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「エア恋愛」にハマる女性たちの「喜びと虚しさ」

SNSなどで知り合い、会わないままLINEやメールでやりとりを続ける既婚女性のことをちらほらと聞くようになった。彼女たちは「これも恋」だと言うし、否定するつもりはないが、果たしてそういう関係はいったいどこへ向かうのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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スマホを使った「エア恋愛」

エア恋愛

エア恋愛

一昔前、「男友だちがいるから不倫などしない」と言うアラフォー既婚女性たちがけっこういた。お互いに好意をもっているとわかる男友だちと食事をして、家庭や職場では出せない“素の自分”をさらけだす。だからといって、その彼とは恋愛関係にはならない。好意はあっても恋にはしない、そのすれすれの雰囲気を楽しむのがいいのだ、と。そこには恋愛感情を巧みに避けて、友情という形で男性との関係を育む女性の姿があった。

そして今――。スマホを使った「エア恋愛」を楽しむ女性たちの声をちらほらと聞くようになった。

現実の恋愛はリスクが大きい。もしもバレたら、大事にしている家族との関係も危うくなる。それに実際の恋愛をしたら、自分が平常心でいられる自信もない。それでも、誰かに女として好きだと言われたい、女として愛されているという実感がほしい。そんな思いで、女性たちはエア恋愛に走る。


会ったことはないが「これも恋」

スマホでエア恋愛

メッセージのやりとりはしているが、会ったことはない。

SNSで知り合った男性とここ半年ほど、会わないままメッセージのやりとりをしているワカコさん(42歳)。

「彼と知り合ってから毎日の生活に張りが出ました。ときどきお互いの写真を送りあったりしています。疑似恋愛かもしれないと思うこともあるけど、遠距離だから会えないし、それがかえってよかったと思っているんです。私は彼のことが好きだし、『いつか会おうね』と約束している。この過程が恋なのだから、これはリアルな恋なのだと思っています」

彼女にとっては、決して「エア恋愛」ではないのだ。確かに、リアルな人物とのやりとりなのだから、「エア」というのは失礼かもしれない。だが、会ったことのない人と恋をしている感覚というのは、今ひとつわかりづらい。


自分で自分を抑制する、リスクを冒さない恋

家庭はうまくいっている

家庭を壊す気はない。

言い換えれば、リスクのない恋といえばいいのだろうか。だが、こういう関係の場合、恋に恋する気持ちが強くなって、どんどん現実から離れていったりはしないのだろうか。

「中学の同窓生とSNSで知り合って、LINEのやりとりをしています。クラスが別々だったので、当時のお互いの記憶はないんです。それでも同窓生だというだけで親近感がわいたし、懐かしい地元の話もできる。それと、彼も私も配偶者とセックスレスなので、そういうこともぶっちゃけて話せる。会ったことはないけど、ありがたい相手だと思っています」

カオルさん(38歳)はそう言う。

会ったことのない相手だから、もちろん2~3割は、割り引いて見ている。お互いに恋をしているような気持ちになって盛り上がっているけれど、実際に会ったらうまくいくかどうかはわからない、とカオルさんは冷静に見ている。

「会う予定はありませんが、もしも会ってしまったら、きっとそのまま肉体関係になだれこんでしまうでしょうね。そうなると嫉妬したり、今の生活を不満に感じたりするかもしれない。だからいいんです、このままで」

その冷静さが、なんとなくせつない。自分で自分を抑制しておかないと、いつ爆発するかわからないという怖れもあるのだろうか。

「セックスレスが長いから、リアルで機会があったらあっけなく浮気してしまうかもしれないと、自分で自分を怖れているところはあります。夫とうまくいっていないわけではないけど、夫といても楽しくはないんですよね。子どもがいないと話すこともないし。何時間も夫としゃべるという友だちがいるんですが、うちではそんなことはあり得ない。そういう自分のいろいろな欲望を抑え込んでいられるのは、彼がいるおかげかもしれない。だから、エア恋愛だといわれてもかまわないし、この関係だけは守りたいんです」

カオルさんは、きりっとした表情でそう断言した。

セックスレスについて夫と正面切って話し合おうとしたが、それを持ち出すと夫との仲が険悪になるだけだった。その話題さえ持ち出さなければ、夫は子どもたちのいい父親ではある。だからそれについては封印した。夫を男として愛さない代わりに、男として愛せる対象がたまたま出てきてしまったのだ。だが、家庭を思えば無茶はできない。ほとばしる思いは封じ込めるしかないのだ。


リアルな不倫の恋で身を焦がしている女性たちが増加する一方で、自分を抑え込みながら生きている女性たちもいる。以前なら、結婚したら夫以外男性とはいっさい関わりをもってはいけないと思い込んでいたようなタイプの女性たちが、ツール発展のおかげで、こういうエア恋愛に走っているのかもしれない。

こういう関係は最終的にどうなるのだろうか。もう少し、彼女たちの様子を見続けていきたいと思う。


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