2015年総まくり・国内編

<渋谷区や世田谷区が同性パートナーシップ証明をスタート>

増原裕子さん&東小雪さん

渋谷区の同性パートナーシップ証明第1号となった増原裕子さん&東小雪さんカップル

そして2015年2月、渋谷区が同性カップルにパートナーシップ証明書を発行すると発表し、たいへんな騒ぎになりました(詳しくはこちら)。コミュニティ的には晴天の霹靂でしたが、証明書自体の効力(得られる権利)とかよりも、公に初めて同性愛者の権利が認められたという喜びが大きかったと思います。今まで「無」だったのが、ようやく「有」になったのです。

渋谷区のすぐ後に世田谷区もやると発表し(渋谷区とは異なり、条例ではなく要綱によって定めたもので、また公正証書の提出などは不要で、宣誓書を書いて受領証を受け取るという方式)、11月5日にめでたく証明書の交付が両区で同時に始まりました(詳しくはこちら)。また、兵庫県宝塚市や沖縄県那覇市もパートナーシップ証明の導入を検討しはじめました(那覇市は全国で2例目となるLGBT支援宣言も発表)

なお、人気ドラァグクィーン・エスムラルダさんが書いた『同性パートナーシップ証明、はじまりました。』という本に渋谷区・世田谷区で動いた方たちのドラマが詳しく、生き生きと書かれています。ある意味、神の采配というか、出会うべくして出会った人たちによって、時機を得て、両区のパートナーシップ証明が生まれたんだなあということがわかります。これは必読!です。

4月にはタレントの一ノ瀬文香さんと杉森茜さんが同性結婚式・披露宴を行ったり(詳しくはこちら)、LGBT支援法律家ネットワークが同性婚法制化を求めて日弁連に人権救済申し立てを行ったり(詳しくはこちら)、ということもありました。憲法の「両性の合意」をめぐっては意見が分かれるところですが(LGBT支援法律家ネットワークは「家制度を廃止し、婚姻が当事者の合意のみで成立することの確認が趣旨。制定当時は異性婚のみが想定されていたが、同性婚を禁じるものではなく、同性婚は憲法に違反しない」と主張しています)、ゆくゆくは「結婚の平等」が達成されるのか、結婚とは別の同性パートナー法なのか……ともかく2015年は、その歴史的な第一歩が踏み出されたのです。

なお、一部の区だけでなく、法務省が性的マイノリティをテーマにした人権啓発ビデオを制作するなど(詳しくはこちら)、国も支援的な方向に動いています。ちなみに、あまり知られていないかもしれませんが、昨年の男女雇用機会均等法の指針改正で、セクシュアルマイノリティに対する差別的言動もセクハラとみなされるとされています(詳しくはこちら

<企業やメディアも支援的な方向に>

渋谷区が同性カップルも結婚した夫婦と同等にみなす、区内の業者(不動産屋や病院など)に対しても同等に扱うことを求めるという条例案を発表したことを受け、さまざまな企業が動きを見せました。

大手携帯電話会社がこぞって家族割の適用を発表し(詳しくはこちら)、ドコモ参加の「ショップジャパン」も同性愛者の社員に対しても結婚祝い金と結婚休暇を付与すると発表、IT企業のガイアックスもラッシュジャパンと同様のLGBT支援宣言を発表しました。

なかでも、ライフネット生命はじめ大手生命保険会社が受取人に同性パートナーを指定できるようにするという発表は(詳しくはこちら)、ゲイやレズビアンのカップルにとって、本当に大きな意味をもつものでした(悲願達成の感がありました)

「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」

「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」チェンジメーカー賞に輝いた村木真紀さん

また、「Best of IBM」に選ばれた川田篤さんなど、企業のなかでカミングアウトする方たちも現れ、活躍しています(先日のNHKの『サキどり』でゴールドマン・サックスのずっと黙っていたゲイの方がついに公にする勇気を得たというエピソードも感動的でした)。そうした企業の風土というか職場環境の改善にずっと取り組んできた虹色ダイバーシティの村木真紀さんが『日経WOMAN』が選ぶ「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の1人に選ばれたことは、本当に晴れがましく、2015年を象徴するようなものだったと思います。

<コミュニティイベントも多彩に>

東京レインボープライド

今年の東京レインボープライドではレズビアンカップルの結婚式も行われ、同性パートナーシップ証明を実現した桑原元渋谷区長も立ち会ってくれました

GWの東京レインボープライドは2015年、東京レインボーウィークといっしょになり、トータルで約5万人の参加を得て、盛り上がりを見せました(清水ミチコさんがドッカンドッカン盛り上げてくれたほか、歌手のKi-Yoさんが壇上でカミングアウトするなど、ドラマチックな場面もたくさんありました)。なお、東京レインボープライドはソウルや台北のパレードにもフロートを出展していて、アジアのLGBTシーンにおいても大切な役割を担っています。応援しています。

また、今年初!ということでは、ハロウィンの時期に横浜で初のレインボーフェスタが開催されたことが新しいところです。最高のロケーションで、数々のショーやバラエティ豊かなブースなどを楽しむことができ、いろんな演出にシビれました(レポートはこちら)。また、10周年を迎えた関西レインボーパレードも、祝福感に満ち、あたたかで、素晴らしかったです(レポートはこちら)。4回目となる名古屋の虹色どまんなかパレード、2回目となる福岡のパレードも盛り上がりを見せたそうです。

映画祭も各地で開催されました。第24回を数える東京国際レズビアン&ゲイ映画祭は、心から「観てよかった」と思えるような名作がそろっていて、たくさんの方たちと素晴らしい時間を共有できました(レポートはこちら)。青森LGBTフィルムフェスティバルや香川レインボー映画祭も開催されました。

新宿二丁目では冬と夏の2回、レインボー祭りが開催されました(レポートはこちらこちら)。また、二丁目では、長年愛されてきた「ArcH」が場所を変えて再オープンしたということが、大きなニュースでした。週末の二丁目がまたにぎやかになり、活性化された感があります。これからもいろんなイベントが開催されることと思います。楽しみです!

<エンタメ・カルチャーでも傑作が続々>

『恋人たち』。

橋口監督の新作『恋人たち』。ぜひご覧ください!

橋口亮輔監督が7年ぶりに新作長編『恋人たち』を発表しました。「橋口節は健在」という言い方では足りず、これまでの橋口さんの作品のエッセンスがギュッと詰まった、さらに一段上のステージへ上がったような印象を受ける、大傑作でした。世の中にあふれるさまざまな悲しみを包み込み、絶望の淵から「それでも、生きていこう」と呼びかける……『恋人たち』はそういう作品だと思います。橋口さん、本当にいい映画をありがとう、という気持ちです。主人公の一人がゲイで、二丁目ロケも行われ、久しぶりに橋口さんがゲイを描いてくれたのもうれしかったです。

それから、2015年の下半期は、ゲイを主人公にしたドラマ『偽装の夫婦』(日テレ)が話題になりました(TLが『偽装の夫婦』だらけに…)。幼稚園の園長代理をしているゲイの超治と友情結婚したヒロ。第7話では、幼稚園で超治がゲイだと噂が立ち、父母の前でカミングアウトすることに。父母は口々に「子どもをこんな人に預けられない」などと非難…そこに現れたヒロが「彼がゲイってことで、あんたたちの子どもになんか、迷惑かけた? いやな思いさせた? 傷つけた? 逆でしょう。この幼稚園に通いだして、みんな笑顔が増えたんじゃないの? 生き生きしてんじゃないの? それが何よ、おめえら。いろんな人間の利害や喜びや悲しみを、自分のたった一つきりのけちなものさしではかるまねしやがって」と叫びます(感涙……)。このドラマの白眉だと思いました。話はどんどん予想外の展開を見せ、終わりの2話はけっこう批判もされました(セクシュアリティは意志で変えられるものじゃないからね……)。が、本当のラストにあいけんさん&brassさんら、3組のリアルなゲイ/レズビアンカップルが登場したり、全体として同性愛への理解を促すようなスタンスが伝わってきて、素晴らしかったです。

『弟の夫』

大ヒットしてだけでなく文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞にも輝いた『弟の夫』。こちらもぜひ、ご覧ください!

そして2015年5月には、田亀源五郎さんの『弟の夫』が発売されました。弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、弥一の双子の弟・リョージの結婚相手だったマイクというカナダ人がやって来て、夏菜は大はしゃぎ。最初はいぶかしく思っていた弥一も、次第に心を開いていき…というストーリー。世間の(ホモフォビアを抱えた)人たちの心にも届くような、素晴らしい作品です。その『弟の夫』が、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました(本当に喜ばしいこと。おめでとうございます!)。なお、『弟の夫』第2巻が2016年1月12日に発売されるそうです(1月23日にSHIBUYA TSUTAYAで田亀先生のサイン会も行われるとのこと)