1ヵ月間に2度の満月が生じるとき、2度目の満月のことを俗に「ブルームーン」と呼ぶようになったのは、ネイティブ・アメリカンがつけた満月の名称に起因します。

満月につけられた12の名称

ネイティブ・アメリカンは、1年のうちに12回現れる満月を大自然や人間のいとなみの節目として考え、季節に応じてそれぞれの満月に名称をつけました。彼らにとっては、季節の移り変わりを表す暦のようなものだったのでしょう。満月の名称の由来は、狩りでしとめた獲物や収穫物の名前など。やがてそれらは、ヨーロッパからの移住者へ伝わり、次のような英語の名称に変わっていきました。

【1月】Wolf Moon(狼満月)
真冬のエサ不足により、飢えた狼の遠吠えが聞こえる時期。

【2月】Snow Moon(雪満月)
寒さが厳しく、雪が多い時期。

【3月】Worm Moon(虫満月)
雪が解けはじめた地面に虫が現れる時期。

【4月】Pink Moon(桃色満月)
野花が咲きはじめる時期。

【5月】Flower Moon(花満月)
あちこちで花が咲き誇る時期。

【6月】Strawberry Moon(イチゴ満月)
イチゴを収穫する時期。

【7月】Buck Moon(牡鹿満月)
牡鹿の角が生え変わる時期。

【8月】Sturgeon Moon(チョウザメ満月)
チョウザメが豊富に獲れる時期。

【9月】Harvest Moon(収穫満月)
作物を収穫し、収穫祭などえを行う時期。

【10月】Hunter's Moon(狩人満月)
冴え冴えとした秋の満月の明かりで、夜も狩りができる時期。

【11月】Beaver Moon(ビーバー満月)
ビーバーを捕らえる罠を仕掛ける時期。

【12月】Cold Moon(寒満月)
冬が到来する時期。


月の満ち欠けの周期は約29.5日ですから、3年に1回程度は、年に13回満月が生じることになります。すると満月の名称が12個では足りません! そこで登場したのが「ブルームーン」です。

それではブルームーンの役割とは? 次のページでご説明します。 >>

暦から季節変化を知ることは、農作業の計画を立てるときに役立ちます。前のページでご紹介した満月の名称も、農民にとっては季節を知るすべのひとつとして重要だったに違いありません。

誤解から生まれた新しい定義

19世紀に刊行された『Maine Farmer's Almanac(メイン州農民年鑑)』をひもといていくと、ブルームーンの定義は「3ヵ月(1つの季節)に4回ある満月のうちの3度目の満月」となっています。

つまりブルームーンとは、1月は「Wolf Moon」、2月は「Snow Moon」というように、満月の名称を時節(暦)どおりにするために挿入されたものだったのです。

しかし、1946年にアメリカの天文誌『SKY & TELESCOPE』が、どういうわけか「1ヵ月中の2度目の満月のことをブルームーンと呼ぶ」という誤った記事を掲載。のちに訂正記事が出されましたが、誤解は広まってしまったのだとか。

さらに1980年、人気ラジオ番組『Star Date』が誤ったほうの定義でブルームーンを紹介したのが決定打になりました。

今のようにインターネットやSNSが普及していない当時、雑誌とラジオは情報の源であり、大きな影響力をもつメディア。「1ヵ月中の2度目の満月のことをブルームーンと呼ぶ」が広まって、そのまま定着してしまったのも頷けます。

それに「3ヵ月に4回ある満月のうちの3度目の満月」よりも「1ヵ月中の2度目の満月」のほうが、私たち現代人にとってわかりやすいですよね。

本来の定義とは異なる「1ヵ月中の2度目の満月をブルームーンと呼ぶ」は、もはやモダン・フォークロアなのかもしれません。

さて、ここで疑問がわいてきます。それは、「天文現象ではないブルームーンは、地球上のどこにいても起こるのか」ということ。

その疑問を解決するために、次のページでは「1ヵ月中の2度目の満月」について、理解を深めていきます。  >>

1ヵ月中の2度目の満月――この定義には、2つの要素が含まれています。

1つ目は、「満月」という天文学的な要素。2つ目は、「1ヵ月に2度」という暦の要素です。

満月とブルームーンの違いとは?

まずは、満月について確認しておきましょう。

満月とは、地球を真ん中にして、月が太陽の反対側にいるときです。天体はつねに動き続けているので、1日の中でも少しずつ位置関係が変わります。厳密にいえば、満月は瞬間の出来事です。その瞬間は何時何分というように、時刻で示せます。そのため満月は、世界同時に起こります(ただし、地球は自転していますから、満月の瞬間を迎えるときに自分のいる場所が必ず夜になるとは限りません)。

一方、ブルームーンは日付が関係しているため、タイムゾーンによって異なります。

たとえば2010年1月。日本では1日と30日が満月となり、1月30日がブルームーンでした。ここで1月1日の満月の時刻に注目してみましょう。その時刻は日本時間(中央標準時)で午前4時13分。それではアメリカではどうでしょう? 日本のほうが半日以上時間が進んでいますから、アメリカのカレンダーでは2009年12月31日が満月の日となり、2010年1月に満月が2度起きることはありませんでした(そのかわり、アメリカでは2009年12月に満月が2度ありました)。

天文現象である満月は地球規模で考えるため、時差には関係なく世界同時に起こりますが、そのときの日付は国や地域によって異なる場合があります。つまりブルームーンも、国や地域によって異なる可能性があるということです!

また、使用している暦によっても違ってきます。

日本では明治時代のはじめまで、月の満ち欠けを基準とする太陰太陽暦(旧暦)を使っていました。毎月第1日目(ついたち)は必ず新月という決まりだったので、翌月にかわるまでに満月は1度しか巡ってきません。「1ヵ月中の2度目の満月」なんてことはありえなかったのです。

ブルームーンは、月の満ち欠けの周期と日付のめぐりあわせによるもの。しかも、私たちがいる場所で太陽暦(新暦)が使われているからこそ起きることなんですね。

夜空に輝くブルームーン

青く輝く幻想的な満月を、ぜひ一度見てみたいものですね


2015年は7月31日がブルームーンに!

さて、2015年7月は、2日(木)と31日(金)が満月。31日はブルームーンにあたります。ブルームーンを直訳すると「青い月」。大気の状態によっては、青みがかった月が見られる可能性はゼロではありません。ですが、毎月巡ってくる満月を思い出してみると、青く見えたことなんてほとんどないような……。

英語には「once in a blue moon」という表現があって、辞書を引くと「ときたま」「めったに~ない」とあります。ここから転じたのか「ブルームーンはめったに起こらない幸運なこと。見ると幸せになれる」という言い伝えがあります。

普段は宇宙や天体にあまり興味がないという人も、ブルームーンという言葉のロマンチックさや、見ると幸せになれるという言い伝えをきっかけに、月夜を楽しんでみませんか? 何も考えずに、のんびりと月を眺める。そんな時間こそが、幸せを感じさせてくれるひとときとなるはずです。
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