部屋探し・家賃

賃貸で家賃が払えなくなったらどうする?

多くの人にとって最大の支出は家賃。そのため、病気や失業その他で収入が減る、無くなるなどの事態が起きた場合、一番問題になるのも家賃。払えなくなったらどうなるか、打つ手はあるのかを見ていこう。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

滞納=即刻退去というワケではない

家賃が払えなくなっても、すぐに契約解除、退去を求められるというわけではない。単純に払い忘れたのであれば、早々に払い込めば良いし、払えなくなってしまったのであれば、まずは大家さんにすぐ連絡することが大事だ。

というのは、民法では賃貸借契約のような継続的な契約関係では、当事者間の信頼関係を基礎と考える。一度、支払いが遅れた程度では信頼関係が破壊されたとまでは考えられないため、契約解除までは至らないとするのである。だが、逆に何度も滞納を繰り返し、大家さんからの電話を無視、返信もしないとなると信頼関係が壊れたとされてしまう。払う気があり、申し訳ないと思うのであれば、逃げ隠れせず、事情を説明してどのように払うかを相談するほうが信頼関係が壊れたとされず、退去させられずに済むのだ。

だが、実際には逃げ隠れする人が非常に多い。病気、怪我、失業等で収入が減る、無くなるなどの場合には家賃以外も含めて、今後どうしたらよいか、ある種パニックに陥ってしまうからだが、それを続けるとどうなるか。まずは電話、訪問、封書などで連絡が来る。最近は滞納が増えているため、管理会社、大家さんは神経質になっており、早いところでは振込み予定日の翌日から、振込み確認の連絡が来ることもある。

催促の電話、訪問を受けるのは辛いが、冷静に考えると、これは本人のためにも良いこと。毎月払っていても家賃の負担は大きい。それを溜めてしまい、1カ月に2カ月分払うとなると、払いたくても払えなくなってしまうこともある。となると、どんどん負債が増えてしまい、払えなくなってくる。早いうちに未払いに気づくほど、破綻の危険性は減るのである。

逃げ隠れして2カ月以上すると訴訟沙汰、強制執行に至ることも

最初に逃げ隠れしてしまった場合の、以降の段取りは会社によって異なる。たとえばある会社では1カ月後からは内容証明郵便で契約解除予告状を送付、その後、1~2カ月後には「契約解除及び明け渡し請求」を送り、契約を解除、退去を迫る。

だが、そのやり方で契約を解除しても強制的に退去してもらえないため、滞納が2カ月以上続く場合には明け渡し訴訟を準備し、強制執行をかけるという会社もある。その場合は弁護士が登場、内容証明が届くが、それを無視、さらには口頭弁論の期日に出廷するようにとの裁判所から連絡をも無視、出廷しないでいると滞納した本人の思惑とは関係なく、裁判は淡々と進み、部屋を明け渡すべしという結論が出る。そうなると、もう、待ったなしである。

多くの人は弁護士からの連絡、裁判所からの通知あたりで自ら退去することが多いそうだが、それにも反応しないでいるといよいよ強制執行だ。これは、部屋の明け渡しを強制的に執行されるというもので、簡単に言うと無理やり部屋から出され、住む場所を失うというもの。当日は執行官、運送会社がやってきて、入居者を着の身着のままで室内から出し、すべての荷物を持って行く。結果、入居者は住所不定の人になってしまうのである。

夜の公園

住む場所を失うことの影響の大きさを考えると、公園や河原でも暮らせるなどと安易に考えてはいけない


そうなると、人生をやり直すのが難しくなる。というのは、日本ではほぼすべての書類に住所を書く必要がある。就職するのはもちろん、年金や保険などに加入、受け取る際に支障が出たり、社会的に信用されなくなるなどの可能性があるのだ。また、強制執行で住む場所が無くなっても滞納した家賃が棒引きになるわけではなく、逆に強制執行にかかった額がプラスされるので借金は大きくなる。契約内容によっては遅延損害金が加算されることもある。逃げ隠れすればするだけ、払う金額が増えるわけで、それよりも冷静に対処することが大事なのである。

大家さんに相談、支払い交渉をしてみる

家賃が払えない、払えなくなりそうということが分かったら、まずは大家さんあるいは管理会社に相談してみよう。その時点で親に借りるのでいつになったら払える、現在就職活動をしているので、来月になればなんとかなりそうなど、事態の打開案が分かっていればそれも合わせて事情を報告、状況に応じて、たとえば、しばらく家賃の額を減らしてもらえないか、今月の支払いを伸ばしてもらえないかなどといった交渉をしてみよう。大家さんとしても無断で延々滞納をされるより、誠意を持った交渉ができ、少しずつでも払う意思があるならと応じてくれる可能性はある。

契約時に預けた敷金を家賃に充当できないかと考える人もいるだろうが、これは基本、できない。多くの契約書には「本物件を明け渡すまでの間、借主は、敷金をもって、賃料その他本契約に基づく乙の債務と相殺することができない」などといった文言が入っており、また、過去の判例でも敷金を借主に返還する義務が発生するのは借主から物件の明け渡しを受けて以降となっているのである。

ただ、大家の側からそうしてもいいという提案があった場合には敷金を充当してもらえるが、そうしたことを言ってもらえるのは日頃から良い関係が築けているなど、ごくまれなケース。自分から言い出してもダメと考えておきたい。

また、同時に連帯保証人にも連絡を入れること。連帯保証人は本人同様に請求を受ける立場である。いきなり、家賃を本人に代わって払ってくださいと連絡を受けるより、本人から謝りの一言を入れておくべきだろう。連帯保証人が親や親族などの場合には、そこで多少の借金ができないか、相談してみる手もあろう。

余力があるなら早めに安い部屋に住み替える

もし、払えなくはなりそうなものの、まだ手元に多少の余裕があるなら、現在よりも家賃の安い場所に住み替えて滞納を出さないようにする方法も考えられる。居住環境としては非常に狭くなるが、最近では初期費用、連帯保証人不要で安く借りられるシェアハウス、ドミトリーなどがあるので、しばらくはそうした住まいで凌ぎ、就職するなどして払えるようになったら引っ越すというやり方である。途中で滞納、不義理をせずに済めば、次の住み替えもできるのだ。

公的な相談機関などに頼るという方法も

自分一人ではどうしようもないという場合には公的な相談窓口などに相談してみよう。たとえば、失業してしまい、家賃が払い続けられない、退去を求められているなどの場合で、就労能力及び就労意欲のある人に関しては、自治体が住居確保給付金の支給を行っている。

申請日に65歳未満で、かつ離職の日から2年以内であること、主たる生計維持者であること、ハローワークに求職申し込みをし、常用就職を目指して求職活動を行っていることなど、いくつかの要件、支給される額の上限はあるが、原則3カ月間、一定の条件に合致すれば最大9カ月まで支給を受けられる。問合せ先は最寄りの自治体の福祉事務所等、自立相談支援機関の窓口になる。最寄りの自治体が福祉事務所を設置していない町村の場合には都道府県の窓口だ。

すでに仕事も住居も失った状態になっている場合には社会福祉協議会の臨時特例つなぎ資金の貸付を利用する手がある。これはその他の公的な給付、貸付の制度を申請する間の、当面の生活を維持するためのもので、無利子で上限10万円までの貸付を受けられる。問合せ先は居住する自治体の社会福祉協議会だ。また、金銭的な相談ではなく、法律その他の相談ということであれば自治体が各種の無料相談窓口を設けていることがあるので、そうしたものを利用する手もある。法律なら、日本司法支援センター(通称法テラス)という窓口もある。

ところで、こうした場所に相談、貸与を申請する場合には大家さんや管理会社に書類を用意してもらう必要がある場合がある。最初に逃げてしまったら、協力してもらいにくくなると考えると、やはり、大家さん、管理会社に相談してみることは非常に大事。布団をかぶって寝ていても事態は解決しないのである。

払えなくなる事態を招かないための2つのポイント

そもそも家賃が払えなくならないように気を付けておきたいポイントがある。ひとつは家賃そのものに無理をしないこと。一般には手取り収入の3分の1以下が目安。ただ、若い単身者の場合、この割合で家賃を算出すると、狭い、古い、遠いなど不利な住宅になってしまうことが多く、そこで無理をしてしまいがち。

だが、貯金もできないほどかつかつの状況で生活を始めてしまうと、いったん、何かあった時にはすぐに破綻してしまう。特に新たに一人暮らしを始めるなどの場合には家具、家電や生活用品などでまとまった額が必要で、かつ生活費の目安が分かっていないことも多い。部屋探しをスタートする時点で強く節約を意識、無理のない計画を立てるようにしたい。

もうひとつは貯蓄。病気や怪我その他の事態は誰にでも起こりうる。その場合に失業保険が出るまでの3カ月程度をやりくりできる貯蓄があれば破綻をしなくて済む。目標としては生活費の2~3カ月分。もちろん、一度に用意できる額ではないから、少しずつで良い、貯める習慣をつけるようにしたい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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