石川尚のスケッチコラム「椅子のある風景」#29

『プラダブティック、南青山』

……どこにいても、「何気なくある椅子」が気になる。そして、その場所、空間の一部になりきっている風景がそこにある……

美しいブティックが並ぶ南青山。
表参道の交差点から根津の方角に歩いていくと、すぐに見えてくるガラス張りの建物。
建築というより大きな『ガラスの宝石箱』だ。
きらびやかな建物とは対照的に、建物の脚元には整然と佇むベンチ椅子の風景がここにある。

腰を降ろしたとたん、都会の喧騒を忘れてしまう。

腰を降ろしたとたん、都会の喧騒を忘れてしまう。


ガラスの宝石箱は、「プラダブティック、南青山店」。

デザインはスイス出身の建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron、略称HdeM)の二人の設計によるものだ。

ヘルツォーク&ド・ムーロンは、ロンドンの美術館をリニュアールするプロジェクトで一躍脚光を浴びることになった。1940年に建設された『発電所』を現代美術館として蘇らせた、あの「テート・モダン(Tate Modern)」が彼らの代表作である。

他に、2006年ドイツW杯(ミュンヘン)のサッカー場『アリアンツ・アレナ』、そして2008年完成の『北京国家体育場(北京オリンピックメインスタジアム)通称:鳥の巣』といえば、皆さんおわかりだろう。

■建築データ………………………………………………………………………
・設計者:ヘルツォーク&ド・ムーロン
・施工者:竹中工務店
・敷地面積:953m2
・建築面積:369m2
・延床面積:2860m2
・階数:地下2階、地上7階
・構造:鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造

・所在地:東京都港区南青山5-2-6 [MAP]
・竣工:2003 年6月
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さて、石のベンチに話を戻そう。

「この風景、どこかで………」、と頭に浮かんだのは京都・龍安寺。
あの枯山水(かれさんすい)の石庭である。