環境の変化が身体に影響…病気リスクがあがることも

パートナー・老夫婦

長年連れ添ったパートナーとの離婚や死別…。離別による環境の変化は、心だけでなく身体にも影響を与えるのかもしれません

自分を取り巻く環境が変化することで、様々な病気の危険性が高まることがあります。特に、心臓や脳の病気は生死に関わるため注意が必要です。2016年に、環境変化によるストレスと病気の関係に関する2つの興味深い論文が発表されましたので、以下でご紹介したいと思います。

研究報告1. 離婚で脳卒中リスクがあがる

脳卒中とは、突然何かにあたったように倒れてしまう病気で、正式には「脳血管障害」を現わしています。「卒」は「突然」、「中」は「あたる」という意味です。

2016年に国立がん研究センター がん予防・検診研究センター長である津金昌一郎先生を中心としたグループが『Stroke(日本語名:脳卒中)』に発表した論文によると、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部、沖縄県宮古の地域に居住している40~69歳の既婚の男女約5万人を対象に行った調査では、脳卒中の発症する危険性が社会的環境の影響を受けることが明らかにされました。

危険率が1より高いほど、脳卒中を発症する危険が高いと考えられますが、
  • 離婚して子どもと同居している場合……男性1.44、女性1.45
  • 離婚して子どもと同居していない場合…男性1.10、女性1.15
と、子どもとの同居の有無にかかわらず、統計学的に見て、離婚した人ほど脳卒中の危険が高くなっていましまた。

子どもではなく、親との同居の場合はどうでしょうか? 親と同居していない状況を1としたとき、離婚して親と同居すると、男性0.96、女性1.33となり、女性のみ脳卒中の発症する危険が高くなっていました。離婚して親を同居しない場合は、男性も1.25と高くなっています。

いずれの場合も「離婚」という社会的な環境によって、脳血管障害である脳卒中の危険が高まっていることがわかります。

研究報告2. パートナの死後1年間は心房細動の危険性が高い

心臓の心拍数は、成人で1分間に50から100程度です。心房細動とは、心房が不規則に細かく拍動してしまう状態。正常時には心房から心室へ規則正しく電気信号が伝わりますが、心房細動が起こると1分間に350~600回の不規則な電気信号が発生してしまうため、心房全体が小刻みに震えるような状態になり、心臓のポンプ機能が低下してしまいます。

動悸や意識がなくなるなどの症状が出て、さらに、血液が心房内で停滞してしまうために血の塊である血栓ができやすくなり、この血栓が脳の血管に移動してしまうと脳梗塞を起こすリスクがあります。心房細動は脳卒中の危険因子ともいえるのです。

そして、感情的なストレスがこの心房細動を起こすきっかけになるという報告があります。同じく今年、2016年にデンマークのSimon Graff先生が『Open Heart』に発表した論文では、デンマーク住民で、1995年から2014年に心房細動と診断された8万8612人と、健康な88万6120人の比較検討しています。

心房細動を発症した群では、パートナーの死別後8~14日後に最も心房細胞の発症リスクが高い「1.9倍」となり、以後、徐々に低下して、1年後には死別していない群をと同じ程度まで下がっています。

特に、パートナーとの死別から30日以内に心房細動を発症する危険性は、41%も増加することが報告されました。さらにパートナーが死亡前の1か月は比較的健康で、死が予想外であったときには、57%も増加します。

原因として、パートナーの死が強いストレスとなって、自律系神経のバランスに変化を及ぼし、心拍数を変動させ、不整脈が起こる可能性が考えられています。

パートナーとの離別後に気を付けるべきこと

以上の2つの報告からわかることは、身の回りの変化、特に付き合いが長いパートナーとの別れは、脳や心臓に対しても影響を及ぼす危険が高いということです。そして、そうした出来事の初期に、特に注意が必要だということがわかります。

もしもこれらの出来事を経験することになってしまった場合、なかなか自分の身体のことには気が回りにくくなってしまうかもしれませんが、動悸や意識がなくなるなどの自覚症状があれば病院を受診されることをおすすめしたいと思います。必要があれば心電図を、可能であれば24時間心電図検査ができるホルター心電図をつけるなどのケアも受けられます。

脳血管障害の場合、話すことが難しくなった、ろれつが回らない、意識がなくなる、頭痛、手足の動きが悪いなどの症状が出ます。これらの症状が現れた場合も、医師に速やかに相談するようにしましょう。また、当事者ではない家族や身近な方も、こういったリスクの傾向があることを頭に入れて、できる方法で支えられるのがよいかと思います。
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