タレントの関根勤さんが心臓手術を受けておられたことが発表されました。一見お元気に活躍しておられた関根さんがなぜ緊急手術を受けることになったのでしょうか。普段元気に過ごされている多くの読者の皆さんにもぜひ知っておいていただきたいことです。

以下は関根さんの心臓手術を伝える記事です。
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産経ニュース
関根勤、心臓手術の翌日に仕事復帰!
2016.5.22 10:02更新

タレント、関根勤(62)が今月2日に心臓の冠動脈疾患で手術を受けていたことが21日、分かった。4月中旬に行われたTBS系「サタデープラス」(土曜前8・0)の企画ロケで心臓の検査を受けた際、血流が悪くなる冠動脈の狭窄と診断。患者の負担が大きい開胸手術ではなく、冠動脈に管を通して血管を広げるステント手術という方法で行われ、翌3日には驚異の回復力で仕事復帰していた。(サンケイスポーツ)

週1回のゴルフで体力増進を図り、飲酒も喫煙もしない“健康優良児”の関根が、まさかの心臓疾患に冒されていた。

所属事務所によると、関根は4月中旬に行われた「サタデープラス」の健康情報コーナーのロケに参加。東京都内の病院で心臓の検査を受けた際、医師から「命にかかわる病態に陥る可能性が非常に高い」との指摘を受け、血管の内部が狭くなり、全身への血流が悪くなる冠動脈狭窄と診断された。検査を受けるまで胸の痛みなどの予兆はなかったという。

韓国人歌手、K(32)と結婚した長女でタレント、関根麻里(31)が昨年11月に長女を出産。関根にとっては待望の初孫で、所属事務所によると、「孫が成人式を迎える82歳まで生きなきゃいけない」と手術を即決。4月30日に入院し、今月2日に手術を受けた。

開胸手術ではなく、ステントと呼ばれる金属製でメッシュ状の筒を、手首や腕などの血管からワイヤを通して血管内の狭くなった部分に設置し、内部を押し広げて血流を良くするステント留置療法で実施した。

一般的には約1時間で手術は終了し、経過が良好なら翌日の退院も可能。関根も翌3日に退院し、同日の文化放送「関根勤のスポパラ」(月曜後7・0)の収録で仕事復帰した。現在、同番組や日本テレビ系「ZIP!」(月~金曜前5・50)などテレビ、ラジオのレギュラー5本を抱えるが、今回の手術による仕事のキャンセルや調整はなかった。
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開胸手術ではなくステント設置…ここでいう「手術」とは?

かつては皮膚を切り、内臓まで達してからそ
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メスは手術のシンボルでした

の内臓をメスなどで切ったり貼ったりして治すことを「手術」と呼びました。

しかし現代は医学の進歩のおかげで手術の方法も多様になり、皮膚を切らずに細い管を手足の血管から入れて心臓や大動脈その他へ管を進めてその臓器を治すカテーテル治療なども「手術」と呼ぶようになりました。

つまり「手術」の意味が広くなったわけです。混乱を避けるためにかつての「手術」を外科手術と呼んで区別しやすくする向きもありますが、まだ定着しているとは言えないようです。

冠動脈狭窄とは

心臓の筋肉に血液を
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赤く細い血管が冠動脈です

送る冠動脈が動脈硬化などのために狭くなる病気を冠動脈狭窄と呼びます。心臓は多量の血液を全身に送るのですが、心臓そのものも元気に生きて仕事をするために血液が必要です。つまり心臓のまかない動脈が冠動脈というわけです。

そのため冠動脈狭窄ではそれが悪化して強い狭窄になると胸痛発作が起こりやすくなります。いわゆる狭心症ですね。冠動脈狭窄がさらに悪化して閉塞に至ると、心臓の筋肉が死んでしまい、心臓も仕事ができなくなりいのちの危険につながります。いわゆる心筋梗塞の状態です。

そのため冠動脈狭窄は油断ならないのです。

関根さんの場合、胸の痛みなどの症状が全くなかったのはなぜ?

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左冠動脈主幹部

冠動脈が狭窄し、危険な状態なのに狭心症が起こらないということは少なからずあります。

たとえば左冠動脈の一番根本の部分、主幹部(しゅかんぶ)と呼ぶところがある程度狭くなる場合です。この主幹部は冠動脈の一番おおもと、一番大切なところで、ここに血栓その他の異変が起こると左冠動脈全体が詰まることもあり得るのです。

そうなると症状がなくても心筋梗塞、なかでも突然死の恐れが出てきます。関根さんの場合は、こうした主幹部の病変であった可能性があります。逆に左主幹部の病変で胸痛発作が起こるようでは一刻の猶予もならない危険な状態のことが多々あります。

そのほか、冠動脈の狭窄が高度で心筋梗塞になりそうな状態でも胸痛発作が起こらないことがあります。たとえば糖尿病の患者さんなどで見られます。心筋梗塞に至ってもなお胸が痛くならない患者さんもおられるほどで、注意が必要です。いのちにかかわる異変が起こっていても、ご本人にはそれがわからないというのは極めて危険な恐ろしいことです。

冠動脈の狭窄には関根さんのようにステントが良いのか

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ステントは狭窄部を広げた状態で安定させます

それでは冠動脈の狭窄には、関根さんと同じようにステントを受けるのがよいのでしょうか? これは冠動脈や心臓、そして患者さんの全身の状態によります。

まず狭窄が軽いときや危険性が少ない段階であればお薬や生活指導でこなせることが多いです。

狭窄が強くなるとステントが威力を発揮します。とくに冠動脈が1~2箇所でくっきりと狭くなっている場合などですね。ステントの良さは胸を切らずにすみ、回復が早く、すぐ仕事に復帰しやすいところにあります。関根さんも一日で仕事復帰されました。おかげでいくつもの仕事をキャンセルすることなく無事こなせたようです。

ところが
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冠動脈バイパス手術は狭窄部をバイパスして治します

冠動脈があちこちで狭くなっていたり、全体的に悪くなっている場合、なかでも重い糖尿病や腎不全・透析などの患者さんの場合は冠動脈バイパス手術が役に立ちます。バイパス手術の良さは冠動脈があちこちやられていても治せること、そしてその効果が長持ちし、重症患者さんでも長生きしやすくなることにあります。

冠動脈ステントは30年も昔からあるのですが、年々改良され現在に至っています。現在のものの多くは薬剤溶出性ステント(Drug Eluting Stent、略してDES)で、それも第二世代以後の優れたものが活躍しています。ただし現時点ではこうしたステントの後、数か月以上は血液が固まらないお薬(抗血小板剤)を複数飲む必要があり、これが他の治療たとえばお腹などの早期がんや脳や関節・背骨などの手術、あるいは大腸ファイバーや胃カメラなどでポリープや組織採りをする際に出血しやすくなるため制約がかかります。そこでそうした治療が近い将来必要と予想される患者さんにはバイパス手術を勧めることもあるわけです。

このようにその患者さんの状況に合わせた治療法がベストなのです。混乱を避けるためにガイドラインが造られています。

冠動脈狭窄を発見するためにはどんな検査を受けるべきか

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問診は大切です

まず医師が患者さんの症状、とくに胸が痛くなる狭心症の症状をしっかりと聞き出すことが大切です。患者さんの立場からは、胸がいつ(早朝?朝?昼?夜?)、どんな時に(運動時?安静時?寝ているとき?)、どの場所で(寝室?職場?運転中?)、どのくらいの時間(秒単位?2~3分?10分以上?1時間以上?さまざま?)、どの程度(ちょっと違和感程度?強い?冷や汗が出るほど?)、痛むかをありのまま医師にお話下さい。

こうした問診だけでおよその診断のメドが立つことはよくあります。

しかし今回の関根さんケースのように、
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CT検査で冠動脈狭窄はかなりわかります

症状がまったくないこともあります。

その場合は運動負荷心電図や放射性同位元素によるシンチ検査なども役立ちますが、現代はCTスキャンが威力を発揮します。造影剤の点滴は必要ですが、ただ横になっているだけで短時間で冠動脈の結構詳細まで調べることができます。大きな病変の検出率は100%に迫る成績を上げている検査法です。

CTスキャンなどで冠動脈狭窄の疑いが出てくれば、心臓カテーテルつまり細い管(くだ)を腕か下肢の血管から入れて心臓まで進めて行き、冠動脈に直接造影剤を注入し、冠動脈をくっきりと詳細まで映し出す方法が役立ちます。

冠動脈狭窄の予防法

これはAllAboutのこれまでの記事にもお書きしていますので以下をご参照ください。

まとめ

関根勤さんの一件から、冠動脈狭窄症について解説を加えました。

関根さんがこれからますますお元気に活躍されることと、読者の皆さんが健康な生活を楽しまれることを祈ります。


参考資料
心臓外科手術情報WEBの虚血性心疾患のページ:ステントやバイパス手術さらに不幸にして心筋梗塞になった場合の治療法などの情報が得られます
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