集会が開催されましたが、警備員に「もうやらないでくれ」と追い返されたそうです。日本の法曹を輩出する大学としてこの対応はどうなのか…と疑問を感じずにはいられません。ただ、一橋大学ジェンダー社会科学研究センターも動き始めましたし、裁判にもなっていますから、今後、大学側も変わっていかざるをえないと思います。ぜひ多くの方に考えていただきたい問題だと思います。

リア・T

開会式でブラジル選手団を率いたのはトランスジェンダー・モデルのリア・T。素敵です!

一方、8月6日(現地時間)にはリオデジャネイロ五輪が開幕しました。あまりニュースでは報道されないので知られていないと思いますが、今回のリオ五輪はLGBT的にも素晴らしいものになっています。まず、オープンリーLGBTIの選手が過去最高の51名となりました(8/15現在。詳しくはこちら)。ロンドン五輪の2倍です。そのうち柔道女子ブラジル代表のラファエラ・シルバ選手(レズビアンの方)が見事に金メダルに輝いたのをはじめ、今のところ全部で5名のLGBTIの選手がメダルを獲得しています(8/10現在。詳しくはこちら)。それから、開会式でブラジル選手団を率いて自転車を漕いでいた女性、実は世界的に有名なトランスジェンダーのスーパーモデル、リア・Tだったんです(拍手!)。それから、大会中には7人制ラグビーのブラジル代表、イサドラ・セルロ選手が公開プロポーズを受けるなどの感動的な場面も。4年後の東京五輪ではどんな素敵な光景が見れるのか、今から楽しみですね!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。