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えのきの生食は危険!エノキタケの有効成分と毒素

【NR・サプリアドバイザーが解説】えのきは旨味があり、日本でもっとも生産量の多い人気のキノコです。正式にはエノキタケですが、特に食用のものは、「えのき」と呼ばれます。汁物や温かい鍋物にも欠かせないこのえのきを凍らせた「えのき氷」に健康効果があると話題になったことがありました。ただ、えのきの生食には危険性もあります。わかりやすく解説します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

旨味が多く、GABA生産能力が高いと期待されるエノキタケ

えのきの生食は要注意

えのきの生食は要注意


エノキタケは、旨味が強いキノコとしても知られています。旨味成分のグルタミン酸やグアニル酸が含まれています。

筆者は青菜を煮る時などは、出汁を使わなくても昆布とエノキタケをいれればうま味が出るので、時間がないときなどに直接煮物に加えます。忙しい人ほど活用していただきたい食材です。

GABA(γ−アミノ酪酸)は、神経伝達物質のひとつで、交感神経の興奮を抑える作用があります。このため、脳機能の活性や、血圧の降下、精神安定、消費エネルギー量を高めて肥満を抑制する、脂質代謝やアルコールの代謝を促すなどの作用があるのではないかと考えられている注目の成分です。グルタミン酸を多く含むエノキタケは、GABAをつくる能力が高いと見られ、GABAを増やした商品の技術開発などもされています(北海道総合研究機構)。

エノキタケの有効成分や、食べるときの注意点と美味しく食べるコツについて解説します。

<目次>  

エノキタケの有効成分……「キノコキトサン」「β-グルカン」

キノコ類に食物繊維が多いことはよく知られています。特に近年注目されているのは、食物繊維の仲間の多糖類「キノコキトサン(キトグルカン)」やβ-グルカンで、腸内環境の改善、血液中の脂質の低下作用、血圧降下作用、また免疫向上などの作用があるのではないかと期待されています。

その他にもキノコと同様にビタミンB1、ビタミンB2、日光の紫外線を浴びるとビタミンD2に変わるエルゴステロール、ナイアシン、カリウムなどを含んでいます。
 

「えのき氷」の健康効果とは

エノキタケを干しておくと、うま味が凝縮し、日持ちもするので、使いやすくて便利です。

エノキタケを干しておくと、うま味が凝縮し、日持ちもするので、使いやすくて便利です。


JA中野市では、エノキタケを原材料とした「えのき氷」を開発し、以前話題になりました。これはエノキタケをミキサーにかけてペーストにし、約一時間弱火で煮詰め、冷ました後小分けして冷凍したものです。これを料理に調味料感覚で使います。

「えのき氷」は、硬いきのこの細胞壁を壊して作るため、エノキタケをそのまま食べるよりも、有効成分をより無駄なく利用できますし、たいへんおいしいです。

ヒト試験による解析の結果、「えのき氷」を料理に利用して毎日3個摂食した試験群では、「便秘の改善」、「むくみの解消」、「冷え症の改善」などの感想が多く寄せられました。

また血液検査では2カ月目の検査から効果が観察され、中性脂肪、総コレステロール、総脂質、LDLコレステロールの値が低下し、HDLコレステロール値は上昇しました。

これらの結果から、「えのき氷」を日常的に摂食することで、脂質代謝異常症や動脈硬化の予防に効果があるのではないかと見られ、研究に関心が寄せられています。

この他にも干しエノキタケ茶なども話題になっており、いっけんナヨナヨとして見える食材ですが、なかなかの存在感を示しています。
 

普通のエノキタケの生食は危険!

いろいろと健康に役立つ栄養成分が含まれているエノキタケですが、食べ方に注意が必要です。最近では「そのまま生で食べられる」という新しいエノキタケもあるそうですが、一般的なエノキタケにはたんぱく質のフラムトキシンが含まれています。フラムトキシンは強心作用があると考えられていますが、O型赤血球を破壊する溶血作用もあります。ただし熱に弱い性質なので、加熱調理し、普通に食事をする分には問題はありません。

また食物繊維が多いので、一度に大量に食べると消化不良を起こしやすくなります。しっかり加熱して、またよく噛むようにしてください。

せっかく健康に役立つ成分が含まれているのですから、気をつけておいしくいただきましょう。
 

さらに美味しいきのこの食べ方・保存法

旨味成分のグアニル酸は、生のきのこには多く含まれていません。グアニル酸に変わる前の形で含まれているのです。干したり、冷凍したりして細胞が壊れると酵素の働きでグアニル酸になり、美味しく感じられます。

エノキタケに限らず、たくさんきのこが手に入ったら、干すのも良いですが、使いやすくほぐしてから密封バッグに入れて冷凍しておくと、すぐに使えて便利です。

健康に有効な成分が含まれていても偏った食べ方は、リスクもあります。旨み成分も多いので、様々な食品と合わせて、バランスよくおいしく食べるように心がけましょう。

■参考
・きのこを活用してGABA富化素材を作る(北海道立研究機構)
・実学ジャーナル2014年5月号
・「きのこの秘密-エノキダケ」林業にいがた2005年3(新潟県林業改良協会 & 新潟県森林研究所)
・注目すべき成分と特性(長野県農村工業研究所)
・ナニタベル?(JA中野市)
・UMAMI(うま味インフォメーションセンター)
・えのき氷(東京農業大学)
・キノコの毒性タンパク質による腸管バリアー機能の破壊とその機構解明 (浦上財団研究報告書Vol.7(1999))
・きのこ毒について(モダンメディア64巻9号2018〔食の安全・安心に関わる最近の話題〕)

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