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空間認知能力が高い子供の特徴とは?数学や科学に強くなる!

空間認識力が高い子供は、科学や数学分野で成功する傾向にあると分かっています。「空間認識力」とは、目にするものを立体として捉える力のこと。この記事では、子供の空間認識力を高めるために、周りの大人に何ができるかをみてみましょう。

長岡 真意子

執筆者:長岡 真意子

子育てガイド

<目次>
 

「空間認識力」が高い子供は、数学や科学分野で成功する!

空間認知能力の高い子供に育てる

空間認知能力の高い子供に育てる


「空間認識力」とは、目にするものを立体として捉える力のことで、知能テストなどでもよく出題されます。ある図形を脳内で回転させ、その状態を「三次元空間(3D)」としてイメージできる能力のことで、それに優れていると、二次元の地図から、三次元の地形を簡単に把握できるたりするので、日常生活でも道に迷いにくいなど、何かと便利な能力ですね。

加えて、「空間認識力」が、科学や数学スキルとの関係性が非常に高いとの研究結果が多くあります。頭の中で物や空間の形や関係性を視覚化するのが得意な子は、科学や数学の分野で成功する傾向にあるというのです!
 

空間認識力は、女子より男子の方が優れている!?

「でも、空間認識力って生まれつき決まった能力でしょ?」と思われるかもしれません。確かに生まれつきの個人差はあり、女子より男子の方が優れていると示す研究がいくつかあります。

例えば「方向音痴」なども、女性の方が男性より多い印象をもたれませんか? こうした「空間認識力」の性差は、「テストステロン」という女性より男性に多いホルモンによるためとされています。成人女性にテストステロンを服用させたところ、「空間認識力」が高まったという研究もあるほどです。
 

空間認識力を高めるのは、親の子供への働きかけによって改善する

それでも「空間認識能力」とは、トレーニングによって、劇的に改善することが分かっています。例えば、心理学者デービッド・ツリエル(David Tzuriel) 氏率いる研究チームによると、116人のイスラエルの小学1年生に、3Dのイメージを操るプログラムを用いてトレーニングしたところ、8週間後には男子と女子の能力差が消えてしまったといいます。(*1) 

また、心理学者ジン・フェング(Jing Feng )氏率いる研究チームによると、10時間、銃をうったりといった3Dアクションのビデオゲームをすることで、大学生の空間認識力が改善され、特に女性の方が改善度が高かったといいます。(*2) この研究によると、たった「10時間」で結果が出るというのですね。

生まれつきの差はあるものの、働きかけによって大いに改善することが分かっている「空間認識力」。それでは、子供の空間認識能力を高めるために、周りの大人に何ができるでしょうか?
 

子供の空間認識力を高めるには? 形や空間的特徴を表す言葉をかける

空間認識力を伸ばす方法は?

空間認識力を伸ばす方法は?

心理学者シャノン・プルーデン氏率いる研究チームによると、こんな興味深い結果が報告されています。生後14カ月以上の52人の幼児と親との会話を調査したところ、「丸」「三角」「球」「大きい」「小さい」「高い」「ゆがんでいる」といった「形」や「空間的特徴」を表す言葉を豊富に用いた親の子供の方が、46カ月後に空間認識力をはかるテストをしたところ、高いスコアを示したというのです。

何かと忙しい日常生活、ついつい、「これをアソコのソノヘンにしまっておいて!」などと言ってしまいがち。そんな時は少し気を配って、「この丸い器を、あの背の高い戸棚の、上から三番目の棚の真ん中にしまっておいて」など、空間認識を促す語彙を意識的に使ってみましょう。
 

子供に空間認識を促す質問を、日常生活の中でしてみる

普段の生活に、空間認識力を高める機会は溢れています。スーパーのレジで、「このバッグに今日買ったもの全部収まると思う?」と声をかけてみます。寝室で、「このシーツをどちら向きにしたらベッドにぴったりかぶさるかな?」と問いかけてみましょう。台所で 「このパン切ったらどういう形になるだろう?」と不思議がってみせるのもいいでしょう。

その際、「頭の中でどうなるか描いてみて」と視覚化するよう促すのも助けになります。また「問い詰める」といった口調よりも「一緒に考えるのを楽しんでいる」といった雰囲気がいいでしょう。
 

組み立て式の玩具を用いた遊びや工作に親しむ

説明書を見て組み立てても、自らのアイデアを試してみても、空間認識力は高められます。

説明書を見て組み立てても、自らのアイデアを試してみても、空間認識力は高められます。

積み木や組み立て式の玩具で遊ぶことや工作なども、空間認識力を高めると分かっています。説明書を見て模型通りに作るのもいいですし、自らのアイデアを形にするのなら、空間認識力だけでなく創造力を培うことにもなります。

外出先や写真で見るものに興味を持つようならば、「どうやったら作れるかな?」と一緒に考えてみるのもいいでしょう。例えば、動物園で見たキリンを折り紙やトイレットペーパーの芯で作ってみたり、物語に出てきたお城を段ボールで作ってみたり。

今はインターネットで検索しても様々な工作アイデアを参考にできます。こいのぼりやクリスマスリースを紙やペットボトルなど身近なもので作ってみるなど、季節の行事を「工作の機会」としてみるのも楽しいですね。
 

子供に与える玩具や遊びの幅を広げる

玩具売り場をのぞくと、女の子セクションはピンクに彩られ、お人形やおままごとセットに溢れています。一方、男の子セクションは、車や組み立て式の玩具がずらり。ホルモンの関係もあり、生まれつきの好き嫌いもあるでしょうが、性別に拘らず、普段あまり関心を持たない子にも、組み立て式の玩具や工作に触れる機会を与えてやりましょう。

お人形遊びやままごとの際も、お家や家具を積み木やブロックで組み立ててみたりと、空間認識を促す遊びを取り入れることができます。
 

地図を用いて遊ぶ

地図を手に、近所や出かけ先の街を探索してみましょう。普段見なれた街も、手にする二次元の地図と目の前の情景を照らし合わせることで、新鮮に感じられるはず。

また家の間取り図を作り、いくつかの場所にものを隠し、地図にマークをして探すといったゲームも楽しいですね。
 

カメラを使わせる

様々なアングルから写真を撮ることで、空間認識力が高まります。ひとつの物が、角度によって様々な形に移り変わる様子を、撮影した写真を見ながら話し合ってみましょう。

日常会話や普段の遊びを少し工夫し、親子で「空間認識力」を伸ばしていきたいものですね!


※参考資料
(*1)Tzuriel D and Egozi G. 2010. Gender Differences in Spatial Ability of Young Children: The Effects of Training and Processing Strategies. Child Development. 81 (5): 141.
(*2)Feng J, Spence I, Pratt J. 2008. Playing an action video game reduces gender differences in spatial cognition. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17894600

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