耳鳴りはすべての人にあるもの

耳鳴り

防音室などに入ったとき、「シーン」という音がするのも耳鳴りだと言えます

ときどき耳がキーンとしたり、何かが詰まったように感じたり、音がわれて響いたりする感覚はありませんか?これらの症状は「耳鳴り」かもしれません。

そもそも耳鳴りとはなんでしょうか?実は、耳鳴りは誰にでもあるもの。その音がきわめて小さいので、自覚症状がないだけです。特殊な完全防音、無反響室に入ると、シーンと音が聞こえ耳鳴りをだれでも自覚できます。この音が異常に大きくなった状態が悩ましい耳鳴りなのです。

耳鳴りはなぜ起こる?

まずは耳が音を拾うメカニズムを解説しましょう。

耳のメカニズム

 

音は空気中を空気振動で伝わります。振動による音は鼓膜にぶつかりますが、99.9%ははね返ってしまいます。そのうち残ったわずかな振動エネルギーが、鼓膜に付着する三つの耳小骨(ご飯粒半分くらいの大きさ)に伝わり増幅されます。

さらに内耳へ入り空気振動が液体振動に変化します。内耳では有毛細胞と蓋膜(がいまく)という部位が擦れあって摩擦を起こし、電気信号を作っています。この電気信号は内耳を出て約三万本の神経(聴神経)を通じ、生命のコントロールセンター、すなわち脳幹にたどりつきます(飲み込む・呼吸する・寝るなどの仕事をしている)。そしてストレスや記憶の影響をうける扁桃核(へんとうかく)、海馬を経由し、最終的には耳のやや後ろの脳(側頭葉:聴皮質)にたどり着きます。

それでは耳鳴りの話に戻りましょう。

先に説明したように誰にでもある耳鳴りですが、この音を拾う一連の経路のどこかに異常があると強くなります。たとえば、ガサガサという音がする耳鳴りを感じる場合、耳垢が鼓膜に付着している可能性もありますが、多くは内耳の神経の異常興奮が原因です。また、耳の閉塞を感じたり、響いて聞こえたりするなどの聴覚過敏といった症状も、だいたい同じようなことが原因です。

耳鳴りを改善するためには

まずは検査です。一般に医療機関では、聞こえの検査、耳鳴りの症状の検査、メタボ・貧血・ヘルペスウイルスにかかった程度などをみる採血検査、MRI・CTなどの画像検査などをすることもあります。

改善に関しては、まず生活習慣を考えてみましょう。両側の顎ががくがくしやすい、紅茶・緑茶・コーヒーなどのカフェインの過剰摂取、毛染めや仕事などによる有機溶剤の使用、喫煙歴、騒音曝露、睡眠障害、頭痛などが危険因子です。

治療は内服薬だけではなかなか改善が困難なので、私たちは鼓膜に細い針を刺し、ステロイド剤を内耳に浸透させて治療しています。ステロイド剤というと不安に思われる方もいらっしゃると思いますが、高血圧・糖尿・肝炎・腎臓の悪い人でも大丈夫です。耳への局所治療なので、全身への副作用はありません。痛さからすると、中学三年生くらいになると治療が可能です。副作用は100人に1人くらい、鼓膜に小さな穴が開く程度です。他にも音響療法(TRT)という特殊な治療もあります。最近では新薬の開発のための臨床試験も行われています。

また、耳鳴りは心因的な要因もかなり関係しており、不眠やうつ、不安なども関係します。マイナスイメージばかりでなくプラスのイメージを持つことも重要です。あまり神経質になってはいけません。

耳鳴り対策は早めが肝心!

「冬の霜 耳はしんしん 蝉の声」という小林一茶の俳句があります。冬にセミは鳴いていないので、耳鳴りの苦痛をうたった句だというわけです。あのゴッホも耳鳴りに悩まされており、耳がない自画像を描いています。耳を切り落とせば悩みから開放されるかもしれない、といった悲壮感のある絵です。

耳鳴りが気になりだす方が多いのは、圧倒的に60歳代から。しかし、耳鳴りに常時悩まされるようになってからでは、もう遅くなってしまいます。すでにときどき耳鳴りを感じている人は、今から生活習慣の改善を!30代、40代から注意してください。


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