木のよさや価値を見直してほしいから「木化宣言」

日本は国土の約3分の2を森林が占めるほどの森林大国です。森林の面積から判断すると、本来は身の回りにたくさんの木や木製品があふれていてもおかしくはないのですが、残念ながら現在の日本人は急速に「木離れ」をおこしているといわれています。

「木離れ」とは、木造住宅や内装に木をふんだんに使った空間や、木を使った製品に多く触れた暮らしから、離れてしまうことです。
かつて、木は日本人の暮らしや文化の中に深く根ざし、いつも近くにある存在だったはずですが、木の持つ魅力や価値を感じる機会が少なくなってきたように思います。

1691年の創業以来、国内に46,247ha、海外に約200,000haの森林を保有・管理し、長く木に関わってきた住友林業は、これを憂える状況だと捉えています。そこで、住宅にとどまらず、木の魅力あふれる木造建築の拡大を目指すという「木化宣言」のもとに、「木化=MOCCA」という愛称で事業を展開することにしました。

森づくりから始まる森林事業と、木の魅力を活かす建築技術や設計力を組み合わせ、人が心地よさを感じる木化・木質化を推進するのが木化事業です

森づくりから始まる森林事業と、木の魅力を活かす建築技術や設計力を組み合わせ、人が心地よさを感じる木化・木質化を推進するのが木化事業です


「木化(もっか、もくか)」とは昔からある言葉で、本来は植物の細胞壁にリグニンという化合物が沈着し、組織が硬くなることをいう生物学の専門用語です。しかし、もっと広義でこの言葉を使いたいと考え、建物の木造化・木質化を推進するという意味を持たせました。これが「木化=MOCCA」の始まりです。

今回はこの活動について、住友林業株式会社 木化営業部 副部長の杉本貴一さんにお話をしていただきました。

自然の心地よさを感じる木をもっと広めたい

「木」は、見たり触れたりするだけでさまざまな効果がある、という科学的実証の研究が進められています。例えば「木質感により快適性が向上する」「香りでリラックスできる」「ダニの発生を抑制する」「木に触れると脳が活性化する」「木には調湿作用がある」など、木が人にもたらす効果は数多くあると言われています。

実際にこれらの効果を数値化して証明するのは難しいのですが、住宅のように長時間過ごす空間、肌に触れる空間が木造であれば、これらの効果も期待できるかもしれません。
「だからこそ、日常的に訪れる店舗やコミュニティースペース、教育施設などの木化を進めることで、木のよさをもっと広めたいのです」と、杉本さんは話します。

木化の事業として、すでに完成している建物がいくつかありますので、ご紹介しましょう。

undefined
兵庫県伊丹市のカフェ。町家をイメージした瓦屋根の外観。屋内は力強い木の構造材を活かしたデザインに。来店するお客様からは、くつろげると評判に

兵庫県伊丹市のカフェ。町家をイメージした瓦屋根の外観。屋内は力強い木の構造材を活かしたデザインに。来店するお客様からは、くつろげると評判に


上の写真は住友林業 木化営業部が「木化」の事業として手がけた兵庫県のカフェです。景観条例のある地域ということもあり、街並みに溶け込む外観を心がけ、木造で建築しました。店内は、柱や梁(はり)などの構造材があらわしになっていて、木の魅力をダイレクトに感じられます。こちらの店舗では、2人以上で来店され、コーヒーとともにケーキを食べたり、食事をゆっくり楽しむお客様が増えたのだとか。

「木に囲まれたカフェはリラックスできるため、お客様が単に喉を潤すスペースだけではなく、つい長居をしたくなる、そんな場所となっているのではないでしょうか(杉本さん)」。

店舗を利用するお客様だけでなく、経営者の方からも「ここで楽しむコーヒーは格別です」と好評です。

居心地がよく和めるのは「木造」だから

次の事例は、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市にて仮設で建築された建物です。

岩手県陸前高田市に建つ「りくカフェ」は、簡単に解体できる仮設の建築物。延床面積わずか10坪ほどですが、住民が自然と集うスペースとして好評です

岩手県陸前高田市に建つ「りくカフェ」は、簡単に解体できる仮設の建築物。延床面積わずか10坪ほどですが、住民が自然と集うスペースとして好評です


「りくカフェ」と名づけられた三角屋根が愛らしい木造の建物は、住民のコミュニティーの場を作るために、地域住民・産・学の協働による復興事業の一環として建築されたものです。室内は10.52坪と決して広くはありませんが、気軽に立ち寄れて居心地がいいと、住民の方々から喜びの声をいただきました。

レストランや教育施設などにも「木の空間」が広がっています>>