城田優undefined85年東京出身。TVドラマや映画、音楽で活躍の傍ら、03年『美少女戦士セーラームーン』を皮切りに『スウィーニー・トッド』『ロミオ&ジュリエット』『エリザベート』『ファントム』と舞台でも活躍。第65回文化庁芸術祭・演劇部門で芸術祭新人賞を受賞した。16年はミュージカル『アップル・ツリー』で初演出を予定。(C)Marino Matsushima

城田優 85年東京出身。TVドラマや映画、音楽で活躍の傍ら、03年『美少女戦士セーラームーン』を皮切りに『スウィーニー・トッド』『ロミオ&ジュリエット』『エリザベート』『ファントム』と舞台でも活躍。第65回文化庁芸術祭・演劇部門で芸術祭新人賞を受賞した。16年はミュージカル『アップル・ツリー』で初演出を予定。(C)Marino Matsushima

*最終頁に『The Love Bugs』観劇レポートを掲載しました*

岸谷五朗さん・寺脇康文さんの二人が主宰する企画ユニット「地球ゴージャス」。95年の第一回公演以降、ダンスやアクション、笑いをふんだんに取り入れたり、台詞劇にフォーカスしたりと毎回、多彩なオリジナル演目を展開してきた彼ら(地球ゴージャスについての岸谷さん・寺脇さんへの過去のインタビュー記事はこちら)ですが、2016年新春を飾るダイワハウスSpecial 地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』では、「昆虫の世界」が舞台。人間たちの身近に存在する小さな世界で繰り広げられる「命」と「愛」の物語を、総勢34名のカンパニーでエネルギッシュに描く模様です。どんな舞台になりそうでしょうか?
ダイワハウスSpecial 地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

ダイワハウスSpecial 地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

その謎が少しだけ解明されたのが、12月21日に行われた公開稽古。都内のスタジオ内には可動式の大型傾斜舞台が組まれ、メインキャスト7名によるフォトセッション、岸谷さん、寺脇さんによるご挨拶に続いて早速稽古が開始。100年、1000年に一度、種族の代表たちが集う「特別な祭典」の幕開きを告げる大原櫻子さんメインナンバー「THE TOP OF THE BEST!」では、キャストたちが舞台奥に集まり、曲に合わせて前に乗り出したり元に戻ったりという動きが巨大な昆虫を連想させ、迫力満点。抜群の団結力に定評のある「地球ゴージャス」ならではのチームワークと熱気が凝縮されたオープニングが、観る者を一気に引き込みます。

続く「Birthplace The Earth」ではマルシアさんの豊かな声量が、「其々のオーディション」一部~「ENJOY MY LIFE」では蘭寿とむさんのしなやかでコケティッシュなダンスと歌が披露され、「伝説の雄」では舞台上手奥から城田優さんが登場。どこかミステリアスな「カリスマ」として場を支配します。この後、寺脇康文さんによる舞台全面を使ったダイナミックな立ち回りが披露され、公開は終了。「スペクタクル」と呼ぶにふさわしい舞台の熱気に包まれたまま、記者たちはスタジオを後にしました。

出演者の持ち味をフルに生かした演出に定評のある「地球ゴージャス」ですが、その中でも今回、まさに「ぴったり」の役どころを演じているように見える城田優さん。初めての「地球ゴージャス」にどう取り組んでいらっしゃるでしょう。公開稽古の数日後、再びスタジオの一角でお目にかかりました。
『The Love Bugs』公開稽古より、迫力満点のオープニング。(C)Marino Matsushima

『The Love Bugs』公開稽古より、迫力満点のオープニング。(C)Marino Matsushima

――先日の公開舞台稽古では尋常でない熱量が放たれていましたが、お稽古はいつもあのような感じでしょうか?

「はい、あの熱量で毎日やらせていただいていますが、あの日はマスコミの方に入っていただいたことで、いつも以上のエネルギーが若干出ていたかと思います。これが報道などで放送されるのだという緊張感もありますので。でも基本的には毎日同じレベルで展開しています」

――でも、緊張とおっしゃる割には城田さん、ジョークもおっしゃっていましたよね。マルシアさんの大ナンバーの後に舞台を横切りながら(笑)。

「あれもいつも通りです。みんながすごいことをすると「みんな俺の教えた通りやったなあ」って(笑)」

――城田さん、ムードメーカーなのですね。

「ムードメーカーというより、ただの元気な子供です(笑)」

*『The Love Bugs』トーク、次頁にまだまだ続きます!城田さんにとっては初参加の「地球ゴージャス」、現場はどんな雰囲気でしょうか?

「地球ゴージャス」ならでの空気を感じながら作り上げる
「昆虫たちの世界」

(C)Marino Matsushima

(C)Marino Matsushima

――地球ゴージャスには、以前からご興味があったのですか?

「以前から岸谷さんと何度か(映像分野で)お仕事をご一緒する機会がありまして、7年前に五朗さんのほうから『ぜひ優と一緒にやりたいな』と言ってくださったんです。五朗さんはとても優しい方で、現場では的確なアドバイスもいただいていたので、ぜひご一緒したかったのですが、なかなかタイミングが会わず、今回やっとご一緒できることになりました」

――初の「地球ゴージャス」、いかがですか?

「稽古場の雰囲気はそこに入ってみないとわからないものですが、ここは他のカンパニーとは全然違うと感じています。岸谷さんと寺脇さん以外は全員、外から集まってきているカンパニーですが、アットホームというか、五朗さんと寺さんが居心地のいい稽古場づくりをしてくださっていて、僕ものびのびやらせていただいていますし、みんなも毎日楽しくやっています。地球ゴージャスでは全員で(稽古前に)ウォームアップと発声練習をするのですが、そうすることで他のカンパニーでは出ない結束力が生まれますし、コミュニケーションもとれるし、なかなか他では味わえない親しみやすさがあって、みんな互いに距離が近づくのが早いですね。僕は基本的にどのカンパニーでもすぐ人と仲良くなれる、人の懐にすっと入っていけるタイプなのだけど、たとえそういうことが苦手な人でもすぐ入っていけちゃうだろうなという雰囲気を、お二人は作ってくださっています」
『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima

『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima

――今回は「昆虫の世界」が舞台になっていますが、なぜ昆虫だったのでしょう?

「五朗さんからうかがっているお話では、地球ゴージャスではこれまで人間の世界における戦争の愚かさだったり愛の切なさを描いてきたけど、人間でない世界で描いていくということを思いついて、虫の世界になったそうです」

――昆虫の視点を通すことで、人間の世界では描けないものが描ける、と?

「そうですね、虫が感情をもったりテレパシーをもっているか、会話をしていかといったことは解明されていないことであって、あくまで想像の世界を人間が演じているわけですが、昆虫の世界を通して客観的に、人間の世界を描く。いつもは主観的にお芝居をしているところを、一回引いてみて、違う世界から人間を見てみることによってお客様にもメッセージが届きやすい、人間界ってこうなんだなあとわかることに繋がるのかなと思います」

――虫たちの物語ではありますが、先日のお稽古の振付などを拝見する限り、虫の動きの模倣にはこだわってないように見えました。

「それはないと思います。僕自身、それは演出の五朗さんから求められない限り、絶対にしないと稽古前から思っていました。もしそうするとしたら徹底的にこだわらないといけないけれど、指が5本あってこういうおでこ、鼻、口があるという時点で、それらのない昆虫を演じることはNGですよね。見た目を追求するのではなく、昆虫界の中で起こってることがテーマなのだと思います。昆虫それぞれの宿命やさだめ、変えられない特性といったものですね。例えば蝉は一週間しか生きられない、というのは皆さんご存知ですし、蛍は光るだとか、スズメバチは威嚇するときカチカチ音を立てるといったことも広く知られていますよね。そういう特性だったり宿命だったりに着目しているのが、今回の作品です」

*『The Love Bugs』トーク、さらに続きます!本作での城田さんの役どころとは?


「とんでもないエンタテインメント」の中心で、しっかり光を放ちたい

『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima

『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima

――その中で、城田さんは「誰もが憧れる孤高のスター」を演じているのですね。

「この物語はたぶん劇場で見て初めて納得したり、「おっ」と思えるものがあるのであって、特に事前の情報知識は何も持っていなくていいと思うんですよ。なので「はいそうです」って言って終わりでいいのかもしれないけれど、かといってそれが本当にそうなのかはわからない。うまく説明するのは難しいですね。なぜ彼が人から一目置かれるのか、なぜ女性が彼に対して憧れを持ち、彼がそれに対してどういう思いなのかは、謎めいています。スターって謎が多いじゃないですか。その裏側も登場して即・描かれています」

――孤高というイメージでは、『エリザベート』のトート役ともかぶってくるものがあるでしょうか。

「公開稽古で歌ったナンバーで言うと、一人対全員、という意味ではおっしゃる通りかぶる部分もありますし、僕もこれだけ体が大きくて威圧感の塊でしかないけど、本番を御覧いただければ、ベールに包まれていたものが即・はがれてゆくと思います。トートはずっとベールが残っていくというか、あれがはがれた状態だとしても誰も指を触れられない存在ですが、今回の役は虫ではあるけれど感情もあり、あることに苦手意識をもっていたりと、「人間味のある」昆虫です」

――今回、ご自身が課題にされていることは?

「ダンスと殺陣ですね。こんなに立ち回りをするのは昔『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面をやっていたとき以来、十数年ぶりです。当時は高校生だったので体力があったけれど、今は年齢を感じますね(笑)。殺陣が終わると袖でほんとに倒れるんじゃないかというくらい、息がぜえぜえになっています。僕の役が強力なイメージがあるので、今回の立ち回りは華麗というよりすごみだったり勢いみたいなものが大事なのかな。一つ一つの形を意識しつつ、それよりも勢いだったり強さを大切に稽古しています」
『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima

『The Love Bugs』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima

――演出家としての岸谷さんはどんな方ですか?

「非常にわかりやすいし、優しい方です。「間」だったりリズムだったり、芝居を見る人間が一番気になるところにちゃんと目を向けて修正していらっしゃるイメージがありますね。細かいセリフの言い方とかニュアンスよりも、全体の流れを重視されていて、役者の個性も生かしますし、ご自分の意図したとおりに役者が読んでいなかったとしてもそれを直す方ではないです。

僕、他のキャストの演技を観ていて「五朗さんはああいう意味で書いたわけではないんじゃないか」と思って五朗さんに質問したことがあるんですが、五朗さんは「そうそう、でも今のやり方で面白いからそのままでいいんだよ」と。ご自身の解釈を押し付けることがないんですよね。中には、僕の経験では語尾を上げる、下げる、どこにアクセントを置く、どれだけの間をとるかなど、詳細に指定する演出家もいらっしゃるんですよ。でも五朗さんはそういうことよりもテンポだったり感情という、芝居のベースになる部分を大事にしていらっしゃるんです。自分の書いた台本イメージに固執するのではなく、実際に現場で起こっていることに自分を寄せて行かれる演出家なので非常に柔軟だし、役者からしたらとてもやりやすい演出家です」

――今回、どんな舞台になりそう、あるいは「したい」でしょうか。

「本作は笑いあり涙あり、歌ありダンスありという、様々な要素の入った「とんでもない」エンタテインメント・ショー。一つのカテゴリーにはおさまらない舞台ですね。華々しくなければならないし、観ている人を驚かさなければならないし、いろんな仕掛けを五朗さんが考えていらっしゃる中で、自分はその真ん中に立たなければならないので、ちゃんと中心にいて全体を支えられるよう、真ん中できっちり光を放てるように頑張らなきゃいけないなと思ってます」

*次頁からは城田さんの「これまで」をうかがいます。幼くしてエンタテインメントの世界に目覚めた優さんですが、はじめは挫折の連続。それでも諦めなかった原動力とは?


悔しさや悲しみを凌駕した反骨精神

『ファントム』撮影:岸隆子

『ファントム』撮影:岸隆子

――城田さんは幼少時から歌に興味があったのだそうですね。どなたかからの影響があったのでしょうか?

「4,5歳の頃だったと思いますが、当時中学生だった姉がキーボードを弾いていて、音楽に興味を持ちました。当時はスペインにいて、現地の幼児番組の歌からポップスまで、あらゆる音楽が好きで、幼心にマライア・キャリーの曲をかっこいいなと思ったりしたのを覚えています。でも「誰かになりたくて」目指した、といったことではなかったですね」

――10代に入って芸能界を目指したとき、ハーフの外見が逆にネックとなって、オーディションには100回以上落ち続けたのだとか。それでも諦めなかったその原動力は?

「最終的に「好き」という気持ちが勝ってしまうと、やるしかないんですよね。諦める選択肢があっても、あきらめたくないという気持ちが強いと、どれだけつらくても悲しくても、きついとわかっていても、挑戦し続けてしまうんです。挫折もしましたし、家で泣いたこともありますよ。一番オーディションを受けていたのは13~16歳ぐらいの頃でしたが、その年齢って精神的に成長している過程であって心が脆いし、大人に言われることを鵜呑みにする時期ですが、当時力を持っていた…あるいは持っているふうにしていた大人たちに、僕がダメな理由をいろいろ言われて凹みました。とくに容姿のことを言われましたが、悔しいという気持ちだったり、「なにくそ精神」が「悲しい」に勝って、「絶対いつか」「見返してやりたい」という気持ちもありました。
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

物事って、前例のないところからすべてが生まれてるんですよ。なのに「前例がないから」ということで否定されることが少年ながらに腹立たしくて、「君みたいな子は使いづらいよね、ハーフの子がそこにいるとちょっと話が変わってくるんだよ」みたいなことを言われると、「ハーフなんてこの世界にたくさんいるじゃないか」と反発心を覚えました。背が高すぎるとか彫りが深すぎるとかカッコよすぎるんだよねとか、容姿に関して言われてきたことは全て明確に覚えていますが、前例がないところにこそ何かが生まれるし、それが今の世界を作ってきたと思っている僕としては「前例がないなら僕が作ってやろう」と思ったんです。190センチのハーフの俳優という前例がないなら今、作ってやろう、と。そういう気持ちで続けてきて、今があります」

――その心意気は今も持ち続けている?

「はい、そういう感覚でしかエンタテインメントって作れないと思いますし、それこそ「地球ゴージャス」で五朗さんがやっていること、前例のないもの、新しいものを作って再演はしないというポリシーには共感します。ゼロからモノを作り上げることって難しいんですよ。もちろん、出来上がってるものの力を借りて自分たちなりにアレンジするとか、外国で人気のあるミュージカルを持ってきてやるということもできるけど、五朗さんがこだわっているのは、自分で、自分の伝えたいことをゼロから作る。それを信じてやり続けるってすごいエネルギーが必要なことだと思いますし、僕自身そういう感覚の人間なので、共感できるんです。僕自身、今後もそういう「前例のないこと」をやっていきたい。せっかく生きているんだから、簡単な道より険しい道を行ったほうが、たどり着く先では何倍もハッピーな気持ちや達成感を味わえるんじゃないかなと思っています」

*次頁では、ミュージカルにおけるいくつかの代表作について伺いました。

常に「昨日より今日」「今日より明日」の精神で成長し続けたい

『4 Stars』写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』写真提供:梅田芸術劇場

――そんな城田さんにとって、ミュージカルとの出会いは必然だったと思われますか?

「生まれて今日までのすべてのことが必然なんじゃないかと思ってますが、正直なことを言いますと僕はミュージカルスターになりたいという夢もなかったし、自分はミュージカルスターだとも思っていません。けれどもエンタテインメントの世界で一番難しくて一番達成感のある仕事ができてることを非常に誇りに思いますし、最近は「日本を代表するミュージカルスター」とお世辞で書いていただけるレベルになっていることは嬉しく思ってます」

――お世辞ではないと思いますよ!13年にレア・サロンガ、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲスと共演したコンサート『4Stars』で、ブロードウェイを代表するあの3人と並んで全く遜色がなかったことにびっくりしました。

「遜色があったらその時点で、僕としては引退すべきだと思います。(彼らと)同じくらいのレベルにしないとお客様に失礼ですよね。自分が納得できません。僕は常にうまくなること、1ミリでも成長することしか舞台に立つときには考えてなくて、この仕事をやるうえで「こんなものでいいだろう」ということは絶対ダメだと思っています。今日より明日、明日より明後日、確実にうまくなっていかないと。一か月前にやった時の記録映像を見て「くそ下手だな」と思わないといけない。で、今日、鏡の中で踊ってる自分を見て(1か月前より)「うまくなったな」と思ったとしても、1か月後にはそれが「下手」に見えるようになってないといけない、と思うんです。

『4 Stars』の時にも稽古初めから本番までの間にはおかげさまで努力が報われ、ステップアップができたと実感できました。『エリザベート』のトートにしても、5年前に演じたトートと今のトートを聞き比べると、僕自身でもわかる違いがありますね。声においてもテクニックにおいても、全然違います。でも5年前の24歳の時は、自分なりの「限界」まで出し尽くしてやっていました。こういうスタンスをずっと続けていけばもっともっと上手になれるんじゃないかと思いますし、いいエンターテイナーになれるんじゃないかなと思っています。逆にそれを怠れば、のびしろのない、つまらない役者になるのだ、とも」
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

――今言及されたトートについては、5年前と今年では役柄の理解も変化しましたか?

「わざわざ変えるつもりはなかったし、同じ感覚で稽古に入ろうと思っていたけれど、5年違えば、僕自身の経験値が異なります。最初に台本を読んだ時の「ドライアイスのような存在」という感覚を大事にやっていても、時間が経つことで「以前はここには全然アクセントつけてなかったけどつけたくなるな」「ここって歌い上げたくなるな」となって、それが役作りの変化につながっていきます。もう一つ、芝居は一人で作るものではないので、周りの方々によっても変わっていきます」

――『エリザベート』は来年も再演があり、楽しみですね。

「僕は、トートのあり方を難しく考えすぎているのか、トート=死=完璧というイメージがあって、完璧に演じなくてはいけないというプレッシャーを自分にかけてしまうんです。だから楽しみではないです、つらいです(笑)。人間の役を演じている時には声がぶれたり台詞を噛むことも、人間の役ならあり得るし、それが直接的な何か意味を持つようにはとられないと思いますが、トート役となると僕の中では、咳やくしゃみはもってのほかだし、鼻をかいたりするだけでその役のイメージが変わってしまう。容姿だけなく歩き方、歌い方、手の出し方おさめ方、首の角度に目線まで、全部意味があると思うから、きついんですよ。舞台でめちゃめちゃ疲れます。自分の求めるトート像が「完璧」なので、それをやらなくちゃいけないのがきついですね」

――今年、ダブルキャストだった井上芳雄さんとは対照的なお言葉ですね。井上さんは「何をやっても許される役だからすごく楽しかった」とおっしゃっていました。

「そうですね、捉え方の違いだと思います。『死』という役なので、確かにそうなのだと思うけど、僕の「死」は完璧じゃないといけないと自分で決めちゃっているので、自分が思う通りにやらなくちゃいけないんです。それなのに一度、階段を下りるときに服が装置にひっかかって、自分で取り払ったことがあって、その時はそれだけで『ごめんなさい、お客様…』とへこみましたね。自分が許せなかったです」

*次頁では『The Love Bugs』の後に初挑戦する演出作品、そして今後のビジョンについてうかがいます。

唯一無二の「城田優」であり続けたい

『アップル・ツリー』16年5月28日~6月7日上演予定

『アップル・ツリー』16年5月28日~6月7日上演予定

――今後の話題としては、来年、初めて演出(ミュージカル『アップル・ツリー』)にも挑戦されます。

「演出には以前から興味がありましたし、5年くらい前に『ロミオ&ジュリエット』で、初ミュージカルの出演者の教育係というか、演出家の言っていることをわかりやすくひも解いて教えてあげることをするうち、お芝居をつけたり教えるってすごく楽しいって思ったり、そこから「自分だったらこう演出するな」とか演出目線でいろんなものを見るようになったんです。セットとか照明とか、全体のことも考えるようになって、自然に演出してみたいなと思うようになりました。

そもそも、ものを作るのが好きで、自分が演技しているより作っているほうが楽というか、もちろんプレッシャーはありますけど、失敗できないという思いの中で舞台に立つより、出来上がったものを裏方として見届けるほうが得意なんだろうなと思います。わからないですよ、来年演出してみて、みなさんに「ダメだなこれ」と思われたら演出家として僕は向いてないということになるかもしれないけど、自分の中では演技の才能より演出の才能のほうがあると思ってます。自分の見たい方向性に寄せていける、と」

――どういう表現者でありたいと思われますか?

「唯一無二の存在でありたいですね。前例のないものを作る、イコール唯一無二。「城田優さんみたいな俳優になりたい」「城田優さんみたいな世界観のものを作りたい」と言われるようになったら一人前だなと思いますし、『城田優』というカテゴリーが出来上がるまでになったら、人生悔いがないと思います」

――そんな城田さんにとって、今回の『The Love Bugs』のお役はぴったりですね。

「実際の舞台を御覧いただければ、僕が何をいわんとしているかわかっていただけると思いますが、今回の役には『すべて』が入っています。ぜひ、楽しみにしていてください」

*****
「打てば響く」ような明晰なその受け答えに、風格すら漂っていた今回のインタビュー。その背景には、かつて100回以上「否定」された経験から生まれた「前例を自分が作る」という固い決意があることが確認出来、城田さんが切り開いてゆく道が改めて見逃せないものに感じられます。そんな彼の今の「すべて」が詰め込まれているのみならず、モノづくりの姿勢という点でも深く共感しているという最新作『The Love Bugs』、まさしく必見と言えましょう。

*公演情報*ダイワハウスSpecial 地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』16年1月9日~2月24日=赤坂ACTシアター、3月1~3日=愛知県芸術劇場大ホール、3月11~13日=福岡サンパレス、3月19~29日=フェスティバルホール
*次頁に『The Love Bugs』観劇レポートを掲載しました!

社会性と娯楽性の理想的なバランスを実現した
「ささやかにしてエネルギッシュな命たち」の物語

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

アイリッシュ・ミュージックが流れる、開演前の客席。軽快なアコーディオンの音色に場内が和んでいると、場内は暗転、コオロギや鈴虫と思しき鳴き声にいざなわれるように、四方八方から虫役の俳優たちが集まって来ます。大原櫻子さんの力強いロック・ナンバーに乗って、傾斜舞台を縦横無尽に駆け抜け、踊る「虫」たち。一人ひとり異なるカラフルな衣裳は翅の部分が歌舞伎の仁王襷をアレンジしたものだったりと、和洋折衷で驚きに満ちています。目にも耳にも刺激的なこのオープニング、誰もが引き込まれずにはいられないでしょう。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

それぞれの種族の代表が集まり、「ベスト・オブ・ベスト」が選ばれるというこの夜。順に現れるメインキャラクターは、平間壮一さん演じるダンスが得意なブン太、大原さん演じる天真爛漫な天娘(てんこ)ら、地(?)を発展させた造形で、岸谷さんによる「アテ書き」が最大限の効果を発揮。どんなメスも魅了する圧倒的二枚目ながら、クールになりきれないスィンクルマン(城田優さん)、なにかというと酒瓶を取り出す謎の「おじさん」(寺脇康文さん)、やる気がなさそうに見えて、突然恋に燃えるシザーQ(岸谷さん)らのコミカルな芝居も多々盛り込まれ、前半は笑いと興奮に包まれながら疾走します。しかしいつしか、彼らの世界は不気味な影に覆われ、空気は一変。気が付けば暴力と恐怖が支配する中、彼らは「これは生きるための試練なのだ」と立ち上がります。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

虫たちのささやかな世界で起こるドラマを、ダンスや歌、そして立ち回りを駆使してダイナミックに、テンポよく描きつつ、世界情勢など今日的なテーマも織り込んだ舞台。岸谷さん、そしておそらく盟友・寺脇さんの思いを反映しているのであろうこれらの要素は観る者の腹にずしりと重いものを残しますが、その重さに偏ることなく、試練を乗り越え、「宿命」を自覚しながら生きる虫たちの「清々しさ」へと集約されてゆくのが、エンタテインメントの王道をゆく「地球ゴージャス」らしさと言えます。満天の星空を眺める「おじさん」と、思いのたけを叫んで歩むスィンクルマン。この上なく美しい構図の中で放たれるスィンクルマンのラストの台詞は、生きとし生けるものすべてに向けた、作品全体、そして地球ゴージャスからのメッセージとして、まっすぐに響いてきます。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

硬軟自在に物語を引っ張る城田さん、強さと美しさを兼ね備え、歌や踊りでも大活躍の蘭寿さん、初舞台とは思えない溌剌とした演技と、高音まで地声で引っ張る喉の強さで今後もミュージカルでの活躍が期待される大原さん、臆病気質を克服する過程をしっかりと見せる平間さん、様々な経験を積んできた流浪の虫を凛とした歌声で好演するマルシアさん、柔らかな演技の中にペーソスを漂わせる寺脇さん、岸谷さんら、それぞれに魅力的なキャストを得て、舞台はこれまでの地球ゴージャス作品の中でもとりわけ社会性と娯楽性がほど良くブレンドされ、結果的にメッセージの伝わりやすい作品に仕上がっています。本作を観た帰りには、思わず草むらでしゃがみ込み、そこに蠢く虫たちにじっと見入ってしまうか。はたまた、「おじさん」と同じお酒が飲みたくなるか…。いえいえ、やはり何より「明日を生きるパワー」が漲り、足取りが軽く感じられることでしょう。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』







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