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親子で(も)観たいミュージカル 6 『泣いた赤鬼』

*2018年夏休み公演決定!*童話作家・浜田廣介の名作を、糸あやつり人形「一糸座」が映像や音楽を駆使して作り上げた、俳優と人形の音楽劇『泣いた赤鬼』。想像力に富んだ表現に胸躍り、鬼たちの友情に号泣せずにはいられない舞台は、親子観劇にもぴったり。その魅力をご紹介します!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

*2018年夏休み公演決定!*
大人も子供も楽しめる、「世代を問わない」傑作ミュージカルをピックアップするこのコーナー。今回は童話作家・浜田廣介の名作を、糸あやつり人形「一糸座」が映像や音楽を駆使して作り上げた、俳優と人形の音楽劇『泣いた赤鬼』をご紹介します。想像力に富んだ表現に胸躍り、鬼たちの友情に号泣できる舞台ですよ!

「究極の友情」が魂を揺さぶる
俳優と糸あやつり人形のイマジネーション豊かな音楽劇

『泣いた赤鬼』公開稽古より。人間に恐れられていた赤鬼は、ある出来事を境に人気者になる。写真提供:一糸座

『泣いた赤鬼』公開稽古より。人間に恐れられていた赤鬼は、ある出来事を境に人気者になるのだが…。写真提供:一糸座

上演時間=1時間25分前後

〈こんなファミリーにお勧め!〉

・パパ、ママが子供のころ『泣いた赤鬼』を読んで胸が痛くなった記憶がある
(人間と仲良くなりたい赤鬼のために、友人の青鬼が一世一代の芝居を打つという、友情と自己犠牲の物語。そのことに気付いた赤鬼がさめざめと泣く結末は、多くの子供たちに衝撃を与えてきました。あの胸締め付けられるような読後感の理由は何だったんだろう?と思い出した「かつての子供」は必見です!)
『泣いた赤鬼』写真提供:一糸座

『泣いた赤鬼』赤鬼は札を立てて村人を招き入れようとするが…。この後、癇癪を起した赤鬼が札を壊すと、映像の演出によって言葉が舞台空間いっぱいに飛び回り、行き場のない赤鬼の思いが見事に視覚化される。写真提供:一糸座

・「手作り」や「アート」、クリエイティブなものが好き
(生身の俳優が演じる「赤鬼」に対して、村人役などを演じているのは糸操り人形。一体一体手作りされたそれらは、よく見ればそれぞれの遣い手に顔がそっくり、衣装の細部まで凝った造りです。巨大な影や文字などのプロジェクションマッピングは意表をつき、園田容子さんによる音楽も無国籍風であったり、日本語のチャンツを巧みに取り入れていたり。クリエイティブな仕掛けが満載の舞台は、シンプルな物語を豊かに膨らませ、イマジネーションを刺激してくれます)

〈何歳から大丈夫?〉
鬼の世界と人間の世界を繋ぐ存在である「少女」役を、客演の王子菜摘子さん(『レ・ミゼラブル』)が演じ、凛とした歌声を聞かせる。

『泣いた赤鬼』稽古より。鬼の世界と人間の世界を繋ぐ存在である「少女」役を、客演の王子菜摘子さん(『レ・ミゼラブル』)が演じ、凛とした歌声を聞かせる。撮影・松島まり乃

公演チラシに掲載されているのは「3歳から」の入場料金。一座代表の結城一糸さんによると、「日本人は江戸時代、大人子供の区別なく芝居小屋に出かけていました。古典芸能出身の僕らはその精神を大切にしていて、今回は原作が児童文学ですので、大人「も」楽しめる作品を心掛けたつもりです」とのこと。ストーリー的に、3歳の子には自己犠牲の精神は難しいかもしれませんが、おおまかな流れはつかめるでしょう。劇中、同じ台詞のやりとりを何度も繰り返す演出が登場し、演出の天野天街さんによるとこれは「レコードの針がとぶように、時間がとぶ」効果を狙っているのだそうですが、子供はたいてい、このような「繰り返し」が大好き。大人が煙に巻かれている脇で、無邪気に笑いころげそうです。

〈どんな音楽劇?〉
『泣いた赤鬼』稽古より。撮影:松島まり乃

『泣いた赤鬼』稽古より。舞台上では作曲の園田さんが様々な楽器を生演奏する。撮影:松島まり乃

山形県出身の童話作家・浜田廣介(1893~1973)の代表作『泣いた赤鬼』の舞台化。脚本・演出を天野天街、音楽を園田容子が担当し、糸操り人形一座の「一糸座」が14年に制作(この時は「公演」には至らず、公開稽古のみ。)鬼たちの友情と自己犠牲の物語が人間と人形たちの共演、独創的な音楽、義太夫、映像と様々な要素を駆使して描かれる。

『泣いた赤鬼』稽古より。撮影:松島まり乃

『泣いた赤鬼』稽古より。恐ろしい外見とは裏腹に、盲目の少女に優しく手を差し伸べる青鬼。撮影:松島まり乃

一座代表・結城一糸さんコメント「作者の浜田さんは明治から昭和と、激動の時代を生き抜いた方で、本作を書いたのは戦争の足音が聞こえてきたころ。「鬼」というのは人間にとって恐ろしい存在で、それが人間に近づこうとしているとはどういうことなのか、本作が描こうとしたものは何なのか、ずっと興味がありました。世界情勢がきなくさくなってきた今、この作品を扱うことには意味があるのではないか、それにあたっては音楽という手段が人の心に入ってゆく上で効果的なのではと考えて音楽劇にしました。人形は「命がない」ものだけど、同時に「生命そのものを感じさせる」こともできる。俳優が演じているだけでは見えてこないものを表現できるのでは、と思いながら、舞台づくりをしています」

脚本・演出・天野天街さんコメント「原作は子供のころに読み、その切なさ、「取り返しのつかない」ということが強く印象に残りました。その時の読後感をスライドさせて今回の舞台を作ったつもりです」

『泣いた赤鬼』公開稽古より。クライマックスでは女流義太夫が登場し、青鬼に会いに行くシーンが語られる。写真提供:一糸座

『泣いた赤鬼』公開稽古より。クライマックスでは女流義太夫が登場し、青鬼に会いに行くシーンが語られる。写真提供:一糸座

客演・王子菜摘子さんコメント「一般的なミュージカルの楽曲は、自分が演じる役の想いを歌うナンバーが多いのですが、本作には作品の空気、色をつむぎだすような音楽が多いです。作曲•演奏の園田容子さんと最初にお話しした時に、アイリッシュ音楽のような声で歌うのはどうかと仰っていただいたことで、どこの場所かわからないような、民謡的なイメージで歌っています。たくさんの楽器を使った様々なジャンルの曲があり、とても楽しいですよ。また、人形はひとつの顔しかないはずなのに、動かし方によって様々な表情が見えてくるのが面白いです。結城一糸さんが赤鬼の人形を遣うシーンがあるのですが、そこでは赤鬼が愛おしすぎて涙が出るほど。お客様にもきっと色んな感じ方をしていただけると思います!」

〈どんな物語?〉
『泣いた赤鬼』稽古より。撮影:松島まり乃

『泣いた赤鬼』稽古より。人間と仲良くなりたいという赤鬼を、動物たちは「無理だよ」といさめるが…。撮影:松島まり乃

あるところに赤鬼が住んでいました。彼は人間と仲良くなりたいと思い「心の優しい鬼の家です」という札を立てますが、人間はみな彼を恐れるばかり。癇癪を起した彼の前に、友人の青鬼が現れ、「それなら僕が悪者になって乱暴を働くから、君は僕を退治するんだ」と提案し、ぽかぽかと殴られる。英雄になった赤鬼はみごと人間たちの人気者になるが、ふと青鬼を思い出して彼を訪ねると、そこには誰もおらず、一通の手紙が残されていました。僕と仲良くすると君が人間たちに怪しまれないとも限らないので、僕は旅に出ることにします。体に気をつけて。いつまでも君のともだち…。赤鬼は永遠に失われた友人を思って、ひとり泣いたのでした。

*2018年夏公演決定!
泣いた赤鬼』2018年7月27~29日=シアターX(カイ)大人3500円、アンダー25 2000円、親子券4000円(幼稚園児までひざ上無料)

2016年1月8~12日=赤坂RED THEATER 大人3800円、大学生2000円、3歳~高校生1500円
*次頁に2016年版舞台の観劇レポートを掲載*
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