旅行貯金とは何か?

前回の記事では、シンガポールの国際切手展についてお伝えしましたが、今回は日本に話題を移して、郵便貯金から生まれた趣味である旅行貯金をテーマにしたいと思います。
郵便貯金100年記念

郵便貯金100年記念(参考価格:30円)。1875年に郵便貯金が開始されて100年を記念したもの。

旅行貯金とは、旅先でさまざまな郵便局を訪れて、100円や1000円といった少額の貯金をしながら、それぞれの郵便局に用意されているゴム印などのハンコを集める趣味のことで、郵貯ラリーや記念貯金と呼ぶ人もいます。この記事では、まず旅行貯金という趣味の概要についてまとめます。その後、旅行貯金歴50年を超える竹之内康雄さんに、その魅力についてお聞きしたいと思います。
郵便貯金通帳と竹之内康雄さんの著作

郵便貯金通帳と竹之内康雄さんの著作。

旅行貯金の起源とは

郵便局を訪ねて回る旅行貯金の起源はよくわかっていませんが、大きくは2つの流れがあるのではないかと考えられます。1つには切手収集家の「局めぐ」です。切手収集家が風景印などを取るために郵便局を巡ることを「局めぐ」などと言い、その一環として郵便貯金が行われる場合もあります。なお、「局めぐ」については関連記事がありますので、そちらをご覧ください。
貯金窓口の様子

都内の旧特定郵便局の貯金窓口の様子。(2014年8月撮影)

もう1つは鉄道ファンが全国各地の路線や駅を訪ねる中で、旅の記念として地元の郵便局で低額の貯金をすることも行われてきました。鉄道ファンに向けて旅行貯金を広める役割を担ったのがレイルウェイ・ライターの種村直樹さんでした。『日本縦断「郵便貯金」の旅』(徳間書店、1995年)と『気まぐれ郵便貯金の旅』(自由国民社、1997年)といった著作があります。
日本縦断「郵便貯金」の旅

種村直樹、『日本縦断「郵便貯金」の旅』(徳間書店、1995年)。

旅行貯金の愛好家は何人くらい?

いったい旅行貯金を楽しむ人はどれくらいいるのでしょうか。正確な数字はありませんが、旅行貯金愛好家の轟(とどろき)文明さんがケーブルテレビ・CS放送MODO21の「山田五郎アワー『新マニア解体新書』」(2005-2007年)というバラエティ番組の第16回放送に出演した際のコメントの中で、全国に10,000人くらいいるのではないかと推測しています。
次のページでは、いよいよ旅行貯金の達人・竹之内康雄さんが登場します!

旅行貯金の達人・竹之内康雄さんとは

竹之内康雄さんについて紹介しましょう。竹之内康雄さんは愛知県岡崎市に生まれ、中学生の頃から郵便貯金の面白さに魅せられていきます。1955年に郵政職員となり、岡崎郵便局勤務からキャリアをスタートします。その後、郵政本省の建築部・郵務局、北海道、兵庫、東京の普通郵便局長を歴任する中で、旅行貯金に親しんできたそうです。
之内康雄さん

ガイドのインタビューに応じる竹之内康雄さん(2015年6月撮影)。

1995年6月に退職されたのちも精力的な活動を続け、2001年から「切手文化会」の機関紙に旅行貯金に関する連載を寄せています。2014年には連載の第1回から第50回分までをまとめて、『郵便貯金通帳と遊ぶ』(郵研社、2014年)として刊行しています。
郵便貯金通帳の数々

竹之内康雄さんの著作と思い出の詰まった郵便貯金通帳の数々。

旅行貯金を取り巻く環境の変化

竹之内康雄さんが連載を始めた2001年は、省庁再編で郵政省から郵政事業庁(総務省の外局)に移った年でもありましたが、ちょうどこの頃から旅行貯金をとりまく環境は変化していったそうです。最も大きいのは、通帳の形が縦型から横型の様式に改められ、主務者印(実質的には郵便局長の印)を押す欄がなくなったことでしょう。
1970年代の郵便貯金通帳

主務者印が下段に推された1970年代の郵便貯金通帳。

それでも旅行貯金愛好家は、窓口で頼んで主務者印を押してもらっていましたが、旧東京郵政局管内では2005年3月11日の通達で、通帳の切替やATMの故障などの特別な場合を除いて、主務者印を通帳に押すことを停止しました。旧関東郵政局管内では2005年2月から停止するなど、時期が前後しているようですが、主務者印が押される機会が大きく減りました。
主務印

通帳更新時には主務者印が使われているが、押される機会は少なくなった。

次のページでは、竹之内康雄さんが主務者印に代わる楽しみとして注目しているものについて紹介したいと思います。

旅行貯金のあこがれのお宝印!

現在、竹之内康雄さんが旅行貯金の楽しみとして着目しているのは、いわゆるお宝印(オタカラ印)です。窓口で貯金する場合、通帳の支払高の欄に局名のゴム印を押すのですが、この局名印に絵やユニークな文字を入れたものがあるのです。公式な発表もないので、正確な数字ではないのですが、竹之内康雄さんは全国に約24,000局ある郵便局のうち約1,000局でお宝印を使用していると推測しています。
お宝印

東海道本線沿いの郵便局のお宝印の一例。

もはやネタのレベル?本所二郵便局の局名印

お宝印はどこでどんなものが使われているかわからないので、仲間内の情報交換が欠かせませんし、個人ブログやSNS上の情報も有効です。竹之内康雄さんのオススメは、本所二郵便局です。ここは月替わりで思わず笑いを誘うイラスト入りのお宝印を使用していた時期があり、かつては使用期間が終わったお宝印も官製はがきの裏に記念押印してくれるなど、粋な計らいをしてくれていたそうです。
本所二郵便局の特大お宝印

本所二郵便局の特大お宝印。2006年頃のもの。

悲報!本所二郵便局の局名印の最期?

しかし、本所二郵便局の大判なイラスト入り局名印は2006年11月分で突然終わってしまいました。実は2006年11月20日付の本社貯金本部長から全国の郵便局長宛てに「通常郵便貯金通帳に郵便局の局名の入ったゴム印を押印する場合の適切な取扱い」という指導文書が出され、たて5ミリ以内、よこ34ミリ以内のゴム印とすることになったのです。
本所二郵便局のお宝印

本所二郵便局のお宝印。一行で収まるサイズになった。

さらにつけ加えていえば、現在、本所二という郵便局はもはや存在しません。なんと本所二郵便局は2015年1月19日に本所二丁目から本所一丁目に移転したため、局名も本所一郵便局に改称してしまったのです。しかしご安心を!ユーモアあふれるお宝印は移転後も健在で、貯金窓口を訪れた人をホッと和ませてくれています。
本所一郵便局のお宝印

本所一郵便局になってからのお宝印。「はじめまして本所一郵便局」と表示されている。

次のページでは、旅行貯金の達人・竹之内康雄さんならではの秘儀ともいうべき、旅行貯金をご覧にいれましょう。

取扱局(取扱店)番号にこだわった旅行貯金

ここではまず恥ずかしながら、私の郵便貯金の通帳をご覧にいれましょう。赤枠で示した取扱店の欄には、5桁の番号が入っていることが確認できると思います。通常は職場や自宅などに近い決まった郵便局を使うので、だいたいいつも同じ番号が入るのではないでしょうか。
郵便貯金通帳

ガイドがプライベートで使っている郵便貯金通帳。

こちらが達人・竹之内康雄さんが2005年頃に使っていた貯金通帳です。取扱局の番号にご注目ください。なんと彼は番号順に貯金してまわっているので、この欄はキレイに昇順になっているのです!都道府県ごとに番号が連続しているとはいえ、相当な努力の賜物ということがわかるでしょう。
取扱局(店)の番号順に印字された郵便貯金通帳

取扱局(店)の番号順に印字された郵便貯金通帳。

めったに入れない宮内庁内郵便局

この取扱局の番号順の郵便局訪問をやると、どうにもならない難所が存在します。その一例が宮内庁内郵便局(取扱店番号01203)です。この局は一般の人の立ち入りが制限されていて、通常は宮内庁職員や皇宮警察官などしか利用できません。しかし、そこは旅行貯金のレジェンド竹之内康雄さんです。しかるべきルートを通じて、宮内庁内郵便局での貯金も完遂されています。
宮内庁内郵便局で預け入れ

幻の宮内庁内郵便局で預け入れをしたことがわかる通帳。

旅行貯金は今が面白い?!

最後に私個人の立場から、ゆうちょ銀行の上場と旅行貯金について触れたいと思います。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の郵政三社の同時上場が2015年9月10日に承認され、11月4日には正式に上場するのは周知のとおりです。
ゆうちょ銀行の株式に関する情報の掲示

ゆうちょ銀行の株式に関する情報の掲示(新宿野村ビルにて・2015年9月)。

もちろん、日本郵便(日本郵政の100%子会社・非上場)がゆうちょ銀行の代理店としてさまざまな金融サービスを展開するという関係は基本的に変わりません。ただ、ゆうちょ銀行は日本郵政グループ全体の経常利益の6割弱を占める中核企業であり、今回の上場は旅行貯金にも何らかの影響が出てくる可能性もあり、その意味では過渡期である今が旬なのかもしれません。

ぜひ11月4日はゆうちょ銀行へ!!

ぜひ上場初日の2015年11月4日はお近くの郵便局・ゆうちょ銀行の窓口で、1,000円か100円の記念貯金をされてはいかがでしょうか。1875年5月2日以来の伝統を誇る郵便貯金にとって1つの重大事件であることは間違いなく、きっとその歴史に立ち会ったという貴重な記録になることと思います。

次回の記事
は10月末に都内で開かれるイベントについてお伝えしたいと思います。


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