メルセデス・ベンツ/メルセデス・ベンツの車種情報・試乗レポート

新世代ビジネスリムジン メルセデス・マイバッハとは

メルセデス・ベンツの超高級ブランド、メルセデス・マイバッハから登場した新しいリムジンシリーズのSクラス。“スリーポインテッドスターの旗旗頭”は、Sクラスロングより200mmもホイールベースが長く、ビジネスリムジンとしての機能にこだわった一台。その歴史を解説するとともに、実際に試乗して、セルセデス・マイバッハの走りについて紹介する。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

マイバッハからメルセデス・マイバッハへ

メルセデス・マイバッハS600

メルセデス・マイバッハの第一弾モデルが、S600(2600万円 写真)とS550。FR(後輪駆動)で、S550には4.7L直噴V8ツインターボをS600には6L V12ツインターボを搭載する


メルセデス・ベンツの“上”をいく超高級ブランドが、マイバッハだった。けれども、このモデルから改めて、メルセデス・マイバッハ、と名乗ることに。ちょっとややこしいので、このあたりの事情を先に整理しておこう。

ダイムラーAGにおいて高級乗用車製造を担う部門がメルセデスベンツ・カーズ。そのモデル呼称が今回、3つに整理し直されたのだ。通常のラインナップであるメルセデス・ベンツはこれまで通りだけれども、高性能ブランドのAMGシリーズをメルセデス・AMGとして、さらに超高級ブランドのマイバッハをメルセデス・マイバッハとして、それぞれ独立したシリーズとして呼ぶことになった。つまり、ベンツ、AMG、マイバッハの3つが、言ってみれば呼称上で“対等”の位置づけになったというわけ。

せっかくだから、これら固有名詞の由来についても簡単に復習しておこう。知っているようで知らない人も、きっと多いはず。

ゴッドリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハがガソリンエンジンで動く世界初の乗り物(二輪車)を造ったのが1895年。翌1896年、まずはカール・ベンツが世界初のガソリン内燃機関自動車(パテント・モトール・ヴァーゲン、三輪車)を造ると、同年、ほんの少しだけ遅れてダイムラーとマイバッハが同じく四輪車を製作した。

ヴィルヘルム・マイバッハは天才的なエンジン設計エンジニアで、後に飛行船ツェッペリン号計画にも携わった。第一次世界大戦後、息子のカール・マイバッハが父とともに超高級車メーカー・マイバッハを設立。そのイメージが、現代のマイバッハに引き継がれている。自動車や鉄道、軍事エンジンの製造をメインとした会社そのものは、第二次世界停戦後にダイムラー・ベンツ社傘下となった。

メルセデスとは、ダイムラーを支えたエンスー大富豪エミール・イエリネクの娘の名前だ。エミールはマイバッハの才能に惚れ込んでいた。当初はダイムラー車のモデル名として使われていたが、第一次大戦後にダイムラーとベンツが合併すると、社名ダイムラー・ベンツに対して商品名をメルセデス・ベンツと呼ぶようになる。

時代は進んで、AMGとは、創立者ハンス・アウトレヒトとエバハルト・メルヒャー、そしてハンスの故郷で創業の地でもあったグロースアスパッハのイニシャル三文字を組み合わせたもの。1970 年代に生まれたメルセデス・ベンツのチューナーで、ファクトリーのレース活動にも協力した。90年代には市販モデルの共同開発(C36)を手がけ、後に完全な子会社となって、現在に至っている。

以上が、固有名詞の由来である。これで、メルセデスを取り巻く名前と歴史的背景も、かなりクリアになったのではないだろうか。というわけで、本題のメルセデス・マイバッハである。

徹底的マーケットリサーチによる新シリーズ

マイバッハ62&57

2002年に登場した新生マイバッハの初代モデル。62(左)と57(右)をラインナップした。ちなみに2005年にはスポーティなSも用意されていた


マイバッハの名前が、その昔と同様に超高級車名として復活したのは、1997年、今から18年前の東京モーターショーのことだった。コンセプトカーとして参考出品された、「メルセデス・ベンツ・マイバッハ」が、後のマイバッハブランドのスタート地点となる。

2002年、独立したブランドとしてマイバッハが誕生すると、先々代のメルセデス・ベンツSクラスをベースに大型化されたシャシー&メカニズムと専用ボディをもつ豪華なリムジンが発表された。その全長から57と62の二種類を基本にバリエーション展開され、12年まで生産されていた。

メルセデス・マイバッハ プルマン

2015年のジュネーブショーでお披露目された、プルマン。全長6499mm、後席は対面式の4座となる


メルセデスはマイバッハをロールスロイスと並ぶ超高級車ブランドに育てようとしたわけだが、結局、方針を転換する。97年のコンセプトカーと同様に“メルセデス”を名乗ることとし、Sクラスのすぐ上から始まる高級ブランドへと生まれ変わらせることに決定したのだった。

はたして、(メルセデス・ベンツ・マイバッハではなく)メルセデス・マイバッハとして再デビューをはたした新リムジンシリーズには、現行W222型Sクラスより200mm長いモデルと、1250mmも長くおまけに100mm高いプルマンモデルの二種類が用意されることになった。

メルセデス・マイバッハS600

ボディサイズは全長5460mm×全幅1900mm×全高1495mm、ホイールベースは3365mm。リアのドア幅を狭めCピラーに三角窓を設置することで、後席をドア開口部より後に配した


旧来のマイバッハ流に呼べば、54と65ということになるだろうか。この事実から、ダイムラーが専用リムジンモデルの需要を見限って適当にSの超ロング仕様をつくったわけではなく、むしろ徹底的にこのマーケットをリサーチして新たなシリーズを立ち上げたことを読み取ることが可能だ。

マイバッハ時代の57と62は、いずれも独特であったけれども、それゆえ互いに近しい存在でもあった。ありていにいって、62は57とさほど違ってみえなかった。ところが今回のメルセデス・マイバッハでは、(旧呼称で)54と65という数字の離れ方を見ても分かるように、はっきりと差別できる内容を盛り込んできた。日本への導入は未定だが、プルマンの存在感は62の比ではないだろう。

ちなみに、マイバッハS550、そしてS600、の売れ行きは好調であるという。なるほどヨミ通り、スリーポインテッドスターの旗頭にあることを鮮明にした方が、多くのユーザーには理解しやすいということだろう。以前のマイバッハとは違って値付けも格段に安いことが、お金持ちにとっての割安感をもたらしたとも考えられる。

メルセデス・マイバッハS600

運転席回りはベースのSクラスと基本同様に。メーター部は12.3インチの画面にメーター類や各種装備の作動状況などを表示。その横にはナビや各種エンターテイメントを映す12.3インチ画面が並ぶ

メルセデス・マイバッハS600

風切り音の低減や遮音材や特殊なシーリング技術により、量産車として世界最高峰を静粛性を得た。ブルメスターと共同開発したサウンドシステムも備わる

メルセデス・マイバッハS600

最大43.5度のリクライニングやレッグレレスト&フットレストなどを備えるエグゼクティブリアシート。レッグルームはSクラスロングより約160mm広い

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