乳がんになりやすい要因は?…年齢・遺伝・エストロゲン・肥満

胸元

年々増加している乳がん。どんな女性がかかりやすいのでしょうか?

年間1万人が命を落とすとされている乳がん。その数は年々増加していますが、そもそもなぜ増えているのでしょうか? それは女性のライフスタイルと大きくかかわっているといわれます。

どんな人、どんな習慣が乳がんになりやすいのかについて解説します。

■年齢
日本人女性の乳がん発生率は30代から上がり、40代後半から50台前半がピークになります。30代でも頭の片隅に置いておくことは必要ですが、特に40歳以上は要注意です。

■遺伝的素因
乳がんにかかったことがある家族がいる方や、片方の乳房を乳がんで手術した方などがこれに当たります。またいわゆる遺伝的素因とはちょっと違いますが、乳房に放射線を多く浴びたり、過去に良性の乳腺疾患にかかったことがあるなど、なんらかの形で遺伝子変異を起こしやすい環境にいた方も気をつけてください。

ちなみに乳がんの発生にはBRCA1、BRCA2と呼ばれる遺伝子の変異が関わっているといわれており、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、ご自身のBRCA1の遺伝子異常を知ったことで両乳房を切除したことは記憶に新しいところですね。

エストロゲン
乳がんの発生にはエストロゲンが多く関わっているといわれます。というと難しく聞こえますが、『エストロゲンにさらされている期間』=『生理がある期間』と大雑把には考えていただければいいと思います。

そうすると初産の年齢が30歳以上の方、出産経験のない方(=妊娠している間は生理はないですよね)、初潮年齢が早かった方、閉経年齢が遅かった方、ホルモン補充療法を長期間続けている方、経口避妊剤を長期間使用した方は少し注意が必要ということになります。

■肥満
意外かもしれませんが閉経後の肥満の人も注意が必要です。これは、閉経後は脂肪組織のなかでエストロゲンが作られるからです。太っていると、その分エストロゲンが多くなるので乳がんになりやすいといわれています。ただし、閉経前の肥満は逆に乳がんのリスクを下げるといわれています。女性の体は閉経前と閉経後でかなり変わることの一例です。

こう考えると女性の社会進出、少子化、早い初潮年齢、どれをとっても、乳がんの危険因子が最近増えていますよね。乳がんの発生が年々増加しているのもうなずけます。その他、出生時体重が重い、高身長などの方も注意が必要なことがわかっています。

次に、習慣について見ていきましょう。

乳がんと習慣の関係…
運動・喫煙・アルコール・食事・夜間勤務・イソフラボンなど

■乳がんになりにくい習慣
  • 授乳:長期授乳は予防に効果的
  • 運動:閉経後の運動にはおそらく確実に乳がんの予防効果があると考えられています
  • 食事:野菜、果物、食物繊維、緑茶、イソフラボンなどが予防要因として注目されていますが、現時点ではまだ根拠不充分

■乳がんになりやすい習慣
  • 喫煙:リスクを上げる可能性が高いです
  • アルコール:ほぼ確実にリスクを上げます
  • 食事:閉経後の脂質の取りすぎはリスクを高める可能性があります
  • 夜間勤務:リスクをあげる可能性があります

夜間勤務はちょっと不思議な感じがしますが、夜中に光を浴びると、メラトニンという生体の時間リズムの調節に関わっているホルモンの分泌が抑制され、それに伴って卵巣からのエストロゲンの分泌が亢進し、乳がんリスクが高くなるという仮説があります。

「乳がんが予防できる」と言い切れない理由

ちなみに、「可能性が高い」とか「ほぼ確実」とか、はっきり言えないの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、それはその疑問の通り、そこまでしか言えないのです。

「医学的に効果がある」という場合には、適切な方法で効果を調べた論文をいくつも検討して、その結果を総合する必要があります。ひとつの論文の結果だけでは言い切ることはできません。

さらに、例えばアメリカやヨーロッパの結果が、人種が違う日本を含めたアジア圏では当てはまらないこともあります。医療関係者でない方とお話していてなんとなく感じることがありますが、「医学的に効果がある、科学として証拠がある」というためには、一般の方が思う「証拠」や「データ」よりも、はるかに厳密で、かつ多くの人々の膨大な労力(検証作業)と時間が必要とされていると思います。

ですので、余談ですが、情報過多の現在の情報取捨選択法として、もしひとつの論文を根拠に何かを言いきっている場合は、参考だけにして聞き流しておくことをお勧めします。

現時点では、一定の年齢以上では検診を受ける、喫煙・アルコールを控える、閉経後は適度な運動習慣で体重をコントロールする、ということが一番予防に重要といえそうです。

■参考文献
・乳癌診療ガイドライン2013
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。