前回に引き続いて「ライムベリーMIRI、戦極MCバトルへの挑戦」の後編です。日本トップランクのラッパーが集う戦極MCバトル参戦を決めた中で不安を取り除いた”盟友”の言葉とは、そして大会当日の心境、最後に今後のMCバトル参戦の可能性についてもうかがいました。

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「どれだけ自分の言葉で心を響かせるかなんじゃないの?」

――大会当日が迫るにつれ緊張してきました?

MIRI しましたよ~。当日よりもその前ですね。一週間くらい前かな、わたし何かあるとまおさん(せのしすたぁ)に言っちゃうんです。深夜2時くらいに「まおさん助けてください、わたし無理です」ってLINEを送って。そしたら「どうしたー?」って返ってきて、「大会前の25日に東京行くから会おう」って言ってくれて。まおさんもライブ3本くらい入ってたのかな、その日は。でも、その中で時間作ってくださって、全部相談して。

――まおさんはどんなアドバイスを? 

MIRI まおさんが「そんなマイナスなのMIRIちゃんらしくないじゃーん。つらいと思うけどそこを行くのがMIRIちゃんでしょー? MIRIちゃんはもっと自分に自信持てばいいんだよ」って、深刻じゃない感じで明るく言ってくださって、それ聞いて「あー、そうだよな」って。それですごく印象に残ったのが「自分のファンを50人喜ばせるよりも、違うファンを50人喜ばせる方が経験値がぜんぜん違うよ」って。「どれだけ自分を知らない人に向けて、自分の言葉で心を響かせるかなんじゃないの?」って言われて。それで「そうだ、言葉って大切だよな。言葉を伝えにいくんだな」って思って。それで「勝負だ、勝たないと」っていうプレッシャーから「相手に伝えよう、楽しもう」っていうのに変わりましたね。

――まおさん、いい事言いますね。そして大会当日、バトル自体は15時過ぎからのスタートでしたが、何時ごろに対戦相手がわかるもんなんですか? 

MIRI 出演者集合は12時半とかだったんですけど、沖縄時間みたいな感じで“B BOY時間”みたいなのがあって、みんな集まらないんですよ(笑)。わたしは直前までシキュウさんとスタジオに入ってて、10分前くらいについてエントリーして。結局説明が始まったのは1時15分くらいでしたね。その時も相手の発表はなかったんでご飯食べに行って、結局大会が始まる直前くらいにシキュウさんが「MIRIちゃんの相手出てたよ」って言われて、それでK-razyさんだって。

――戦極、あとUMBでも大阪代表クラスの実力者です。

MIRI だから、もうすぐダメだと思いましたよね(苦笑)。シキュウさんから借りたDVD見ると、正直1人か2人は相性とかもあるし、相手も緊張してたりで「勝てるかも?」みたいな人もいたんです。でもこれは無理っしょ、って。「もしかして」の希望すら打ち砕かれたなって。

――戦極出るにあたって目標はあったんですか?

MIRI とにかく「出る」が目標でしたね。ほんともう仮病とか使って逃げたかったくらいなんですけど、それは辞めようって。でも、K-razyさんが大阪代表でものすごい強い方だってのを知った瞬間に、「もう楽しもう、楽しめる」って思いましたね。「勝ちに行こう」じゃなくて、こんな上手い人と出来ることないんだから、これも経験として楽しんでやろうと開き直れましたね。

――じゃあ肩の力が抜けたモードで。

MIRI それが、あらためてトーナメント表を見に行ったんですね。そしたら一歩脇に下がったら、K-razyさんたちのグループがいて「初戦だれ?」「MIRIってアイドルラップの子じゃん」って話してて、その言い方に「楽勝じゃね?」みたいなのを感じたんですよ。

――その口調に深刻な感じじゃないものを。

MIRI その横にいて超気まずくなっちゃって、「これはバレたらマズい」って思って、帽子深くかぶって一歩二歩遠ざかる、みたいな。

――そこでフリースタイルで喧嘩を売るようなこともなく(笑)。

MIRI いやいやいや! それはないです! 平和に平和に、って。


観客の声に「あ、本当にアウェイなんだ」って思った

――気になりつつもあくまでそこは謙虚に。それで実際の対戦の話ですけど、ファッションとか明らかにいつもより可愛い感じでしたよね?パーカーにチェックのミニスカートとか。

MIRI あれは作りましたね(笑)。

――いつもの衣装とも違うし、こんなアイドル売りだっけ? と見てて思いました(笑)。

MIRI いつもは黒いスキニーに黒いパーカーみたいな感じで真っ黒なんですよ。相方(ライムベリー・MC MISAKI)が女の子女の子してるんで、どんどんボーイッシュになっていっちゃって。でも運営と話し合って「この日は女の子でいってくれ」って言われて、「わかりました!」って。いつもよりチークも濃くして、スカートも履いて。

――アイドルなのに、アイドルを偽装するっていう。

MIRI だから始める前も、いつもは「マイクチェックワンツーワンツー!(低い声で)」ってやるんですけど、「は~い」って高い声でやって(笑)。完全に作りこみましたね。

――そして本番、可愛いルックスからあの声でガンと奇襲かけてくる感じはインパクトあったと思います。「CD何枚売ってんだ?」「こっちがデカいとこでやってんだ」、そして「私が(戦極に)出るってだけでニュースにもなっちゃうんだぜ?」で沸かせました。

MIRI 心がけてたのは、相手をディスるよりは「私はこんなに凄えんだぞ」と自分を上げようと。

――ある程度内容も考えてた?

MIRI いやっ、わたしはフリースタイルやる時はネタとかあんまり仕込まずにその場なんですよ。終わった後とかもぜんぜん記憶がないんですよね、何言ったかとか。緊張してたかっていうのも曖昧なくらいで。終わってから映像見せてもらって「こんな事言ってたんだ自分!」って。

――闘争心モードになる。

MIRI そうなんですかね? スイッチが入っちゃうんですよ。

――そしてK-razyさんの「名前のねえところからここまできた」に対して「私だって名前のないところでやってる」「ライムベリーの事務所知ってるやついるかよ?」と返し、同じく彼が3日後にUMBでスタジオコーストに出る事を絡めてきたのに対して「スタジオコースト?そんなの簡単だよ/私はワンマンで埋めてやるよ」と締めました。普段は絶対言わないですよね、ワンマンやるとか(笑)。

MIRI 絶対言えない、というか1ミリも思ってない(笑)。ほんとマイク持つと変わっちゃうんですかね……。

――最後自分のラップを終えた直後はどんな心境でした?

MIRI 本当にもう負けた、って思って。でもやりきった! 楽しかった! って感情でしたね。本当にこれで自由の身になれる、じゃないけど、1観客として戦極楽しめるー、って気分でしたね。って思った所に「延長だー!」ってなって、もうすごい集中が切れちゃってたんで、「もう無理だよMIRI……」てのが正直なところで(笑)。

――オーディエンスの歓声が甲乙つけがたい、ということで一回戦唯一の延長戦に突入しました。あの時の歓声はどう聞こえました?

MIRI ありがたかったです。あんな野太い歓声をこんなにありがたいと思ったことはないですね(笑)。こんなに熱のこもった歓声は……気持よかったです。それに最初にステージに出てきた時、「K-razy、ブッ殺せ!」って声が聞こえてきて、それで「あ、本当にアウェイなんだ」って思って。だからこそ自分の実力を認めてくれて、声をあげてくださったのは本当に嬉しかったですし、ひとりひとりに話に行きたいくらいありがたかった。あれはもう、人生で一番の経験をしたなって自分でも思います。

――本当の意味で自分ひとりの実力で歓声を勝ち得たって経験、そんなに出来ないですよ。

MIRI あと最初に会場に入った時、「あの小娘」みたいな目線が多かったんですよ。それも出演者の方からがそうで。「ちょっと話題になったアイドルラップね」「所詮アイドルだからメディアに出てんだろ」って目線がすごかったんですけど、いざ試合が終わって控室に戻ってくると、みんな「良かったよ!」「格好良かったよ!」って初めて挨拶をしてくれて。最初「おつかれさまです」って言おうとしても目線すら合わせてくれなかった方々が。それで「あ、これは認められたのかな」って。逆に認められないとやっていけない世界なんだなって思いましたね。

――実力のみ、ラップですべて見せないとダメっていう。お愛想でも挨拶してくれない。

MIRI 全くしてくれないんです。だからこそ経験になるステージだったというか、自分の力が試されたステージだったなって思います。

――ただ、延長戦は集中が切れてしまった。

MIRI もう言い訳でしかないんですけど……。それが今の自分の力かな、と。

――でも延長戦ではK-razyさんから「ここで話し合えるほどお前は強えよ」「今ここに立てば2人で作るグルーヴ」と言葉を投げかけられました。

MIRI ほんと、自分が好きなラップだな、尊敬できるなって思いましたし、これは認めてくれたのかなって嬉しさはありましたね。

MIRIはラップをやっていかないといけないんだ、って決心出来た

――それで控室からも大先輩たちに声かけられて。目標の逃げずに出る、は達成できました。

MIRI やっぱり運営の力で大御所さんとか実力のあるラッパーの方と共演させてもらうことは出来ると思うんです。でもやっぱり自分の実力で勝ち取った上で、それを見ていただいた方と話をしたいなってのもあったので、「いいラップだったよ」って言ってもらった時にこれで自分もラッパーの中に入れてもらえたのかなって思えて。わたしは皆さんに認めてもらうまで、自分のことをラッパーって言葉は使いたくないって思ってて。自分からは「ヒップホップやってます、ラッパーです」って一回も言ったことなかったんです。あくまで「アイドルラップです」って。でも今回のでラップ界に片足でも入る事が出来たかな、って思ってはいるんですけど……。

――これは自分の個人的な感想なんですけど、今回MIRIさんが「アイドルラップ代表」として出たこと以上に「ライムベリーのMIRI」として出たことが嬉しいんですね。今まで自分だけでなくライムベリーのファンはMIRIさんのラップが凄いと思って応援してきて、今回初めてリアルに測定される場所に出て、負けたとはいえ「俺たちのMIRIはこんな凄ぇんだぜ」って言えるのが嬉しいんですよ。しかも二度の活動休止がありながら、MIRIさんがひとりライムベリーの名前を守ってきたから言えるわけで。

MIRI 今までもラップが上手い上手いって言っていただいてたんですけど、所詮……所詮って言い方は変ですけど、「アイドルラップの中で」っていうのは自分でも壁を感じていて。MIRIがちゃんとラップを好きになったのはここ1年なんですね。今までは何もなくてもラップが出来てたんですよ。自分が何もしなくても詞も曲も出来てたし。

――常に用意されている環境はありましたよね。

MIRI それが体制が変わって、もう一回ライムベリーの名を背負ってやるってなった時に、今の曲を作ってくださってるダーツさんから「ラッパーは自分の言葉を伝えないとダメでしょ」って言われて、「今までの環境はラッパーじゃないんだ」っていうのに気づいたというか。もっと自分のことを伝えなきゃ、と思うようになったんですね。今のままだとMIRIがやりたいものじゃない、って思えて、それをきっかけに片っ端からいろんなラッパーさんの歌詞を洋楽邦楽問わず読んでは意味を調べて、「こことここが韻踏んでる」ってメモ取って、マルつけて。そこで本当にラップってものに向き合えたと思うんです。それで自分のラップの限界も感じて、「このままやってても自分の本当に伝えたいことって伝えられないまま終わるんじゃないか」って思えてきたんです。結局他の人と一緒じゃないですけど、人のものを歌ってたらそれじゃカバーと一緒じゃん、って思うようになって。それで自分でリリック書いてみたり、フリースタイルやるしかないんじゃないか、っていうのもそうだし。

――自分が今までやってきた事をあらためて見つめなおすことに。

MIRI いまのライムベリーの方針が本当にライオンの育て方というか、崖から突き落として上がって来い、上がってきたら認められるみたいな、そんな感じなので。ほんとMIRIって努力しないんですよ(苦笑)。とにかく継続しないんで、ピンチに立たないとやらないというか、ラップもフリースタイルもやらなきゃいけないときにならないとできない。だからこそ「崖から突き落とされて上がってこい」ってのが向いてたというか、これが自分を成長させてくれてたんだなっていう風に思いますね。いろいろあったからこそ、MIRIはラップをやっていかないといけないんだって決心出来たというか。

最後に一番カチーンときたのは‥‥

――そして1月24日には「戦極MCfeat芸人ラップ王座決定戦第二章 新春HIPHOP×芸人祭」に今度はライムベリーとして出演します。
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――ヒップホップのイベントに出るのはライムベリーとしては初めてですっけ?


MIRI それこそ戦極の運営されてるMC正社員さんがやってるパーティ「Fruit Ponchi」に出たことがあるんですよ。一番最初の4人時代ですね。ただ、その印象が悪すぎて! 泣くくらいつらかったんですよ。当時は「ねえ、お兄ちゃん!」って何度言っても「好きー!」って返してくれなくて(初期の代表曲『Hey! Brother』のコール&レスポンス)、「何なのあの人たち!」って来てくれたお客さんたちを嫌いになっちゃってたんですよ。「あんなイベントもう出ない!」って思ってましたね。今思うと、その時は自分もラップもイベントの意味も理解してなかったですし、お客さんからすると「やらされてラップやってんだろ」って感じで、それは当たり前だなって思えるんですけど。だから今回はもうリベンジじゃないですけど、今ならラップのスキルみたいなところも聞いていただけると思うし、場を一体にして盛り上げるスキルはアイドルって強いと思うんです。「どうせ次アイドルでしょ?」って人に振り返ってもらえるような、「ラップ上手くね?」って言われるようなリベンジマッチにしたいですね。

――あと最後に、フリースタイルバトルは今後継続して出るつもりですか?

MIRI そうですね……あくまでライムベリーというかMC MIRIを成長させるためにフリースタイルをはじめたので、今後フリースタイルをメインにやることはないと思うんです。でも年に何度かスキルアップというか経験値をプラスするためにやる機会は欲しいなと思ってます。ただ、戦極終わったときに、MC正社員さんが……これぜんぜん悪気なかったと思うんですけど、「もう戦極は出ないよね」みたいな言い方されたのが一番カチーンときましたね(笑)。

――アハハハハ、MC正社員さん毎回ひとこと多いんですね(笑)。

MIRI 「いやいやいや! 待ってよ、もう一回呼べよ!」って(笑)。ただ、今回出たことで自分の弱点もよくわかって、ある方の意見で「MIRIは上手かったけど強くなかった」って言われて、そうだなって思えて。MIRIはよく倍速ラップをやっちゃうのが癖なんですけど、そうじゃなくてもっと緩急をつけたりとかつけなきゃダメですね。あと戦極当日にシキュウさんからも「今日は強いと思う。好き勝手できるよ。誰もMIRIちゃんのフリースタイル知らないから驚くと思う。でも次から大変だよ」って言われたんですね。確かに次からは手の内がバレた状態なので、それをどう乗り越えるか。

――今回相手からアイドルディスみたいなのはなかったので、そういうのが来た時にどう返すかは見てみたいですね。

MIRI どうなるんでしょうね~? 今回の大会終わってMC正社員さんには「もう戦極呼ばないんですよね?」とは書かなかったですけど、「ありがとうございました。もっと本気で力つけて予選から這い上がります」って送らせていただきました。MIRI、すごい負けず嫌いなんで(笑)。

ライムベリー出演イベント>
2016年 1月24日(日) 16:00-21:00
「芸人ラップ王座決定戦第二章
新春HIPHOP×芸人祭」

会場:SHIBUYA @ R-lounge
前売り:¥2900
当日:¥3500
(入場時ドリンク別途)

-LIVE-
ZORN、晋平太、Jinmenusagi、ACE、MC☆ニガリ、HIYADAM、ライムベリー、あっこゴリラ、あやまんJAPAN

-DJ-
yanatake、motoi

-HOSTMC-
八文字

-MCBATTLE参加芸人-
とろサーモン久保田、レイザーラモンRG、中山功太、中川パラダイス、親方、しみちゃむ、カスタネット、コマツヨシヒロ、BAN BAN BAN山本正剛、MCNABE aka クロスバー直撃渡邊、ジョイマン、あやまんJAPAN

-審査員-
晋平太、GOLBY、呂布カルマ、夏江紘実、鎮座Dopeness

詳しくは戦極MCBATTLE公式ブログをご覧ください。

関連リンク>
ライムベリー公式サイト
MC MIRI / ライムベリー (@rbs_miri) | Twitter
戦極MCBATTLE公式ブログ
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