子育て/プラス思考の子を育てるコツ

謝り癖がある子供の心理「ごめんなさい」を言い過ぎる子への対応法

自分が悪くなくても、とっさに「ごめんなさい」と謝ってしまう子がいます。その子の性格や、その時の状況にもよりますが、あまりに多いと気になります。実は、適切に「ごめんなさい」を言うためには「自信」が必要なのです。

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

「ごめんなさい」を言い過ぎる子

謝り癖 謝りすぎる ごめんなさい 多い子供  心理

とっさに「ごめんなさい」が出る子は、怒られることへの恐怖が強いようです

自分が悪くなくても、とっさに「ごめんなさい」と言ってしまう子がいます。その子の性格や、その時の状況にもよりますが、あまりにも多いと心配になってきます。

相手の気分を害することを怖れ、常に周りの大人や友だちの顔色を見ているような、おどおどした態度が見られたりもします。「どうして悪くないのに、謝るの?」「ごめんなさい」……なんて会話になってしまったり……。

自分は間違っているのではないか、自分は他人を不快にさせているのではないか。いつ怒られるかわからない。そんな不安と緊張が続いている感じを受けることもあります。

 

親である自分のことを見直してみよう

電車の中で足を踏まれて、とっさに「すみません」と謝ってしまい、悔しい思いをした、という話を聞いたことがあります。自分が被害者なのに……と。「しかも、足を踏んできたオヤジはさも迷惑そうな顔でこちらを見たのよ!」なんて。

こういう経験のある女性は少なくないようです。不測の事態が起こったら、とりあえず謝ってやり過ごす、というのは「弱者の知恵」かもしれません。また、女性は「自分より相手を優先する」ことが、「女らしさ」だと教育されてきています。

私たちのコミュニケーションパターンは、自分や相手を尊重できるか(OKを出せるか)という軸で、次の4つに分かれると言われています。
 
図

 

やはり、自分も相手も尊重できる、対等でさわやかな関係が理想でしょう。しかし、日本人、特に女性は「I’m not OK, You’re OK.」の受け身的、非主張的な人が多いと言われます。

子どもは同性の親をモデルにすることが多いので、男の子の場合はお父さんに、女の子の場合はお母さんに「受け身的コミュニケーションのくせがないか?」をチェックしてみるとよいかもしれません。

 

謝りすぎることのデメリット

自分が悪くなくても謝るというのは「他人と揉めたくない。相手を立てて、良好な人間関係を維持したい」という思いの表れでもあります。しかし、現実の人間関係では、波風が立つことを完全には避けられません。そういう中で「自分さえ我慢すれば」というのは、全体的・長期的に考えると、よくない結果になることが多いようです。

常に自分に我慢を強いることになりますし、割り切れない思いを飲みこんでいくことにもなります。また、すぐ謝る人だと認識されてしまうと、周りから「とりあえず、こいつのせいにしておけばいい」と思われてしまうかもしれません。相手が謝ったという事実だけで「自分は悪くない」と主張する人もいます。

謝るというのは、自分の非を認めるということです。「悪いことをしていないのに謝る」という自己否定の繰り返しは、やがて「自分の存在自体が悪い」という自己暗示になってしまうかもしれません。「言霊」という言葉がありますが、私たちが使う言葉は、自分や相手に影響を与えていくものです。

 

頭ごなしに怒らない

謝り癖がある子供の心理 愛されていると感じられることが大切

子どもが「自分は愛されている」と感じられることが大切です

とっさに謝ってしまう子は、親や先生から頭ごなしに怒られていることが多いようです。「問答無用。言い訳せずに潔く謝れ!」というふうに怒られてきたら、相手の怒りがエスカレートしないよう、とりあえず謝って相手の気持ちをやわらげようとするものです。

予想外のことに親自身が動転して、頭ごなしに怒ってしまうということもあるでしょう。親も完璧ではありません。でも、一息ついて自分の興奮が収まったら、子どもに事情を聞いてみましょう。子どもの「言い訳」は聞きましょう。大人が見えていない部分が必ずあるはずです。

 

「責任」について教える

私たちは、誰かの代わりに責任を取ることもできないし、誰かに自分の責任を取ってもらうこともできません。しかし、責められると反射的に謝ってしまうという人は、相手の責任まで引き受けてしまうことが多いようです。

自分が100パーセント悪いとか、相手が全部悪いといったことは、あまり起こりません。「自分にも悪いところはあったけれど、自分だけが悪いわけではない」ということがほとんどではないでしょうか。

自分の非を認めることは、勇気も要りますし、大切なことではありますが、だからといって、30しかない責任を100負う必要はないのです。交通事故の過失割合のように、自分の責任はどこにあり、どの程度のものなのかということを、判断する習慣をつけましょう。そして、子どもにも考えさせましょう。

責任の所在についての感覚を磨くことは、自分と他人の境界をはっきりさせ、自分を大切にすることにつながっていきます。「自分が悪いと思ってないことまで、謝らなくていいのよ」と伝えましょう。すでに「謝りぐせ」がついている場合は、何度も何度も伝える必要がありますが、子どもが「自分の言い分をちゃんと聞いてもらえる」と思えたら、次第におさまっていくでしょう。

 

「ありがとう」の代わりに謝罪しない

好意や親切を受けた時「ありがとう」の代わりに「すみません」と言ってしまう日本人は少なくありません。でも「すみません」には「こんな私のために、申し訳ありません」といった、自分を卑下するニュアンスがないでしょうか。

私は、ほんの小さな親切に対して「すみません」と言われてしまうと、恐縮してしまったり、ありがた迷惑だったかな?と不安になったりします。「助かりました。ありがとう!」と言われた方が、さわやかで気持ちよく感じる場面も多いもの。

子どもは、周囲の大人のやりとりを観察してコミュニケーションを学んでいきます。感謝を伝える場面では「ありがとう」を使うよう心がけましょう。

 

虐待の可能性を視野に入れる

いい子ね、と頭をなでようとしたら、ビクッと身体を硬直させ「ごめんなさい!」と言う、といった反応をする子がいます。脅え方が尋常でない場合は、虐待を受けている可能性が高いと思われます。学校などと情報共有するとともに、どのように対応すればよいのかを児童相談所に相談しましょう。


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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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