創業300年、十三代目社長の意外なヒーロー願望

更新日:2015年07月22日

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2016年で創業300年を迎える奈良の老舗・中川政七商店。十三代 社長の中川淳さんがたどり着いた「日本の工芸を元気にする!」という壮大なビジョンの背景に、どんな思いがあったのか。そして、自身が決断するときに最も大切にしていることについて訊いた。
前編はこちら

――「日本の工芸を元気にする!」という決断にたどり着いた経緯は?

赤字を黒字にするところからスタートしましたが、数年経って順調に予算を達成し始めたとき、「何のために働いているんだろう?」という想いが湧いてきました。古い会社ですが、社是や家訓もない。どこを目指せばいいのかなと、2、3年もやもやと考えていた中でいろんな出来事がありました。
ひとつは、うちのものづくりを手伝ってくれる工場の方が、年に2、3軒くらい廃業の挨拶に来られていたんです。最初は残念だなと思っていたけど、「この状況が進むと誰もうちのものをつくってくれなくなるんじゃないか」という危機感が出てきた。また、工芸に愛着も芽生えてきて、「これが無くなるのは悲しい」とも思うようになりました。あとは、それまでやってきた方法は、うちが取り扱っている商品カテゴリじゃなくても通用するな、と考え始めたこと。その3つが重なり合って、これをやろうと思えたのが「日本の工芸を元気にすること」でした。


僕はきっと、ヒーローになりたいんだと思う


――近年は、長崎県で波佐見焼を手掛けるマルヒロの「HASAMI」など、いろいろな産地での経営コンサルティングにも携わっていらっしゃいますね。

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言った以上はやらないといけない。どうやって元気にするかを考えたときに、直接的に経営に関わっていくしかないと思ったんです。〈ものづくり〉は日本にたくさん残っているので、まずはいろんな産地で一番星をつくろうと始めました。一番輝く人がいれば、二番手三番手は後からついてくる。現在で完了した企業は9社、すべて決算書ベースで良くしているので、手ごたえはありますね。





――決算書まで確認するのですか。

結果はすべて通知簿である決算書に現れます。最初に決算書を見ないのは、カルテを見ないで治療するようなもの。特に、僕のところへ相談に来る方は、土壇場で切羽詰っている状況だったりしますから。軽い気持ちでは、普通は決算書まで見せないでしょう。


――その事業に関わっていくというのは重責ですね。

そうですね。だから、コンサルティングの案件は決まった瞬間から胃が痛いです(苦笑)。


――それでも続けようと思える力の源は?

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「2&9」は奈良のくつした工場と中川政七商店によって生み出されたくつしたのファクトリーブランド。

もちろん、会社のためでもあります。ただある時、「僕はヒーローになりたいんだ」という気持ちにも気付いたんです。「め組の大吾」という大好きな漫画があるのですが、その主人公のレスキュー隊員のような。最終回のニューヨーク地下鉄事故現場で民衆の「DAIGO!」コールの中、大吾がヘリで降り立つシーンで毎回鳥肌がたつと同時に涙が出ます。厳しい状況にありながらも希望を捨てない人の所には必ずヒーローが現れるんです。








――困っているところへ一番に駆けつけようと。

たくさん依頼をいただく中で、どのお仕事を先にやるかといったら、一番大変なところから。赤字案件は責任が重いですが、それこそがやるべきことだし、自分のモチベーションにもなっています。


突然やってきた難関、それは自身との戦いだった……

ガイドインタビュー-Human dept.ガイドの原点