円満脱退から強制契約解除--その間に何が?

ここ数年、ブームは落ち着いたと言われつつも、ライブハウスのイベント欄などを見てもまだまだその数は増え続けてるアイドルグループ。しかし昨年くらいからSNSを見てると「卒業」や「脱退」の文字の方が目立つようになった。といっても、以前からグループから卒業するメンバーは毎週毎日のようにいたはず。ただ、ここ最近トラブル込み”らしい”卒業・脱退が多く、より目につくのだ。「らしい」とつけるのは、その経緯が全て明らかになることは普通ないからだ。とはいえ、それとなくSNS上に噂は出回る。そんなネット上を賑わせたあるアイドルグループ脱退劇のすべてを明らかにするイベントが行われた。

それが7月29日に行われた、ファンタジーな世界観をモチーフにしたアイドルグループ・少女第九楽章-ガールズアンセム-(以下、ガールズアンセム)によるトークイベント『少女第九楽章-ガールズアンセム-の禊と合同討論会』

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少女第九楽章-ガールズアンセム-の3人(宮澤美琴・宮城桜・姫嶋香菜)とプロデューサーのMASATOさん。


この春まで5人組で活動していた彼女たち、しかし今年6月21日に公式HPに「メンバー脱退についてのお知らせ」という記事が投稿され、岡部凛・明希那ら2名の脱退が発表された。卒業公演などはないものの「今後の両名の人生が栄えある物になる事を心から願っております」とあり、決定的な卒業理由はうかがえないながら、文面からは話し合いの上での円満な脱退であることは感じとれた。

それが5日後の6月26日に「岡部凛、明希那、強制契約解除処分のお知らせ」という記事が公式サイトに投稿。脱退の発表があった上で、今度は強制契約解除=いわばクビとはどういうこと? その本文では「円満な形で終わるという条件からかけ離れたものである」「弊社及び所属タレントの信用を著しく落としこむ虚偽の発言が認められた」という事から「双方同意の上での契約解除ではなく」「重大な契約違反による強制契約解除という処分」と発表された。

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今年6月26日に公式サイトにアップされた「岡部凛、明希那、強制契約解除処分のお知らせ」。


この円満脱退からのクビ宣告とは、その合間にいったい何が起きたのか? その真相が全て明かされるのがこの日のトークイベントだ。メインスピーカーはガールズアンセムプロデューサーのMASATOさん。ゲストとして招かれたのはプロインタビュアーの吉田豪さん、絶叫する60度等運営の濱田さん、マボロシ可憐GeNE運営のモトダタケシさんの3人。



裁判所まで巻き込みつつある事態に…

最初にこれまでの経緯がMASATOさんの口から語られる。まず6月20日に岡部凛・明希那両メンバーから脱退の申し出があった。その理由はずばりお金。メンバー5人は中には親の仕送りなどを受けて生活しているメンバーもいれば、脱退する2人は事務所の寮に暮らしていた。毎月のギャラについて吉田さんが「ざっくり言うとケタ万円くらい?」と突っ込むと「そうですね。うちのレベルだとまだそんな感じではあります」と答えるMASATOさん。そして2人から「仕送りなど受けているメンバーと、ないメンバーでギャラの配分が同じなのはおかしくないか。生活保証金を出してほしい」と意見される。しかし運営としてそうした差異をつけるわけには当然いかず、提案は拒否。それを理由に脱退という方向で今後活動を進める事は双方同意し、具体的にいつまでやるか、卒業公演はどうするかなど、この時点ではあらためて話し合いを行う気ではいた。

それがその翌日、ライブ後の物販で2人が脱退することをファンに漏らしてしまう。それで最初は卒業公演など考えていたが、2人がなるべく早く辞めたいという意思があることもあり、契約解除についての書面をまとめた上で、あくまで円満脱退な体の最初の告知文を6月22日に発表。これが最初に掲載された「メンバー脱退についてのお知らせ」。しかし、ここから本当の泥沼に突っ込んでいく。

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しかもここから先、揉めた理由はそれぞれ違う。まず明希那さんは脱退の公式発表から2日後、自身のツイッターアカウントを非公開設定、いわゆる鍵アカにして、そこで残るメンバーや事務所に対する批判を投稿していた。事務所にファンからその件で連絡が入り、これでは円満な脱退は難しいと判断された。

もうひとりの岡部さんの場合、22日夜に父親から連絡が入る。その内容は「事務所と娘が結んでいたマネジメント契約は違法ではないか。訴えることも考えている。事務所から借りているお金を棒引きにすることで事を荒立てなくてもいい」というもの。ここで出てくる「事務所から借りているお金」というのは、岡部さんがもともと遠い実家から事務所まで通っていて交通費が高くついており、事務所も全額負担は難しいが無利子で彼女にその費用を貸していた。この連絡に対し、MASATOさんは「弁護士や社労士の確認のもと作った契約書なので問題ないとは思うんですが、法律の専門家に確認します」と返答。その後、彼女には返済意思なしということで、事務所側から東京裁判所に訴状を提出して現在係争中という状態。

ともかく最初の契約解除についての書類では、今後お互い不利益な形にならないよう円満な解決を目標にしていたが、こういった状態では契約違反と判断し、26日の「強制契約解除処分」の発表となった。これが現在までのガールズアンセムの脱退騒動の顛末となる。

MASATOさん曰く「ファンの皆さんで、辞めた本人らからいろいろ話聴いてる方もいらっしゃるとは思うんで、どっちを信用するかはおまかせしますが、こっちの掴んでいる事実はこれです」。この日、吉田さんも「脱退したらヲタクが女の子の味方になるのは当然ですよね」と言っていたが、この運営側が表にした事実をどう捉えるかはもうファン次第。ただ、今後もガールズアンセムを応援していきたい側のファンはスッキリしたのではないだろうか。

運営はメンバー管理もお金の管理もしっかりと

これ以外にも契約解除になった2人の過去の問題行動も話題になった。明希那さんは加入後一週間で他グループのオーディションを受けており、岡部さんは関係者との交際といった事実があった。それについては「次同じことすればクビだからね、って不問にした僕の落ち度だったのかな…」とMASATOさんは悔やむ。それに対しゲスト陣も「よく見逃したな…。自分なら加入後一週間なら傷は浅いんで即辞めさせます」(濱田)、「ここまで見てると、一回見逃すとより大きなことをしますね」(吉田)、「何やってもいい事務所って思われたんじゃない?いい人すぎるよね」(モトダ)とMASATOさんの優しさ、というよりも甘さを指摘。

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この日のゲスト、右から吉田豪さん、絶叫する60度等運営の濱田さん、マボロシ可憐GeNE運営のモトダタケシさん。


とはいえ寮の家賃が光熱費込みで1万円だったり、レッスンや衣装に費用をかけてるなど、ガールズアンセムがメンバーにとっては良い環境だという部分には同意のゲストの面々。しかしその一方で「ヲタクはレッスンとか衣装に金かけてるとかそこまで気にかけないですよ!」とお金の話になると皆シビアに。それに対してバンド出身のMASATOさんが「特に衣装は最初からメジャーっぽい感じでやりたかったから、お金かけたかったんです。もともと自分のいたジャンルは衣装にお金を掛けた方が売れやすいという考えがあり、アイドルもそれに近いと思うんで…」と話すと「まずそこを反省しなきゃいけない!」と一蹴されていた。地下アイドルはまず計画的な資金運用から、ですね。

その他「トラブルを抱えたアイドルを採用する事務所や引き抜き行為について」「アイドルの辞め方について運営側として改善すべき点や、問題点について」「卒業や脱退において運営は大人の対応をすべきか真実を語るべきか」といったテーマでトークは進み、アイドル運営の情熱と冷静、そして現実について約2時間語り合った。個人的には、どこもアイドルが「上を目指す」と目標を設定する中で、濱田さんの「アイドル運営さんはよく勘違いするけど『どこを目指すか』を決めるのは女の子であるべき。卒業公演したいというのも女の子が決めるべきで、運営の意思は関係ない。女の子がしたいと言うんならすればいいし、彼氏できちゃったからとっとと辞めたいのならそれでもいい(笑)」というのが印象的でした。

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終盤にはガールズアンセムのメンバーも登場。「今回こんな事あって信用なくなったり、『このメンバーじゃダメなんじゃないか』って思ってる人もたぶんいると思うんですよ。それでもアイドルはじめた時からの信念があるので、それを曲げすに3人で頑張っていきたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします!」とこれからの活動についての決意を表明した。MASATOさんからも「次は卒業公演までちゃんともっていけるように頑張りたいです。そういうと次があるみたいですけど(笑)、この3人で頑張りますから!」とこれからのガールズアンセムに期待してほしい、とファンに向けて約束した。

途中から「新人運営さんの教育の場みたいになってきた(笑)」と言われるような空気になった今回のトーク。危機的状況だからこそのアイドル運営の生々しい部分が見れる貴重な機会でした。終演間際に「また別の運営がこういう事態になったらやりましょう(笑)」と冗談まじりに言ってましたが、ぜひ見たいような、そういう状況が連発するアイドル界もどうかといいますか……。

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少女第九楽章-ガールズアンセム-
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