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1日にレモン50個分!?ビタミンCの適切な摂取量と摂り方

【管理栄養士が解説】「レモン○個分」という表記で、ビタミンCをたっぷり含んだ商品をよく見かけます。サプリメントでも、ビタミンCは売れ筋商品のひとつ。取りすぎても過剰摂取分は排泄されるとはいえ、摂れば摂るだけ身体に良いのでしょうか? ビタミンCの効果、注意すべきポイント、食べ物からのおすすめの摂り方について詳しく解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

ビタミンCの効果とは……不足すると壊血病(かいけつびょう)の原因にも

レモンとビタミンC

「レモン〇個分のビタミンC」といった表記をよく見かけます。そんなにたくさんのビタミンCが、本当に必要なのでしょうか?


ビタミンCは美容や抗酸化作用など、いろいろな効果があるといわれています。栄養学の教科書的には「皮膚や細胞のコラーゲンを合成するのに必要」という言い方になりますが、ビタミンCが不足するとコラーゲンが合成できなくなるため、血管がもろくなり、出血しやすくなります。これが続くと、壊血病になり疲労倦怠、いらいら、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などの症状が出ます。

また、ビタミンCは強い抗酸化作用を持っているので、ビタミンEと協力して活性酸素を消去し、細胞を保護する役割もあります。
 

1日にレモン50個も必要!? ビタミンCの適切な摂取量

日本人の1日に必要なエネルギーや栄養素量を示した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、ビタミンCの必要量(推奨量)は一般成人で1日100mgです。喫煙者(受動喫煙者も含む)の場合は、非喫煙者よりもビタミンCの必要性が高く、推奨される量よりも多めに摂ることが望ましいとされています。

1日100mgとありますが、6~12mg摂取していれば壊血病は発症しないとされています。また、ビタミンCは水溶性ビタミンなので過剰摂取(1日100mg以上)した分は尿中に排泄されます。体内のビタミンCは飽和状態にしておくほうがよいという意見もありますが、それでも1日100mgを摂れば飽和状態を維持できるといわれています。

一方で、レモン50個分のビタミンCはどれくらいかというと、約1000mg。食品メーカーでは各社の規格を統一するために、「レモン果実1個当たりのビタミンC量として20mg」を基準として計算をしています。レモン50個分のビタミンCは、1日に必要なビタミンCの10倍だということが分かります。

少し話は逸れますが、マルチビタミン剤を飲んだ後、トイレへ行くと尿が普段よりも黄色っぽいと感じたことはないでしょうか。これは、ビタミンB2が蛍光カラーを持っているため、吸収しきれなかったビタミンB2が体内を通過して尿中に排泄されている色なのです。ビタミンCは水に溶けると無色透明なため、ビタミンCが含まれていることで尿の色が変わることはありませんが、過剰に摂取すれば同様のことは起こっています。せっかく飲んでも尿中に出てしまうのでは、あまり意味がないですよね。
 

ビタミンCの過剰摂取リスク・注意すべきポイント

レモン

ビタミンCは水溶性ビタミン。たくさん摂っても余った分は尿として排出されます

ビタミンCは水溶性のビタミンなので、基本的には体内に蓄積させることはできません。余剰分は、尿中に排泄されるといわれています。そのため、今のところ過剰に摂取しても健康障害が起こったという報告はありません。

ただし、腎機能障害のある人が数千mg単位のビタミンCを摂取した場合、腎シュウ酸結石のリスクが高まることが知られています。また、過剰摂取の影響として、吐き気、下痢、腹痛といった胃腸症状が出ることがあるとされています。1日3000~4000mgを摂取し続けると、下痢になるという報告もあります。

ですが、基本的に1日400mgを摂取すれば体内のビタミンCは飽和状態になるといわれていますし、1日100mgを摂れば飽和状態が維持できるといわれています。過剰分が尿中に排泄されてしまうということは、体内をすり抜けて捨ててしまっているのと同じような状態です。そのため、ビタミンCたっぷりの飲料1本を飲んで、10日分のビタミンCを摂ったと思いたいところでしょうが、その後で食生活をおろそかにすると数日後にはビタミンCは枯渇してしまいます。そう考えると、飲料1本で1000mgも摂る必要はないように思います。

先にご紹介した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、「通常の食品以外の食品から1g/日以上のビタミンCを摂取することは推奨できない(p.274)」とされています。もちろん、食品は薬と違い、誤って1g(1000mg)以上のビタミンCを摂取してしまったからといって、いきなり健康を害することはありません。しかし、私たち人間が昔から継続的に摂っていたのは「天然の食品」だけです。それらからは摂れないほどの量のビタミンCが、身体に与える影響は未知数です。
 

サプリメントに頼らずビタミンCを食べ物で100mg摂る方法 

単一の食品で摂る場合の摂取量を、一覧表にしてみました。
単一の食品でビタミンCを摂る場合の摂取量

単一の食品でビタミンCを摂る場合の摂取量


柑橘系の果物は、1回分に食べられる量で100mgを摂ることができます。しかし、ビタミンCは体内に蓄積しておくことができないので、1度に100mgを摂っても尿中に流れていってしまいます。そのため、ビタミンCだけを考えて無理につめこむのではなく、野菜類などを上手に取り入れて、3食の総合計で100mgになるほうが効果的です。

例えば、小松菜であれば1回の小鉢に1/2袋くらいが入るため13mgくらい。白菜は鍋などに入れれば2枚くらいは食べられるため、加熱による損失を加味して10~20mgくらい。ほうれん草なら小鉢1杯で1/2束(50~70g)くらいのため、10~15mgくらいを摂取することができます。これに主菜の付け合わせのブロッコリー1房が10mgくらい。このように考えていくと、野菜の小鉢を1日5~6品摂ればビタミンCは充足できる計算です。このくらいであれば、それほど頑張らなくても食べられる量ではないでしょうか。

いきなりサプリメントに頼るのではなく、本当に天然の食品で必要な量が確保できないかを考えてみるとよいと思います。
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