メンタルヘルス

「毒親」育ちで今も辛い人に…セルフセラピーの薦め

親の過度な支配や過干渉、言葉の暴力などで傷ついてしまった場合、その影響が成人後も残ってしまうことがあります。最近では「毒親育ち」という言葉で自分を語る方もいるようですが、「自分に自信が持てない」「自分は誰からも大切にされない」という感覚が後々まで続くのは苦しいものです。今回は「ホログラフィートーク」と呼ばれるカウンセリングのエッセンスを使った、自分でできる心のケア方法をご紹介します。

矢野 宏之

執筆者:矢野 宏之

臨床心理士 / 心の健康ガイド

大人になっても修復されない心の傷はどうすればよい?

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傷ついた自分の心に、良い親のように共感していくことが癒やしになります

過度な支配や過干渉、言葉の暴力など、育てる過程で子どもに悪影響を及ぼしてしまう「毒親」。親自身が苦悩を抱えている場合もありますが、そのような親に育てられた方の中には、大人になって親と離れて暮らし始めても、その影響が長く残ってしまうことがあります。

嫌な思い出がよみがえるフラッシュバックが起きたり、「自分自身に自信が持てない」「みんなに大事にされていると思えない」など様々な生きづらさを感じてしまうことがあるようです。

最近では「毒親育ち」という言葉もあるようですが、親から受けた悪影響による苦しみがひどい場合、カウンセリングなどを受けることも有効です。カウンセリングにはさまざまなアプローチの方法があります。今回は「ホログラフィートーク」と呼ばれる心理療法のエッセンスを利用した、簡単なセルフケアの方法をご紹介しましょう。

初めての方には少し抽象的な表現に思われるかもしれませんが、「ホログラフィートーク」とは、自分の悩んでいる問題を色や形を持ったイメージとして表現し、そのイメージに語りかけていくことで、感情的なわだかまりを解放していく方法です。

ステップ1. 「問題」を色や形を持ったイメージにしてみる

リラックスできる落ち着いた部屋で行いましょう。ゆったりと座って、今問題に感じていることを一つ選びましょう。問題を選んだら、その問題に対する感情が「体のどこにあるか」を探って下さい。

胸かもしれませんし、もしかしたらお腹や頭にあるかもしれませんし、手や足、体の外側などにあるかもしれません。

場所が特定できたら、その部分に手を置き、リラックスしましょう。そして、その感情や手をおいた場所に注意を向け、その感情の色や形がどんなものであるかを感じていきましょう。そうすると、多くの場合、色や形を持ったイメージが見えてくると思います。

ステップ2. イメージが自分のものかどうかを確かめる

今度は、色や形が見えてきたイメージをじっくりと観察してみましょう。このイメージは自分の中にもとからあった感情が変化したものなのか、外から勝手に入ってきたイメージなのかを観察してみましょう。自分の中にもとからあるイメージに対しては、優しさと共感をもって接していくことになります。外から入ってきたイメージに対しては、決別し自分の中に侵入されないようにしていくことになります。

例えば、「誰も自分のことを大切にしてくれない」ということで悩んでいたとしましょう。この感情が、誰かに植えつけられてしまった感じがすれば、外から勝手に入ってきたイメージなのだと考えるようにします。

ステップ3. イメージに対して語りかける

■イメージが自分の中にもとからあったものである場合
見えてきたイメージが自分の中にもとからあった感情が変化したものだと感じる場合、そのイメージに対して「どうしたの? 今どんな気分?」と尋ねてみましょう。一通り、話を聞いたら、共感しましょう。「とても辛い状況にいたんですね」「あなたが本当に傷ついていることがよく分かりましたよ」「いま、あなたが考えていることはとても素敵なことですよ」と、メッセージを伝えて下さい。メッセージを伝えることで色や形が変化することもあります。

■イメージが外から勝手に入ってきた「別の物」であった場合
もし、そのイメージが外から勝手に入ってきた「別の物」であると感じた場合は、「あなたは、本来ここにいるべきものではないですよね。どうしてあなたは、ここにいるの?」と理由を尋ねてみましょう。理由が分かったら、「あなたが、そういう理由でここに来たのはよく分かりましたよ。でも、ここは本来あなたの場所ではありません」と伝えて下さい。

次に、空の一番高い所から、光の柱がおりて、自分をすっぽりとおおってしまう光景を想像しましょう。この光の柱は、その「別の物」を空の一番高い所にあげるためのものです。この光の柱を使って、「別の物」を空の最も高い所まで上げて下さい。「別の物」が柱の光に包まれて、空の一番高い所に消えると想像してみましょう。さらに、「別の物」は1つではないかもしれません。他にもあれば、全て空の高い所に上げて下さい。そして別のものが無くなった所を柱の光で満たしましょう。

ステップ4. 日常生活へのヒントを得る

最後に、「別の物」が無くなった場所や、色や形を持っているイメージに、「あなたは何を望んでいますか?」「その為に私は何をしたり、心がけたらいいですか?」と聞いてみましょう。答えが得られたら、その場所やイメージをあなたの優しさで満たしていきます。胸から体全体までゆっくりと優しさで満たしていきます。優しさで満たされたと感じたら、ゆっくりと深呼吸をして、いまここに戻ってきましょう。

まとめ

今回、紹介した方法は、ホログラフィートークと呼ばれる心理療法のエッセンスを簡単にしたものです。もし、このワークをやっている最中に、苦痛を感じたり、苦しみが改善しない場合は、専門的なカウンセリングを受けることをおすすめします。

毒親からの影響というものは、根強く残るものです。その時には、このようなワークを通して、本来の自分の考えを見つめ直し、自分に優しくなる時間を持ってみると、心が軽くなるでしょう。
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