スプラトゥーンをテザリングで対戦?

スプラトゥーンの図

テザリングを使ってスマートフォンに据え置きハードを接続するというのは、コアなユーザーであるほど考えもしないことかもしれません

今回はまず1つ、謝らなければいけないことがあります。というのも、ゲーム業界ニュースでは2009年にですね、「どこでもWi-Fiを試してみた」という記事を書いております。その頃はモバイルWiFiルーターというものが出始めた時期で、今振り返れば知識が不足したままモバイルWiFiルーターによるオンラインゲームのレビューをしてしまいました。実際の体験をもとにしたレポートという意味では、訂正するべき点はございませんが、注意点など補足するべきでした。大変申し訳ありませんでした。

【関連記事】
どこでもWi-Fiを試してみた(AllAboutゲーム業界ニュース)


その時書いた記事の補足という意味も込めまして、今回モバイルWiFiルーターであるとか、あるいは、テザリングを利用してスマートフォンを経由してオンラインゲームをするのはあまり好ましくないですよ、というお話をしたいと思います。

実は、任天堂から発売し、既に日本国内で50万本以上の大ヒットとなっているWii U用サードパーソンシューティングゲームの「スプラトゥーン」で、モバイルWiFiルーターや、あるいはテザリングを使ってスマートフォンから、オンラインに接続しているという人がわりといるんじゃないか、という話題があがっています。

このことは、例えば光回線などを使って遊んでいる人からすると、実はかなり嫌な、やめて欲しい遊び方だったりします。ことはスプラトゥーンに限らず、オンラインゲームを多くの人に快適に遊んでもらう為に解決しなければいけない課題の1つであると言えます。しかし一方で、こういう人が出てくるという状況そのものは、ゲーム業界全体にとって悪くない出来事でもあります。

モバイルWiFiルーターでオンライン対戦をすると何が良くないのか、というところから、整理してお話したいと思います。

通信速度より応答速度

色々な接続方法の図

細かくいうと、固定回線であっても、ルーターと本体を繋いでいるのが無線か有線か、使っている回線が、例えば光回線かケーブルテレビか、というようなことでも随分違います。

テザリングというのは、通信のできるモバイル端末を経由してオンラインに接続する方法で、概ね、スマートフォン経由でオンラインに接続する機能やサービスを指して言われることが多いです。おそらく今回のケースでは、固定回線を持たないユーザーが、それでもなんとかスプラトゥーンを遊びたくて、Wii Uをスマートフォン等に接続してオンライン対戦をしているものと思われます。

この時、対戦が快適にできるかという目安として、通信速度を気にしているけれど、応答速度はあまり気にしていない、という人がいます。しかし、応答速度というのがオンライン対戦においてはとても大切です。

通信速度というのは、「Mbps」なんて単位であらわされるもので、一般的にはこれが十分にあるとインターネットなどがスムーズに行えます。Mbpsというのはmegabit per secondの略で、要は1秒間にどれくらいの要領のデータを送ったり、あるいは受け取ったりできるか、ということを表現していて、この数字が大きければ大きいほど、大量のデータがやりとりできます。つまりこれは通信速度と書いていますが、量の話なんですね。大きなデータをダウンロードしたり、動画をスムーズに観たりという時には、非常に重要です。

しかし、ゲームのオンライン対戦というのは必ずしも大容量の通信が必要というわけではありません。むしろプレイヤーの操作を素早く反映させなければいけませんから、細かいデータを四六時中やりとりしているような状態です。この時重要になるのが応答速度で、これは「ping値」というもので表現されます。ping値というのは小さなデータを相手に送って、帰ってくるまでの時間のことを言い、単位は「ms」、msはmillisecondでミリ秒ということなので、1msは0.001秒。この数字が小さければ小さいほど、時間が短い、つまり早く応答があったということで、応答速度が速い、ということになります。

そして、テザリングでスマートフォンを使ったり、モバイルWiFiルーターを経由して通信すると、この応答速度が遅かったり、安定しなかったりすることが多いんですね。じゃあ、ping値が大きいとどういうことになるのでしょうか。

ping値が大きいと起こること

スプラトゥーンの図

送受信の間にデータの一部を失ってしまうことがどのくらいあるかを示す、パケットロス率、なんていうのも快適なオンライン対戦には重要だったりします。

オンラインゲームを安定して遊ぶために必要なのはping値だけ、というわけではないのですが、ping値が大きいと快適に遊ぶのが難しいことは事実ですから1つの目安にはなります。スプラトゥーンのようなゲームの場合、大体50ms以下であれば、快適に遊べそうです。

ping値が大きい人がいるということは、みんなで対戦している時に、反応が遅い人がいるということになります。それぞれの操作がゲームに反映されるのに、遅れてくる人がいるので、ゲームはどこかで帳尻をあわせなければいけません。

帳尻をどうあわせているかはゲームによって違うので、それによって起こる現象もやや違いがあります。RPGなど、シビアな位置取りやタイミングの調整を必要としないゲームでは、あまり問題にならないこともあります。今回はスプラトゥーンで起きる現象についてお話します。

スプラトゥーンは、4人1組の2チームが対戦するゲームで、弾丸の代わりにインクを撃ち合うシューティングゲームです。床を塗った面積を競ったり、あるいはインクを相手にあてて倒すこともできます。しかし、通信環境が良くないと、不可思議な現象が起きます。

例えば、インクを撃っているはずなのに床が全然塗れず、困っていると遅れてぱっと塗れるような現象。あるいは、目の前の敵にインクを当てても倒すことができずに、しかし数秒遅れてから倒したと表示がでたり。あるいは逆に、撃たれた覚えがないのに、遠く離れた敵にやられてしまったり。つまり、応答速度の速い人と遅い人の帳尻を合わすために、本来の操作が遅れて反映されるような現象が起こります。いわゆる、「ラグ」と呼ばれるものです。これではお互いにまともな対戦になりません。

通信の状態が良くなければ、試合の途中で抜けてしまうこともありますし、試合自体が強制的に終了してしまうこともあります。試合の途中で仲間が抜けてしまうと、4対4という少人数で対戦するスプラトゥーンでは、人数が少ない側が勝つのは極めて難しくなります。もちろん、途中で試合が終わってしまったらガッカリです。

ここで、不安定な回線を使っている人とは対戦したくないな、という気持ちを持つ人がいます。そこで、テザリングでスマートフォンからオンラインに繋いで対戦するのはやめて欲しい、ということになるのですね。

固定回線は減っている?

スマートフォンで遊ぶユーザーの図

スマートフォンが普及したから固定回線が減っている、というわけではなさそうです

据え置きハードのオンライン対戦シューティングをテザリングやモバイルWiFiルーターでやっている人が結構いる、なんていうと、スマートフォンやタブレットPCの普及で固定回線を使っている人が少数派になっているんじゃないか、なんていう人もいます。

総務省が公開している「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度第4四半期(3月末))」によると、固定のブロードバンド回線の契約数は、2009年に3,033万件でしたが、その後ジワジワとを続けて2015年3月時点で3,680万件となっています。その数字を支えているのはFTTTH方式、いわゆる光回線の増加です。こちらは2009年時点で1,502万件だったのが、2015年3月には2,661万件となっています。

【関連サイト】
「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度第4四半期(3月末))」(総務省・PDF)

これは事業者向けと家庭用を合わせた数字ですので、その点は考慮する必要がありますが、基本的には通信環境は良くなっています。固定回線は契約者数を増やし続けていますし、しかも光回線が大きく伸びています。

じゃあ、なんで今スマートフォンのテザリングやモバイルWiFiルーターで対戦している人の話が出てくるのか、ということになります。

ライトユーザーに広がったオンライン対戦

スプラトゥーンの図

これまでだったら、オンライン対戦なんてしなさそうな人でも、遊んでいるということかもしれません(イラスト 橋本モチチ)

先ほどの「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度第4四半期(3月末))」をもう少し見てみると、移動系通信、つまりモバイル端末の回線契約数についてもグラフがあります。移動系通信の契約数も右肩上がりで伸びているんですが、その中でもLTEはここ数年大変な勢いで伸びて2015年には6,778万件にまで達しています。

1人1回線、あるいはそれ以上使う場合もあるモバイル端末と、家族で1回線を共有できる固定回線を単純比較はできませんが、単純に7,000万件近い契約数というのは、非常に大きい数字です。

つまりこれは、オンラインの利用形態が多様化している、ということなんですね。昔は固定回線とPCがなければインターネットなんてできませんでしたし、ゲームのオンライン対戦なんて一部のマニアのものでした。しかし、もう時代は随分変わってしまって、オンラインゲームはどんどん身近になり、そしてオンラインに接続する方法も固定回線だけとは限らなくなりました。そうした利用実態にあわせて、スマートフォンやモバイルWiFiルーターを経由してオンラインゲームをやる人も出てきた、ということかと思います。

特にスプラトゥーンは新しいゲーム性が注目を集め、これまでこういったオンライン対戦主体のシューティングゲームを遊ばなかった人たちも、かなり遊んでいることが予想されます。そしてそのこと自体は、歓迎するべき出来事だと思います。今まで遊んでなかった人が遊ばなければユーザーは増えませんし、ユーザーが増えなければゲームも増えません。

さて、スプラトゥーンの対戦における現状の方に目を向けてみると、毎回ラグが酷くてゲームにならない、というようなことはありません。確かにたまに説明したような、インクが塗れなくなったり、敵を倒したり倒されたりするのに時間差が生まれることはあります。しかし、それ程多くはありません。

また、ラグがあったとしても、その理由が必ずしも相手がスマートフォンやモバイルWiFiルーター接続してることが理由である、とは限りません。もし、何度も何度もそういう現象に見舞われるとしたら、まずは自分自身の通信環境の方を疑ってみるべきです。

おそらく現状に関して言えば、全体の運営にとってそれ程大きな問題ではないのです。しかし、それがこれからも大きな問題でないとは限りません。そして、これはスプラトゥーンだけの話ということでもありません。これからオンラインの利用形態がますます多様化し、そしてオンラインゲームも身近で気軽なものになっていくとしたら、みんなが快適に遊ぶにあたって、このことは大きな障害となる可能性もあります。

まずは、快適に遊べる通信環境について広く説明していくことがまずは大切でしょう。広いユーザーに分かりやすく伝えるには、「ping値」がどうこうと言った詳しい知識よりもざっくりとした判断基準を提示した方が良いかもしれません。

そしてそれは、購入時にチェックできる仕組みになっていればなお良いでしょう。買う人の全てが事前にしっかりと情報収集をするとは限らないのです。CMや友達の話を聞いて「欲しい!」と思う人もいるはずです。それこそ何も知らずにWii U本体とスプラトゥーン買ってしまって、テザリングを使って対戦しようとしたらなんか変でいつも不安定、なんていう人が増えても、誰も得をしません。

さらには、システム側でどう対応していくかということもあるでしょうし、もう少し大きい視点で考えた場合、通信環境の変化はオンラインゲームの内容そのものにも影響を与えていく可能性があります。

スプラトゥーンに起きた現象は、より幅広い状況にいる人達が、オンラインゲームを遊び始めたという意味では、いい傾向です。でもそこには、知識や環境が違う様々な層の人たちが、できるだけ快適に遊ぶためには何が必要かという課題が、ついてきているようです。

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【関連サイト】
田下広夢の記事にはできない。(ゲーム業界ニュースガイド個人運営サイト)

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