ガッカリしたのはマリオじゃないから?

Miiの図

Miiはユーザーが自分で作れるアバターのようなキャラクターで、これを使った大ヒットタイトルには「トモダチコレクション」シリーズがあります

任天堂のスマートフォン向けアプリ参入第1弾となるタイトル「Miitomo」が、2015年10月29日に開催された、同社の「経営方針説明会 / 第2四半期決算説明会」にて発表されました。Wii Uやニンテンドー3DSなどで作ることのできるプレイヤーの分身のようなキャラクター「Mii」を使ったコミュニケーションアプリとなるようです。

この発表に対し、いくつかのメディアではマリオシリーズやゼルダの伝説シリーズなどの有名IPを活用したものでないのは期待外れである、というような内容の記事が書かれました。ガイドは「Miitomo」の発表そのものは、多くの人に期待外れ、ガッカリ、という印象を抱かせるような発表だったと思いますが、その理由がマリオじゃないから、というのはかなり的外れな指摘だと考えます。

マリオじゃないから、という理由がなんで的外れなのか、じゃあ、Miitomoの発表は何がガッカリだったのか、お話してみたいと思います。

マリオに人気があるからゲームが売れるのではなく、ゲームが面白いからマリオに人気がでる

マリオの図

もちろん、マリオの知名度はゲームを成功させるのに大きく役には立ちますが、それが最も大切かと言えばそんなことはありません

以前にもゲーム業界ニュースでは解説をしたことがありますが、「マリオ」に大変な人気があって、その力でゲームが売れると考えるのは、あまり任天堂のゲームを遊んでいない人が陥りがちな勘違いです。もう一度冷静になってよーく見てください、マリオなんてチョビ髭にオーバーオールの赤いオッサンですよ、この人目当てで本当にゲームが売れるんでしょうか? むしろこれは逆なんですね、ゲームの方が面白かったから、マリオにも人気が出ているのです。

マリオは大変な知名度がありますから、マリオのゲームが出たとなれば多くの人が興味を持ちやすい、という環境にあることは確かです。そういう意味で、最低限の売り上げを守る、という意味でも効果があるでしょう。しかし、マリオが出ているから大成功が約束されるかと言えばそんなことはありません。

面白い例があります。ガンホー・オンライン・エンターテイメントのスマートフォン向け大ヒットゲーム「パズル&ドラゴンズ(以下パズドラ)」、このタイトルのニンテンドー3DS版が2本あります。1本はオリジナルの「パズドラZ」、もう1本はマリオとコラボした「パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズエディション(以下パズマリ)」。売り上げを言うと、パズドラZは約140万本なんですね。じゃあ、マリオとコラボしたら相当すごいことになるんじゃないかと思いきや、パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズエディションは約30万本にとどまっています。今のコンシューマーゲーム業界、30万本も売れれば十分すごいんですが、どうしてもパズドラZと比較しちゃいますよね。最強タッグのはずが、売り上げが伸びるどころか4分の1以下です。

最初のパズドラZは、スマートフォンで遊べない子ども達向けに、ということで初のニンテンドー3DS版として非常にたくさん売れました。一方、後発となったパズマリは、マリオとコラボしている、という味付けを除く基本的な遊びや面白さはパズドラと大きく変わらず、パズドラZで満足してしまった人が再度購入する大きな動機付けがなかった、ということが伸び悩んだ原因と考えられます。

つまり、多くのゲームユーザーは単純にマリオだったらなんでもいいとは思っていないのです。当たり前のことですが。そして、マリオじゃなきゃダメだ、とも思っていないでしょう。

面白そうならイカでもいい

スプラトゥーンの図

まさに今、マリオじゃないけど頑張ってるタイトルがあるのです

マリオだったらなんでもいいというわけじゃない、というお話をしましたが、同時に、マリオじゃなくてもいい、ということも言えます。「Miitomo」が発表された「経営方針説明会 / 第2四半期決算説明会」」では、任天堂が4~9月の営業損益として、5年ぶりに営業黒字となった、という良いニュースも流れました。

その立役者となった2つのタイトルがあります。1つは「スーパーマリオメーカー」。歴代シリーズのマリオを使って、自分でステージを作れる、新しいマリオの提案です。やっぱりマリオか、と思われるかもしれませんが、もう1つのタイトルは、オンライン対戦型の3Dシューター、「スプラトゥーン」です。スプラトゥーンはマリオもゼルダも任天堂のあらゆるタイトルと全く関係のない新しいゲームでした。

スプラトゥーンは、2014年に世界最大のゲームイベント、Electronic Entertainment Expo(通称E3)で発表されると、瞬く間に世界中のゲーマーの注目を集めました。マリオでもなければゼルダでもないのに、です。しかしそんなことは関係なく、スプラトゥーンは、インクを撃ってステージの地面を自分たちのチームの色で塗り、その塗った面積で勝敗を競うという斬新なゲーム性が大注目されます。特に日本での人気は大変に高く、パッケージの出荷本数とダウンロード版を合計すると既に90万本を突破しているとのことで、年内の国内100万本が射程圏内となっています。

つまり、今まさに、どこからともなくやってきた見たこともないイカがガッツリと任天堂を支えているのに、マリオじゃないからガッカリなんていうのはどうなんだ、ということです。

任天堂がスマートフォンで何をしようとしているのか

スーパーマリオメーカーの図

スーパーマリオメーカーだって、単にマリオだから、というだけで売れているわけではなく、マリオのステージを自分で作れるという遊びの提案や、簡単自在にコースが作れる優秀なインターフェースがあってのことです

話をまとめますと、マリオでもゲームに面白さや驚きが足りなければ大成功は望めないし、マリオじゃなくても、面白ければ人気がでることもある、ということです。スマートフォンのゲームで無料で遊び始めることができる形であれば、マリオというだけで取りあえずダウンロードしてプレイしてくれる人は確かにかなりの数がいるでしょうが、これだけたくさんのゲームがリリースされていて、しかもそれぞれのゲームが毎日起動してもらえるようにあの手この手でユーザーの手のひらを一生懸命ひっぱっている現状で、マリオというだけで生き残れるかというとそんなに簡単な話ではないでしょう。

つまり、注目するべきはマリオなのか、ゼルダなのか、という点ではないのです。マリオでも、ゼルダでも、カービィでもカードヒーローでも全くの新規でも良いのですが、任天堂がスマートフォンで何をしようとしているのか、そこに注目するべきであり、マリオじゃなかったからガッカリ、というのはかなり的外れであると考えます。

その前提の上で、じゃあMiitomoの発表は何が良くなかったのか、ということを最後にお話したいと思います。

面白そうじゃなかった

Miitomoの図

非常に高い期待に対して、肩透かしのような発表になってしまいました(イラスト 橋本モチチ)

その上で、ガイドは、Miitomoの発表は、やっぱり多くの人の期待を上回る発表ではなかったと思います。それはマリオじゃないから、ということではなく、内容にそれ程の驚きがなかった、今すぐにでもダウンロードして遊びたいと思わせる強い魅力が感じられなかった、ということです。それはある意味でマリオかどうか、という話よりも、もっと深刻かもしれません。

MiitomoはMiiを使ったアプリで、ユーザーはMiiに質問されて、それに返答すると、今度はその返答をMiiがユーザーの友達に教えてあげる、というような形の間接的なコミュニケーションを楽しむツールのようです。これを聞いてすぐに思い浮かぶのはソニー・コンピューター・エンタテインメントの「どこでもいっしょ」シリーズではないでしょうか。

任天堂が重い腰をあげてスマートフォン向けゲームに参入する、その第一弾ですから、どんなことをしてくるのか、大変に期待が高まっていました。そこにきて発表するものとしては、驚きにかける内容だったように思います。

これはあくまで発表に対する評価であって、実際にMiitomoが面白くなるかは、リリースされるまで分かりません。任天堂がWii Uで展開するコミュニケーションツールにMiiverseというものがあります。ユーザーがゲーム中にコメントをつけることができ、それがゲームに反映されるということが大きな特徴の1つですが、スプラトゥーンが発売されたことで、コメントが賑わい、一気に注目を集めるというようなことがありました。コミュニケーションツールは、コミュニティをどう形成、運営していくかによって、評価が大きく変わります。

しかし、消費者はそんなに悠長ではありません。これだけたくさんのゲームが溢れている中で、面白いかどうかは分からない、というのは、消費者にとっては「面白くない」とイコールです。

Miitomoには、まだ公開できない魅力が隠されているかもしれません。また、Miitomoは、新しい任天堂の会員サービス「マイニンテンドー」を牽引し、ユーザー同士をフレンドで繋ぐきっかけを作るアプリケーションですので、そもそもの位置づけとして、高まっている期待に応えるようなエンターテインメント性の高いアプリではなかった、ということも、もしかしたらあるかもしれません。

いずれにしろ、登場の仕方が大変にまずかった、ということは言えると思います。マリオかどうかはたいした問題ではありません。それよりも、もっともっと大事なことは、面白そうかどうかなのです。リリースを迎える際には、今ガッカリしているユーザーのイメージをかき消すような、大きな驚きや楽しさを与えてくれることを、期待したいと思います。

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