法人実効税率が30%を切る時代に

図1.法人税の税率の変遷グラフ

 

不動産投資に当たって、法人を設立することにメリットがあることは、かねてからいわれています。近年、この傾向がさらに進んでいます。2016年度の税制改正で、法人税の基本税率が23.4%へ引き下げられました。法人住民税や事業税などを含めた法人実効税率29.97%となり、ついに30%を切ります。

個人の所得税率は、所得が高い人ほど税率が高くなる超過累進税率です。課税所得が900万円を超えると約33%、4,000万円を超えると約45%にもなります(但し、195万円超の所得には、課税額に応じた控除があります)。以前の最高税率は1,800万円超で40%でしたが、2015年度の税制改正で増税されました。法人は課税所得が増えても、基本税率は変わりません。

また、課税所得が800万円以下の中小法人の場合は、15%の軽減税率が適用されるため、さらに低くなります。アパート1棟くらいなら、このレベルに収まるケースが多いかもしれません。

なお、今回の税制改正では、資本金が1億円を超える大企業に対しては「外形標準課税」の強化も盛り込まれました。外形標準課税の割合が大きい企業等や赤字企業等においては、法人税が増税になる可能性があります。とはいえ、個人投資家が設立する資産管理法人の場合には、資本金が1億円を超えることはほとんどないでしょうから、これは当てはまるケースは少ないでしょう。


法人は、収支のコントロールや節税の工夫がしやすい

ここで、あらためて法人化のメリットを整理しておきましょう。

1.法人と個人の実効税率の格差を利用して節税する
前述のように、法人税率は下がり、個人の所得税率は上がる傾向にあります。サラリーマンが不動産投資をする場合、個人のままでは課税所得が大きくなって税率が上がるため、かえって税負担が高まってしまい、思ったように手取り額が増えない可能性があります。

2.所得分散効果がある
家族を法人の役員にして賃料収入から報酬を支払うことによって、一人当たりの課税所得が小さくなるため、個人所得税の税率が下がります。その結果、オーナーが個人で賃料収入をすべて得る場合よりも、トータルの税額は低くなるわけです。

ただし、所得を分散する場合には注意が必要です。最近は、中小法人に対して未納社会保険料の徴収が厳しくなっています。役員や従業員を増やすほど、所得分散効果は高くなりますが、安易に従業員を増やすと、逆に社会保険料の負担が重くなるおそれがあるのです。

そのため、あえて所得分散をせずに、法人に内部留保するほうが望ましいケースもあります。それを、将来、役員に退職金を支払う形も有効です。退職金は、通常の所得と異なり、税務上で優遇されているため、税負担を軽くすることができます。

3.短期に売却、出口を検討するなら法人が有利

不動産を売却したときに利益が出ると、譲渡税がかかります。個人の場合は、1月1日時点で所有期間が5年以内の場合を短期譲渡、同5年超を長期譲渡といい税率が異なります。短期譲渡が約39%、長期譲渡が約20%(別途復興特別所得税がかかります)と2倍近い差です。

法人の場合は長短の区分がなく、5年以内に売却しても30%前後の税率となります。逆に、5年を超えて長期に保有するつもりなら、法人より個人のほうが有利になるといえます。

4.法人のほうが経費を幅広く計上できる
個人では、賃料収入で得た不動産所得と、不動産の売却で得る譲渡所得は、種類の異なる所得として別々に課税されます。そのため、売却損が出ても、不動産所得と損益通算することはできません。

一方、法人の場合は、法人として営むすべての事業の利益と損金を通算できます。たとえば、売却損が出たり、別の事業で大きな経費を使って赤字になった場合には、不動産所得の黒字と相殺することで、全体の課税所得を減らすことができます。

また、個人の生命保険料控除は年間で最大12万円までしか認められていません(一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料、各4万円以内)。法人には、こうした制限がありません。年間、数百万円単位の保険料でも、その一部、半額、場合によっては全額を経費に計上できる法人専用の生命保険の商品があります。

このように法人にすると、さまざまな経営上の工夫により、節税を図ることが可能になります。


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