モバイル端末向けゲーム市場の成熟

スマートフォンでゲームをするユーザーの図

モバイル端末向けゲーム市場は、すごい早さで成長し、そして変化しようとしています

市場が成熟してきた、2015年各メディアでそんな声が聞こえるようになりました。ここ数年爆発的に成長してきたスマートフォンをはじめとするモバイル端末向けゲーム市場が、とうとう熟してきた、つまりその成長に陰りが見えてきたということです。

市場の成熟というのは、多くの場合ネガティブにとらえられます。ビジネスの観点からすると、どんどん大きく成長を続けていって欲しいと考えるからですね。しかしそれはお金の流れを考える人たちの発想で、必ずしも市場の成熟が悪いこととは限りません。難しくなることもあるでしょうし、難しいからこそ、変わっていく、新しくなることもあるでしょう。

今、モバイル端末向けゲーム業界にどういうことが起きているのか、そしてこの先それはどんな影響を与えるのか、考えてみたいと思います。


レッドオーシャン化

モンスターストライクの図

これまでのヒット作が市場において圧倒的支配力を持ち続けています

モバイル端末向けゲームについて、開拓の余地がたくさんあって、とにかくたくさんゲームを出していけばどれか当たる、というようなブルーオーシャンの時期はとっくに過ぎていて、競争の激しいレッドオーシャン市場となっています。2015年はその傾向がさらに顕著になった年だったと言えそうです。

新しいタイトルは多数投入されていますが、その大部分が失敗して赤い海に沈んでいます。しかも、その新しいタイトルの中から次のブームを起こすようなゲームが登場しているかと言えばその気配は薄く、結局売り上げ上位を占めているのは「パズル&ドラゴンズ(以下パズドラ)」や「モンスターストライク」、「ディズニーツムツム」など、これまでにヒットしたゲームです。

ヒットしたゲームはさらにお金を投入して、イベント企画などを打ち出し、抱えているユーザーを離さない様に、そしてしっかりと課金してもらえるように、防衛戦を繰り広げます。新しいゲームがその牙城を崩すのは並大抵のことではありません。

それは、ヒットしたゲームを抱えるメーカー自身にも言えることで、パズドラのガンホー・オンライン・エンターテイメントはパズドラを懸命に守ってはいるものの、次の柱となるタイトルはいまだ作ることができていません。

こうした競争が激化した市場の中で、大手ゲームメーカーはその強みをかして勝負に臨みます。

IPの活用と、開発費の増大

星ドラゴンクエストの図

これまでにもドラクエやFFのモバイル端末向けゲームは出ていましたから、あわせるとかなりの数が投入されていることになります

レッドオーシャン化した市場の中で、大手ゲームメーカーが取っている戦略は、既存の有名タイトルなどのIPを活用すること、そして開発の大型化です。スクウェア・エニックスが非常に分かりやすいのですが、ファイナルファンタジーやドラゴンクエスト関連タイトルを多数投入しています。

「星のドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス」「ファイナルファンタジーグランドマスターズ」「メビウスファイナルファンタジー」など、これらは全て2015年リリースタイトルです。もちろんスクウェア・エニックスだけでなく、バンダイナムコゲームスの「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」やカプコンの「モンスターハンター エクスプロア」など、それぞれ手持ちIPの有効活用に努めています。

開発費は数年前に数千万円だったものが、今では数億円規模に膨れ上がり、モバイル端末向けなら少ない開発費で大きな儲けが期待できる、と簡単には言えない状況になっています。


タイトル数の減少

パズドラの図

パズドラの爆発的ヒットと共に、スマートフォン向けゲームのムーブメントが広がり、似たようなゲームも増えました

大手ゲームメーカーからすると、レッドオーシャン化した市場のなかで確実に競合他社と差をつけていきたいわけで、有名なIPを活用して、しっかりと開発費をかけ、そしてグラフィックなどのユーザーにとって分かりやすい部分で開発力の違いを見せていく、というのが安定した戦略ということになります。

大手がこういった戦略を取り始めると、次に予想されるのはタイトル数の減少です。開発費をかけていくということは、数をたくさん打てないということなので、自然とタイトルは絞られていきます。そして、中小メーカーは大きなタイトルに太刀打ちできなくなるので、淘汰されていくことでしょう。

もっと分かりやすく言うと、パズル&ドラゴンズがヒットして以来、モバイル端末向けのゲームが儲かるぞ、となって、ゲームの中身にさしたる違いもないのにガワだけ変えたようなものが大量に登場し、そして消えていきましたよね。そういうものがそれなりに整理されていくはずです。粗製濫造、一発当たれば大儲け、みたいなことをメーカーが考える市場ではなくなる、ということです。

こうやって淘汰が進んでいくモバイル端末向けのゲーム市場なんですが、1つ気になることがあります。

市場の成熟、ゲームの成熟

ハースストーンの図

ハースストーンなど、海外の面白いゲームも上陸しています。さらに競争は激化していくでしょう(イラスト 橋本モチチ)

競争が激化するモバイル端末向け市場ですが、1つ気になることがあります。何かと言うと、結局のところ、それでゲームはどうなるのか、ということです。率直に言えば、ゲームは面白くなるのか、ですよね。最後にそんな話をしてみたいと思います。

これはガイドの、いわゆる希望的観測というものですが、実はわりとゲームは面白くなっていくんじゃないかと思っています。これまでのスマートフォンゲーム市場というのは、とにかく少ない投資で夢のような大儲けができるかもしれないという、宝くじのような市場でした。そこに有象無象がよってたかってゲームを投入して、現れては消え、現れては消えの繰り返しでした。

そして、メーカー側はとにもかくにも、運営に力を入れました。とりあえずは無料で遊んでもらって、そこからお金をいただけるかは運営次第。毎日触ってもらえる工夫をして、イベントで盛り上げて、コラボでガチャをまわしてもらう。ガチャを軸にした運営手法の先鋭化というのが、日本のスマートフォンゲーム市場に起こっていった大きな進化です。

しかしこれからはちょっと風向きが変わります。競争が激化していった時に、まず、儲かりそうだからゲームを作っていた、なんていうところは手をひくでしょう。これまでのようには儲からなくなるからです。

そして、とりあえず無料だから遊んでみて、ということがこれまでよりも難しくなっていくでしょう。ユーザーの目が肥えていって、同じような遊びに飽きてくると、無料といっても目新しさが無ければ寄りつきません。また、今はスタートラインに大きな差がついています。ユーザーはこれまでにたくさん遊んだゲーム、たくさん課金したゲームに執着し、新しいゲームに移りがたい環境ができあがっています。これは、たくさん時間とお金を使っているユーザー程、強い傾向となっていきます。

競争は激しくなりますが、市場の規模は非常に大きく魅力的です。となれば、競争を制して市場をとる、という強い意志のあるメーカーは頑張ります。その時、これまでのようなゲームが飽きられていると思えば、新しい遊びを考えなくてはいけなくなります。

モバイル端末向けゲーム市場は急速に成熟しつつあります。しかしスマートフォンを使ったゲームは、その成熟に追いついていないように思います。それは、もっともっと面白くなる余地があるということでもあります。成熟した市場を誰が掴んでいくのか、その競争の中で、今度はゲームが成熟していく時期にきているかもしれません。

【関連記事】
ケンタウロスの脚とゲームの戦略(AllAboutゲーム業界ニュース)
世界最高峰の完成度を持つTCG ハースストーン(AllAboutゲーム業界ニュース)
マリオじゃないからダメなのか? 任天堂スマホアプリ(AllAboutゲーム業界ニュース)

【関連記事】
田下広夢の記事にはできない。(ゲーム業界ニュースガイド個人運営サイト)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。