キャンプとホテルの要素が合体

久しぶりに「楽しめる宿」に出会い、心地よい時間を過ごすことができた。
この宿が目指すものと私の感性がぴたっとはまったからだろう。星のや富士をはじめ、星野リゾートの各宿に関するレポートは、雑誌やWebで数々アップされているので「今さら」なのだが、私なりに思いを記しておきたい。

 
undefined

クラウドテラス「焚き火BAR」

星のや富士のコンセプトである「グランピング」とは、「グラマラス(豪華)」と「キャンピング」を合せた造語。発祥は米国で、日本でも耳にする機会が増えた。

 

「キャンピングは魅力的だが、テントに泊まってまではしたくない。リゾートホテルは魅力的だが、都会と同じようなレストランやバーでは面白くない。アウトドアのムードを体験しつつ、快適な客室で泊まる」というわがままを叶えてくれるのがグランピングだ。2016年、全国でいくつかグランピングリゾートができる。今後、あちこちで増えていくことだろう。

世の中を変えるアイデアは、既存の2つのモノを組み合わせて創造する。「キャンプ」と「ホテル」という全く違うテーマで成り立つグランピングだが、見ている限り相当運営に手間とコストがかかる。きっちりとしたホテルも要るので、今後星のや富士がデファクトになるとすれば、品質も相当求められるようになるため、そう簡単に真似はできない。そういう希少性と非代替性を確保した意味においても、星野リゾートの戦略に抜かりはない気がした。

 
undefined

「遊歩大全」片手にモルトを傾ける

一方、日本のグランピングリゾートにアキレス腱があるとしたら、手間ひまのかかる高いサービスレベルを維持する上でどうしても「高単価にならざるを得ない」点と、日本に「その価値がわかるリピーターや伝道者が誕生するか」どうかだろう。若かりし頃、「遊歩大全~The New Complete Walker」(芦沢一洋訳)をバイブルとしてウィルダネスに憧れた層が、「海を眺めるリゾートホテルでイタリアンなんてさすがにもう勘弁だ」と言いながら、遊び用の2シーターに乗って時々遊びに来るようなイメージはあるのだが、果たしてそいつにつき合うのは誰かという問題が残る。

 

私もそう。この面白い遊び場に誰と来るか。意外にそこが問題なのだ。

 

大人の遊び場

チェックインは、河口湖畔道路から一本入った路地にあるレセプションで。車で来た場合はここが駐車場となる。ナビで検索されないうちは住所を入力するか、富士河口湖町にある大石小学校の裏手を目指そう。

 

チェックインと同時に受け取るのがリュックサック。壁に見本がかかっているので、好きなものを選ぶ。「キャンプに行くんだ」という気分がすこし増幅する。中に入っているのは、双眼鏡、ヘッドランプ、ダウンブランケット、持ち帰りできるステンレスボトルとエリアマップ。ちょっとした大人の遊び心が詰まっている。ヒールのある靴を履いてきたのなら、持ってきたスニーカーにここで履き替えていこう。

 
undefined

レセプションでリュックサックを借りて

レセプションからはジープに乗り換え、赤松林の中のグランピングエリアへと向かう。乗り換えるのは、エリア内は全て急傾斜地で駐車場スペースは取れないためでもあるが、日常と非日常的を切り替えてもらうための「結界」を造ったという意味でも、このパーク&ライド方式には納得できる。

 

エリア外への送迎ポイントである「待合」の小屋を過ぎ、打ちっぱなしコンクリートの客室が幾何学的に並ぶ「キャビン」を横目に見ながら、ジープは「フロント」のあるメイン棟に到着。シックな木造のメイン棟には、右にフロントデスク。左にグリルダイニングがある。

 

バードコールの付いたルームキーをフロントで受け取ったら、メイン棟から屋外へ。若木が植えられた敷地内の階段を下り、宿泊するキャビンへと案内してくれる。

 
undefined

雄大な景色を望む丘の上に並ぶキャビン


……と、メイン棟からキャビンへと向かうこの瞬間が、グランピングを楽しめるかどうかの分岐点だ。