ハウスメーカー・工務店/ハウスメーカー・工務店の特徴

質の良い中古住宅を手に入れるには

常々申し上げていることですが、住まい選びにおいて「選択肢をできるだけ広げておくこと」が非常に大切です。今回は、これまであまり選択肢になってこなかった中古(ストック)住宅について、メリットやデメリットなど基本的な事項を整理し、さらに最近の動向や取り組みについてご紹介します。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

中古住宅を購入するメリットとデメリット

皆さんは「中古(ストック)住宅」についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。「設備などが古くて暮らしづらそう」「どんな問題があるのか分からない」などの理由で、住まい選びの対象から外している方もまだ多いのではないでしょうか。ただ、中古住宅それなりのメリットがあり、皆さんにとって住宅取得の可能性が広げる存在でもあります。そこで、中古住宅を巡る現状について、国やハウスメーカーの取り組みなどを含めてご紹介します。現状を理解することで、質の良い中古住宅を手に入れられる可能性が高まるはずです。
不動産

不動産店にある中古住宅の情報板。一口に中古住宅といっても、築年数や広さ、環境など様々なものがある。中でも、築年数=質の高さとならないこと、どこに不具合があるのか、などがわかりづらいのが最大の問題点だ(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


まず、中古住宅を購入するメリットとデメリットを整理してみましょう。まずはデメリットから。
・耐震性や耐久性など問題を抱えている可能性がある
・設備や仕様が旧式
・内外観のデザインが時代遅れ
・夏暑く、冬寒い


リフォームをすれば、これらのデメリットは解消されるのかもしれませんが、とはいえその費用がどれくらいになるのか、素人目にはわかりづらいもの。また、建てられてからどのような履歴を経ているのか、わからないことも問題です。

よく、リフォーム番組などでみられることですが、過去に増築やリフォームをした際に、構造上大切な柱や梁を切り落としていた、なんていうケースもあります。シロアリ被害の状況など、建物の壁などを一度外してみないと分からないことなども問題です。

ただ、悪いことばかりではありません。メリットとして以下のような点があります。
・新築に比べ手頃な価格で購入できる
・広い敷地&住宅に住む可能性が高まる
・住みたい場所に住みやすい
・すぐに住むことができる


内部の問題点は見えづらいにせよ、モノがあり立地の善し悪し(駅から近いとか、子育てがしやすい環境とか)など、購入するための判断をしやすいという点も、中古住宅ならではのメリットといえそうです。
ニュータウン

緑が多く住環境が良い、あるニュータウンの様子。築後20年ほどが経過した住宅では今、住民が住み替えをし、空き家になっているケースがある。そうした住宅が若い世代に住み継がれるようにすることが、これからの我が国の課題の一つでもある(クリックすると拡大します)


最近は、リフォーム技術が大幅に進歩していますし、金融機関による専用ローンなども発売され、中古住宅を購入後リフォームして暮らす、というあり方が私たちにとって身近になってきました。

国が中古住宅の活用を積極的に推進する理由とは?

国も中古住宅の購入について積極的に支援する姿勢を見せています。今は新築よりはもしろ、リフォームを含む中古住宅の取得支援策の方が手厚いくらいです。で、そこには、そうせざるを得ない理由があるからです。

総務省が発表した「平成25年(2013年)住宅・土地統計調査」によると、13年10月1日現在における我が国の空き家数は820万戸となり、5年前に比べて63万戸(8.3%)増加していました。
床下点検

近年は、床下の点検を容易にし、さらに顧客に映像で分かりやすく結果を示すことができる床下点検ロボットも一部で導入されるようになっている(写真は大和ハウスリフォームのロボット。クリックすると拡大します)


空き家率は1998年(平成10年)に初めて1割を超えて11.5%となっていましたが、13年には13.5%と空き家数、空き家率共に過去最高となっていたわけです。要するに10戸に1戸以上は空き家というわけです。

こうした状況ですから、空き家を含め今ある住宅をリフォームなどで改善し、長く住み続けられるように社会のあり方を変えていくことは、これからの少子高齢化社会の中に適している、と国は考えているのです。

国も財政難ですから、これまでのように新築住宅に補助金を投入するより、中古住宅の購入者にそのお金を回した方が経済的であるとの考えもあるようです。

私たち国民、消費者の側にも、新築ではなく中古住宅を購入することが有利と考えざるをえない事情があります。最近は雇用や所得の環境が不安定ですから、できれば住宅取得の負担を抑え、他でお金を使いたいものです。

増加傾向にある中古住宅を積極的に評価する人たち

特に子育てをしている30歳代や40歳代の方々にとっては、中古住宅の存在は味方になるはずです。このようなことから、最近は中古住宅の購入に対して前向きの考え方を持つ人が増えてきているようです。

内閣府大臣官房政府広報室は2015年(平成27年)に「住生活に関する意識調査」を発表しています。この調査から近年、国民の住まいに関する意識の変化、中でも中古住宅への抵抗感が薄れつつあることがわかります。
フレームヘーベル

内装を全て取り払った住宅(ヘーベルハウス)の内部の様子。ここから、今の暮らし方に合う住まいになるよう間取りを含むフルリフォームをした上で販売される。このようなかたちで、買取再販を行う事例も増えてきている(クリックすると拡大します)


住宅を購入するとしたら「どのような住宅がよいと思うか」について、「新築戸建て」との回答が63.0%、「新築マンション」は10.0%、「中古戸建て」が6.1%、「中古マンション」が3.8%、「いずれでもよい」が14.2%となっていました。新築派=73.0%、中古派=9.9%というわけです。

2005年にも同様の調査をしており、その際には「新築がよい」82.2%、「中古がよい」3.4%、「どちらでもよい」12.9%でした。相変わらず新築指向が強いことがうかがえますが、一方でこの10年で中古住宅を肯定する人たちが約3%から10%近くにまで増えていることもわかります。

2015年調査では、特に20歳代では戸建て・マンションを合わせて16%が「中古でよい」としており、若い世代に中古住宅で暮らすことに対する前向きな考え方が、少しずつ増え始めていることがみえています。

大手ハウスメーカーによるブランド中古住宅「スムストック」

このように国民、消費者の中古住宅に対する意識が改善されつつあり、かつ国も中古住宅の活用に積極姿勢を見せている中、住宅や不動産の事業者にも色々な動きがみられるようになってきました。その一つが「インスペクション」というものです。
クラック

クラック(ひび)が入った古い住宅の外壁。浸水による外壁の劣化が想像されるが、実際には大きな問題がない場合もある。インスペクションなどを実施し、正確な現状を知ることも中古住宅の購入にあたっては大切なことだ(クリックすると拡大します)


これは中古住宅の構造の状態について調べ、購入希望者に報告、仮に問題があればどのような改修を行えばいいのかなどをアドバイスするというものです。中古住宅の最大の問題点は、私たちにはそれがどのような状態であるかわかりづらいこと。それでは、安心して購入できませんから、このような取り組みが普及しはじめているのです。

こうした中で最も進んだ取り組み事例の一つが、大手ハウスメーカー10社による「スムストック」。この10社は新築以降、建物の定期点検を行い、さらにどのようなリフォームを行ってきたのかも含め、「住宅履歴」という情報を保管しています。
スムストック

福岡市にある総合住宅展示場で行われた「スムストック」のイベント。若い子育て家族を中心に、耐震性など信頼性が高いハウスメーカーの中古住宅と、その取り組みを紹介していた(クリックすると拡大します)


この情報を中古住宅購入希望者に提供し、中古住宅の最大の問題点である、質の問題についての不安を解消しようとしているわけ。中古住宅のブランド化を目指したものといえばわかりやすいでしょうか。

ハウスメーカーの住宅は新築では高額で「手が届かない」という方もいらっしゃるはず。ですが、スムストックなら購入できるチャンスが広がります。中途半端な事業者が建てる新築住宅より、スムストックを購入、リフォームし住んだ方がお得かもしれません。

また、こんな見方もできます。ハウスメーカーはこれまで郊外で比較的広い敷地に住宅を建ててきましたが、それが現在、中古住宅として世の中に流通しつつあります。環境の良い場所で、質の面で安心のある広めの住宅を手に入れる可能性も高まるわけです。

なお、スムストックのメリットは、中古住宅として購入する人だけでなく、長年住んできた住宅を売却したいという方にもあります。一般的に住宅の査定は、築後20年以上経つと建物の価値はゼロとされ、土地の評価だけになってしまいます。
モデルハウス内

モデルハウス内に設けられた「スムストック」に関するコーナー。映像や説明ボードが用意されているほか、モデルハウスのスタッフに詳しい内容を聞くこともできる(クリックすると拡大します)


スムストックは、ハウスメーカーが建てた品質が高い建物であることに加え、点検や住宅履歴の情報を保管し提供するため、価値があるとされ、土地代+建物の金額で売買が行われます。その建物成約金額は築15.1年で平均1113万円、築21年以上でも平均514万円となっているそうです。

今後、皆さんが建築・購入する新築住宅の資産価値が、将来的に高く評価される可能性があるということです。ハウスメーカーによる住まいづくりにはこんな先々のメリットがあり、それがハウスメーカーの強みであるということがスムストックから見えてきます。

詳しくはこちらの記事「中古住宅だけど安心!? 『スムストック』とは」をご覧ください。

「安心R住宅団体登録制度」がスタート

ところで、皆さんは2017年12月から「安心R住宅団体登録制度」が施行されたことをご存じでしょうか。これは、既存住宅の流通促進に向けて、「不安」「汚い」「わからない」などのこれまでの中古住宅のマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できるようにすることを目指したものです。

その要件は、簡単にいうと以下の3点です。
(1)基礎的な品質がある
・新耐震基準に適合
・インスペクションにより、「既存住宅売買瑕疵保険」の検査基準に適合

(2)リフォームにより「キレイ」になっている
・リフォームで「汚い」イメージが払拭されている
・内外装、水回りの現況を確認できる
・リフォームされていない場合は、費用を含むリフォーム提案書がある

(3)情報が開示され、わかりやすい
・点検記録などの保管状況が示され、さらに求めに応じて詳細情報が開示される
マーク

耐震性などの面での信頼性が高い優良な中古住宅を見分ける上で、今後は「安心Rマーク」の有無が一つの目安となりそうだ(クリックすると拡大します)


この制度は正式には「特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度」といい、不動産や住宅などの各種団体ごとに登録するシステムです。スムストックを展開する「優良ストック住宅推進協議会」も登録しています。

登録されると、その団体に加盟する企業は「安心Rマーク」を表示することができるようになります。これにより、私たちはこのマークを一つの基準にすることができるようになりますので、従来に比べて安心して中古住宅を選ぶことができるようになるのではないでしょうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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