世界最高峰の完成度

iPhoneの図

PCやスマートフォンで遊べます

誰が聞いても1発で「それは面白そう」と分かるような、斬新で驚きのある特徴を持ったゲームではないと思います。それでも、ガイドが初めて遊んだ時には、とてもとてもビックリしました。「ハースストーン」というゲームが持つ完成度の高さと、その面白さに。

ハースストーンはアメリカのゲームメーカー「ブリザード・エンターテイメント」がリリースしているPCやモバイル端末向けの対戦型カードゲームです。「マジック:ザ・ギャザリング(以下MTG)」であるとか、「遊戯王」などが有名な、数十枚のカードからなるデッキを自分で組んで、カードによってモンスターを召喚したり、魔法を使ったりして戦うタイプの、いわゆるトレーディングカードゲームというジャンルですね。

ただし、ハースストーンにはMTGや遊戯王のような物理的なカードは存在しません。初めからデジタル向けに作られていて、そして特化しています。ここまで研究されているのか、というぐらい、簡単で、ストレスなく遊べ、課金の提案には説得力があり、そしてゲームが面白いです。

そのあまりの面白さに、英語版しかない状態でも、言葉の壁を乗り越えて遊ぶ日本人ユーザーは以前からいましたが、とうとう、2015年10月21日、日本語版がリリースされ、多くの日本人が参加しやすい環境が整いました。ローカライズも素晴らしく、カードの説明などが簡潔で分かりやすく翻訳され、日本語ボイスもしっかりついています。

冒頭お話した通り、何か分かりやすい斬新で驚きのある特徴がある、というゲームではないかもしれません。実は、そういう意味ではこういった記事では紹介が難しいんですね。この特徴を言えば面白さが伝わる、というゲームではないからです。どこを見わたしても実によくできていて、それらがお互いに作用し、世界最高峰と言って良い完成度を築き上げています。

ですから、ちょっと長くなってしまいますし、それでも網羅はできないのですが、どこが良くできているかというのを、できればカードゲームをあまり遊んでいない人でもわかるように、紹介してみたいと思います。

簡単なルール、安定した対戦

ハースストーンの図

手前が自分で奥が相手、手札からミニオンや魔法のカードを使って戦います

まず、ルールについて。基本のルールは一般的なカードゲームと大差はありません。交互に自分の順番が来るターン制で、自分の番になればカードを使ってミニオンと呼ばれるモンスターや、様々な魔法を使い、相手を攻撃します。ヒーローと呼ばれる相手のプレイヤーキャラクターの体力を全て無くした方が勝利です。

良くできてる仕組みの例としては、1ターンごとに自動でそのターンに使えるマナが1つずつ増える、というものがあります。マナというのはカードを使うために必要なポイントで、カード毎に、使うのに1マナが必要なカード、2マナが必要なカード、というように設定がされています。カードゲームではこういったカードを使う為の条件のことをコストと呼ぶことが多いのですが、コストの大きいカード程、カードの能力も強力になっていきます。そして、コストの管理がゲームの戦略を大きく左右するとともに、非常に複雑になりやすい点でもあります。

ハースストーンの仕組みはこのコスト管理を実にシンプルにし、なおかつゲームを安定させるのに役立ちます。何しろ、自分の順番が回ってくるたびにマナが1つ増えるわけですから、1マナのカードは最初から使える、2マナのカードは2ターン目から、7マナの強力なカードは7ターン経たないと使えない、と、誰でも分かります。

この仕組みは分かりやすいと同時に、「事故」が非常に少なくなります。カードゲームでは、最初に配られたカードが悪くて、ゲームの序盤に何もできない展開になることを事故と呼びますが、ハースストーンではマナは確実に配られるわけで、マナが手に入らないことが理由で事故が起きることはありません。

また、プレイヤーが自分のキャラクターとして選ぶヒーローには、それぞれ2マナで使えるヒーローパワーという能力が1つあります。敵に1点ダメージを与える、味方を2点回復する、ミニオンを召喚する、などなど。特殊能力は1ターンに1回使え、この能力とカードを組み合わせて戦略に幅が出てくるわけですが、一方で、使えるカード無くてもやることが無くならない、という保証になっていて、これもやはり事故を防ぎます。

もしかすると普通に遊んでいるとこの恩恵に気がつかない人もいるかもしれません。しかし、オンラインゲームで対戦して、勝つとランクがあがったり、報酬がもらえたり、ということがある場合、不運によってゲームに負けたということが多いとストレスになります。カードが配られただけで一方的に対戦をやめてしまう人も増えるでしょう。そういったゲームの面白さを損なうケースを確実に減らし、何度も遊びたいというモチベーションを高めているはずです。

シンプルで分かりやすく、戦略性があり、そして事故を減らし、何度も遊びやすいゲームに作り上げている、実によく練られています。完成度が高いと感じます。次は、カードについて、お話したいと思います。

どのカードが強いかは、プレイヤーが決める

スマートフォンでゲームをするユーザーの図

レアで強力なカードが手に入ればそれで勝てるかというと、そう単純ではありません

ハースストーンのカードが良くできているのは、1枚1枚を見ても分かりません。素晴らしいのはバランスです。非常に強力な能力をもったレアなカードでもそれだけでは勝てませんし、簡単に手に入るカードでも使い方次第で勝利に大きく貢献します。

5段階ある希少度の中で最高ランクのレジェンダリィに位置する「ケルスザード」というミニオンがいます。ターン終了時に、そのターンで死亡した味方のミニオンを全て召喚しなおすというカードです。

ミニオンがある程度揃っている場面で出せれば、味方のミニオンは相手のミニオンと気軽に戦って相討ちさせて、ターン終了時に自分の仲間だけ復活ということで、大変に強力です。「断末魔」という、ミニオンが死んだ際に発揮される能力と組み合わせればさらに効果は大きく、それだけで勝負を決めかねないカードです。しかし、このケルスザードも、単体ではさほど強いとは言えません。

マナは毎ターン自動で増えていくので、手札にくればどこかのタイミングで必ず召喚はできるわけですが、その時ゲームの状況がとても重要になります。単体で召喚しただけでは、その能力を警戒した相手の猛攻撃を受けてあっという間に倒されてしまうだけしょう。

ケルスザードとは逆に、希少度が低く、誰でも手に入れられる何の能力も持たないミニオンもいます。「チルウィンドのイエティ」という、最低レベルの希少度でゲームを始めたプレイヤーなら誰もが入手するミニオンがいます。チルウィンドのイエティは何の能力も持たない代わりに、ちょっとだけ同じコストのミニオンよりも体力と攻撃力が高いミニオンです。

ゲームを始めたばかりのプレイヤーは、それ程魅力のない普通のミニオンだと思うかもしれません。しかしそうではないんですね。そのちょっとの体力と攻撃力の差が、ハースストーンでは非常に有利に働くように設計されています。

相手のミニオンを攻撃した時に、あるいは攻撃されたときに、一方的に倒されるのか、相討ちなのか、自分だけ生き残るのか、そのギリギリの分かれ目が、勝負の流れを作っていきます。ケルスザードとは逆に、どんな状態で出しても、確実にコスト以上の働きをしてくれるミニオンとして大変に人気があります。

このバランス感覚なんですね。ありふれたカードとレアなカードに差はありつつも、ゲームの上で強いか弱いかは、プレイヤーの作るデッキやプレイによって大きく変わります。たくさんあるカードが作るゲームの生態系が実に熟慮されていて、1枚1枚のカードに可能性を感じます。

さらに、これらのルールやカードの持つ対戦の面白さ加速させるのが、ゲームモードです。

面白さを加速させるゲームモード

電車で遊ぶユーザーの図

1試合が短めなので、電車でも気軽に遊べます。ただし、電波が届かないと一切ゲームができないようになっているので、地下鉄にはご注意ください

シンプルで安定したルール、バランスのいいカード、それらを使ってさらにゲームを面白くするのがいくつか用意されているモードです。基本となるのは、勝ち負けによってランクが変わり、毎月ランクによってカード等の報酬があるランク戦。そしてランクの上下を気にせず遊べるカジュアル戦の2つです。しかし、これだけではありません。

「酒場の喧嘩」は毎週変わったお題が提示されて、特殊ルールで遊ぶモードです。例えば、いつもは対戦するプレイヤー同士が協力してボスを倒すというルールが登場したことがありました。ボスとなるミニオンがいて、自分のターンには相手の場に、相手のターンには自分の場に移動してくるので、協力してそのボスミニオンだけを狙います。協力プレイとなれば、いつもとはカードの意味も使い方も、全く変わってきて新鮮に遊べます。毎週変わるお題が、ゲームの面白さを発掘します。

上記は、完全に無料で遊べるモードですが、お金で買う、あるいはゲームをプレイすることで貰えるゲーム内通貨の「ゴールド」を使って遊べるモードもあります。

「闘技場」は自分の持っているカードとは関係なく、ランダムに提示されるカードから1枚を選ぶということを繰り返し、できたデッキを使って対戦するモードです。始めたばかりの人でも、持っているカードの差で勝負が決まらないですし、普段使っていないカードが使えるのも面白いです。3回負けるとゲーム終了で、それまでの勝利数に応じて報酬がもらえます。1度も勝てなくても最低限の報酬はもらえますし、4勝以上すると、遊ぶのに使ったゴールド以上の価値がある報酬がかえって来ます。

さらにはコンピューターが操るボスと戦う1人用の「アドベンチャー」モードもあります。ボスはプレイヤーキャラクターのヒーロー達と同じように特殊な能力を持っていて、プレイヤーの持っている手札の数だけダメージを与えるとか、ミニオン1体を破壊するなど、ボスらしい強力な力をふるいます。

通常の対戦に使っているカードの構成ではなかなか勝てないので、ボスの特性に合わせてカードを選んで戦います。手札の数だけダメージを与えてくるなら、どんどんカードを使って手札が無くなるデッキを考えればよい、ということになります。これがまた楽しいわけです。

アドベンチャーモードは1つの物語を全部遊ぼうと思うと日本円にして3,000円前後のお金がかかりますが、その分、ボスを倒すと報酬でカードがもらえます。アドベンチャーモードで貰えるカードはあらかじめ決まっていて公開されているので、運に左右されずある程度のカードをそろえるには非常に良い手段です。実は、先ほどご紹介したケルスザードはアドベンチャーで手に入るカードなんです。

さあ、たっぷりご紹介してきましたが、それでも全てを網羅することはできません。

痒いところに手が届く

PCで遊ぶユーザーの図

PCでも、スマートフォンでも、タブレットでも、好きな端末で遊ぶことができ、全部同じアカウントが使えます(イラスト 橋本モチチ)

ハースストーンが良くできているところは細部にわたり、とてもすべてはご紹介しきれません。例えば、これまでご紹介した要素をまとめているのが、UI、ユーザーインターフェースです。ハースストーンのUIは大変にシンプルで使いやすいものです。対戦中、ほとんどの操作は、カードを手元から場に、あるいは対象にスライドすることで済んでしまいます。

もし、知りたい情報があれば知りたい場所を長めにタップすれば大体のことは分かります。カードの持つ能力、能力を説明する時に使う単語の意味、自分や相手のヒーローの能力、カードが後何枚残っているか、さっきのターン相手が何をしたのか。知りたいと思う所を触っていれば答えが返ってきますし、逆にそうしなければ画面はスッキリ整理されていて、余計な情報が表示されません。

課金関連も気が利いています。カードを増やすもっともありふれた方法は、お金やゴールドでカードパックを買うことです。カードパックはランダムに5枚のカードが封入されていて、同じカードがいくつもたまることがありますが、余ったカードを破棄することで手に入る「ダスト」を使えばピンポイントで欲しいカードを手に入れることもできます。

先述したアドベンチャーモードのような確実に手にいれる方法に運要素の強いカードパック、余ったカードでピンポイントに作る方法、そしてそれらをお金でぱっと買ってしまうか、それともコツコツ対戦を重ねてゴールドを貯めて手に入れるか、プレイヤーの遊び方を広く設定しています。

簡単で、安定した対戦を実現するルール、しかし奥深い戦略を提供するカード群のバランス、それらを最大限に楽しめるよう用意されたモード、簡素で分かりやすいUIに、ユーザーのプレイスタイルにあわせたカードを集める方法の提供などなど、微に入り細に入り作り込まれ、有機的につながり、完成度を高めています。

プレイヤーは必ずしもそういった1つ1つのことを意識しないかもしれませんが、遊んでみるとそれらが実にうまく機能していて、なんとなくスムーズで、ストレスなく、そして面白いのです。「ハースストーンって何が面白いの?」と聞かれると、ズバッと返答するのは結構難しいんです。しかし、丁寧に見ていくと、どこもかしこも良くできているのです。その完成度、ぜひ1度体験してみてください。

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田下広夢の記事にはできない。(ゲーム業界ニュースガイド個人運営サイト)

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