古川雄大undefined87年長野県出身。ミュージカル『テニスの王子様』(07~09年)で注目され、10年にミュージカル『ファントム』に出演、12年に『エリザベート』に初出演、ルドルフ役を務める。以降、『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』『ミュージカル「黒執事」』シリーズ等舞台で存在感を示しつつ、映像や音楽でも活躍中。(C)Marino Matsushima

古川雄大 87年長野県出身。ミュージカル『テニスの王子様』(07~09年)で注目され、10年にミュージカル『ファントム』に出演、12年に『エリザベート』に初出演、ルドルフ役を務める。以降、『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』『ミュージカル「黒執事」』シリーズ等舞台で存在感を示しつつ、映像や音楽でも活躍中。(C)Marino Matsushima

【目次】
・2017年夏インタビュー(本頁)
・2016年5月インタビュー(2頁
・『エリザベート』2016年帝国劇場・博多座公演観劇レポート(4頁

やりたいことすべてに挑んだ『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』

――前回のインタビューから3年、その間様々な大役を務められましたが、まずは『エリザベート』に3度目のご出演。いかがでしたか?

「自分の中ではもう最後のルドルフだろう、思いっきりやろうと思っていました。これを集大成にしなきゃいけない、と。毎回、100(パーセント)に近いものを出そうと思っていて、“攻める”というよりかは“安定”を心掛けていましたね」

――確かに古川さんのルドルフには安定感、力強さがあり、決して心が揺らいでいるわけではなく、こう生きたいという理想像がありながらそうは生きられない、そこに哀しさのあるルドルフ像に見えました。その次の『ロミオ&ジュリエット』ロミオも、連続しての出演でしたね。

「2度目の出演でしたが、前回公演ではとても悔しい思いをしたんです。製作発表でも(小池)先生がリベンジだねとおっしゃっていて、先生もそう思ってたんだと思いましたね(笑)。歌のテクニック的な部分で、求められてることに対して応えられないことが多かったのですが、2度目の時にはそれまで“これは出来ない”と諦めていた部分を含め、やりたいことに全部トライしました。

(wキャストの)大野君とはずいぶん違うロミオに見えましたか? 何が正解かは分からないけど、前回は(運命に)翻弄されていくイメージだったけど、今回はそれよりジュリエットへの気持ちであったり、熱さを意識しました」

――座長としての求心力が、前回公演とは比べ物にならないほど大きかったです。

「何度か座長をやらせていただく中で、年々意識が強くなったと思いますし、『ロミオ&ジュリエット』は特にそれを意識した作品でした。またチャンスがあればやってみたいとは思うけど、18歳の役なので年齢的に大丈夫かな。稽古では小池先生から“もっと若く”“変に貫禄が出てるぞ、お前は”と、褒められてるのかけなされるのかわからない感じで言われていましたから(笑)」

さらに“いい役”に仕上げたい『レディ・ベス』フェリペ役

『レディ・ベス』2017年undefined写真提供:東宝演劇部

『レディ・ベス』2017年 写真提供:東宝演劇部

――今年はこの後、『レディ・べス』に出演されます。フェリペはとてもいいポジションのお役ですね。気持ちのいい役に見えます。

「美味しい役だなと思ってます(笑)。一幕の最後の方で出てきて、場をめちゃくちゃにして去って、2幕はぽつぽつ出て最後はヒーローになって終わるという。実はそんなに出番は多くないし、歌も自分だけのソロは一曲だけです。それでも印象が強いのは役がいいからにほかならなくて、誰がやってもよく見えると思うけど、それをよけい“美味しく”見せるのは役者次第だと思うので、さらにいい役にできたらいいですね。

出番が短い中で鮮烈なものを残すのはたやすくないので、集中力や舞台への意識をさらに高めないと。そういう意味ではずっと舞台に立ってる主役より周りの人の役のほうが大変なのだと感じます」

――フェリペは結果的にべスを応援するサイドに立ちますが、それは意図的なものだったのでしょうか?
『レディ・ベス』2017年undefined写真提供:東宝演劇部

『レディ・ベス』2017年 写真提供:東宝演劇部

「意図的というより、結果的にそうなったのだと思います。フェリペはクールヘッド(冷静)と言われますが自分としては全然クールヘッドではなく、むしろクールヘッドなのは、裏で動いている(吉野圭吾さん演じる)ルナール。

フェリペがべスのサイドに立つのは、単純に女性として彼女が魅力的というのもあるだろうけど、彼女に対しての共感というより、彼女の敵に対するいらだちがあったからで、結果としてそうなっていったのではないでしょうか。再演にあたっては、自分の得意分野にいかないように作ってみようかなと思います。もっと攻めていきたいですね」

――ちょっと素朴な疑問ですが、フェリペ(平方元基さんとのダブルキャスト)しかりロミオしかり、古川さんはダブルキャストで出演されることが少なくないですよね。ダブルキャストではもう一人の稽古の時には見ないでいいですよという演出家もいらっしゃいますが、古川さんは御覧になるタイプですか?

「影響を受けたくないので、やっぱり状況が許せば観ないでいきたいんですが、そうなると自動的に稽古が二分の一になってしまうんですよね。一人が立って稽古したら、もう一人は見て覚えなくちゃいけないので、僕は観るようにしています。小池先生も、“全く同じことをしても、人間が違うからちゃんと違って見える。大丈夫だよ”と言ってくださっています」

――その後がミュージカル「黒執事」の最新版。そして2018年には『モーツァルト!』のタイトルロールにも挑まれます。これは以前からお声がけがあったのですか?
『モーツァルト!』

『モーツァルト!』

「オーディションへのお声をかけていただいたのが、ロミジュリの頃でした。小池先生の代表作の一つだということは知っていて、前回の公演をいっくん(山崎育三郎さん)のヴォルフガング役で拝見して、長く愛されているミュージカルだけある、さすがの作品だし、音楽が素晴らしい。でも、歌うのは難しいだろうな……と、当時は自分が演じることになるなんて夢にも思わず、観ていました。

それでも、どこかで憧れていたのでしょうね。この作品の熱狂的なファンというわけではないけど、魅力的な役で、すごく挑戦してみたくなったんです。これまでもどちらかというと苦しかったり、のたうちまわる役が多かったので、今回も激しくのたうちまわるんだろうと思いますね(笑)。既に台本はいただいているので、少しずつレッスンをしています」

――現時点で、どんな表現者を目指していらっしゃいますか?

「何でも自信をもってやれるようになりたいですね。役者という枠にとどまらず、どしっと構えて、なんでもできる人間でありたいです。なんでもできないとダメだなと思い始めたところで、日常的にもいろいろな経験を積んでいきたいし、稽古でも自分を縛らず、あれもこれも試しながら成長していきたいと思っています」

*公演情報*『レディ・べス』2017年10月8日~11月18日=帝国劇場

*ミュージカル「黒執事」に関する古川さんへのインタビューはこちら

*次頁では2016年5月に行った古川さんへのインタビューを掲載しています!*



古川雄大undefined87年長野県出身。ミュージカル『テニスの王子様』(07~09年)で注目され、10年にミュージカル『ファントム』に出演、12年に『エリザベート』に初出演、ルドルフ役を務める。13年『ロミオ&ジュリエット』14年『レディ・ベス』『ファースト・デート』など舞台で存在感を示しつつ、映像や音楽でも活躍している。(C)Marino Matsushima

古川雄大 87年長野県出身。ミュージカル『テニスの王子様』(07~09年)で注目され、10年にミュージカル『ファントム』に出演、12年に『エリザベート』に初出演、ルドルフ役を務める。13年『ロミオ&ジュリエット』14年『レディ・ベス』『ファースト・デート』など舞台で存在感を示しつつ、映像や音楽でも活躍している。(C)Marino Matsushima

*2016年5月インタビュー記事*
フランス革命の勃発を描いたフレンチ・ミュージカル『1789』で、主人公ロナンを革命にいざなう若者たち。その一人で、後世に大きな名を残したロベスピエールを演じているのが、今最も目覚ましい活躍を見せるホープの一人、古川雄大さんです。涼やかな容姿は言わずもがな、ダンス量の半端でない『CLUB SEVEN』のような演目もさらりと(?)こなしてしまう実力の持ち主ですが、舞台に対してどんな思いを抱いていらっしゃるのでしょうか。まずは取材時、帝劇公演真っただなかだった『1789』についてうかがいました。

『1789』では革命家ロベスピエールを熱演

――今回の『1789』では、実にたくさん踊っていらっしゃいますね。フランス版は「歌う人」「踊る人」が分かれているという印象でしたが、日本版では「歌う人」自ら、ハードに踊っていらっしゃいます。

「ダンスは非常に多いと思います。共演の方たちも“ダンス多いね”と言っていますし、僕自身もそう思います。今までこんなにダンスの多い舞台に出ることがあまりなくて、踊りたいなと思っていた部分もあるので、新鮮ですね。ハードですけれど、すごく楽しませていただいています」
『1789-バスティーユの恋人たち-』写真提供

『1789-バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部

――3人の振付家がいらっしゃるようですが、ナンバーによって振り分けられているということでしょうか?

「お一人ずつ振り付けていらっしゃるものもありますし、このナンバーはこの方とこの方、というようにタッグを組んでいるナンバーもありますね。それだけでもバラエティに富んでいるし、ジャンルもいろんなジャンルのダンスがあって、一言では“この作品の振付はこうです”とは言いにくいです。ジャズがあったりコンテンポラリー・ダンスみたいなのがあったり、クランプもあるし……」

――18世紀のフランスのお話ですが、表現は最先端、なのですね。

「ダンスに関してはまさしくそうですね」

――そして人物像についてですが、古川さん演じるロベスピエールは、平民出身だが“議員”というエリートです。農民である主人公ロナン(小池徹平さん、加藤和樹さんのwキャスト)とは、どんな距離感を意識していらっしゃいますか?

「ロベスピエールたちはロナンに出会ってすぐ、“印刷所に来い、君と話がしたい”と言います。おそらく彼の中に、民衆を動かす力があることを見抜いたのではないでしょうか。それからは彼と兄弟のように接しているけれど、どこか“民衆”と“プチ・ブルジョワ”の違いというものも分かっている、と思うんですね。革命が成功するには民衆の力が必要だから、うまく扇動したいけれど、自分には時に、感情的になってしまう部分がある。それがわかっているからこそ、ロナンは革命にとって必要な人物だと思ったのではないでしょうか。

その後、デムーラン(渡辺大輔さん)、ダントン(上原理生さん)とロナンはパレ・ロワイヤルのシーンで“(俺たちは)仲間だ、一緒にやろう”と気持ちをひとつにするのですが、ロベスピエールはそこには出ていないんですよ。彼は(議員として)三部会に出ているのですが、それが決裂してしまって、しかも第三身分は屈辱的な(差別的な)仕打ちを受け、怒りも頂点だし、自分の目指していた状態から遠のいていてしまったことに対する焦りもあって、(彼が次に登場する時には)非常に険しい表情になっています」

――“革命家サイド”ということでロナンとロベスピエール達3人は一見、横並びのように見えるかもしれないけれど、そう単純なものではないのですね。

ところで、フランス版と日本版の大きな違いという点で、主題歌ともいえる“サ・イラ・モナムール”の演出があるかと思います。デムーランがリードする“革命扇動”的な演出だったフランス版に比べて、日本版は若者たちがカップルになって歌う、とてもロマンチックな場面になっています。どんな意図なのでしょうか?

「直接言われたわけではないのですが、一つには、革命が成功した後の世界のイメージなのではないかな。好きな人と自由に暮らせる、こういう世界を作りたいというイメージです。もう一つ、これから革命に行ってくるよ、というシーンという読み方もできるかと思います。(構成としては)ここはある意味、芝居の中にミュージック・ビデオのような“イメージ”が挿入されているようなものなのかもしれません。ロベスピエールにも突然、彼女が出てくるわけですから(笑)。(ロベスピエールについては堅物だったという説もあるけれど)僕も彼女はいただろうと思いますけどね。ただ革命に対する温度の方が他の人より高かったということなのではないかな」
『1789-バスティーユの恋人たち-』写真提供

『1789-バスティーユの恋人たち-』写真提供:東宝演劇部

――史実によると、ロベスピエールはこの後、大変なことになってゆきますが、今回“史実”はどの程度意識しながら演じていらっしゃいますか?

「今回、この作品に入るにあたって読んだ文献が9巻ぐらいあるもので、その第2巻だったと思いますが、ロベスピエールが“独裁”に踏み出していくことを暗示する部分があるんです。ずっときれいなやり方で世の中を動かそうとしているロベスピエールに対して、ミラボーという人物に“きれいなだけじゃ理想の世界は作れない”というようなことを言われて、衝撃を受けるんですね。でも彼については今回の舞台ではほとんど描かれていないので、僕はロナンのラストをそれに変換できたらと思っています」

――革命というのは大きな犠牲を伴うものだ、と衝撃を受けて……ということでしょうか?

「もっとわかりやすいことを思い浮かべています。ロナンが大きな犠牲を払ってくれたことでバスティーユ監獄の門が開いて、武器が手に入る。それによって僕らが先に進めるんだ、という意識です」

――舞台では固い絆で結ばれているロベスピエール、デムーラン、ダントンですが、史実では数年後、とんでもないことになっていて、なんともやるせないですね。

「そうなんですよね。でも彼らは、お互いに求めているところは一緒なんです。ただ、目の前を見ているのか、先を読みすぎているのかという違いがあって、ロベスピエールは先を見すぎているのだと思います。まっすぐすぎる、ということなのでしょうね」

――華やかでスピーディーな中に重いテーマのある作品ですが、幕切れのナンバーの演出には強いメッセージ性を感じます。この作品を観客にどう観てほしいと思っていらっしゃいますか?

「あのナンバーは、全体的には“悲劇的な終わり方に見えるかもしれないけれど、これは悲劇じゃないよ”と語り掛けていて、人権宣言がなされて民衆が時代を変えたという明るい終わりを歌っているのだと思います。ただ、(演出の)小池(修一郎)先生は、一人一人、自分の役であの場面には出てくださいとおっしゃっているので、みんなが明るくポジティブというわけではないです。貴族には貴族の思いがあると思うし、僕もロベスピエールの心情で歌っています」

――今回は悪役をベテランの方々が担当されていて、厚みのあるドラマとなっていますが、カンパニー全体の空気はいかがですか?

「どの公演でもそうですが、すごくいい空気ですよ。ベテランの方も若手に混じってくださって、岡(幸二郎)さんなんてグループLINEに入ってくださっています。ベテランの方々が優しく、どしっと存在してくださるから若手も思う存分、芝居ができる。すごい方々が揃っていますから、稽古を観ているだけでもとても勉強になりました」

知識無しに飛び込んだ大作『エリザベート』

撮影終了時、率先して椅子を元の位置に戻して下さった古川さん。ちょっとしたところに気さくさが覗きます。(C)Marino Matsushima

撮影終了時、率先して椅子を元の位置に戻して下さった古川さん。ちょっとしたところに気さくさが覗きます。(C)Marino Matsushima

――古川さんは2012年、『エリザベート』に初出演。鮮烈なルドルフ・デビューをされましたが、オーディション時点では作品のことをよくご存知ではなかったそうですね。

「オーディションに合格して、初の本格ミュージカルがこういう大きな作品になったことで、知識がなくて逆に良かったと思いました。何も知らずに稽古に臨んだからはじめは、後ろから聞こえてくるアンサンブルの声で体が“おっ”となるほどの迫力に、ルドルフ役の3人(みな初役)だけが飲まれていました。“ここはすごいところだぞ、やばいぞ”と。歌にしても痛い目を見たけれど、そこで自分がダメだと思えたからこそ頑張れた。そういう意味で、無知のまま飛び込んでいってよかったのかなと思います」

――ルドルフ役はどのように作っていらっしゃたのですか?

「台本はもちろん、歴史の本もいろいろ読んで準備しました。ルドルフの出番はほんの20分ほどしかないけれど、ずいぶん長い時間のことが20分に纏められていると思います。トートはじめ、登場人物一人一人との関係性を深めるのに、かなり歴史の本を参考にしましたね。

12年の初出演の時には、ルドルフが“悲劇の皇太子”と呼ばれていることもあって、自分の中では悲劇的な部分を強く押し出したルドルフになっていたかもしれません。小さいころに受けた待遇をそのまま引きずった弱い人物として作っていましたね。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

15年の再演では、ルドルフが革命家とつるんで革命を起こそうとしていた点に注目しました。時代を動かすということはどれくらいエネルギーのいることで、父親に立ち向かうというのはどういうことかと想像しながら、能動的で、何かを発信しようとする、強い人物として演じましたね」

――拝見していて、何かを成し遂げようとしていて、結果的に成し遂げられなかったという悲劇味が感じられました。

「(巻き込まれる悲劇でなく、自らの行動の結果)生まれる悲劇にしたいなというのはありました」

――トート役のwキャストのお一人は井上芳雄さん。ルドルフ経験者でしたが、アドバイスなどは?

「いくつか頂きました。芳雄さんのトートは人間らしいというか、死が人間の姿になるとこうなると思えるようなトートでしたね」

――今年はどんなルドルフに、と考えていますか?

「前回、新しくルドルフと向かい合って、一から作ってみようと思ったんですけど、今回は前回作ったルドルフをベースに作っていっていけたらなと思っています。そこからまた変化していく部分もあっていいと思うし、全く同じになってもいいと思っています」
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

――ルドルフの“集大成”になりそうですね。

「そうですね。なかなか同じ役を3回出来ることも無いと思うので、そうしていきたいですね」

年明けにはもう一つの代表作『ロミオ&ジュリエット』が待機

――『エリザベート』の後には『ロミオ&ジュリエット』も控えていらっしゃいます。14年にロミオ役で初出演されましたが、この時もオーディションだったのですか?

「そうです。ロミオ役を受けて下さいと言っていただき、課題曲を勉強しました」
『ロミオ&ジュリエット』撮影:渡部孝弘

『ロミオ&ジュリエット』撮影:渡部孝弘

――この作品にはいろんなタイプの男子が登場しますが、古川さんご自身はロミオ・タイプ?

「どうなんでしょう。個人的には、やりたい役を選んでいいよと言われたら、僕はマーキューシオもやってみたいですね。魅力的な、いい役だなあと思います。さんざん喧嘩したりしているけれど、死ぬ前の最後の瞬間に、ロミオに対して一言だけ「ジュリエットを愛し抜け」と言う。その一言がマーキューシオのすべてを物語っているんじゃないか、素敵だなと思います。ロミオは毎回、ここで涙腺が脆くなります(笑)」

――歌とドラマが比較的はっきり分かれた形式のフレンチ・ミュージカルはこの作品が初めてだったのですよね。

「全然違和感はなかったです。まずはDVD版を観て曲が全部いいなと思いましたし、自分が出てみてもすごく好きな作品でした。共演者の皆さんも魅力的でしたし。」

――『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『1789』と古川さんは小池修一郎さんの演出を数多く受けています。どんな演出家だと感じますか?

「はじめからイメージしていらっしゃるものがあって、それを一場面、一場面、丁寧に作っていらっしゃいます。ご自身でやって見せてでも役者に(細部のニュアンスを)伝えてくださることもあるし、時には役者が自分でわかるまでやらせてくださることもありますね。手をこういうふうに動かす、というような細かいところまでこだわりを持っていらっしゃると思います」

――ロミオ再挑戦にあたって、ご自身で課題にされていることはありますか?

「まずは歌ですね。言ったらきりがないですが、音程も、音圧も、表現ももっと高めていきたいです。今回“新バージョン”ということで、おそらく変わってくる部分もいろいろあると思うので、前回のルドルフみたいに、一から洗い直したいですね」

*次頁からは古川さんの“これまで”をうかがいます!


ダンサー志望からミュージカルの世界へ

『レディ・べス』写真提供:東宝演劇部

『レディ・べス』写真提供:東宝演劇部

――ここからは古川さんの“これまで”を伺いたいと思います。そもそも、この世界を目指したのは?

「高校生の時ですね。中学の時にダンスを習い始めていまして」

――中河内雅貴さんがいらしたダンススタジオですよね。見学に古川さんがいらっしゃった時、久々の男子だ、絶対入会してもらおうと思ってデモンストレーションを張り切った!というお話を伺いました(笑)。

「マサ君、すっごい回転していて(笑)、かっこいいなと思いました。そこはジャズダンスのスタジオで、僕がやろうと思っていたダンスではなかったのですが、見学に行ったときにたまたまジャズ・ファンク寄りの先生が来て、すごいファンキーな振りで踊っていたんです。僕が理想としている踊りだったんで“あ、これだ”と思って入りました」

――では、最初はダンサー志望だったのですか?

「はい、バックダンサーをやろうかな、と思っていました。それでいろんなオーディションを受けに東京に行ってた時に、スカウトで声をかけてくださったのが今の事務所なんです」
『レディ・べス』写真提供:東宝演劇部

『レディ・べス』写真提供:東宝演劇部

――そしてすぐ、そちらに?

「その日はたまたま、何社か……5、6社から声をかけていただいたのですが、その中で今の事務所には既に有名な方が在籍していて、それが決め手で所属することにしたんです」

――ミュージカルとの出会いは芸能界入り後、間もなくですね。

「テニミュ(『ミュージカル テニスの王子様』)との出会いはわりとすぐでした。テニミュはすごく楽しかったですね。オーディションにはものすごい数の人たちが来るのですが、その中で登場人物(のキャラクター)に近いものがあって、可能性がありそうな人たちが選ばれている作品です。そこではファンの方々が、一人一人の出演者に対して“どれだけ成長したかな”という目線で観に来てくださっている世界で、たとえ音を外しても、“また外しちゃって。次は頑張りなさいよ”と言ってくださる。それに対して僕らも努力するという世界で、独特の楽しさがありました」

――本格的に“ミュージカルをやっていこう”と思ったのはいつ頃だったのですか?

「『エリザベート』以降、ミュージカルのお仕事をたくさんいただけるようになったので、その頃からです。ミュージカルには、歌がお芝居の中にあることで、演じる側としては音楽の力を借りて表現できるものがあるし、観てくださる方もより楽しくなったり悲しくなったりと、感情が揺さぶられるものがありますよね。そこがミュージカルの一番の魅力だなと思います」
『CLUB SEVEN 9th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『CLUB SEVEN 9th Stage!』写真提供:東宝演劇部

――ご自身にミュージカルがフィットしていたのですね。

「最初から“ミュージカルこそ自分の道だ”とは思っていなかった分、そうなれるよう、頑張っています。すごく素敵な世界だなと思うので、少しずつ近づいていきたいです」

――これまで、古川さんは文字通り“絵に描いたような美男子”のようなお役が多く、特に華麗な外見にクールな内面を掛け合わせたフェリペ王子(『レディ・ベス』)などは絶品でしたが、そのいっぽうで、『CLUB SEVEN』や『ファースト・デート』での“必死”な役どころも非常にチャーミングでした。ご自身的にはいかがでしたか?

「『CLUB SEVEN』はすごく大変でした(笑)。あんなに踊って歌って着替えた作品は初めてでしたね。(ブラインド・デートにでかけたヒロインを心配するゲイの友人役を演じた)『ファースト・デート』では、彼女が電話に出ないので“大丈夫?大丈夫?”とテンパっている役でした。僕自身もすごく心配性で、(地からは遠い役に見えて)実は共通点があったので(笑)、“いっぱいいっぱい”な空気を出せたのかもしれません」
『ファースト・デート』写真提供:東宝演劇部

『ファースト・デート』写真提供:東宝演劇部

――今後のビジョンとしては、どういったものを抱いていらっしゃいますか?

「これまでいろいろなお仕事をさせていただく中で、“自分には引き出しが少ないな”と感じたことがありました。ですのでは今は、どんどん引き出しを増やしていきたいですね。どんな役も“(何とか)こなしてる”ではなくて、“できる”役者になりたいです」

*****
ハードな公演終了直後にも関わらず、じっくり語ってくれた古川さん。歴史大作に出演するにあたっては資料をしっかり読みこんで役作りをされており、このまっすぐな姿勢が役を“ぴったりのはまり役”にしてゆくのだと感じさせます。その彼の3度目の挑戦となる『エリザベート』ルドルフ。これまでの集大成、全てが凝縮された20分間に期待が高まります!

*公演情報*
エリザベート』2016年6月28日~7月26日=帝国劇場
1789 -バスティーユの恋人たち-』2016年5月21日~6月5日=梅田劇術劇場メインホール
ミュージカル『黒執事~NOAH'S ARK CIRCUS~』2016年11月18日~11月27日=TOKYO DOME CITY HALL、2016年12月3日~12月4日=キャナルシティ劇場、12月9日~12月11日=あましんアルカイックホール、12月17日~12月18日=刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
ロミオ&ジュリエット』2017年1月15日~2月14日=赤坂ACTシアター、2月22日~3月5日=梅田芸術劇場メインホール
*次頁で『エリザベート』2016年公演観劇レポートを掲載しました*

『エリザベート』(2016年)観劇レポート
大きくうねる歴史の荒波の中で
人知の及ばぬ“運命”に抗ったヒロインの懸命な“生”

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

墓地を模した空間に静寂の中、怪しい人影(トートダンサー)が現れ、ヴァイオリンの緊迫した金切り音が響く。そして聞こえる、皇后エリザベートの暗殺者ルキーニ(wキャスト・この日は山崎育三郎さん)への、永劫に続く尋問。ルキーニの「黒幕は“死”だ、トート閣下だ!」の叫びとともに、たちまち時間は過去へと遡り、亡霊たちが解き放たれる……。

人物を時に冷酷、時に輝くように浮き上がらせる白い光と闇のグラデーションを効果的に操り(照明・笠原俊幸さん)、シルヴェスター・リーヴァイの重厚な中に親しみやすさを織り交ぜた音楽に彩られながら、舞台はハプスブルク帝国末期の“悲劇の皇后”、エリザベートの数奇な一生を辿ってゆきます。貴族の娘エリザベートが運命の悪戯で皇帝フランツ・ヨーゼフと結婚するも、厳格な皇太后ゾフィーから自由を奪われ、夫との間にも溝が生まれる。絶望に見舞われる度に黄泉の帝王トート、つまり“死”に誘惑され、その都度はねのけるエリザベートだったが……。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

演出・キャストともに刷新され、センセーションを呼び起こした昨年の前回公演をおおむね踏襲した今回の舞台は、回を重ね、諸要素の輪郭がくっきりと太いものに(演出・小池修一郎さん)。特にエリザベート役・花總まりさん(wキャスト)、トート役・井上芳雄さん(wキャスト)、フランツ・ヨーゼフ役・田代万里生さん(wキャスト)の力強い演技によって、“幸福な人生”の夢に破れ、時代の渦に飲み込まれながらも“自由”を求め続けたエリザベートの人生が、物語の芯に明確に立ち現れます。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

当代きっての“高貴なヒロイン女優”である花總まりさんは、生涯の当たり役とも言われるエリザベートを無類のフィット感で演じていますが、体当たりだった宝塚版初演時(96年)から風格に溢れた昨年の東宝版を経て、今回はとりわけ少女時代からの変化の過程が光ります。奔放な父(大谷美智浩さん)に感化され“自由に生きたい ジプシーのように”と夢見る歌声の無邪気さ、可憐さ。それが挫折を繰り返す中で徐々に硬さを帯び、頑なな皇后の声へと変わってゆく……。少女時代の無垢な歌声が耳に残るだけに、その変化はいっそう痛切です。

また事故で死線をさまよう中で出会ったトートに掛ける”待って“の一言には、異質な存在に魅せられる少女特有の好奇心とときめきが溢れ、瞬時に劇場空間がロマンティックな空気に。後年は絶望的な状況が起こるたびに現れるトートとの絡みにおいて、迷いながらも人生をあきらめず懸命に生き切ろうとするエリザベートを全身全霊で表現、時に演技を超えたものすら感じさせます。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

その彼女と愛によって結ばれながら、新婚時に彼女の望みを受け入れなかったばかりに心を閉ざされ、後悔の生涯を送るほかなかったフランツ・ヨーゼフ。演じる田代さんは格調高くもエネルギッシュな歌唱で、フランツ・ヨーゼフが単なる皇太后の操り人形ではなく自ら“自制”の人生を送ってきたことをうかがわせ、その彼がエリザベートを愛したことで、図らずも帝国崩壊の端緒を開いてゆく悲劇を際立たせます。年月の経過にともなって歌声、所作の双方で見せる“老い”の表現も緻密。妻との心の溝を埋めようとするも拒まれる終盤のデュエット「夜のボート」の哀感は格別です。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

そしてこの男女への関わり方如何で作品全体の風合いさえ変わってくるのが、トートという役柄。彼がエリザベートとフランツの間に割って入り、“人間的な愛”か“抽象概念に対する愛”かとエリザベートに迫れば、作品は妖しく耽美的なトーンを帯びることになり、逆に二人から距離を置き、あくまで別次元の存在であることを強調すれば、人間の力が及ばぬ“死”に翻弄されながらも抗い続けるエリザベートの、精神の強靭さが浮き彫りになってきます。

今回の井上トートはと言えば、後者の印象。瀕死の彼女を見初めて歌う「愛と死の輪舞」は、歌詞上は情熱的な愛の告白ですが、井上トートは高貴かつ冷ややかなオーラを保って歌唱。またエリザベートがいったんは人間の愛(フランツ・ヨーゼフとの結婚)を選ぶと、その挙式後に彼女を振り回したり突き放したりと、およそ紳士らしからぬ荒々しさを見せつつ「最後のダンス」を歌います。貴公子然として擬人化されてはいても、あくまで“異界の”存在であるところのトート。劇中繰り返される、長身の井上トートが華奢な花總エリザベートに覆いかぶさるように迫り、黄泉の国へと誘う構図は、逆にそれに抗うエリザベートの芯の強さを美しく際立たせています。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

その他のキャストも“役者揃い”。物語の水先案内人を務めるルキーニ役・山崎育三郎さん(wキャスト)は、一層ロック味を増した歌唱と切れのある身のこなしで、ハプスブルク家の人々とは対照的な、束縛とは無縁のスタンスを体現。その彼が“宮廷でただ一人の男”と紹介する皇太后ゾフィー役・涼風真世さん(wキャスト)は凛とした美声を活かし、息子である皇帝に歌いかける“強く…冷酷に…”のフレーズに、帝国を担うということの重みを凝縮させます。

また皇太后とエリザベートの対立の犠牲となって孤独に成長、本作で最も悲劇的な立場に置かれた皇太子ルドルフ役・古川雄大さん(wキャスト)は、そんな中でも政治に希望を抱き、情熱を燃やそうとした青年をまっすぐに好演。父、そして母に拒絶され、絶望の中で自分からトートにキスをするに至る過程を、短くも激しいダンスを含め力強く演じ、状況が異なれば優れた君主になったかもしれない青年の悲劇を印象付けます。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

トートに従うトート・ダンサーやそれぞれに複数の役を兼ねるアンサンブルも、民衆の不満を歌うナンバー「ミルク」をはじめ、歴史の空気が変わってゆく各瞬間を抜群の一体感で描写。それまで縁遠かった近代ヨーロッパ史が、本作を通して身近に感じられる観客も多いことでしょう。

誰にも心の内を見せず、孤高の人となってゆくエリザベートですが、その心中は精神病院慰問をきっかけに、“私にできることは強い皇后を演じることだけ”というつぶやきや、旅先で父の幻を見かけ“自由に生きたい……もう遅すぎる”と寂しげに語りかけるシーンで吐露されます。そんな日々の中で突然訪れる、命の終わり。誰もが羨む境遇にありながら失意の連続であった彼女の人生は、悲劇と呼ぶにふさわしいものかもしれません。

しかし本作のラストで描かれるのは、年月とともに様々な重荷を背負った彼女がそれを脱ぎ捨て、再び光り輝く存在となってトートにいざなわれる光景。もがきながら生きた一つの人生が、敬意をもって現代人たちの前に示されるのです。終演後“光と闇の世界”から、再び“日常”へと足を踏み出した時……、観客の胸にはきっと、この懸命な“生”への感慨と今日を、明日を生きる気力が、ふつふつと湧いて来ることでしょう。

【博多公演観劇ミニ・レポート】
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

8月、場所を博多に移し、ますますヒートアップ中の『エリザベート』。1階後方から見廻したところ男性客も少なくなく、ここ福岡ではカップルでの観劇が東京以上に根付いているように見受けられます。

この日のキャストはエリザベートが花總まりさん、トートが井上芳雄さん。花總エリザベートが少女の頃の軽やかさと、皇后となって以降の重苦しさの対比を一層際立たせ、ほっそりと可憐な身体とは裏腹に物語の幹をしっかりと体現しているのに対し、井上トートは東京公演の頃よりも発声、動きが若干ソフトに。現世と黄泉の国の「あわい」を意識した表現であるのかもしれません。また博多ではシングルキャストとなっているフランツ・ヨーゼフ役・田代万里生さんは、壮年、老年期の台詞、歌声に一層重厚感が増し、“声の探究”をきわめているご様子。特に老年期においては甘さを排し、すっかり“枯れた”ふぜいながらエリザベートを待ち、求め続ける姿に一人の人間としての真実味があらわれ、胸を打ちます。
博多座の提灯と意外にマッチ(?)するキャスト写真。(C)Marino Matsushima

博多座の提灯と意外にマッチ(?)するキャスト写真。(C)Marino Matsushima

またこの日、目覚ましい存在感を放ったのが、ルキーニ役の成河さん。冒頭の登場時から目に狂気じみたものを宿らせ、“世界は、終わった……”と幕開きのナンバーが始まると、空間ごと音楽を支配するような腕の動きを見せる。ルキーニの回想としてエリザベートの物語が展開する“入れ子構造”を明確に示しています。またストレート・プレイで培った技術を活かし、随所で台詞をふくよかに立体化。エリザベートと“死”が抱き合う耽美的な幕切れには、最後の最後で縄を首に巻き付けて登場、たった数秒の芝居で物語世界を改めて“入れ子構造”に収める様が鮮やかです。

終演後、劇場外では“博多座提灯”に照らし出されたキャストの大写真と記念撮影をする方が多数。帝劇に比べここ博多座は若干小ぶりな分、舞台が近く感じられ、より登場人物に感情移入をしやすいのかもしれません。20時をまわり、夕闇が刻一刻と漆黒の度合いを増してゆくなか、名残り惜しそうにたたずむ方も。もう少し余韻に浸っていたい、と思わせてくれる盛夏の『エリザベート』です。



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