株式戦略マル秘レポート/戸松信博の「海外投資、注目銘柄はここ!」

年始から日本株急落! 今後の株価の見通しは?

2016年、大発会の日本株は急落となりました。今回大幅に下落した要因の一つは中国株の急落といわれます。しかし問題の根本は、米国が行ってきた大規模量的金融緩和政策(とその後の利上げ)による悪影響と思われます。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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大発会日の日経平均は上昇することが多いが…

大発会で日経平均急落、その根本的な原因は各国の無理な金融政策にあったといえそうです

大発会で日経平均急落、その根本的な原因は各国の無理な金融政策にあったといえそうです

2016年1月4日の大発会(証券取引所の年始の最初の取引日に行われる催事。転じて、年始の最初の取引日そのものを指す場合もある)の日経平均ですが、なんと582円73銭安の1万8450円98銭で終了し、大幅安となりました。

大発会日の株価はご祝儀相場といって、お祝いムードで上昇することが多く、2006~2015年の過去10年を見ても、10回のうち7回、前年度末の終値から上昇しています。なお、2014年と2015年は連続して下落となっていましたが、ここまで大きい下落幅ではありませんでした。

2016年、年始から株価が急落した要因は中国株?

ところで、今回の大幅下落の要因の一つが「中国株の急落」といわれています。では、どうして中国株は急落したのでしょうか? 中国株が下落した直接的な要因ですが、大きく分けると二つの理由があります。

一つは、中国株が急落した2015年7月に実施された「大株主の株式売却禁止措置」が2016年1月7日に終了する予定にもかかわらず、中国政府から対策が発表されていないことです。禁止措置が終了すれば、大株主が大量に株式を売却してくる懸念があるので、その前に売却しておこうという動きが出たわけです。

なお、この問題の発端となった、2015年の中国株の急騰と急落については、中国政府の株式市場に対する信用取引の管理方法の甘さが問題でした。今回は本題より外れますので、別の機会にご説明したいと思います。

実質ドルペッグだった人民元が通貨高により中国経済にダメージを与えた

もう一つは、米国の利上げに起因する人民元の下落です。これは前述の2015年の中国株の急落にも部分的に繋がることではあります。

まず、2015年11月まで中国の人民元は米ドルにペッグ(連動)する動きとなっていました。このため、2014年半ばから米ドルが他の通貨に対し、25%程度上昇してきたのですが、人民元も連れ高となりました。

25%の通貨上昇は、日本でいえば1ドル=120円から90円まで円高に振れたようなものです。日本でもこれだけ円高になれば輸出や経済が打撃を受け、株価も大きく調整して当然でしょう。実際、中国も似たような影響を受けてきており、景気が減速している大きな要因の一つとなりました。

このような背景があり、中国は2015年12月に、今後は通貨バスケット制への移行を示唆してきました。つまり、米ドルの上昇の悪影響を直接受ける米ドルペッグはやめて、米ドルが上昇して他の通貨の価値が下がれば、人民元も同様に価値が下がるような値動きにするとしてきたわけです。

実際のところ、人民元は2015年12月以降に米ドルに対して下落が続いており、世界株安をもたらした2015年8月の切り下げ時点より大きな人民元安となっています。

もっとも、緩やかな人民元安は中国の輸出や経済にとってプラスです。ただ、中国経済があまり良くない状態のまま人民元の切り下げが続くようであれば、他の新興国もそれに対抗して通貨の切り下げを迫る必要に迫られ、世界的な金融不安へと拡大しかねませんし、中国からの資金流出懸念にも繋がります。そのあたりの懸念が株価の急落にに繋がったのではないかと考えられるわけです。

今後のポイントは中国政府の政策と米ドルの利上げペース

今後のポイントですが、まず、足下の中国株の急落については、中国政府が大株主の株式売却を禁止するような政策を改めて出してくるかどうかです。もしもその政策が出れば、中国株は急反発する可能性があります。

ここで一つ理解しておきたいのは、中国の株式市場は参加者の多くが個人投資家であり、必ずしも理論的な株価の動きにはならないということです。中国本土の株式市場はその本質として、上にも下にも大きく振れやすいのです。

今回の急落が引き金になって更なる暴落が引き起こされるおそれはありますが、前述のような対策がでれば、株価は一転して急激に戻す可能性もあるわけです。

ただ、根本的な問題は、やはり米ドルの利上げがどのようなペースで行われるかだと思います。2016年の相場展望~日経平均はどうなる?中国株再び急落!日本株への影響は?などでも触れておりますので、あわせてご覧いただければと思います。

米国のかつてない量的緩和政策が爪跡を残している

今回、中国で起こったことは、資源企業や資源国、あるいは高利回り債券ファンドの破たんといった形で、別のところで表れる可能性があります。起こっている現象は全く異なりますが、根っこは米国がこれまでに行ってきた大規模量的緩和政策(そして現在はそれが利上げに転じている)なのだと思います。

米国が大規模量的緩和政策という、かつてない政策で景気を立て直そうとしたところ、低金利で調達できる米ドルが大量に発生しました。これが高いリターンを求めて、新興国や資源、その他の大規模開発に流れ込んだわけです。

折しも2012年前後は中国の4兆元の景気刺激策をはじめとした各国の景気刺激策の恩恵で、資源価格などいろいろなモノの価格が高く、また、投資需要も豊富でした。リターンを求めて、莫大な資源関連などへの大規模な投資が行われたのは想像に難くありません。

ところが、景気刺激策の効果が切れて、需要が縮小したところに大規模投資が完成し、供給が増え、資源やあらゆるモノの価格が下がっているのが現状です。ところがこのタイミングで米国が利上げを行ってきました。

現在予想されているように、このまま米国の利上げが進めば、低利で調達した資金は高い金利を支払うか、返済をする必要に迫られます。もちろん、モノの値段が下がっていますので事業を清算して返済をする必要に迫られたり、場合によっては返済できない可能性もあるわけです。これに関しては「年末年始を前に日本株に暗雲!?大幅調整の可能性も」もあわせてご参照下さい。

以上のことが、現在起こっている問題の根本でしょう。むろん中国の場合これに加えて、米国と同じように、4兆元の大規模経済対策を行って過剰投資が行われたことの悪影響があります。

もっとも米国の利上げシナリオは以前からわかっていることであり、すでに市場はある程度織り込んで来たはずです。したがって、仮に今後の利上げペースがかつてないほど緩やかで、場合によっては利上げラウンドの中止、あるいは利下げに逆戻りも、という優しいスタンスが示唆されれば、ドルと逆相関する資源価格は逆にリバウンドし、利上げを前に資本流出懸念で売られていた新興国の通貨や株式も上昇する可能性もあるところです。もちろん、そうなれば先進国の株価にも好影響が出ます。

現在の株式市場はどちらに進むかの分かれ道にきているところであり、そのキーポイントは米ドルの利上げペースに尽きると思います。

参考:日本株通信


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